経理業務は多くの企業にとって、重要でありながらも煩雑で手間のかかる作業が多い分野です。日々の処理で発生する人的ミスやコストの増加、残業時間の増加など、経理担当者が抱える課題はさまざまです。そのため、これらの問題に対応するためには、経理の業務改善が必要です。
本記事では、経理業務における一般的な課題を紹介し、それに対する具体的な改善方法や手順を解説します。ぜひ、この記事を読んで経理の業務改善を行い、負担軽減を実現するための方法を検討しましょう。
目次
経理において業務改善が必要な理由
経理において業務改善が必要な理由として、以下のような点があげられます。
- 人的ミスの防止
- コストの削減
- 経理担当者の負担軽減
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説していきます。ぜひ、自社の経理における業務改善の参考にしてください。
人的ミスの防止
経理業務では、人的ミスが大きな問題になることが少なくありません。日々膨大な金額の取引を記録し、処理する中で、入力ミスや計算ミス、確認不足などが発生しやすいのです。経理業務における人的なミスは、最終的に財務報告に影響を及ぼし、企業の信用を損ねることにつながってしまいます。
そのため、業務改善を行うことで、人的ミスを減らして、経理業務を滞りなく進めることが可能です。たとえば、業務プロセスを標準化し、ITツールを活用することで自動化が進み、手作業によるミスが減少します。こうした改善により、経理部門の信頼性を高めることができ、企業の経営における健全性や透明性にもつながります。
コストの削減
経理業務において業務改善を行う理由として、コストの削減もあげられます。経理には手作業が多く、複雑な業務が積み重なる場合、無駄な時間と労力がかかってしまいます。時間のかかる作業を見直し、業務改善を行うことで、不要な人件費や作業時間を削減できます。
また、業務の自動化を進めることで、人的なエラーや遅延が減り、再処理のコストも抑えることにつながるでしょう。結果として、コストの無駄が減り、企業の利益を最大化することが可能になります。また、経理部門が効率的に機能することで、全体的なコスト削減が実現し、企業の競争力も向上します。
経理担当者の負担軽減
経理担当者の負担軽減も、業務改善が検討される理由になります。経理担当者にとって、日々の業務は負担が大きいものです。特に、月末や年度末などの忙しい時期には、膨大な処理を少ない人数でこなさなければならず、精神的にも肉体的にも大きなストレスとなります。
経理における業務改善を行うことで、担当者の負担を軽減できます。例えば、業務プロセスの見直しや、ITシステムを導入して一部の業務を自動化することで、担当者の作業負担を減らすことができます。これにより、経理担当者はより効率的に仕事を進められ、余裕を持って他の重要な業務に取り組むことができるようになります。
経理業務でよくある課題
経理業務でよくある課題として、以下のような点があります。
- 業務が集中して属人化してしまう
- 作業量の多さから残業時間が増えてしまう
- プレッシャーからミスが増えてしまう
- 紙でのやりとりで管理が煩雑になってしまう
- 他部署のやりとりに時間がとられてしまう
ここでは、それぞれの課題がどのようなリスクにつながるのか具体的に解説していきます。
業務が集中して属人化してしまう
経理業務は、しばしば特定の担当者に業務が集中し、属人化することがあります。特に、業務の進め方や知識が個々の担当者に依存する場合、他の担当者がその業務を引き継ぐことが難しくなり、チーム全体の効率が低下します。
また、担当者が長期的に休暇を取ると、業務が停滞したり、急遽対応しなければならない事態が発生することもあります。このような問題を防ぐためには、業務の標準化やマニュアル化が必要です。具体的には、手順書やシステム化された業務フローを導入し、担当者が変わっても業務が滞ることなく円滑に進行できる体制を整えることが重要です。
また、役割分担を明確にすることで、業務の偏りや負担を減らし、全体のバランスを取ることができます。なお、経理の属人化についてはこちらの記事も参考にしてください。
作業量の多さから残業時間が増えてしまう
経理部門では、月末や年度末に多くの業務が集中するため、作業量が急増します。この時期には、取引の確認や伝票処理、決算作業などが重なり、通常業務だけではなく、突発的な業務も発生します。
これにより、残業時間が増えてしまい、経理担当者は過重な負担を強いられます。特に、手作業が多い場合、業務が滞る原因となり、さらに残業が必要になります。業務の効率化や自動化を進めることで、作業負担を軽減し、残業時間を減らすことが可能です。
自動化ツールを導入することで、ルーティンワークを削減し、作業効率が向上します。また、業務の優先順位をしっかりとつけることで、重要度の高い業務を先に処理し、余裕を持った時間管理が実現できます。
プレッシャーからミスが増えてしまう
