社員旅行の費用は、一定の条件を満たすことで福利厚生費として経費計上が認められますが、その判断基準は意外と細かく、誤った処理をすると税務上のリスクにつながる可能性があります。特に「全従業員が対象であるかどうか」は重要なポイントであり、一部の社員のみを対象とした旅行は原則として経費にできません。
また、旅行期間や参加率、会社負担額などにも具体的な要件が設けられています。本記事では、社員旅行を経費として処理するための条件や、認められないケースの具体例、勘定科目や注意点までを整理し、実務で迷いやすいポイントをわかりやすく解説します。
目次
社員旅行の費用は全従業員が対象なら経費計上できる
社員旅行の費用は全従業員が対象であれば、福利厚生費として経費計上が認められます。これは、特定の個人ではなく従業員全体の福利厚生を目的とした支出とみなされるためです。
例えば、正社員だけでなく契約社員やパートも含めて広く参加対象としている場合には、公平性が担保されていると判断されやすくなります。参加の有無にかかわらず全員に案内が行き渡っていることが重要であり、対象範囲が限定されていないかを確認する必要があります。形式的に全員対象とするだけでなく、実態としても福利厚生として機能しているかが判断のポイントとなります。
全従業員が対象でないなら経費計上できない
社員旅行の費用は全従業員が対象でない場合、原則として経費計上は認められません。これは、一部の従業員だけが利益を受ける支出は福利厚生費ではなく、給与や賞与と同様の性質を持つと判断されるためです。
例えば、営業成績が優秀なチームのみを対象にした旅行や、特定の部署に限定した企画は、公平性を欠くものとみなされます。このようなケースでは、参加者に対する経済的利益と捉えられ、課税対象となる可能性もあります。したがって、経費として処理するためには、対象者の範囲が限定されていないかを事前に確認することが重要です。
家族経営の企業でも全従業員が対象なら経費計上できる
家族経営の企業であっても、全従業員が対象であれば社員旅行の費用は経費計上が可能です。企業規模や経営形態にかかわらず、福利厚生としての要件を満たしているかどうかが判断基準となります。
例えば、家族が中心となって運営している会社であっても、従業員として雇用されている全員に参加機会が与えられていれば、特定の人物への利益供与とはみなされにくくなります。ただし、実態として家族のみが参加している場合には注意が必要であり、形式と実態の両面から公平性が求められます。制度として全従業員を対象にしていることが重要です。
同行する従業員の家族の参加費用は経費計上できない
従業員の家族が同行する場合、その参加費用は原則として経費計上できません。これは、家族は従業員ではなく、会社の福利厚生の対象外とされるためです。
例えば、社員旅行に配偶者や子どもが参加するケースでは、その分の宿泊費や交通費を会社が負担すると、従業員に対する給与として扱われる可能性があります。その結果、所得税の課税対象となることもあるため注意が必要です。家族分の費用は個人負担とし、会社負担分と明確に区分することが求められます。経費処理の適正性を保つためにも、費用の切り分けが重要です。
社員旅行で計上できる費用の目安
社員旅行で計上できる費用は、業務とは直接関係しないものの福利厚生の範囲内と認められる支出に限られ、一般的には一人当たりおおむね10万円程度が目安とされています。この範囲には、移動にかかる交通費や宿泊費、現地での食事代などが含まれます。
例えば、往復の新幹線代やホテル代、団体での夕食費などは通常の範囲内であれば問題なく経費として処理できます。ただし、あまりに高額な宿泊施設の利用や過度な接待を含む内容になると、福利厚生費としての妥当性が疑われる可能性があります。そのため、費用水準が社会通念に照らして適切かどうかを意識することが重要です。
福利厚生費は原則として非課税になる
福利厚生費は一定の条件を満たすことで、従業員にとって原則として課税対象とならない性質を持っています。これは、個人的な報酬ではなく、全体の労働環境の向上を目的とした支出と位置付けられるためです。
例えば、全従業員を対象にした社員旅行であり、参加の機会が公平に与えられている場合には、その費用は給与として扱われず課税されないケースが一般的です。ただし、特定の従業員のみが利益を受ける場合や、金銭の支給と選択できるような制度になっている場合には、給与として課税される可能性があります。非課税とするためには、形式だけでなく実態としての公平性が求められます。
