中小企業の経理は、大企業の経理と比べて、より幅広い業務に携わる機会が多いと言われています。しかし、具体的にどのような業務内容なのか、大企業との違いは何なのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、中小企業の経理の具体的な業務内容や、経理業務を行う上での注意点、そして大企業の経理との違いについてわかりやすく解説します。
経理の基礎知識から、日々の業務で役立つ情報まで、幅広く網羅していますので、中小企業の経営者の方や、経理担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
中小企業の経理とは?
中小企業の経理とは、企業における日々の資金の流れを管理し、財務の健全性を保つために重要な業務です。具体的には、売上や経費の記帳、請求書の発行や管理、支払いの確認、給与計算、税金の申告などさまざまな業務を行います。
これらの業務は企業の規模や業種により異なりますが、経理担当者は限られたリソースの中で正確かつ迅速に処理を行うことが求められます。特に中小企業では、経理部門の規模が小さく、経理担当者が他の業務も兼任しているケースが多いため、効率的な業務運営が課題となります。
また、経理は企業の財務状況を把握するだけでなく、経営判断にも大きく影響を与える重要なポジションです。適切な経理業務を行うことで、キャッシュフローの改善や資金繰りの最適化が可能になり、企業の経営を支える基盤を支えることができます。
そのため、中小企業にとって、経理は単なる裏方の業務ではなく、企業成長のための重要な役割を担っています。
中小企業と大企業の経理の違い
中小企業と大企業では、経理の業務や役割に違いがあります。ここでは、以下の点について、経理担当者における中小企業と大企業の違いを紹介します。
- 業務の範囲が違う
- 使用するシステムが違う
- 内部統制やガバナンスの観点が違う
- 決算業務の複雑さが違う
- 担当者のスキルや専門性が違う
なお、上場(IPO)準備企業の経理については、以下の記事も参考にしてください。
業務の範囲が違う
中小企業の経理は、幅広い業務を少人数でこなすことが多く、日常的な経費管理から決算処理、さらには総務や人事の業務を兼任することもあります。
一方、大企業では業務が細分化され、専門部署に分かれています。例えば、売掛金や買掛金、給与計算などがそれぞれの担当に割り振られ、業務の効率化と専門性が追求されます。この違いが、経理の役割や働き方に大きな影響を与えています。
なお、中小企業では「一人経理」とよばれて、ひとりですべての経理業務を行う担当者の方もいます。「一人経理」については、以下の記事で詳しく解説しています。
使用するシステムが違う
中小企業ではコストを抑えるために、比較的安価な会計ソフトやクラウドベースのシステムが多く利用されます。
一方、大企業ではERP(統合業務システム)など、高機能でカスタマイズ性の高いシステムが導入され、業務の自動化やデータの一元管理が行われます。これにより、処理のスピードや精度が向上し、経理業務の効率化が図られていますが、導入と運用には高いコストと専門知識が必要です。
内部統制やガバナンスの観点が違う
大企業では、内部統制やガバナンスの強化が厳しく求められ、コンプライアンス遵守のための経理プロセスが厳格に整備されています。経理業務には複数のチェックポイントが設けられ、責任や権限の管理が徹底されています。
一方、中小企業ではリソースの制約から統制の仕組みが簡略化されがちで、担当者ひとりに依存する業務が多く、リスク管理の面で課題が生じることがあります。
決算業務の複雑さが違う
大企業の決算業務は、連結決算や国際会計基準への対応が求められるため、非常に複雑です。多くの関連会社や子会社のデータを取りまとめ、統合した財務報告が必要となります。
一方で、中小企業では決算業務が比較的シンプルで、個別決算が主流です。ただし、中小企業においても税務対応や法令遵守のための適切な会計処理が必要であり、決算の迅速化と正確性が求められます。
なお、決算業務については、以下の記事も参考にしてください。
担当者のスキルや専門性が違う
中小企業の経理担当者は、幅広い業務をこなすために、柔軟性と実務的なスキルが求められますが、専門性はやや限定的になることがあります。
一方、大企業の経理担当者は、特定の業務に特化し、高度な会計知識や分析能力を持つことが求められます。専門的な研修への参加や資格取得を推奨されることも多く、高度な業務に対応するスキルの習得が重要です。
中小企業における経理の特徴
中小企業の経理には具体的に以下のような特徴があります。
- 小人数で業務をこなす必要がある
- 決算業務から税務対応まで幅広くこなす
- 経営者と経理担当者との距離が近い
- 手作業での作業が多い
- キャッシュフローの管理が重要になる
- 柔軟な対応が求められる
小人数で業務をこなす必要がある
中小企業の経理は、小人数で業務を回す必要があるため、ひとりの担当者が複数の業務を兼任することが一般的です。
経理担当者は日々の記帳や請求書の発行、支払い管理から決算処理まで幅広い業務を行うため、効率よく仕事をこなすスキルが求められます。リソースが限られている中で、優先順位をつけて業務を進める柔軟性と実行力が必要です。