経理業務は、正確性が求められるため、ミスを避けるために高いプレッシャーがかかります。特に、期日が迫る決算や支払い業務では、細心の注意を払わなければならず、そのプレッシャーから集中力が欠け、ミスが増えることがあります。
業務が多忙であると、急いで処理しようとするあまり、確認をおろそかにしてしまうことが原因となります。このような状況を改善するためには、業務の優先順位を明確にし、適切な人員配置やツールの導入を行うことが必要です。
また、業務の分担を見直すことで、各担当者が過度な負担を感じずに働けるようになるでしょう。
紙でのやりとりで管理が煩雑になってしまう
経理部門では、未だに紙での書類や伝票が多く使用されている場合があります。紙でのやり取りは、管理が煩雑になり、紛失や管理ミスの原因となることがよくあります。
また、書類を物理的に保管するスペースも必要であり、必要な時に迅速に検索することが難しくなることもあります。さらに、複数の部門間で紙ベースのやり取りが続くことで、業務の進行に遅れが生じることがあります。
このような管理の手間を減らすためには、デジタル化を進め、電子化されたデータを一元管理することが重要です。デジタル化により情報の検索や共有がスピーディになり、紙の管理にかかるコストや労力を大幅に削減できます。
他部署のやりとりに時間がとられてしまう
経理業務は、他部署との連携が欠かせません。しかし、他部署とのやり取りが多すぎると、時間がかかり、業務が滞る原因となります。
例えば、経理部門は営業部門や調達部門からのデータを受け取り、確認したり、修正を依頼したりすることがあります。業務がスムーズに行かないと、経理業務全体が遅れてしまいます。
また、部署間のコミュニケーション不足や手続きの非効率性が原因で、時間が無駄に消費されることがあります。業務を円滑に進めるためには、各部署との情報共有の仕組みを見直し、定期的なミーティングやITツールを活用することで、やり取りの効率化を図ることが求められます。
経理業務を改善する具体的な解決策
経理業務を改善する具体的な解決策として、以下のような点があげられます。
- 書類のペーパーレス化を取り入れる
- 業務マニュアルを作成する
- 全社一丸となって意識改革をする
- 経理代行やアウトソーシングを活用する
ここでは、それぞれの解決方法について詳しく紹介します。
書類のペーパーレス化を取り入れる
経理業務の改善を進めるためには、書類のペーパーレス化がおすすめです。多くの企業では、依然として紙の伝票や請求書が使用されており、書類の管理や保管に多くの時間とスペースが費やされています。
ペーパーレス化することで、検索や共有がスピーディになり、保管場所を必要としません。なお、電子化されたデータは、クラウドシステムを通じてリアルタイムでアクセスできるため、複数の担当者が同時に作業を進めやすくなります。
さらに、ペーパーレス化によって、書類の紛失や誤配布のリスクが減少し、正確な情報管理が実現します。これにより、業務の透明性も向上し、決算作業などの際にも必要な書類をすぐに参照できるため、作業効率が改善します。なお、ペーパーレス化については、こちらの記事も参考にしてください。
業務マニュアルを作成する
経理業務において、業務マニュアルを作成することは、標準化と効率化を進めるためにおすすめの解決策です。特に、業務の内容が複雑である場合や担当者が頻繁に交代する場合、マニュアルがなければ業務の引き継ぎがスムーズに行えず、ミスや遅延が生じる原因となります。
業務マニュアルを作成することで、全ての業務が明確な手順に基づいて進められ、誰でも同じクオリティで業務を実行できるようになります。また、マニュアルは新規担当者の教育にも役立ち、業務の習熟度を早めることができます。
そして、業務改善や効率化のためにマニュアルを定期的に見直すことも重要です。業務フローやツールの変更点を反映させることで、常に最適な方法で業務を進めることが可能となるでしょう。マニュアル化については、こちらも参考にしてください。
全社一丸となって意識改革をする
経理業務の改善には、経理部門だけでなく、全社一丸となっての意識改革が欠かせません。経理部門の業務改善は、他の部門との連携や情報共有がスムーズに行われることによって初めて実現します。
例えば、営業部門が経理部門に必要なデータを期限内に提出し、調達部門が正確な請求書を送付することなどが、経理業務の効率化につながります。定期的に部門間のコミュニケーションを促進し、全社的な業務改善の意識を浸透させることで、経理業務の効率が向上します。また、経営層が業務改善の重要性を強調し、必要なリソースや支援を提供することも大切です。
経理代行やアウトソーシングを活用する
経理業務の負担を軽減し、効率化を図るためには、経理代行やアウトソーシングの活用もおすすめです。経理業務は専門的な知識と高い正確性を求められるため、内製化だけでは対応が難しい場合もあります。
外部の専門家に業務を委託することで、経理部門は本来やるべきコア業務に集中でき、全体の業務負担を減らすことができます。例えば、会計処理や税務申告、給与計算などをアウトソーシングすることで、精度の高い業務が期待でき、リソースの無駄を減らすことができます。
