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資格がない記帳代行は税理士法違反なのか?違反となるケースや依頼時の注意点を解説
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資格がない記帳代行は税理士法違反なのか?違反となるケースや依頼時の注意点を解説

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記帳代行を依頼する際、資格を持たない業者に頼むことは、税理士法に触れるか不安に思われる方も多いのではないでしょうか。結論からいうと資格がない記帳代行は税理士法違反にはなりません。

 

しかし、税理士には独占業務があるため、記帳以外の業務を依頼する際には注意が必要です。本記事では、税理士の独占業務と税理士資格がない記帳代行に依頼する際の注意点を紹介します。また、記帳代行を経理代行会社と税理士のそれぞれに依頼するメリット・デメリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

記帳代行とは?

記帳代行とは、企業や個人事業主が日々発生する取引を帳簿に記録する作業を、外部の専門業者に委託することを指します。具体的には、領収書や請求書、通帳の写しなどをもとに仕訳を行い、会計ソフトに入力して帳簿を作成する業務が中心です。

 

例えば、現金の出入りや売上、仕入れといった日常的な取引を正確に記録することで、財務状況の把握や決算書類の作成がスムーズになります。記帳業務は地道で手間がかかるため、事業に専念したい経営者にとっては外部に任せることで大きな負担軽減になります。

 

なお、記帳代行についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

記帳代行とは?経理代行との違いやメリット・デメリットを解説
記帳代行とは?経理代行との違いやメリット・デメリットを解説

資格がない記帳代行は税理士法違反なのか?

記帳代行そのものは税理士の独占業務には該当せず、資格がない業者が行っても税理士法違反にはなりません。例えば、領収書や請求書の内容をもとに仕訳をして帳簿に記録する作業は、税理士でなくても行えます。

 

ただし注意すべきは、記帳にとどまらず税務申告の代理や税金に関する相談を受けるなど、税理士にしか認められていない業務に踏み込んでしまうケースです。これらの行為は税理士法で定められた「独占業務」に該当し、無資格者が行えば違法となる可能性があります。

 

税理士の独占業務

 

税理士の独占業務として以下の3点があげられます。

 

  • 税務代理
  • 税務書類の作成
  • 税務相談

 

税理士資格のない経理代行会社や記帳代行会社に上記の業務を依頼してしまうと、依頼者側も違法行為に加担してしまうリスクがあるため、内容の線引きには十分な注意が必要です。

 

税務代理

 

税務代理とは、納税者に代わって税務署などの行政機関とやり取りを行う業務で、税理士にしか認められていない独占業務のひとつです。例えば、確定申告の内容について税務署と交渉したり、修正申告の説明をしたりといった対応は、本人に代わって行うには税理士資格が必要になります。

 

無資格の記帳代行業者が「申告まで代行します」とうたって対応することは、税務代理にあたる可能性があり、税理士法に違反するおそれがあります。表向きは記帳業務だけを請け負っていても、実質的に税務署との調整や説明まで行っているようなケースには特に注意が必要です。

 

税務書類の作成

 

税務書類の作成とは、税務署などに提出する申告書や届出書などを正式に作成する業務で、税理士のみが行える独占業務です。例えば、法人税や消費税の確定申告書を作成してクライアントに代わって提出する行為は、税理士にしか許されていません。

 

記帳代行業者(経理代行会社)が会計データをもとに申告書を作成し、税理士名義を使わずに提出するような場合には、税務書類作成の無資格業務に該当するおそれがあります。税務書類は法的な効力を持つため、正確性や責任が求められ、専門知識のない業者が関与すべきではない業務といえます。依頼する際は、その業者がどこまで対応しているかの確認が必要です。

 

税務相談

 

税務相談とは、納税者が抱える税金に関する疑問や悩みに対して、具体的なアドバイスや解決策を提示する業務で、税理士の独占業務とされています。例えば、「この取引は経費にできますか?」や「消費税の課税対象になりますか?」といった質問に、明確な答えを提供する行為は、税務相談に該当します。

 

無資格の記帳代行業者がこのような相談に応じることは、税理士法で禁止されており、違法となる可能性があります。単なる記帳作業の範囲を超えて、税に関する判断や助言を行う場合には、税理士の資格が必須です。業者の説明があいまいな場合は、相談内容が独占業務に含まれていないか注意深く確認する必要があります。

