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請求書の書き方のルールとは?書式や記載項目における注意点を解説
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請求書の書き方のルールとは?書式や記載項目における注意点を解説

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請求書の書き方について、「法律で定められた明確なルールはない」と聞くと、少し意外に感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、ルールがないからこそ、取引先に失礼がなく、経理上のトラブルを未然に防ぐためのマナーや押さえるべきポイントが存在します。

 

本記事では、請求書の基本的な役割や見積書・納品書との違いから、インボイス制度に対応した具体的な書き方、発行する際の注意点までをまとめて解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

 

請求書の書き方や書式にルールはあるのか?

請求書の書き方や書式には法律で統一された厳格な様式が存在するわけではなく、基本的には取引先に必要な情報を正確に伝えることが重要とされています。例えば、請求日や請求金額、振込先口座など、支払いに欠かせない項目が明記されていれば大きな問題はありません。

 

ただし、取引の信頼性を高めるためには、会社名や担当者の連絡先なども加えておくと安心です。また、インボイス制度の導入によって、適格請求書の記載要件を満たすことが求められる場合もあり、事業形態や相手先によって配慮すべき点が異なります。見た目の体裁は自由度があるものの、誤解を避けるために整った形式を心がけることが望ましいでしょう。

 

請求書の発行や送付に決まりはあるのか?

 

請求書の発行や送付に関しても、必ず守らなければならない厳密なルールが定められているわけではありませんが、取引の円滑化やトラブル防止のために押さえておくべき一般的な慣習があります。例えば、商品やサービスの提供後、速やかに請求書を発行し、相手が支払い準備をしやすいように送付することが望ましいとされています。

 

また、送付方法については紙の郵送だけでなく、メールや専用システムを利用した電子送付が活用されており、取引先の希望や契約内容に応じて柔軟に対応することが求められます。法的に義務付けられた期限はありませんが、約束した支払期日から逆算して適切な時期に発行や送付をすることが取引の信頼性を高めることにつながります。

請求書・見積書・納品書・領収書との違い

請求書・見積書・納品書・領収書には、目的や発行のタイミング、特徴に以下のような違いがあります。

 

 

種類 目的 発行のタイミング 特徴
請求書 代金の支払い依頼 納品やサービス提供後 金額・期日・振込先を明記
見積書 契約前の金額提示 受注前 条件や費用の目安を伝える
納品書 納品内容の確認 商品やサービス納品時 品目・数量などを記録
領収書 支払いの証明 代金受領後 受け取りの事実を証明

 

 

ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。

 

請求書と見積書の違い

 

請求書と見積書は、どちらも取引に関連する文書ですが、役割やタイミングに違いがあります。請求書は代金を支払ってもらうために発行する文書で、サービス提供後や納品後に用いられるのが一般的です。

 

一方で見積書は契約前に発注者へ金額や条件を提示するためのもので、取引を始める前段階での合意形成を目的としています。例えば、工事を依頼する場合、見積書で予算の目安を確認し、実際に作業が完了した後に請求書で正式な金額が提示されます。

 

このように両者は取引の流れの中で使う場面が異なり、役割を混同しないことが円滑な取引につながります。

 

請求書と納品書の違い

 

請求書と納品書も混同されがちですが、役割が異なります。請求書は支払いを依頼するための文書であり、取引額や支払期日を明記して送付します。一方で納品書は商品やサービスが確かに納品されたことを示すためのもので、受け取った側が内容を確認する役割を担います。

 

例えば、商品を購入した際、納品書によって数量や品目をチェックし、その後に届く請求書で金額や支払期日を確認する流れになります。請求書が「お金のやり取り」に直結するのに対し、納品書は「受け渡しの確認」に重点を置いているため、両者の用途を理解して適切に使い分けることが重要です。

 

請求書と領収書の違い

 

請求書と領収書は、支払いの前後で使われるという点に大きな違いがあります。請求書は「これから支払ってください」という依頼を示す文書であり、支払いが行われる前に発行されます。一方で領収書は「確かに受け取りました」という証拠を残すために、支払い後に発行されます。

 

