企業の基盤を支える経理部門では、日々、様々な業務を行っています。しかし、経理担当者の方のなかには、業務効率化やスキルアップ、人間関係など、様々な課題を抱えている方も少なくないでしょう。
本記事では、経理担当者が直面する12の具体的な悩みを紹介して、それぞれの課題に対する解決策をまとめました。月末や期末の業務集中から手作業による事務処理の煩雑さ、システムの使いづらさまで、さまざまな悩みがあります。ぜひ、業務改善に役立ててください。
目次
業務効率化に関する経理担当者の悩み4選
業務効率化において経理担当者の方は多く悩まれています。具体的には以下のような課題があるでしょう。
- 月末や年末に業務量が多い
- 手作業による事務作業が面倒
- 社内のシステムが使いづらい
- 入力ミスの修正が大変
ここでは、それぞれの悩みについて紹介していきます。
月末や年末に業務量が多い
経理担当者にとって、月末や年末は特に負担の大きい時期です。月次や年次の締め処理、帳簿の整理、決算準備などの業務が一気に集中し、通常業務に加えて膨大なタスクを処理しなければなりません。
そのため、長時間の残業や休日出勤が必要になることも多く、プライベートの時間が圧迫されることが課題です。また、締め切りが厳格なため、緊張感も高まり、ストレスの原因となります。
さらに、年末には確定申告などの対外的な提出書類の準備も重なり、膨大なデータを迅速かつ正確に処理する必要があります。この時期に適切な対策を講じないと、担当者の精神的な負担や肉体的な負担が増すだけでなく、ミスも発生しやすくなるため、業務効率化やシステム導入などの改善策を検討することが重要です。
なお、企業の決算期における業務を代行する決算代行というサービスもあります。決算代行サービスについては、以下の記事も参考にしてください。
手作業による事務作業が面倒
経理業務には、多くの手作業が伴います。請求書や領収書の確認、伝票の仕分け、データ入力といった反復的な作業が多く、これが業務全体の負担を増やしています。
手作業による処理は非常に時間がかかり、ミスが起きやすい点も問題です。また、これらの作業は業務の中でも単調な部分が多いため、担当者の集中力を削ぎ、疲労の原因にもなりがちです。
手作業を減らすためには、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やOCR(光学文字認識)などの自動化ツールの導入が効果的ですが、コストや社内の抵抗などで導入が進まないケースもあります。
その結果、担当者は効率的に働けず、本来の分析業務や付加価値の高い業務に時間を割けないという課題に直面しています。なお、記帳などの手作業を代行サービスに依頼することもおすすめです。記帳代行サービスについては、以下の記事も参考にしてください。
社内のシステムが使いづらい
経理担当者にとって、社内のシステムが使いづらいことは日々の業務に大きな影響を与えます。例えば、操作が複雑で直感的に使えないシステムや、レスポンスが遅いシステムは業務効率を著しく低下させる原因となります。
また、情報の一元管理ができていないため、複数のシステムやツールを横断して作業しなければならず、データの重複や整合性の確認に手間がかかることも多いです。さらに、システムの操作に慣れるための教育コストや、日々のメンテナンスにも多くのリソースを割く必要があります。
このような状況では、担当者がシステムの操作に時間を取られ、本来の業務が後回しになることが多く、ストレスも溜まりやすくなります。使いやすいシステムの導入や改善を進めることで、経理部門全体の生産性が向上するでしょう。
なお、経費精算システムの選び方については以下の記事も参考にしてください。
入力ミスの修正が大変
経理の業務では、入力ミスが発生した際の修正作業が非常に煩雑で時間を取られることも課題です。特に、データの一部にミスがあると、関連する他のデータとの整合性が崩れ、修正作業に手間取る原因になります。
また、数値やコードの入力ミスは、報告書や決算書の精度にも影響を及ぼし、後々の確認や再チェックに多くの時間を費やさなければならなくなります。
こうしたミスを防ぐためには、入力時に自動チェック機能を備えたシステムや、ダブルチェックの業務フローを取り入れることが効果的ですが、そのためのコストやリソースが課題になることも少なくありません。
結果として、単純なミスが原因で業務全体の効率が低下し、担当者にとっても大きなストレスの要因となってしまいます。
