
企業経営において、経理業務は会社の基盤を支える重要な役割を担っています。しかし、中小企業では、経理担当者を置く余裕がなく、担当者が一人で抱え込み業務が属人化している状況も少なくありません。また、経理作業に時間を取られすぎて本業となるコア業務に集中できず、ミスや漏れが増えてしまうことも不安です。
中小企業における経理の課題を解決する有効な手段として、近年注目されているのが「アウトソーシング」です。本記事では、中小企業が経理をアウトソーシングするべきかどうかを判断するために、具体的な特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。ぜひ、経理のアウトソーシングを導入すべきかの参考にしてください。
目次
経理をアウトソーシングすべき中小企業の特徴
経理をアウトソーシングすべき中小企業の特徴として、以下のような点があげられます。
- 経理の専任担当者がいない中小企業
- 「一人経理」で属人化している中小企業
- 経理の作業に時間がかかりすぎている中小企業
- 経理担当者のミスや漏れが多い中小企業
- 会計や税務の専門知識が不足している中小企業
ここでは、それぞれの企業の特徴を詳しく解説します。
経理の専任担当者がいない中小企業
経理の専任担当者がいない中小企業では、日々の業務を社長や他の社員が兼任することが多く、本来の業務に集中できないという課題が生じがちです。営業や企画、製造といった主要業務と並行して経理を行うことで、作業が後回しになったり、処理ミスが発生しやすくなったりします。
また、経理業務には細かな確認や専門知識が求められるため、経験の浅い人が対応すると、記帳のミスや申告漏れといったリスクも高まります。特に、決算時期には負担が増し、通常業務との両立が困難になるケースも少なくありません。
このような状況では、経理業務をアウトソーシングすることで、専門家による正確で効率的な処理が可能となり、社内の業務負担を軽減できます。また、専任担当者を雇うほどのコストをかけずに、安定した経理体制を整えられるため、経理業務の効率化を図るうえで有効な手段と言えるでしょう。
「一人経理」で属人化している中小企業
一人の社員がすべての経理業務を担っている中小企業では、業務の属人化が進みやすく、担当者が急に休んだり退職したりした際に大きな問題が生じる可能性があります。経理の業務は専門的かつ細かなルールが多いため、担当者が独自のやり方で作業を進めることも少なくありません。
その結果、他の社員が内容を把握できず、引き継ぎが困難になるケースが多発します。また、一人で作業を行うことでミスが発生しやすく、確認体制が不十分になるリスクもあります。特に、税務申告や決算業務においては、正確性が求められるため、属人化によるミスは会社にとって大きな損害につながる可能性があります。
経理をアウトソーシングすることで、業務の標準化や正確性の確保が可能となり、担当者の急な退職や異動による影響を最小限に抑えることができます。継続的に安定した経理処理を維持するためにも、外部の専門家に依頼することは有効な選択肢となるでしょう。
なお、「一人経理」のリスクについては、こちらの記事も参考にしてください。

経理の作業に時間がかかりすぎている中小企業
経理業務に時間がかかりすぎている中小企業では、本来の事業活動に割くべき時間を奪われ、成長の妨げになることがあります。特に、中小企業では、経理を兼任している社員や経営者自身が作業を行うことが多く、慣れない業務に手間取ることで、非効率的な状況に陥りがちです。
例えば、請求書の発行や帳簿の記帳、仕訳作業などを手作業で行っている場合、ミスのチェックにも時間がかかり、結果的に本業の時間を圧迫することになります。加えて、税務申告や決算処理などの複雑な業務に直面すると、さらに時間を要し、残業が増えて業務過多に陥ることも少なくありません。
こうした状況を改善するために、経理業務をアウトソーシングすれば、専門家が効率的に処理し、企業側はコア業務に専念できます。業務効率を向上させ、会社の成長に注力するためにも、経理の外部委託は効果的な選択肢となるでしょう。
経理担当者のミスや漏れが多い中小企業
経理担当者のミスや漏れが多い中小企業では、決算や税務申告の際に重大な問題が発生するリスクが高まります。経理業務は細かいルールや計算が求められるため、経験の浅い担当者が業務を行うと、記帳ミスや勘定科目の誤りが生じることが少なくありません。
また、納税額の計算ミスや申告漏れが発生すると、税務調査の対象となったり、ペナルティが課せられる可能性もあります。特に、中小企業では限られた人員で業務を回しているため、ダブルチェックが行われにくく、間違いが発覚しにくいという問題もあります。
こうした状況が続くと、経営判断に必要な財務データの正確性にも影響し、会社の信用を損なう恐れがあります。経理をアウトソーシングすることで、プロによる正確な処理が可能となり、ミスのリスクを大幅に軽減できます。経理の精度を高め、安心して事業運営を行うためにも、外部委託を検討する価値があるでしょう。