決算業務から税務対応まで幅広くこなす
中小企業の経理は、決算業務だけでなく税務申告や社会保険の手続きなど、さまざまな業務を幅広くこなす必要があります。そのため、税理士と連携しながら、会社の財務状況を正確に把握し、法令を遵守しながら行うことが重要です。
特に、税務関連では規則の改正に対応し適切な申告を行うことで、企業のリスクを最小限に抑えることが求められます。
経営者と経理担当者との距離が近い
中小企業では経営者と経理担当者の距離が近く、直接的なコミュニケーションが取りやすい環境が特徴です。これにより、経理の状況が迅速に経営判断に反映されやすく、財務の透明性が保たれます。
経理担当者の報告が経営戦略の見直しや改善に直結するため、経理が担う責任は非常に大きく、経営者の良きパートナーとしての役割が求められます。
手作業での作業が多い
中小企業では、予算やシステム導入の制約から、経理業務において手作業が多く残っていることも多々あります。エクセルでの入力や紙ベースの請求書管理など、手間のかかる作業が多く、自動化の遅れが業務効率に影響を及ぼすことがあります。
そのため、人的ミスのリスクを減らし、業務の精度とスピードを上げるためのシステム化やDX化が今後の課題となります。
なお、経理のDX化については、以下の記事も参考にしてください。
キャッシュフローの管理が重要になる
中小企業では、資金繰りが経営の安定に直結するため、キャッシュフローの管理が非常に重要です。売掛金の回収や支払期日の調整を適切に行い、資金が不足する事態を防ぐことが求められます。
特に、急な支出や取引先の支払い遅延が発生した場合に備え、常にお金の流れを把握し、予測を立てておくことが経理担当者の重要な役割となります。
柔軟な対応が求められる
中小企業の経理担当者は、変化する業務環境や経営状況に応じて柔軟な対応が求められます。急な経費削減や予算変更など、経営判断に即座に対応しなければならず、臨機応変に作業内容を調整する必要があります。
また、新たな業務システムの導入や規則改正にも適応し、常に最新の情報に基づいて迅速かつ正確に業務を遂行することが期待されています。
中小企業における経理の業務内容とやり方
中小企業における経理には、毎日やる仕事である「日次業務」と毎月やる仕事である「月次業務」、毎年やる仕事である「年次業務」があります。ここでは、それぞれの業務内容とやり方について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
日次業務(毎日やる仕事)
中小企業における経理の日次業務は、日々の現金出納の管理や取引の記帳、請求書の発行や処理、売掛金や買掛金の管理が中心です。これらの業務は企業の資金の流れを把握するために重要であり、正確かつ迅速に行うことが求められます。
また、領収書や証憑の整理、経費精算の確認も行い、日々の業務がスムーズに進むように対応する必要があります。
月次業務(毎月やる仕事)
中小企業における経理の月次業務には、月次決算の準備、給与計算、社会保険料の支払い、試算表の作成などが含まれます。これらの業務は企業の月ごとの財務状況を把握するために大切で、経営者へタイムリーに情報提供する役割も担います。
また、月次決算では、収益と費用の確認、帳簿の照合、各種報告書の作成を行い、企業の資金状況を明確にすることが求められます。
年次業務(毎年やる仕事)
経理の年次業務は、年間の総決算を行う重要な業務です。年次決算では、財務諸表の作成、税務申告、棚卸資産の評価、減価償却費の計算など、複雑で幅広い作業が求められます。
また、税理士や監査法人との連携が必要となることも多く、正確なデータの提供と法令遵守が欠かせません。これにより、企業の年間の財務における健全性を評価し、次年度の経営方針を決定する基盤となります。
中小企業ならではの経理の注意点
経理は企業の中核を担う業務のため、さまざまな懸念点を意識して業務を勧めなければなりません。なかでも、中小企業ならではの経理の注意点として以下があげられます。
- 不正やミスが多くなりやすい
- 資金繰りの悪化が経営に直結してしまう
- 税務申告や法令遵守への理解が不足しやすい
不正やミスが多くなりやすい
中小企業では、限られたリソースとスタッフで経理業務を行うため、不正やミスが発生しやすい傾向にあります。少人数での業務は、業務の監視が十分に行き届かないため、ミスが見過ごされることもあるでしょう。
また、経理業務に対する理解が不十分な場合、意図的でないミスや不正が発生しやすくなります。このようなリスクを最小限に抑えるためには、業務の標準化と定期的なチェックが大切です。
資金繰りの悪化が経営に直結してしまう
中小企業は資金繰りが経営の生命線とも言えます。資金繰りの悪化は経営に直接的な影響を及ぼし、取引先への支払い遅延や従業員への給与未払いなどの問題を引き起こす可能性があります。
また、資金繰りがうまくいかないと、企業の信用にも悪い影響を及ぼし、事業の継続が困難になることもあるでしょう。そのため、常にお金の流れを把握し、適切な資金管理を行うことが重要です。
税務申告や法令遵守への理解が不足しやすい
