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会計帳簿とは?主要簿と補助簿の違いや種類と書き方のポイントを解説
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会計帳簿とは?主要簿と補助簿の違いや種類と書き方のポイントを解説

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会計帳簿は、企業が日々の取引を記録し、財務状況や経営の実態を把握するために欠かせない書類です。帳簿には、すべての取引を網羅する「主要簿」と、特定の内容を詳しく記録する「補助簿」があり、それぞれ役割が異なります。

 

本記事では、会計帳簿の基本的な意味や目的、主要簿と補助簿の違い、帳簿の種類、正しい書き方の手順、記帳時の注意点までを解説します。初めて帳簿を扱う経営者や経理担当者の方にもわかりやすく、実務に役立つ内容をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

 

会計帳簿とは?

会計帳簿は、企業が行った日々の取引を記録や管理するための帳面のことで、経理や会計の基盤となる存在です。例えば、売上や仕入、経費の支払いなど、すべての金銭の動きを帳簿に記録することで、企業活動の全体像を把握できるようになります。

 

会計帳簿における記録は、単に社内の管理にとどまらず、税務申告や法的な義務にも深く関わっています。帳簿の記載には決められたルールや様式があり、主要簿と補助簿といった種類に分かれているのも特徴です。

 

事業規模や業種によって必要な帳簿の内容や記帳方法は異なりますが、いずれにしても正確かつ継続的な記録が求められます。このように、会計帳簿は企業の透明性と信頼性を支える土台といえるでしょう。

会計帳簿をつける目的

会計帳簿をつける目的として、主に以下のような点があげられます。

 

  • 法令で義務づけられているため
  • 税務申告を正しく行うため
  • 財務状況や経営成績を把握するため

 

ここでは、それぞれの目的について詳しく解説していきます。

 

法律で義務づけられているため

 

会計帳簿の作成と保存は、法律によって義務づけられています。例えば、法人税法や所得税法、会社法などでは、帳簿の作成と一定期間の保存が定められており、違反した場合には罰則の対象となることもあります。

 

会計帳簿における法的義務は、企業が適切に経済活動を行っているかを第三者が確認できるようにするためのものです。税務調査が行われた際には、帳簿の提出が求められることが多く、不備があると追徴課税や指導を受けるケースもあります。

 

そのため、帳簿を整備することは、コンプライアンスの観点からも避けては通れません。規模の大小にかかわらず、すべての事業者に共通する基本的な責務といえるでしょう。

 

税務申告を正しく行うため

 

会計帳簿は、税務申告を正確に行うための根拠資料としての役割も担っています。例えば、売上や仕入、経費の記録が帳簿に正確に反映されていないと、所得や消費税の計算にも誤りが生じ、結果として申告内容に問題が発生するおそれがあります。

 

税務署は申告内容の妥当性を確認するために帳簿をチェックすることがあり、記録が不十分だと追徴課税や罰金などのリスクが高まります。帳簿を正しくつけることで、必要な税額を正確に算出し、税務上のトラブルを未然に防ぐことができます。

 

財務状況や経営成績を把握するため

 

会計帳簿は、企業の財務状況や経営成績を正確に把握するための重要な情報源となります。例えば、売上の推移や費用の内訳、資産と負債のバランスなど、帳簿に記録された情報をもとに、経営者は自社の経営状態を客観的に分析することができます。これにより、事業の改善点を見つけたり、新たな投資判断を下したりする際の材料として活用できるのです。

 

また、金融機関や投資家といった外部関係者に対して、企業の信頼性や安定性を示す資料として帳簿のデータが用いられることもあります。帳簿は単なる記録ではなく、経営判断を支える基礎データとして機能しているのです。

会計帳簿の保存期間

会計帳簿には保存期間が定められており、税法では、これらの帳簿や書類を7年間保存することが義務付けられています。しかし、会社法では10年間の保存が求められており、法人の場合は基本的に10年の保管を前提とした対応が必要です。

 

例えば、総勘定元帳や仕訳帳、現金出納帳などの帳簿類のほか、領収書や契約書、損益計算書といった関連書類も対象となります。欠損金の繰越控除などを適用する際にも、長期の保存が必要となるケースがあるため、保管期間に関する法令を正確に理解しておくことが重要です。

会計帳簿は「主要簿」と「補助簿」の2種類

会計帳簿には「主要簿」と「補助簿」の2種類があります。企業の取引全体を記録や管理をするうえで中核となるのが主要簿と呼ばれる帳簿です。一方で、補助簿は、主要簿では把握しきれない取引の詳細を補完するために用意される帳簿です。ここでは、主要簿と補助簿の違いについて、詳しく解説します。

 

主要簿とは?