資格なしの記帳代行が違反となるケースと具体例

資格なしの記帳代行が違反となるケースとして、以下のような具体例を紹介します。

 

  • 税務署とのやり取りを行った場合
  • 申告書の作成を行った場合
  • 具体的な税金相談を受けた場合

 

それぞれの注意点やポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

税務署とのやり取りを行った場合

 

税務署とのやり取りを代行することは、税務代理に該当し、税理士の資格を持たない者が行うと税理士法違反となります。例えば、顧客に代わって税務署へ電話をかけ、申告内容の確認や修正依頼の説明を行うことは、記帳代行の範囲を超えた行為にあたります。

 

税務代理は納税者に代わって税務署とやり取りを行う立場となるため、法的責任も伴う専門的な業務であり、税理士資格を持つ者のみが行えるものとされています。

 

記帳代行業者が親切心から税務署と連絡を取るケースもありますが、これは法律上問題となる可能性があるため、あくまで記帳に専念し、税務署との連絡は原則として依頼者自身が行う必要があります。

 

申告書の作成を行った場合

 

税務申告書の作成は税理士の独占業務であり、税理士資格を持たない者が作成することは税理士法に違反します。例えば、記帳代行業者が会計データをもとに法人税や消費税の申告書を作成し、依頼者に提出を促すといった行為がこれに該当します。

 

たとえ帳簿の内容をそのまま転記しただけであっても、申告書の形式に落とし込み、提出可能な状態に整えること自体が税務書類の作成とみなされます。税務署に提出する書類には法的責任が伴うため、正確な知識と判断力が求められ、無資格者が関与することは非常にリスクの高い行為です。申告書の作成が必要な場合は、必ず税理士に依頼するようにしましょう。

 

具体的な税金相談を受けた場合

 

税金に関する具体的な相談に応じる行為は、税務相談として税理士の独占業務に該当します。例えば、「この支出は経費になりますか?」「どの勘定科目で処理すれば税金が安くなりますか?」といった質問に対し、判断を示したりアドバイスを行うことは、税理士でなければ行えません。

 

こうした税務相談は、税額や納税義務に直接関わる重要な判断を伴うため、専門知識と責任を前提に税理士のみが対応できると法律で定められています。無資格の記帳代行業者が悪意なく助言してしまうケースもありますが、それでも違法行為とみなされるおそれがあります。税務に関する判断を必要とする場合は、必ず税理士に相談するよう心がけましょう。

記帳代行の依頼先と注意点

経理代行の依頼先として、税理士事務所に依頼する場合と、経理代行会社(記帳代行会社)に依頼する場合があります。ここでは、それぞれの依頼先における注意点やメリット・デメリットを紹介します。ぜひ、依頼先の選定に役立ててください。

 

税理士事務所に記帳代行を依頼するメリット

 

税理士事務所に記帳代行を依頼するメリットとして以下のような点があげられます。

 

  • 税務申告まで一貫して対応してもらえる
  • 法令遵守の精度が高い

 

ここでは、それぞれのメリットについて具体的に紹介します。ぜひ参考にしてください。

 

税務申告まで一貫して対応してもらえる

 

税理士事務所に記帳代行を依頼するメリットは、記帳だけでなく税務申告まで一貫して任せられる点です。例えば、月次の記帳業務を継続的に行っている税理士が、そのまま決算書や申告書の作成までをスムーズに引き受けてくれるため、書類のやり取りや説明の手間が減り、効率的に税務処理が完了します。

 

また、申告内容について税務署から問い合わせがあった場合も、依頼先の税理士が代理で対応してくれるため、精神的な負担も軽減されます。税務申告までの一貫体制は、特に税務に不安を感じる経営者や経理担当者の方にとって大きな安心材料となるでしょう。

 

法令遵守の精度が高い

 

税理士に記帳代行を依頼することで、会計や税務に関する法令を正しく守った処理が期待できます。例えば、経費として認められるか曖昧な支出があった場合でも、税理士は税務上の判断基準に基づいて適切な処理を行ってくれるため、後々のトラブルを回避できます。

 