社員旅行の費用を経費計上するための条件
社員旅行の費用を経費計上するための条件として、以下のような点には注意しましょう。
- 条件1:旅行の期間が4泊5日以内であること
- 条件2:旅行に参加した人数が全体の50%以上であること
- 条件3:会社の負担金額が少額であること
- 条件4:不参加者に旅費の代わりに金銭を支給しないこと
- 条件5:従業員以外の参加者の費用は会社が負担しないこと
ここでは、それぞれの条件について詳しく解説します。
条件1:旅行の期間が4泊5日以内であること
社員旅行の期間は原則として、4泊5日以内であることが経費計上の条件です。これは、長期間にわたる旅行は業務との関連性が薄く、私的な要素が強いと判断されやすいためです。
例えば、1泊2日や2泊3日程度の国内旅行であれば、福利厚生の一環として自然な範囲とみなされやすくなります。一方で、長期滞在や海外での長期間の旅行になると、観光目的が中心と見られる可能性が高まり、経費として認められにくくなります。形式的に日数を守るだけでなく、実態としても過度な日程になっていないかを確認することが重要です。
条件2:旅行に参加した人数が全体の50%以上であること
社員旅行は参加者が全体の50%以上であることが求められます。これは、福利厚生としての公平性を確保するための基準であり、一部の従業員だけが恩恵を受ける状況を防ぐ目的があります。
例えば、全従業員のうち過半数が参加している場合には、広く機会が提供されていると判断されやすくなります。反対に、参加率が著しく低い場合には、特定のメンバーだけの行事と見なされ、経費として認められない可能性があります。参加率の判断は形式だけでなく、実際の参加状況を踏まえて検討することが大切です。
条件3:会社の負担金額が少額であること
社員旅行における会社の負担金額は、社会通念上相当と認められる範囲の少額であることが必要です。これは、過度な費用負担が従業員への経済的利益とみなされ、給与として課税されるリスクを避けるためです。
例えば、一般的な宿泊施設を利用した旅行で、交通費や食事代を含めても常識的な金額に収まっている場合には、福利厚生費として認められやすくなります。一方で、高級ホテルの連泊や高額なオプションが含まれる場合には、妥当性が問われることがあります。費用水準が適切かどうかを客観的に判断する視点が求められます。
条件4:不参加者に旅費の代わりに金銭を支給しないこと
社員旅行に参加しない従業員に対して、旅費の代わりに金銭を支給しないことが重要です。これは、金銭支給が給与と同様の性質を持つと判断され、課税対象となる可能性があるためです。
例えば、旅行に参加できなかった従業員に対して現金を渡す制度を設けてしまうと、福利厚生ではなく個別の利益供与とみなされるおそれがあります。このような場合、参加者の旅行費用も含めて給与課税の対象となる可能性があります。公平性を保つためには、参加の機会を提供するにとどめ、金銭での補填は行わない運用が求められます。
条件5:従業員以外の参加者の費用は会社が負担しないこと
社員旅行では従業員以外の参加者の費用を会社が負担しないことが条件とされています。これは、福利厚生の対象があくまで従業員に限定されるためであり、対象外の人の費用を会社が負担すると、その分が従業員への利益供与とみなされる可能性があるためです。
例えば、配偶者や子どもが同行する場合でも、その交通費や宿泊費を会社が負担すると、給与として課税されるリスクが生じます。適正な経費処理を行うためには、従業員分とそれ以外の費用を明確に区分し、対象外の費用は個人負担とすることが必要です。
社員旅行の費用を経費計上できない場合の事例
社員旅行の費用を経費計上できない場合として、以下のような事例があります。
- 事例1:営業ノルマを達成したチームだけの旅行
- 事例2:役員のみで参加する旅行
- 事例3:取引先など外部の人が参加した旅行
- 事例4:私的な観光だけが目的の旅行
- 事例5:個人事業主の私的な家族旅行
- 事例6:不参加者が金銭の受け取りを選択できる旅行
ここでは、それぞれの事例について詳しく解説します。
事例1:営業ノルマを達成したチームだけの旅行
営業ノルマを達成したチームだけを対象とした旅行は、原則として経費計上できません。これは、特定の成果を上げた従業員への報酬的な性質が強く、福利厚生費ではなく給与として扱われる可能性があるためです。