 

帳簿には複数の種類がありますが、その中でも企業の取引全体を記録や管理をするうえで中核となるのが主要簿と呼ばれる帳簿です。例えば、仕訳帳や総勘定元帳がこれに該当し、すべての取引の流れや勘定科目ごとの動きを記録する役割を担います。

 

主要簿は、帳簿全体の土台となる存在であり、補助簿に記載された個別の内容を整理するための基準としても活用されます。正確な仕訳と転記が行われているかを検証する場面でも、主要簿が果たす役割は見逃せません。

 

仕訳帳

 

仕訳帳は、すべての取引を日付順に記録する帳簿であり、会計処理の出発点といえる存在です。例えば、ある日に商品の仕入れがあった場合には、その金額や相手先、勘定科目などを仕訳形式で記載します。

 

仕訳帳には、取引の内容を「借方」と「貸方」に分けて記入するルールがあり、これにより会計処理の正確性が保たれます。仕訳帳に記載された内容は、のちに総勘定元帳など他の帳簿に転記されるため、誤りがあるとすべてに影響が及ぶことになります。

 

なお、仕訳帳については、こちらの記事で解説しています。

 

仕訳帳とは?書き方の流れとポイントを記入例とともに解説
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総勘定元帳

 

総勘定元帳とは、企業のすべての勘定科目ごとの取引内容を時系列で記録する帳簿です。例えば、「現金」「売上」「仕入」などの各科目について、仕訳帳から転記された金額や日付、取引の内容などが一覧で確認できるようになっています。

 

総勘定元帳は、財務諸表の作成に必要な残高を把握するうえで重要な資料であり、帳簿管理の中心的な役割を果たします。特定の取引に対してどのような会計処理が行われたのかを確認するためにも、総勘定元帳は必ず参照されます。日々の取引をもれなく記録し、全体の財務状況を明確にするための基礎となる帳簿です。

 

なお、総勘定元帳については、こちらの記事で解説しています。

 

総勘定元帳とは?書き方や仕訳帳との違いと保存の注意点を解説
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補助簿とは?

 

補助簿は、主要簿では把握しきれない取引の詳細を補完するために用意される帳簿です。例えば、現金や預金の出入り、取引先ごとの売掛金や買掛金の管理など、特定の取引項目に焦点を当てて記録します。

 

主要簿が全体の財務状況を示すのに対して、補助簿は個別の動きを明らかにする役割を持っており、両者を組み合わせて活用することで、より精度の高い帳簿管理が可能になります。補助簿は種類も多く、業務内容や経理体制によって記録方法も異なりますが、どれも日々の会計業務を支えるうえで重要です。

 

現金出納帳

 

現金出納帳は、現金の受け取りや支払いの履歴を詳細に記録する帳簿で、日々の資金の動きを確認するために欠かせません。例えば、商品販売による入金や交通費の支払いといった小口現金の動きが記録され、現金の残高が帳簿上と実際で一致しているかを管理するのに使われます。

 

現金出納帳を日々正確に記入していないと、現金の過不足や不明金が発生するリスクが高まり、経理業務全体の信頼性に影響を与えることがあります。特に現金を取り扱うことの多い事業では、現金出納帳を通じてこまめな確認を行うことが重要です。

 

預金出納帳

 

預金出納帳は、銀行口座に関する入出金の情報を記録する帳簿で、預金の動きを一元的に管理する役割を果たします。例えば、売上金の振込や仕入代金の引き落としといった取引内容を時系列に整理し、帳簿上で預金残高の確認を行うことができます。

 

現金と異なり、預金の管理には通帳だけでなく、帳簿による裏付けが求められる場面もあるため、正確な記録が不可欠です。また、振込先の記録や手数料の内訳など、実務的な確認作業にもこの帳簿が活用されます。

 

売掛金元帳

 

売掛金元帳は、取引先ごとの売上代金の未回収状況を記録する帳簿で、売上債権の動きを把握するために利用されます。例えば、特定の顧客に対する販売日、請求金額、入金状況などが時系列で記録され、未回収の金額や入金遅れをチェックする際の基本的な資料となります。