コミュニケーションに関する経理担当者の悩み4選
経理担当者の方にとってコミュニケーションも悩みの種です。具体的には以下のような課題があります。
- 他部署とフォーマットが揃っていない
- 経営層への報告が大変
- 他部署からルールへの不満を言われる
- 社外とのコミュニケーションがしんどい
他部署とフォーマットが揃っていない
経理業務において、他部署との間で使用するフォーマットが揃っていないことは日々のコミュニケーションに大きな負担をかけます。各部署が異なるフォーマットを使用すると、経理担当者はその都度情報を確認し、統一フォーマットに変換する作業が必要になります。
例えば、売上データや経費の申請書が部署ごとに異なる形式で提出されると、集計や報告にかかる手間が増え、ミスが発生するリスクも高まります。また、データの不備や不整合を見つけた場合には各部署に確認する手間が発生し、時間もかかるため、作業効率が著しく低下する要因となります。
このような状況では、フォーマットの統一を図るために社内での調整が大切ですが、各部署ごとの業務特性もあるため一筋縄ではいかないことが多く、コミュニケーションの悩みとして長く残りがちな問題です。
経営層への報告が大変
経営層への報告も、経理担当者にとって悩みの種のひとつです。特に、経営層が求めるデータや指標が詳細であったり、異なる視点からの資料を求められたりすると、データの収集や分析、わかりやすくまとめるための工夫が必要になります。
また、経営層が指摘をする際には、改善案や更なる分析の要請が追加されることも多く、要望に応じるための追加作業が発生します。加えて、経営層は判断のために迅速で正確な情報を必要とするため、報告が遅れることも許されません。
時間が限られる中で求められるクオリティを維持するプレッシャーは、経理担当者にとって大きな負担となり、他の業務との兼ね合いにも悩む要因となります。そのため、報告業務の効率化が進めば、経営層との円滑なコミュニケーションも促進されるでしょう。
他部署からルールへの不満を言われる
経理担当者は、社内ルールに基づいて会計処理や予算管理を行う役割を担っています。しかし、そのルールが他部署にとって柔軟性を欠くと感じられることも多く、不満が寄せられることがあります。
特に、予算の使用制限や経費精算に関する厳格な基準は、他部署の業務の進行に制約を与えることもあるため、ルールの見直しや緩和を求める声が上がりがちです。
また、他部署の業務内容や特殊なケースに対応するために例外的な処理が必要になることもあります。しかし、経理側は公平性やルール遵守の観点から慎重な対応を求められ、フレキシブルな対応が難しいのも実情です。
このような状況では、他部署との間に摩擦が生じ、調整に時間がかかるなどの問題が発生しやすく、経理担当者はバランスを取ることに悩むことが多くなります。また、経理のDX化をすすめていくことで解決できることもあります。経理DXについては、以下の記事も参考にしてください。
社外とのコミュニケーションがしんどい
経理担当者にとって、社外の関係者とのコミュニケーションも大きな負担となることが多いです。特に、取引先や税理士、監査法人などとやり取りをする際には、専門的な会計知識や法令への理解が求められ、ミスが許されないため慎重に対応しなければなりません。
また、やり取りする相手が複数にわたると、情報の伝達やスケジュールの調整が複雑化し、さらなる負担が生じます。さらに、取引先からの支払い条件の変更要請や、監査法人からの追加資料の提出依頼など、急な対応が求められるケースも多く、他業務との両立が難しいこともあります。
こうした社外とのやり取りは、業務全体の進行に影響を及ぼすため、日々の負担が積み重なる要因となります。そのため、効率的かつ正確なコミュニケーション手段の確立が求められます。
スキルアップに関する経理担当者の悩み4選
経理担当者はスキルアップにも悩みを抱えている場合が多くあります。具体的には、以下のような点が課題としてあげられるでしょう。
- 会計の基準が変わるたびに学習の必要がある
- ITスキルを求めらえることがある
- 財務や会計の専門知識を学ぶ時間がない
- 経理以外のキャリアプランが思い浮かばない
会計の基準が変わるたびに学習の必要がある
経理担当者にとって、会計基準の変更は常に学習を伴うため、大きな悩みのひとつです。会計基準や税法は、社会や経済の変化に合わせて定期的に改正されるため、担当者はその度に新たな知識を習得し、実務に反映しなければなりません。