例えば、売上目標を達成した部署だけに報奨旅行を提供する場合、その費用はインセンティブの一種と判断されやすくなります。このような支出は公平性を欠き、全従業員を対象とする福利厚生とは性質が異なります。経費処理を行う際には、対象者の範囲と支出の目的が福利厚生に該当するかどうかを慎重に見極める必要があります。
事例2:役員のみで参加する旅行
役員のみで参加する旅行は、社員旅行としての要件を満たさず、経費計上は認められません。これは、従業員全体を対象とした福利厚生ではなく、経営層に限定された支出とみなされるためです。
例えば、取締役や経営幹部だけで行う視察を兼ねた旅行であっても、実態が観光中心であれば私的な費用と判断される可能性があります。また、福利厚生費として処理するには対象の広がりが求められるため、役員のみの参加では条件を満たしません。費用の性質に応じて、適切な勘定科目や処理方法を選択することが重要です。
事例3:取引先など外部の人が参加した旅行
取引先など外部の人が参加する旅行は、社員旅行としての経費計上が難しくなります。これは、福利厚生の対象が従業員に限定されるためであり、外部の人が含まれることで性質が接待や交際に近づくためです。
例えば、得意先や協力会社の担当者を招いて旅行を実施した場合、その費用は交際費として扱われる可能性があります。このようなケースでは、参加者の区分を明確にし、それぞれの費用を適切に振り分ける必要があります。社員旅行として処理するためには、対象者が従業員に限定されていることが前提となります。
事例4:私的な観光だけが目的の旅行
私的な観光だけを目的とした旅行は、社員旅行として経費計上することはできません。これは、福利厚生としての合理性が認められず、単なる個人的な娯楽と判断されるためです。
例えば、業務や社内交流の要素がほとんどなく、観光やレジャーのみで構成された旅行は、会社負担であっても経費として否認される可能性があります。社員旅行として認められるためには、一定の社内行事としての性格や従業員間の親睦を深める目的が求められます。内容が私的な範囲に偏っていないかを確認することが重要です。
事例5:個人事業主の私的な家族旅行
個人事業主が家族と行う私的な旅行は、事業に関係する支出とは認められず、経費計上はできません。これは、社員旅行とは異なり、従業員全体を対象とした福利厚生の概念が適用されないためです。
例えば、事業主が家族と一緒に旅行をし、その費用を事業経費として処理しようとする場合、私的支出と判断される可能性が高くなります。事業に関連する出張であれば別ですが、観光目的の旅行では経費性が認められません。経費として認められるかどうかは、支出の目的と事業との関連性で判断されます。
事例6:不参加者が金銭の受け取りを選択できる旅行
不参加者が金銭の受け取りを選択できる旅行は、福利厚生費としての要件を満たさず、経費計上が難しくなります。これは、現金の支給が給与と同様の性質を持つと判断されるためです。
例えば、旅行に参加しない従業員に対して一定額の現金を支給する制度を設けた場合、その支給は給与課税の対象となる可能性があります。このような仕組みがあると、旅行費用自体も給与的な性質を帯びるとみなされることがあります。公平性を保つためには、参加の機会を提供するにとどめ、金銭での代替措置を設けないことが重要です。
社員旅行にかかる費用の勘定科目と仕訳例
社員旅行にかかる費用は、原則として福利厚生費として処理することが一般的です。これは、全従業員を対象とした社内行事として実施される場合、従業員の労働環境の向上を目的とした支出と位置付けられるためです。
例えば、会社が社員旅行の費用として300万円を銀行口座からの引き落としで支払った場合には、以下のように仕訳を行います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 3,000,000円 | 普通預金 | 3,000,000円 |
また、旅行の中に研修など業務性のある内容が含まれる場合には、費用を区分して処理する必要があります。例えば、総額300万円のうち50万円が研修費に該当する場合には、福利厚生費と研修費に分けて計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 2,500,000円 | 普通預金 | 2,500,000円 |
| 研修費 | 500,000円 | 現金 | 500,000円 |
このように、支出の内容に応じて適切な勘定科目へ振り分けることが、正確な会計処理につながります。
なお、よく使う勘定科目と仕訳例はこちらの記事でまとめて紹介しています。

社員旅行の費用を経費計上する際の注意点とポイント