例えば、飲食店で食事をした際、食事後に提示されるのが請求書であり、会計を済ませた後に受け取るのが領収書という流れです。両者は対になる関係性を持っており、請求から支払い、そして受領の記録までをスムーズにつなぐ役割を果たします。請求書と領収書の違いを理解しておくことで、ビジネスにおけるやり取りも整理しやすくなります。

 

なお、領収書については、こちらの記事でも解説しています。

 

【初心者向け】領収書の書き方!発行する必要性や事前準備も解説
【初心者向け】領収書の書き方!発行する必要性や事前準備も解説

請求書の発行に必要な事前準備

請求書の発行に必要な事前準備として、以下のものを用意しておきましょう。

 

  • 請求書のフォーマット(ひな形)
  • 印鑑
  • 会社のロゴデータ

 

それぞれ、なぜ必要なのか具体的に解説していきますので、ぜひ請求書発行の際の参考にしてください。

 

請求書のフォーマット(ひな形)

 

請求書を発行する際には、あらかじめ統一されたフォーマットを用意しておくことが欠かせません。フォーマットがあることで記載漏れを防ぎ、取引ごとにスムーズに作成できるというメリットがあります。

 

例えば、取引先名や金額、支払期限、振込先口座など必須項目が整ったひな形を用意しておけば、毎回ゼロから作成する手間を省くことができます。また、社内で複数の担当者が請求書を作成する場合も、統一フォーマットを使うことで情報のばらつきを避けられ、信頼性の高い文書を安定して発行できます。

 

取引先との関係を円滑に保つためにも、整ったひな形を準備しておくことは業務効率化につながる重要といえるでしょう。

 

印鑑

 

請求書に印鑑を押すかどうかは取引先や状況によって異なりますが、今でもビジネスの場では印影が信頼の証として扱われることがあります。例えば、契約金額の大きな案件や初めての取引先に対しては、押印した請求書を発行することで安心感を与える効果があります。

 

一方で、電子契約やペーパーレス化が進む中では、印鑑を必須としないケースも増えています。それでも、相手先が従来型の業務フローを重視する場合は印鑑の有無が信頼性に影響することもあるため、事前に確認して対応することが望ましいでしょう。請求書を発行する準備段階で、印鑑をどう扱うかを整理しておくことが円滑な取引につながります。

 

会社のロゴデータ

 

請求書に会社のロゴを入れることは、単なる装飾ではなく、取引先に安心感を与える要素のひとつです。例えば、同じような名称の会社から請求書が届いた場合、ロゴの有無によって正確な発行元かどうかを直感的に判断しやすくなります。

 

また、統一感のあるデザインは自社のブランドイメージを伝える役割も果たし、ビジネス上の信頼性を高める効果があります。ロゴデータを事前に整えておけば、請求書作成のたびに手間をかける必要がなくなり、スムーズに書類を発行できます。

 

形式上の必須項目ではないものの、見やすく分かりやすい請求書を作成するためにロゴの活用は検討すべき準備のひとつといえるでしょう。

請求書の項目と書き方

請求書の書き方として、以下の項目を記入しましょう。

 

  • 1:請求書の宛先
  • 2:取引年月日
  • 3:取引内容
  • 4:取引金額
  • 5:消費税に係る表記
  • 6:発行日
  • 7:支払い期日
  • 8:適格請求書発行事業者の登録番号
  • 9:振り込み先
  • 10:特記事項・備考
  • 11:請求書番号

 

ここでは、それぞれの項目を具体的に解説します。

 

1:請求書の宛先

 

請求書の宛先は、取引先の担当部署や担当者名を正確に記載することが基本です。誤った宛名や不明確な表記は支払い処理の遅延につながる可能性があります。

 

例えば、法人名に株式会社や有限会社の略称を使わず正式名称で記載することで、正確性と信頼性を確保できます。加えて、部署名や役職を丁寧に添えると、受け取った相手に対する配慮が伝わり、取引を円滑に進める効果も期待できます。

 

2:取引年月日

 

取引年月日の記載は、取引の発生時期を明確にする役割を持ちます。請求日や支払期日と混同されやすいため、実際に商品やサービスを提供した日付を記載することが重要です。

 