特に、大きな改正が行われた場合、従来の業務フローや会計処理も変更する必要があり、実務に影響を与えることが少なくありません。また、新しい基準に沿った処理が求められる一方で、その背景や詳細を深く理解していないと、取引の処理に迷うこともあります。
そのため、日々の業務に加えて自己研磨や学習の時間を確保することが求められ、業務負荷が増える原因にもなりがちです。企業側としては、こうした学習を効率化し、実務に活かすためには継続的なスキルアップの場を提供することが重要です。
ITスキルを求めらえることがある
近年、経理業務においてもITスキルの重要性が増しています。多くの企業が業務の効率化を目的にシステムの導入やデジタルツールの活用を進めているなかで、経理担当者には、ExcelやRPAだけではなく、AIを活用したITツールの操作スキルやデータ分析の基礎知識が求められることが一般的になっています。
しかし、経理業務の専門スキルとは異なる分野の知識を習得することに対して、苦手意識を持つ担当者も少なくありません。また、ITスキルの向上には実践的なトレーニングや継続的な学習が必要であり、忙しい業務の中でスキルアップのための時間を確保するのが難しいという課題もあります。
それでも、ITスキルを身に付けることで業務効率化やミスの防止が可能になるため、長期的なキャリア形成には避けて通れないスキルです。
なお、経理におけるAIの活用については、こちらの記事も参考にしてください。
財務や会計の専門知識を学ぶ時間がない
経理担当者は日々の業務に追われ、財務や会計の専門知識を深めるための時間を確保することが難しいと感じることも多いです。特に、決算期や月末の業務が多忙な時期には、現場での業務処理が優先されるため、自己学習やスキルアップに時間を割く余裕がなくなります。
しかし、専門知識の向上は、日々の業務の質を高めるだけでなく、分析力や提案力の向上にも直結するため、経理担当者にとって重要なスキルです。
また、知識を深めるために講習やセミナー、資格試験などに取り組みたいという希望はあっても、まとまった学習時間を確保できない現実に悩む担当者は多くいます。自己投資が必要になることもあり、コストや時間の問題もスキルアップへの障壁となっています。こうした背景から、企業側には効率的な学習の機会を提供する必要性が求められています。
なお、経理・会計・財務の違いについては、こちらの記事も参考にしてください。
経理以外のキャリアプランが思い浮かばない
経理担当者は専門性が高い職種であるため、自身のキャリアを進める中で他の職種にどのようにスキルを転用できるのかが見えにくく、経理以外のキャリアプランが思い浮かばないことが悩みの種となっています。
多くの経理担当者は、経理や会計の専門知識を活かしたキャリアに縛られがちであり、異業種への転職や異動に関して不安を感じることが多いです。また、経理の知識は直接的な売上アップにつながりにくいこともあり、自身のキャリアの可能性が限定的であると感じてしまうケースも少なくありません。
そのため、経理の専門性に加えて、財務分析や経営企画など幅広い視点やスキルを身につけ、キャリアの選択肢を広げるための機会が求められています。多様なキャリアパスを検討することで、将来的な選択肢も広がり、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
キャリアパスが描けずに退職をしてしまうこともあります。経理の退職理由については、以下の記事も参考にしてください。
経理担当者の悩みを解決する方法
経理担当者にはさまざまな悩みがありますが、企業側として対策できる点として以下のような案があります。
- 研修や学習の機会を与える
- ペーパーレス化を取り入れる
- 経理代行会社へ依頼する
それぞれの解決策を検討して、自社にあった改善を行いましょう。
研修や学習の機会を与える
経理担当者のスキルアップと業務効率化を支援するためには、研修や学習の機会を積極的に提供することが効果的です。特に、会計基準や税法の改正に合わせた研修や、ITスキル向上のためのセミナーなど、業務に直結する内容を取り入れることで、担当者が安心して業務に取り組むことができます。その結果、企業全体における生産性の向上にもつながるでしょう。