社員旅行の費用を経費計上する際には、以下のような注意点とポイントを意識しましょう。
- 参加者リストや領収書を保管してする
- 現地での集合写真を撮っておく
- 就業規則に全社員が対象であることを明記する
ここでは、それぞれの注意点とポイントについて詳しく解説します。
参加者リストや領収書を保管してする
社員旅行の費用を適切に経費計上するためには、参加者リストや領収書を確実に保管しておくことが重要です。これは、税務調査の際に福利厚生としての実態を説明する根拠資料となるためです。
例えば、誰が参加したのかがわかる名簿や、交通費や宿泊費の支払いを証明する領収書が整理されていれば、全従業員を対象とした行事であることを客観的に示すことができます。反対に、証憑が不十分な場合には私的支出と疑われる可能性もあります。日常的に書類を整備し、支出内容と参加実態を一致させて管理することが求められます。
なお、領収書など証憑の管理については、こちらの記事でまとめています。

現地での集合写真を撮っておく
社員旅行では現地での集合写真を撮影しておくことが、経費計上の裏付けとしておすすめです。これは、実際に従業員が参加している事実を視覚的に証明する資料となるためです。
例えば、旅行先で全体集合の写真を残しておけば、参加人数や行事の実施状況を後から確認することができます。書類だけでは把握しきれない実態を補完する資料として、写真は一定の役割を果たします。特に参加率や対象範囲が問われる場合には、客観的な証拠として活用されることがあります。形式的な記録だけでなく、実態を示す資料をあわせて残しておくことが重要です。
就業規則に全社員が対象であることを明記する
社員旅行の費用を福利厚生費として認めてもらうためには、就業規則に全社員が対象である旨を明記しておくことがポイントです。これは、制度として公平性が確保されていることを示す根拠となるためです。
例えば、就業規則や社内規程において社員旅行の実施方針や対象範囲を明文化しておけば、特定の従業員のみを対象としたものではないことを説明しやすくなります。実態だけでなく制度面からも整備されていることが、経費性の判断に影響する場合があります。事前にルールを明確にしておくことで、後のトラブルや指摘を防ぐことにつながります。
まとめ
社員旅行の費用は、全従業員を対象とした福利厚生としての要件を満たしていれば、経費計上が認められます。ただし、対象範囲の公平性に加えて、旅行期間や参加率、会社負担額といった具体的な条件を満たす必要があり、いずれかを欠くと給与課税や経費否認のリスクが生じます。
また、一部の従業員のみを対象とした旅行や、外部の参加者を含むケースなどは、福利厚生費として扱えない点にも注意が必要です。さらに、適切な勘定科目での仕訳や、参加者リスト・領収書などの証憑管理を徹底することも重要なポイントとなります。制度と実態の両面から要件を満たす運用を行うことが、適正な経費処理につながります。
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社員旅行の経費処理に関するよくあるご質問
社員旅行の経費処理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、社員旅行の経費処理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
社員旅行の経費はいくらまで計上できますか?
社員旅行の経費は明確な上限額が法律で定められているわけではありませんが、一般的には一人当たりおおむね10万円程度が目安とされています。この範囲内であれば、社会通念上相当な福利厚生費と判断されやすくなります。ただし高額な宿泊施設や過度なサービスが含まれる場合には経費として認められない可能性があります。
社員旅行は経費で落とせますか?
社員旅行は一定の条件を満たしていれば、福利厚生費として経費で処理することが可能です。全従業員を対象としていることや、参加率が一定以上であること、旅行期間が適切であることなどが求められます。一方で、特定の従業員のみを対象とした旅行や、報酬的な性質を持つ場合には給与として扱われる可能性があります。
社員旅行の参加費は誰が払うのですか?
社員旅行の参加費は、会社が全額または一部を負担するケースが一般的です。福利厚生として実施される場合、会社が費用を負担することで従業員全体の待遇向上を目的とします。ただし、会社負担額が過度に高額になると給与課税の対象となる可能性があるため、一定の自己負担を求める場合もあります。