中小企業では税務申告や法令遵守に関する知識が不足しがちです。理由として、複雑な税制や規制が多く、会計や経理の専門的な知識が必要となるためです。
特に、中小企業の経営者は、経営に追われてこれらの知識を十分に持つことが難しく、結果として間違った申告や法令違反が発生することがあります。
このようなリスクを避けるためには、経理代行会社や経理コンサルタントなど専門家のアドバイスを受けたり、定期的にセミナーに参加するなどして、最新の情報を常に把握することが求められます。
なお、経理代行会社に外注するのであれば、ビズネコがおすすめです。記帳代行から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。
中小企業の経理業務を効率よく進めるポイント
中小企業の経理業務を効率よく進めるには、以下のようなポイントを意識することが大切です。
- 会計ソフトやクラウドシステムを導入する
- 業務のマニュアル化を進める
- 経理代行サービスを活用する
ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
会計ソフトやクラウドシステムを導入する
会計ソフトやクラウドシステムの導入は、中小企業の経理業務を大幅に効率化します。これらのシステムは取引の記録から帳簿の作成、税務申告書の作成までを自動化し、手作業のミスを減少させることができます。
また、クラウドベースのツールはデータの共有やリアルタイムでのアクセスが可能で、リモートでの業務もスムーズに行えます。結果として、経理業務がまとめられ、時間とリソースの削減につながるでしょう。
なお、会計ソフトの乗り換えのタイミングについてはこちらの記事も参考にしてください。
加えて、経費精算システムの選び方については、こちらも記事もおすすめです。
業務のマニュアル化を進める
業務のマニュアル化は、中小企業が経理業務を効率的に進めるための重要なステップです。業務手順を見える化することで、業務の標準化が進み、誰が担当しても一定の品質が保たれます。
また、マニュアルがあれば、新しいスタッフへの教育もスムーズに行え、業務の引き継ぎも簡単になります。その結果、業務におけるミスを減らし、業務の一貫性と効率を高めることが可能になるでしょう。
経理代行サービスを活用する
経理代行サービスの活用は、中小企業にとって経理業務を効率よく進めるポイントです。専門の業者に業務を委託することで、社内のリソースを本業に集中させることができます。
また、経理の専門家が正確かつ迅速に業務を処理してくれるため、人的ミスのリスクも減少し、最新の法令を遵守した処理にもつながります。加えて、コスト面でも柔軟に対応できるため、企業の経済状況に応じた最適なサービスを選ぶことが可能です。
なお、経理代行サービスについて詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
中小企業の経理とは、企業における日々の資金の流れを管理し、財務の健全性を保つために重要な役割を担う業務です。中小企業では大企業とは異なり、経理部門の規模が小さく、経理担当者が他の業務も兼任しているケースが多いため、小人数やひとりで業務をこなさなければなりません。
裁量権のある幅広い業務を任せられる点は経理担当者としてのスキルアップにつながりますが、不正やミスが起きやすく、資金繰りの悪化が経営に直結してしまうことも注意しなければなりません。
そのため、中小企業の経理業務をスムーズに行うためには、経理代行会社を活用することもひとつの手です。
なお、経理代行会社に外注するのであれば、ビズネコがおすすめです。記帳代行から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。
中小企業の経理に関するよくあるご質問
中小企業の経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、中小企業の経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
中小企業の経理は何をしますか?
中小企業の経理業務は、取引の記録から始まり、帳簿の作成、給与計算、税務申告まで幅広く担当します。経理業務は、企業の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断につながる重要な役割を担います。そのため、経理担当者は、日々の取引データを整理し、正確な帳簿を行うことで、会社の経営基盤を支えています。
中小企業の経理は何人ぐらいですか?
従業員が30人以下の中小企業では、一般的に経理の担当者は1人の場合が多いです。ただし、会社の規模や業務内容によって大きく異なります。そのため、30人以上なら2人が最適というわけではありません。また、月末や決算期などの繁忙期のみ忙しいのであれば、経理代行への依頼や派遣社員を雇うことも検討しましょう。
経理のつらいことは何ですか?
経理の仕事でつらいことは、書類やデータの膨大な管理、人的ミスのリスクが常に伴うことです。特に中小企業では、ひとりで経理業務を担当する場合も多く、ダブルチェックが行えない状況もあるでしょう。また、業務が繁忙期に差しかかると、時間的なプレッシャーや業務量の増加により、ストレスが高まることがあります。