税法は毎年のように改正されるため、常に最新の情報を把握している専門家に任せることで、法令違反のリスクを抑えながら正確な帳簿作成が可能になります。特に、税務調査が入る可能性がある業種では、こうした法令遵守の精度が重要な意味を持ちます。企業の信頼性や対外的な信用にも直結するため、正確な経理処理を重視する企業にとって大きな価値があります。

 

税理士事務所に記帳代行を依頼するデメリット

 

税理士事務所に記帳代行を依頼するデメリットとして以下のような点があげられます。

 

  • 複雑な記帳業務は断られやすい
  • 経理代行会社より費用が高くなりやすい

 

ここでは、それぞれのデメリットについて具体的に紹介します。ぜひ参考にしてください。

 

複雑な記帳業務は断られやすい

 

税理士事務所では、すべての記帳業務に対応しているわけではなく、内容によっては受け付けてもらえないこともあります。例えば、社内で独自に作成された取引台帳をもとにした記帳や、外国の通貨を含む海外取引など、処理に手間や判断を要する業務については、コストや時間の観点から対応を断られるケースがあります。

 

また、記帳自体は補助業務と位置づけている事務所もあり、本来の税務業務に支障をきたさない範囲でしか引き受けないことも少なくありません。そのため、依頼前に業務の内容と対応範囲をしっかり確認する必要があります。特に複雑な経理体制を持つ企業は、柔軟な対応が可能な業者かどうかを見極めることが重要です。なお、記帳代行の流れについてはこちらの記事も参考にしてください。

 

記帳代行の流れとは?業務内容と依頼する際の注意点や選び方のポイントも解説
記帳代行の流れとは?業務内容と依頼する際の注意点や選び方のポイントも解説

 

経理代行会社より費用が高くなりやすい

 

税理士事務所に記帳代行を依頼すると、経理代行会社に比べて料金が高くなる傾向があります。例えば、同じく仕訳数や業務量に応じた料金設定であっても、税理士の専門性や責任の重さが反映されており、月額費用が割高になることがあります。

 

さらに、年末調整や法定調書の作成といったオプション業務が加わると、追加費用が発生することも少なくありません。安心感や専門性といった価値を求める場合には納得できる金額ではありますが、コストを重視する小規模事業者にとっては、慎重な検討が必要となります。価格だけでなく、提供されるサービスの質や範囲も含めて、総合的に判断することが求められます。

 

なお、記帳代行の費用相場についてはこちらの記事でまとめています。

 

記帳代行の料金相場は?費用を抑えて依頼するポイントも解説
記帳代行の料金相場は?費用を抑えて依頼するポイントも解説

 

経理代行会社に記帳代行を依頼するメリット

 

経理代行会社に記帳代行を依頼するメリットとして以下のような点があげられます。

 

  • 経理全般をまとめて依頼できる
  • 費用を抑えて依頼ができる

 

ここでは、それぞれのメリットについて具体的に紹介します。ぜひ参考にしてください。

 

経理全般をまとめて依頼できる

 

経理代行会社に記帳代行を依頼するメリットのひとつは、記帳だけでなく請求書の発行や支払管理、給与計算といった経理業務全般をワンストップで任せられる点です。例えば、領収書の整理から月末の支払い準備、従業員の給与明細の作成までを一括で引き受けてもらえることで、社内の経理担当者の負担が大幅に軽減されます。

 

バックオフィス業務の効率化を図りたい中小企業にとっては、実務をまとめて外注できるというのは大きな魅力です。また、業務を分散せず一元化することで、情報の整理や連携もスムーズになります。特に少人数体制の企業では、包括的なサポートが業務の効率化につながるでしょう。

 

なお、記帳のみを代行する場合と経理全般を丸投げする場合の違いについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

記帳代行と丸投げの違いとは?メリット・デメリットを詳しく解説
記帳代行と丸投げの違いとは?メリット・デメリットを詳しく解説

 

費用を抑えて依頼ができる

 

経理代行会社に記帳を依頼する場合、税理士事務所よりも比較的安価にサービスを利用できる点が魅力です。例えば、仕訳数に応じた定額制プランや、部分的な業務だけを依頼することでコストを抑えることができるため、経理予算に限りがある小規模事業者でも利用しやすくなっています。

 