例えば、継続的なサービス契約では、利用期間の開始日と終了日を明記することで誤解を防げます。また、正しい年月日があれば、会計処理や税務申告の際にも記録が整理しやすく、事務処理の効率化にもつながります。

 

3:取引内容

 

取引内容は請求根拠を示すための重要な項目です。商品やサービスの名称だけでなく、数量や単価なども記載することで、請求金額の内訳を明確にできます。

 

例えば「デザイン制作費一式」とするよりも「ロゴ制作:1件」と具体的に書くほうが理解されやすく、後の確認作業もスムーズになります。さらに、詳細をきちんと記載しておけば、取引先に安心感を与え、将来の取引において信頼を積み重ねることにもつながります。

 

4:取引金額

 

取引金額は、取引内容に基づいて計算された合計を示す項目です。誤記や計算ミスは信用問題につながるため注意が必要です。

 

例えば、小計を明記した上で消費税額を分けて記載することで、取引先も金額を確認しやすくなり、支払いトラブルの防止につながります。金額の表示方法を統一しておくことは社内の管理にも役立ち、会計上の処理を一貫性をもって進められる点もメリットです。

 

5:消費税に係る表記

 

消費税に関する表記は、税額を明確にするために欠かせません。総額表示だけでなく、税抜き金額と税額を区分して書くとより分かりやすくなります。例えば「商品代金10,000円+消費税1,000円=合計11,000円」といった記載であれば、取引先が正確に理解できます。

 

さらに、インボイス制度の下では税率や課税区分を明記する必要があるため、法令に沿った表記を心がけることが求められます。

 

6:発行日

 

発行日は請求書を作成した日を示すもので、取引の記録や支払い期日の計算にも関わります。記載漏れがあると書類の効力に疑問を持たれる場合があるため注意が必要です。

 

例えば、複数の取引が並行している場合でも、発行日が明確であれば処理の順序が整理されやすくなります。また、取引先にとっても会計処理を進める上で重要な情報となり、後の確認作業を円滑にします。

 

7:支払い期日

 

支払い期日は、取引先に対していつまでに支払いを行うかを伝えるための重要な項目です。明確に記載しなければ、支払いが遅れる原因にもなります。

 

例えば「請求日から30日以内」や「〇年〇月〇日まで」と具体的に書くことで、双方にとってトラブル防止になります。また、期日の設定は自社の資金繰りにも直結するため、あらかじめ相手と相談し適切に定めることが大切です。

 

8:適格請求書発行事業者の登録番号

 

適格請求書発行事業者の登録番号は、インボイス制度に対応するために欠かせない情報です。番号を記載することで、取引先は仕入税額控除を適切に受けられるようになります。

 

例えば、請求書のヘッダーや会社情報欄に登録番号を明示することで、確認が容易になり安心感を与えられます。制度上必須の情報であるため、記載漏れがないよう社内でチェック体制を整えることも重要です。

 

9:振り込み先

 

振り込み先は、請求金額を支払ってもらうために必須の項目です。銀行名、支店名、口座番号などを正確に記載することで、入金遅延や誤送金を防げます。

 

例えば「〇〇銀行 ××支店 普通 0000000」と具体的に書けば、相手は迷うことなく手続きを進められます。加えて、振込手数料の負担者を備考欄で明記すると、後のトラブルを避けやすくなります。

 

10:特記事項・備考

 

特記事項や備考欄は、標準的な項目に収まりきらない情報を伝える場として活用できます。例えば「振込手数料はご負担ください」「納品書同封済み」など、取引先への連絡事項を補足しておくことで、後の行き違いを防ぎ、やり取りを円滑に進めることができます。

 

また、支払い条件や注意点などを簡潔にまとめれば、双方にとって確認しやすく実務上も役立ちます。

 

11:請求書番号

 

請求書番号は、請求書を一意に管理するための番号であり、後から取引を確認する際の手がかりとなります。例えば「2025-001」のように年度や通し番号を組み合わせたルールを設定すると、体系的に管理でき、重複や紛失の防止につながります。

 