会計や税務の専門知識が不足している中小企業
会計や税務の専門知識が不足している中小企業では、適切な経理処理ができず、知らず知らずのうちに法令違反や税務リスクを抱える可能性があります。税制や会計基準は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を把握し、適切に対応することが求められます。
しかし、中小企業では専任の経理担当者がいないことも多く、経営者や他の社員が独学で処理を行っているケースも少なくありません。その結果、経費の計上ミスや節税対策の見落とし、適用可能な控除の未申請などが発生し、余計な税負担を強いられることもあります。
さらに、税務調査の際に対応が遅れたり、誤った処理が指摘されると、追徴課税や罰則を受けるリスクも高まります。こうしたリスクを回避し、正確で適切な経理処理を行うためには、専門家のサポートを受けることが重要です。経理をアウトソーシングすることで、専門的な知識を活用しながら、適切な財務管理を実現できるでしょう。
中小企業が経理をアウトソーシングするメリット
中小企業が経理をアウトソーシングすることで、以下のようなメリットがあります。
- 経理の正社員を雇うよりコストが安い
- 業務が属人化せずに見える化が進む
- 月末や期末の忙しさを削減できる
- 突然の経理担当者の退職に備えられる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
経理の正社員を雇うよりコストが安い
中小企業が経理業務をアウトソーシングするメリットのひとつは、正社員を雇うよりもコストを抑えられる点です。経理の正社員を採用する場合、給与や社会保険料、福利厚生費などの固定費が発生します。さらに研修費や業務ツールの導入費なども考慮すると、総合的な負担は決して小さくありません。
一方、アウトソーシングを活用すれば、必要な業務を必要な範囲で依頼できるため、コストを最適化しながら経理業務を維持できます。また、繁忙期には業務量を増やし、閑散期には縮小するなど、柔軟に調整できるのも魅力です。
特に、経理担当者を一人しか雇えない規模の企業では、業務の属人化や引き継ぎの問題が生じやすいため、専門家に外部委託することで安定した経理環境を確保できます。コストを抑えつつ、専門的な知識を持つプロによる正確な経理処理を受けられる点は、中小企業にとってメリットとなるでしょう。
業務が属人化せずに見える化が進む
中小企業では経理業務が一部の社員に依存しやすく、属人化が進むことで業務のブラックボックス化が問題となることがあります。一人の担当者が独自のやり方で処理を進めてしまうと、他の社員が内容を把握できず、引き継ぎの際に混乱を招く可能性が高まります。
また、経理の透明性が欠けると、経営者が財務状況を正確に把握しづらくなり、適切な経営判断を下すのが難しくなることもあります。アウトソーシングを活用することで、経理業務のプロセスが整理され、標準化された手順で処理が行われるようになります。
さらに、クラウド会計ソフトなどの活用により、経理データのリアルタイムな共有が可能になり、経営者や関係者がいつでも財務状況を確認できるようになります。業務の見える化が進むことで、透明性が向上し、経理担当者に依存しない体制を構築できる点は、アウトソーシングのメリットと言えるでしょう。
なお、経理の属人化についてはこちらの記事も参考にしてください。

月末や期末の忙しさを削減できる
中小企業の経理業務では、月末や期末に業務が集中しやすく、担当者の負担が大幅に増加する傾向があります。請求書の発行や入出金管理、給与計算、決算準備など、さまざまな業務を短期間で処理しなければなりません。そのため、特に経理担当者が少人数の企業では残業が常態化することも珍しくありません。
さらに、決算期には税務申告や監査対応などの業務も加わり、経営者自身が経理作業に時間を取られるケースもあります。このような状況では、ミスの発生リスクも高まり、修正作業にさらに時間を要する悪循環に陥ることもあります。
アウトソーシングを導入することで、日常の経理業務を分散し、適切なタイミングで処理を進めることが可能になります。特に決算や税務申告などの専門的な業務を外部に任せることで、負担を軽減し、スムーズな経理処理が実現できます。月末や期末の業務負担を減らし、本業に集中するためにも、アウトソーシングは有効な手段となるでしょう。
突然の経理担当者の退職に備えられる
中小企業において、経理担当者が突然退職することは大きなリスクとなります。経理業務が特定の社員に依存している場合、その社員が退職すると業務の引き継ぎがスムーズに進まず、請求書の発行や給与計算、決算処理が滞る可能性があります。
また、引き継ぎの時間が確保できないまま退職されると、未処理の業務が残り、ミスや漏れが発生するリスクも高まります。さらに、新しい担当者を採用するにも時間とコストがかかり、適切な人材がすぐに見つかるとは限りません。