また、繁忙期や業務の繁忙を見越してアウトソーシングを活用することで、時期に応じた柔軟な対応が可能となり、業務の効率が向上します。経理代行については、こちらの記事でも触れています。
経理の業務を改善する手順
経理の業務を改善するには、以下の手順で進めるとよいでしょう。
- 手順1:抱えている業務を洗い出す
- 手順2:ECRS(イクルス)の4原則にあてはめる
- 手順3:具体的な解決策を実行する
ここでは、それぞれの業務改善の手順について詳しく解説していきます。
手順1:抱えている業務を洗い出す
経理業務を改善するための最初のステップは、現在抱えている業務の内容を洗い出すことです。経理部門では、日々の取引処理から決算業務、税務対応までさまざまな作業が行われています。そのため、経理業務がどれだけの時間とリソースを必要としているかを把握することが重要です。業務内容を詳細に整理し、手間がかかっている作業や重複している作業を特定することで、改善すべきポイントが見えてきます。
また、業務の優先順位をつけることで、どの部分から改善を始めるべきかが明確になります。なお、洗い出し作業は、スタッフ全員が関わることで業務の理解が深まり、効果的な改善策を見つけやすくなります。
手順2:ECRS(イクルス)の4原則にあてはめる
業務改善の次のステップは、洗い出した業務に対してECRS(イクルス)の4原則を適用することです。ECRS(イクルス)の4原則とは、「Eliminate(排除)」、「Combine(統合)」、「Rearrange(再配置)」、「Simplify(簡素化)」の頭文字を取ったものです。
まず、無駄な作業や重複している部分を排除し、効率的に進められるようにします。次に、関連する業務を統合して、業務量を減らすことができるかを検討します。そして、再配置では、業務の流れを見直し、より効率的に作業が進むように配置換えを行います。最後に、簡素化では、複雑な手順を簡略化することで、作業の効率化を図ります。
ECRSの4原則を基に業務を再構築することで、無駄を省き、効率的な業務運営が可能になります。
手順3:具体的な解決策を実行する
業務改善の方向性が決まった後は、具体的な解決策を実行に移していきましょう。まずは、必要なリソースを整え、改善策を実施するための計画を立てます。例えば、業務の自動化ツールを導入したり、業務のフローを見直して新しい手順を導入することが考えられます。
また、改善策を実行する際には、関係者とのコミュニケーションを密にして、現場の声を取り入れていくことも肝心です。
さらに、実行後は、改善効果を評価し、必要に応じて調整を加えていくことも求められます。改善策が効果を発揮するまでには時間がかかることもありますが、継続的に見直しと改善を行うことで、最終的に経理業務の改善につながるでしょう。
なお、経理の業務フローについてはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
経理業務の課題には、人的ミスやコストの増加、業務の集中、残業の増加などがあります。これらを解決するためには、業務の標準化や自動化、ペーパーレス化、業務マニュアルの作成が有効です。
また、経理業務の改善には、全社的な意識改革やアウトソーシングの活用も効果的です。負担軽減と効率化を進めることで、経理部門の健全化が図れます。なお、経理の業務改善は、経理代行会社へ相談することもひとつの手です。
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経理の業務改善に関するよくあるご質問
経理の業務改善についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、経理の業務改善に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
経理業務を効率化するにはどうすればいいですか?
経理業務の効率化には、業務の標準化と自動化が重要です。具体的には、ITツールや会計ソフトを導入して作業を自動化し、ルーティンワークとなる手作業を減らします。また、ペーパーレス化を進め、デジタル化されたデータの一元管理を行うことで、情報の検索や共有がスムーズになります。
業務改善の8原則とは何ですか?
業務改善の8原則とは、「廃止の原則・削減の原則・容易化の原則・標準化の原則・計画化の原則・分業分担の原則・同期化の原則・機械化の原則」を指します。まずは、「廃止」から検討して、「辞めてもよい業務」でなければ回数の削減などを順番に検討していきましょう。
改善提案に優先順位はありますか?
改善提案には優先順位をつけることが重要です。まず、業務に与える影響が大きいものや、早急に解決が求められる問題に取り組むべきです。次に、コスト削減や効率化が期待できる提案を優先します。そして、改善策の実行に必要なリソースや時間を考慮し、現実的な計画を立てることも重要です。