さらに、会計処理や監査の場面でも重要な参照情報となるため、番号付けのルールを社内で統一しておくことがおすすめです。

請求書を発行する際の注意点とポイント

請求書を発行する際の注意点とポイントとして、以下のような点を心がけましょう。

 

  • 記載内容に漏れがないかダブルチェックをする
  • 支払サイトに遅れないように発行する
  • 見やすくフォーマットを統一する

 

ここでは、それぞれの注意点やポイントをまとめて解説します。

 

記載内容に漏れがないかダブルチェックをする

 

請求書を発行する際には、記載漏れがないかを丁寧に確認することが大切です。金額や日付、振込先などの情報が正しく記載されていなければ、相手先が支払い処理を進められず、入金遅延につながる恐れがあります。

 

例えば、振込先口座の一桁違いや請求金額の計算ミスといった小さな誤りでも、大きなトラブルの原因になり得ます。発行前に必ずダブルチェックを行う習慣をつけることで、書類としての信頼性を高め、スムーズな取引を継続することができます。

 

支払サイトに遅れないように発行する

 

請求書は、支払サイトに合わせて余裕を持って発行することが欠かせません。発行が遅れてしまうと、取引先が予定していた資金繰りに影響を与えたり、自社の入金が遅れたりする可能性があります。

 

例えば「月末締め翌月末払い」の契約であれば、月末に請求書を用意するのではなく、前もって発行準備をしておくと安心です。支払期日から逆算してスケジュールを組み、余裕を持った対応を心がけることで、相手との信頼関係を損なうことなく円滑な取引を維持できます。

 

なお、支払サイトについてはこちらの記事も参考にしてください。

 

支払サイトとは?一般的な長さや決め方など活用テクニックを解説
支払サイトとは?一般的な長さや決め方など活用テクニックを解説

 

見やすくフォーマットを統一する

 

請求書は、見やすさや分かりやすさが相手に与える印象を左右します。そのため、フォーマットを統一して整えることは業務効率化と信頼性向上の両面で効果的です。

 

例えば、社内で担当者ごとに異なる様式を使ってしまうと、取引先は情報を探すのに時間がかかり、誤解が生じやすくなります。統一されたフォーマットであれば、必要な情報をすぐに確認でき、受け取る側も安心して処理を進められます。見た目の統一感は、会社全体の印象にもつながるため、早めに整備しておくことで長期的なメリットがあります。

まとめ

請求書の書き方や書式には法律で統一された厳格な様式が存在するわけではなく、基本的には取引先に必要な情報を正確に伝えることが重要とされています。しかし、請求書を発行する際には、記載内容に漏れがないかダブルチェックをして、支払サイトに遅れないように発行することがポイントです。また、請求書の書き方は、見やすくフォーマットを統一することを意識しましょう。請求書の書き方でお困りの際は、経理代行会社に相談することもおすすめです。

 

弊社では、経理代行と記帳代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な記帳業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

請求書に関するよくあるご質問

請求書についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、請求書に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

請求書の作成にルールはありますか?

請求書の作成には、法律で細かく決められた統一様式は存在しません。ただし、取引先が内容を正確に理解できるように、必要な項目を漏れなく記載することが求められます。例えば、取引年月日や金額、支払期日、振込先口座などの基本情報が欠けると、支払い処理が進まない場合があるため注意が必要です。

請求書に「一式」と書くとダメな理由は何ですか?

請求書に「一式」とだけ記載すると、取引内容が不明確になり、後の確認やトラブル防止の観点から不十分と見なされることがあります。例えば、デザイン作業やシステム開発費用を「一式」とまとめるのではなく、「ロゴデザイン制作:1件」や「プログラム開発:〇時間」と明細を示すことで、請求の正確性と信頼性を高めます。

請求書とはどういう意味ですか?

請求書とは、取引先に対して提供した商品やサービスの代金を支払ってもらうために発行する文書を指します。単なるお金の請求だけでなく、取引内容や金額、支払期日などを明記することで、取引の記録や証拠としての役割も果たします。ビジネスにおいては、取引の信頼性を保つ基本的な書類として欠かせないものです。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。