こうしたリスクを回避するために、経理業務をアウトソーシングしておけば、担当者の退職に左右されず、継続的に安定した業務運営が可能となります。専門家によるサポートを受けながら標準化された業務プロセスを維持することで、引き継ぎの負担を軽減し、経営のリスクを最小限に抑えられます。
人材不足が深刻化する中小企業にとって、アウトソーシングは安心して経理業務を維持するための有効な手段となるでしょう。なお、経理担当者が退職するリスクや対策については、こちらの記事も参考にしてください。

中小企業が経理をアウトソーシングするデメリット
中小企業が経理をアウトソーシングする際には、以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
- アウトソーシングにコストがかかる
- 情報漏洩のリスクがある
- リアルタイムで数値データが更新されない
ここでは、それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
アウトソーシングにコストがかかる
経理をアウトソーシングする際には、当然ながら一定のコストが発生します。自社で経理を担当する場合には、社員の給与や業務時間の範囲内で処理できますが、外部の専門家に依頼する場合はサービス料金がかかるため、費用負担が増える点はデメリットと言えるでしょう。
特に、月額制の契約や作業ごとの従量課金方式を採用している場合、業務量が増えれば増えるほどコストも膨らみます。また、記帳代行だけでなく、税務申告や決算対応などを依頼する場合には、追加料金が発生することも珍しくありません。
そのため、自社の経理業務の範囲や頻度を明確にし、必要な業務だけを委託するなど、コスト管理を慎重に行うことが重要です。とはいえ、経理担当者を新たに採用し、教育や管理を行うコストと比較すると、アウトソーシングの方が結果的に割安となるケースもあります。適切なサービスを選び、自社に合ったコストバランスを考慮することが求められます。
情報漏洩のリスクがある
経理業務をアウトソーシングする際に懸念されるのが、情報漏洩のリスクです。経理業務では、企業の財務情報や取引先のデータ、従業員の給与情報など、機密性の高い情報を取り扱うため、外部に委託することでデータが流出する可能性が高まります。
万が一、経理を委託した業者から情報が漏洩すれば、取引先との信頼関係が損なわれたり、法的なトラブルに発展することもあり得ます。特に、クラウドサービスを活用した経理管理を行っている場合、不正アクセスやデータ流出のリスクにも注意が必要です。
このようなリスクを回避するためには、信頼できる業者を選定することが重要です。個人情報の管理体制やセキュリティ対策がしっかりしているかを事前に確認し、守秘義務契約を結ぶなどの対策を講じることで、安全な運用を実現できます。情報漏洩のリスクを最小限に抑えながら、安心して経理業務を委託するためには、適切な業者選びが不可欠となるでしょう。
リアルタイムで数値データが更新されない
経理業務をアウトソーシングすると、社内で処理する場合と比べて、リアルタイムで数値データを把握しにくくなるというデメリットがあります。自社で経理担当者が業務を行っている場合、売上や経費の動向をリアルタイムで確認し、即座に経営判断を下すことが可能ですが、外部委託では一定のタイムラグが発生することが避けられません。
例えば、請求書の処理や経費精算などをアウトソーシングした場合、データの更新が月単位や週単位となることがあり、日々のキャッシュフローを即座に把握できないこともあります。また、業務の依頼やデータの受け渡しに時間がかかることで、急な資金繰りの調整や経営戦略の変更が遅れるリスクも考えられます。
この問題を解決するためには、クラウド会計ソフトを活用し、リアルタイムでデータを共有できる環境を整えることが有効です。経理業務の委託範囲を調整しながら、適切な情報管理を行うことが求められます。
【中小企業向け】経理アウトソーシング先の選び方
中小企業における経理アウトソーシング先の選び方として、以下のようなポイントがあります。
- 予算にあった提案のできるアウトソーシング先を選ぶ
- コミュニケーションが円滑なアウトソーシング先を選ぶ
- ITやAIに強いアウトソーシング先を選ぶ
ここでは、それぞれの選び方のポイントについて詳しく解説します。
予算にあった提案のできるアウトソーシング先を選ぶ
中小企業が経理をアウトソーシングする際には、コストとサービス内容のバランスを考慮することが重要です。予算に合わない高額なサービスを選んでしまうと、経営を圧迫する要因となり、本来のコスト削減という目的が達成できなくなります。
アウトソーシング先を選ぶ際は、自社の経理業務の範囲を明確にし、必要な業務だけを委託できる柔軟なプランを提供しているかを確認することが大切です。例えば、日常の記帳業務のみを依頼するのか、決算や税務申告までを含めるのかによって、必要な費用は大きく異なります。