 

売掛金元帳を整備しておくことで、資金繰りの見通しや与信管理がしやすくなり、健全な取引関係の維持にも役立ちます。また、請求漏れや入金遅延を防止するためにも、正確な記帳が求められます。

 

なお、売掛金については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

 

売掛金とは?勘定科目と仕訳方法や回収できない場合の対処方法を紹介
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買掛金元帳

 

買掛金元帳は、仕入先ごとの未払金の状況を記録する帳簿で、支払債務の管理に役立ちます。例えば、ある取引先からの仕入日や請求金額、支払予定日や実際の支払日を記録することで、支払漏れや二重払いを防ぐためのチェックが行えます。

 

買掛金の管理は、企業の信用にも直結するため、支払いスケジュールの把握はとても重要です。買掛金元帳を整備することで、月末の支払予定額やキャッシュフローの予測が立てやすくなり、資金計画の正確性も高まります。取引先との信頼関係を維持するうえでも、期限通りの支払いを行うための管理体制が求められます。

 

なお、買掛金については、こちらの記事でもまとめています。

 

買掛金とは?売掛金や未払金との違いと仕訳方法を解説
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固定資産台帳

 

固定資産台帳は、企業が保有する建物や機械、車両、備品などの固定資産に関する情報を一覧で管理する帳簿です。例えば、資産の取得日、取得金額、耐用年数、減価償却累計額などが記録され、会計処理や税務申告において必要な情報を整理する役割を果たします。

 

固定資産は取得時だけでなく、毎年の減価償却や売却の際にも会計処理が必要となるため、その都度正確な台帳管理が欠かせません。資産の増減や評価額の変動を明確にしておくことで、財務諸表の信頼性も高まります。

会計帳簿の書き方と流れ

会計帳簿の書き方は、以下の流れで進みます。

 

  • step1:取引内容を整理して仕訳を行う
  • step2:仕訳帳や補助簿に記帳する
  • step3:仕訳帳から総勘定元帳へ転記する

 

ここでは、それぞれの手順について詳しく解説していきます。

 

step1:取引内容を整理して仕訳を行う

 

帳簿記入の最初のステップは、日々発生する取引の内容を正しく整理し、仕訳を行うことです。例えば、現金で商品を仕入れた場合には「仕入」と「現金」という勘定科目を使い、それぞれ借方・貸方に分けて金額を記録する必要があります。

 

仕訳はすべての帳簿処理の出発点であり、取引の性質を正確に見極める力が求められます。誤った処理をしてしまうと、後続の記帳や財務諸表にも影響を及ぼすため、丁寧な確認が欠かせません。領収書や請求書といった証憑をもとに取引を把握し、それを会計ルールに沿って仕訳することで、帳簿の信頼性と正確性が保たれるのです。

 

step2:仕訳帳や補助簿に記帳する

 

仕訳を行ったら、その内容を仕訳帳や補助簿に記録していく作業へと進みます。例えば、商品の売上が発生した場合には、金額や取引先、日付などを仕訳帳に記入し、同時に売掛金元帳といった補助簿にも反映させます。

 

帳簿の種類ごとに記入ルールや記載内容が異なるため、それぞれの役割を理解したうえで、正確に記帳することが求められます。この段階では、入力ミスや記入漏れを防ぐためにも、記帳内容と証憑との照合が重要になります。取引の履歴を確実に残すことが、経営判断や税務対応においても役立つ結果につながります。

 

step3:仕訳帳から総勘定元帳へ転記する

 

記帳が済んだ仕訳内容は、次に総勘定元帳へ転記する必要があります。例えば、仕訳帳に「売上100,000円」と記録されていれば、それを「売上勘定」として総勘定元帳に反映させることで、科目別の残高が整理されていきます。

 

転記の作業は、各勘定科目の動きを把握するために不可欠であり、これによって財務諸表の作成が可能になります。もし転記漏れや金額の誤りがあると、期末の残高にもずれが生じ、全体の会計処理に影響が出るおそれがあります。そのため、仕訳帳との照合を正確に行いながら転記作業を進めることが基本です。

会計帳簿に記帳する際のポイント

会計帳簿に記帳する際のポイントとして、以下のような点があげられます。

 

  • 証憑(しょうひょう)をもとに記帳する
  • 原則として発生主義で記帳する
  • 記帳代行会社に相談する

 