また、記帳以外にも、簡易的な経理業務を組み合わせて依頼できるため、全体的な外注コストを最小限にしつつ、業務の効率化を実現できます。費用対効果を重視する企業にとって、柔軟な料金体系はメリットとなります。そのため、経理業務に対する費用対効果を見直したい企業にも向いています。

 

経理代行会社に記帳代行を依頼するデメリット

 

経理代行会社に記帳代行を依頼するデメリットとして以下のような点があげられます。

 

  • 税務申告は対応ができない
  • 丸投げでも自社での確認は必要になる

 

ここでは、それぞれのデメリットについて具体的に紹介します。ぜひ参考にしてください。

 

税務申告は対応ができない

 

経理代行会社は記帳や経理事務には対応していますが、税務申告や税務代理といった業務には対応できません。例えば、決算書の作成後に法人税の申告書までを仕上げてもらいたいと考えても、税理士資格がなければ法律上できません。

 

記帳と税務申告を別々の業者に依頼しなければならない場合、業務の連携が取りづらくなったり、データの受け渡しに手間がかかったりする可能性もあります。そのため、申告まで含めた一貫対応を希望する場合は、税理士事務所への依頼を検討したほうがよいでしょう。税務面のリスクを確実にカバーしたい場合には注意が必要です。

 

丸投げでも自社での確認は必要になる

 

経理代行会社に記帳業務を任せる場合でも、すべてを任せきりにするのは危険です。例えば、仕訳内容にミスがあったり、経費の分類に誤りが生じたりすることもあるため、最終的には自社での確認や意思決定が求められます。

 

また、経理代行業者はあくまで実務を支援する立場であり、税務的な判断や経営判断に踏み込むことはできません。そのため、経営者自身が帳簿の内容や数字の意味を理解し、定期的にチェックする姿勢が必要です。業務を効率化できる反面、自社での最低限の関与は不可欠といえます。

 

経理代行会社や記帳代行会社に任せる場合は、二人三脚で長く付き合える会社を選ぶことが大切です。なお、経理代行会社の選び方についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理代行とは?サービス内容・メリット・選び方を詳しく解説
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まとめ

記帳代行そのものは税理士の独占業務には該当せず、資格がない業者が行っても税理士法違反にはなりません。例えば、領収書や請求書の内容をもとに仕訳をして帳簿に記録する作業は、税理士でなくても行えます。

 

ただし記帳にとどまらず税務申告の代理や税金に関する相談を受けるなど、税理士にしか認められていない業務に踏み込んでしまうケースは注意が必要です。
税理士事務所では、税務申告なども依頼できる反面、複雑な記帳業務は断られてしまうこともあり、経理代行会社(記帳代行会社)に依頼するより多くの費用がかかってしまうこともあるでしょう。そのため、記帳代行を注意とした経理代行業務は、経理代行会社に依頼することがおすすめです。

 

弊社では、経理代行と記帳代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な記帳業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

記帳代行と税理士法に関するよくあるご質問

記帳代行と税理士法についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、記帳代行と税理士法に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

資格なしの記帳代行は税理士法違反ですか?

記帳代行自体は税理士の独占業務ではないため、資格がない業者が行っても税理士法違反にはなりません。ただし、税務署への提出書類の作成や税務相談、税務代理などを無資格で行った場合は違反となるため、業務の範囲には注意が必要です。特に、申告書の作成や具体的な節税提案を行うと、違法と判断されてしまいます。

経理代行と記帳代行の違いは何ですか?

記帳代行は仕訳入力や帳簿作成などの会計帳簿作成業務に特化しています。一方、経理代行は記帳に加え、請求書発行や支払管理、給与計算などの経理業務全般を代行するものであり、業務範囲の広さが主な違いです。経理代行は、経理担当者の代わりとして日常業務を包括的にカバーしてくれる点で利便性が高いといえます。

税理士法違反の具体例は何ですか?

例えば、無資格の業者が法人税や消費税の申告書を作成して提出する、税務署と顧客の代理で交渉する、具体的な節税方法を助言するという行為は、税理士の独占業務に該当するため税理士法違反となるため、業務範囲を超えないことが重要です。違反が発覚した場合、罰則や業務停止の対象となる可能性もあるため注意が必要です。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。