また、研修を通じて他部署との連携方法や、データ分析、プレゼンスキルなど多様な分野の知識も提供すれば、業務の幅が広がり、将来的なキャリアパスの視野も広げることが可能です。
加えて、社内で学習のための時間を確保する制度や、外部セミナーへの参加をサポートするなどの施策もよいでしょう。その結果、経理担当者は業務に対するモチベーションを高め、より質の高い業務が期待できるようになります。
ペーパーレス化を取り入れる
経理業務にペーパーレス化を取り入れることは、担当者の作業効率向上に大きく貢献します。従来の紙ベースでの帳簿や伝票処理は、確認や整理に手間がかかり、ミスが発生しやすい点が課題でした。
電子化を進めることで、データの検索や管理がスムーズになり、情報の共有もスピーディに行えるため、業務時間の短縮やエラーの削減が実現されます。さらに、ペーパーレス化によって紙の保管スペースや印刷コストも削減できるため、企業全体のコスト削減にもつながります。
また、デジタルツールを活用することで、いつでもどこでもデータにアクセスできるようになるため、在宅勤務やリモートでの業務にも柔軟に対応可能です。その結果、経理担当者が余計な作業に時間を割かず、コア業務に集中できる環境が整います。
なお、経理のペーパーレス化については、以下の記事も参考にしてください。
経理代行会社へ依頼する
経理業務の一部を経理代行会社に依頼することは、担当者の負担を軽減し、業務の効率化を図る方法として有効です。特に、日々の仕訳入力や経費精算といったルーティン業務を代行会社に委託することで、経理担当者は重要な分析や戦略的な業務に集中できるようになります。
また、専門の代行会社に依頼することで、法令遵守の観点からも安心感が得られ、最新の会計基準に基づいた業務が提供されるため、ミスや法令違反のリスクが軽減されます。さらに、経理業務のピーク時期にも安定した対応が可能となり、残業や負担が減少するため、働き方改革の一環としても有効な施策といえるでしょう。
経理代行会社のサービスを上手に活用することで、経理部門全体の生産性向上と人材の有効活用が期待できます。なお、経理業務をフリーランスに依頼することもできますが、さまざまなリスクが伴います。フリーランスに依頼するリスクや課題については、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
経理担当者にとって、業務の効率化やコミュニケーション、スキルアップなどさまざまな悩みがあります。企業としては、これらの課題を放っておくと、経理担当者の離職から、業務の停滞やコストの増加にもつながってしまいます。そのため、経理担当者に学習の機会を与えてモチベーションを高め、ペーパーレス化による業務効率化を進めることがよいでしょう。
なお、経理担当者の悩みを解決するために、経理代行会社へ依頼することもひとつの手です。
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経理担当者の悩みに関するのよくあるご質問
経理担当者の悩みについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、経理担当者の悩みに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
経理のつらいことは何ですか?
経理では、期末や決算時期に業務が集中し、長時間の残業が増えることがつらい点です。また、ミスが許されない責任感や、法令改正に応じた学習が求められる点も負担となりやすく、ストレスの要因になります。日々のルーティン業務に加え、変化への柔軟な対応力も求められるため、体力と精神的なタフさが必要です。
経理の仕事に向いている人はどんな人ですか?
経理に向いているのは、細かい作業が得意で正確さを重視する人です。数字に強く、責任感があり、ルールに基づいてコツコツと仕事を進められる人が適しています。忍耐力があり、業務の効率化や改善にも積極的な方も理想的です。対人スキルも大切で、他部署や取引先との円滑なコミュニケーションも強みとなります。
経理の人材不足はなぜ起きていますか?
経理の人材不足は、業務の複雑化や専門知識の必要性など、求められるスキルが幅広いためです。さらに、責任が重く、業務負担が大きい一方で、働きやすさの改善が進まない職場も多いため、応募が減少する傾向にあります。税務や会計基準の知識以外にも、ITスキルも欠かせないため、人材の確保が難しくなっています。