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

 

証憑(しょうひょう)をもとに記帳する

 

帳簿に記録する取引は、証憑(しょうひょう)と呼ばれる書類を根拠として行うのが基本です。例えば、領収書や請求書、納品書などが証憑にあたり、金額や取引内容、日付などの確認に使われます。

 

証憑は、後から取引内容を見直す際の裏付け資料となるだけでなく、税務調査の際にも重要な役割を果たします。証憑に基づかない記帳は、誤記や記録の信頼性を損なう要因となり、結果として帳簿全体の正確性に疑問を生じさせることにもなるため注意しましょう。

 

なお、証憑についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

 

証憑とは?証憑書類の種類・読み方・保存期間・帳票との違いを解説
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原則として発生主義で記帳する

 

会計帳簿の記帳方法にはいくつかの考え方がありますが、企業会計においては「発生主義」が原則とされています。例えば、商品を納品した時点で売上を計上する場合、実際の入金が後日であっても、取引は納品日に記帳されます。

 

発生主義は現金の動きではなく、経済的な事実が発生した時点を基準に記録する方法で、企業の経営実態をより正確に反映できるメリットがあります。現金主義とは異なり、タイミングを誤ると売上や費用の計上がずれ、正しい損益を把握できなくなるリスクもあるため、注意深い運用が求められます。

 

なお、発生主義についてはこちらの記事をご覧ください。

 

発生主義とは?現実主義・実現主義との違いやメリット・デメリットを解説
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記帳代行会社に相談する

 

会計帳簿の作成の業務は、専門的な知識や正確性が求められるため、負担が大きいと感じる事業者も少なくありません。例えば、日々の取引量が多い企業や、経理担当者が不在の小規模事業者では、記帳ミスや記録漏れが生じやすくなります。

 

こうした場合には、記帳代行会社に相談することで、作業の正確性と効率性を高めることができます。記帳代行会社や経理代行会社では、専門スタッフが証憑をもとに正確な記帳を行い、法令に沿った帳簿管理をサポートしてくれます。また、帳簿の保存形式やデータ化の相談にも対応してくれるため、業務のシンプル化にもつながります。自社の体制や業務量に応じて、専門家の力を借りる選択を検討することも、有効な経営判断のひとつです。

 

なお、記帳代行については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

 

記帳代行とは?経理代行との違いやメリット・デメリットを解説
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まとめ

会計帳簿は、企業が行った日々の取引を記録や管理するための帳面のことで、経理や会計の基盤となる存在です。法令で義務づけられているだけではなく、税務申告を正しく行うためや、財務状況や経営成績を把握するために用いられます。

 

会計帳簿に記帳する際には、証憑(しょうひょう)をもとに原則として発生主義で記帳することがポイントです。また、会計帳簿の作成の業務は、専門的な知識や正確性が求められるため、負担が大きいと感じる事業者も少なくありません。その際には、記帳代行会社や経理代行会社に相談することもおすすめです。

 

弊社では、経理代行と記帳代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な記帳業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

会計帳簿に関するよくあるご質問

会計帳簿についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、会計帳簿に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

会計帳簿とは何ですか?

会計帳簿とは、会社のすべての取引を記録するための帳簿で、経営状況を把握し、税務申告などに活用されます。例えば、売上や仕入、経費といった日々の取引を仕訳帳や総勘定元帳などに記録することで、企業の財務活動を体系的に管理できます。帳簿には法定で保存が義務のものもあり、正確かつ継続的な記録が求められます。

会計帳簿と仕訳帳の違いは何ですか?

会計帳簿は、企業の取引を記録するための帳簿全体を指し、仕訳帳はその中の一部で、取引を発生順に仕訳形式で記録する帳簿です。仕訳帳に記録された内容は、総勘定元帳へ転記され、勘定科目ごとの動きを追いやすくします。このように仕訳帳は会計帳簿の一部であり、帳簿全体の起点としての役割を果たしています。

会計帳簿をつけてないとどうなる?

会計帳簿を作成していない場合、税務申告に必要な根拠が不十分となり、青色申告の承認が受けられず、税務調査で加算税などを受ける可能性があります。例えば、売上や経費の証明ができないと、過少申告とみなされることもあります。帳簿は企業の信頼性を示す基盤であり、法律上の義務でもあるため、正確な記帳が重要です。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。