また、契約形態にも注意が必要で、定額制なのか従量課金制なのか、追加料金が発生する条件は何かをしっかりと確認することで、予算内で適切なサービスを選ぶことができます。経理業務のアウトソーシングは長期的に継続することが多いため、無理なく支払いを続けられるコスト設計になっているかを慎重に判断することが重要です。
なお、経理代行の費用相場については、こちらの記事も参考にしてください。

コミュニケーションが円滑なアウトソーシング先を選ぶ
経理業務のアウトソーシングでは、外部の専門家と継続的にやり取りを行うため、スムーズなコミュニケーションがとれるかどうかがポイントとなります。連絡が取りづらかったり、質問への回答が遅かったりすると、業務の進行が滞るだけでなく、ミスやトラブルの原因にもなりかねません。
そのため、対応のスピードや丁寧さ、レスポンスの速さなどを事前に確認することが重要です。例えば、チャットツールやオンライン会議を活用して迅速なやり取りができるか、定期的な報告や相談が可能かといった点をチェックするとよいでしょう。
また、自社の業務フローや会計ルールを理解してもらえるかどうかも、スムーズな業務遂行に関わる重要なポイントです。特に、経営者や担当者が経理に詳しくない場合、専門用語ばかりを使わず、わかりやすく説明してくれるかどうかも大切な判断基準となります。円滑なコミュニケーションがとれるアウトソーシング先を選ぶことで、ストレスなく経理業務を任せることができ、より安心して本業に集中できる環境を整えられるでしょう。
ITやAIに強いアウトソーシング先を選ぶ
近年、経理業務の効率化が求められる中で、ITやAI技術を活用した経理サービスが注目されています。クラウド会計ソフトやAIによる自動仕訳機能などを積極的に導入しているアウトソーシング先を選ぶことで、手作業によるミスを減らし、スピーディーな処理が可能となります。
また、ITに強い業者であれば、データの共有やリアルタイムでの財務状況の把握がしやすくなり、経営判断の迅速化にもつながります。例えば、紙ベースのやり取りを最小限にし、クラウド上で請求書や領収書の管理ができる仕組みを提供しているかどうかは、業務効率に大きく影響します。
さらに、AIを活用した経理システムを導入している業者であれば、仕訳作業の自動化や不正検知の精度向上も期待できます。ITリテラシーが高いアウトソーシング先を選ぶことで、業務の効率化だけでなく、セキュリティ対策の強化やコスト削減にもつながるため、これからの経理業務を考えるうえで重要なポイントとなるでしょう。
なお、経理とAIの関係については、こちらのコラムでも触れています。

まとめ
中小企業では、経理の担当者がおらず、作業に時間がかかりすぎてしまう状態や、ミスや漏れが生じてしまう状態も多くあります。経理業務をアウトソーシングすることで、正社員を雇うより安いコストで、業務の属人化をすすめることができる点がメリットです。
一方で、アウトソーシングにはコストがかかり、リアルタイムで数値データが更新されてない点がデメリットです。そのため、経理アウトソーシング先の選び方として、予算にあった提案のできるアウトソーシング先を選ぶことがポイントです。
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中小企業の経理アウトソーシングに関するよくあるご質問
中小企業の経理アウトソーシングについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、中小企業の経理アウトソーシングに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
経理業務をアウトソーシングするデメリットは何ですか?
経理業務のアウトソーシングには、コストが発生することや情報漏洩のリスクがある点がデメリットとしてあげられます。また、外部の専門家に依頼するため、リアルタイムで数値データを確認しにくくなる場合があります。そのため、予算にあった提案ができ、スピーディに対応できる経理代行会社を選ぶことが大切です。
経理業務のアウトソーシングでどんな業務が委託できますか?
経理のアウトソーシングでは、日々の記帳業務や仕訳入力、請求書の発行、経費精算、給与計算、決算処理、税務申告などを委託できます。さらに、財務分析や資金繰り管理、年末調整などの高度な業務にも対応可能な場合があります。依頼できる範囲は業者によって異なるため、必要な業務を明確にすることが重要です。
中小企業の経理アウトソーシングは違法ですか?
中小企業が経理業務をアウトソーシングすること自体は違法ではありません。ただし、税務申告や財務諸表の作成などは税理士や公認会計士の資格が必要な業務もあるため、委託する範囲には注意が必要です。適切な業者を選び、業務範囲を明確にすることで、合法的かつ効率的に経理業務を委託することができます。