
ビジネスの現場では、発行済みの請求書について「再発行してほしい」と依頼されることがあります。とはいえ、請求書は正式な書類であるため、「そのまま印刷し直して渡せばいいのか」「日付や番号は変えるべきか」など、対応に迷うことも少なくありません。また、安易に再発行すると、二重請求や取引先とのトラブルに発展するリスクもあります。
この記事では、請求書の再発行が求められる具体的なケースや、再発行時の正しい対応方法、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
目次
請求書の再発行を依頼された際に悩むこと
請求書の再発行を依頼された際に悩むこととして、以下のような点があります。
- そもそも請求書は再発行してもよいのか?
- 請求書の日付は前回と同じでよいのか?
- 請求書番号は変更しなくてもよいのか?
- 請求書はそのまま再印刷すれば問題ないのか?
ここでは、それぞれの悩みや課題について、具体的に解説していきます。
そもそも請求書は再発行してもよいのか?
請求書の再発行は基本的に問題ありません。しかし、請求書の再発行を依頼されたとき、どのように対応すべきか迷う場面は少なくありません。請求書は取引の証拠書類であり、会計処理にも関わるため、慎重な判断が求められます。
例えば、単純に紛失しただけであればそのまま再発行しても問題ないように思えますが、記載内容の変更や支払条件の修正が含まれる場合は、形式や記録上の対応に注意が必要です。また、請求書番号や日付をどう扱うかによっては、相手先とのやりとりに混乱を招くこともあります。こうした点を踏まえながら、再発行時に気をつけるべきポイントを整理しておくことが大切です。
請求書の日付は前回と同じでよいのか?
特別な理由がない限り、日付は初回と同じにするのが一般的な対応といえるでしょう。請求書の再発行にあたり、日付をそのままにするか新しい日付にするかは意外と判断に迷うところです。例えば、請求内容や支払条件に変更がない場合は、初回発行時の日付のまま再発行することで、取引の一貫性を保つことができます。
反対に、新たな日付にすると支払い期限に影響が出たり、相手の会計処理にずれが生じたりする可能性もあるため、日付の扱いは慎重に行いたいところです。しかし、特別な理由がない限り、日付は初回と同じで問題ありません。日付の一貫性は、社内外での処理の正確性を保つうえでも重要です。
請求書番号は変更しなくてもよいのか?
再発行された請求書番号は枝番にしておくことが一般的です。再発行の際に意識しておきたいのが、請求書番号の扱いです。例えば、同じ内容で再発行するだけなら元の番号をそのまま使っても問題はありませんが、相手にとって複数の請求書が届いた場合、どれが正式なものか混乱を招くこともあります。
そうしたリスクを避けるためには、元の請求書番号に「-1」や「A」などの枝番を付けて管理する方法が有効です。枝番を使うことで、再発行された請求書であることがひと目でわかり、取引先の確認作業や社内処理もスムーズになります。番号管理は帳票の整合性にも関わるため、細かな工夫が重要です。
請求書はそのまま再印刷すれば問題ないのか?
そのまま再印刷で問題ありませんが、枝番や備考でわかりやすくしておくことが好ましいです。請求書の再発行を求められた場合、元の請求書データをそのまま印刷して送れば済むと考えがちですが、注意が必要です。
例えば、相手先が誤って初回の請求書を破棄したり、内容に疑問を感じて再確認のために再発行を依頼してきた場合には、単なる再印刷では意図が伝わらないこともあります。そうした場合には、請求書の備考欄に「再発行分」と明記したり、請求書番号に枝番を加えたりして、どの書類が最新であるかを明確にしておくと親切です。再印刷自体は可能でも、相手の立場や業務フローを意識した対応を心がけることが大切です。
請求書の再発行が求められる事例とケース
請求書の再発行が求められる事例として、以下のようなケースが想定されます。
- 請求書を紛失してしまったケース
- 請求書の記載内容の誤りに気づいたケース
- 請求先から請求書の誤りを指摘されたケース
- 発行後に支払方法を変更してもらうケース
ここでは、それぞれの事例とケースについて具体的に解説していきます。
請求書を紛失してしまったケース
業務の多忙な中で、うっかり書類を紛失してしまうことは珍しくありません。請求書も例外ではなく、取引先や自社の担当者が誤って破棄したり、どこに保存したか分からなくなってしまったりすることもあります。
例えば、紙の請求書を郵送した場合、郵送中に紛失してしまったり、到着後に社内で行方不明になるケースもあります。このような場合は、内容が変わらない範囲で再発行を行い、支払いの遅れや取引先との混乱を防ぐことが重要です。再発行の際には、再発行分であることを明示し、元の請求書と同じ条件であることが分かるようにする工夫も必要です。
請求書の記載内容の誤りに気づいたケース
請求書を発行した後に、自社側で記載内容の誤りに気づくこともあります。例えば、商品名や数量、単価、税率、合計金額などに誤りがあれば、取引先にも影響を及ぼすため、早急な対応が求められます。
記載ミスに気づいた時点で再発行することで、相手方の会計処理や支払い作業にも支障をきたさずに済みます。内容に誤りがあるまま放置すると、金額の食い違いによる信頼の低下や、二重請求のリスクも出てくるため、見落とさずに丁寧に対応することが重要です。正しい内容で請求書を再発行することで、取引の透明性を保つことができます。
請求先から請求書の誤りを指摘されたケース
請求書の内容に関して、取引先から誤りを指摘されることがあります。例えば、商品名や金額、請求先の名称に誤記があった場合、相手方の会計処理に支障が出るため、修正を求められるのは当然のことです。
こうした指摘を受けた場合には、すぐに該当箇所を確認し、必要に応じて訂正のうえ再発行を行うことが求められます。指摘内容に納得できない場合でも、まずは丁寧に事実関係を確認し、誤解や確認漏れがないようにしましょう。請求書は企業間の信頼関係に関わる書類のため、迅速かつ誠実な対応が重要です。
発行後に支払方法を変更してもらうケース
請求書を発行した後に、支払方法を変更する必要が生じることもあります。例えば、当初は銀行振込を予定していたものの、取引先の事情で手形や口座振替に変更したいと申し出がある場合などが考えられます。
このようなときは、支払条件を明記した請求書の記載内容を更新するため、再発行を行うのが適切です。古いままの請求書を使用すると、支払いのトラブルや誤解を招く可能性もあるため、必ず新しい条件を反映させた書類を作成し、再送付するようにしましょう。記載内容と実際の支払方法が一致していることが、スムーズな取引の継続につながります。
請求書を再発行する際の書き方
請求書を再発行する際の書き方として、以下のような点を意識することが一般的です。
- 再発行の請求書とわかるように記載する
- 元の請求書と同じ日付で記載する
- 元の請求書と枝番で記載する
ここでは、それぞれの書き方について詳しく紹介します。
再発行の請求書とわかるように記載する
請求書を再発行する際には、初回発行との区別がつくように記載することが大切です。例えば、備考欄に「再発行」と明記したり、タイトルに「再発行分」と追記することで、相手先が混乱せずに処理を行いやすくなります。
再発行とはいえ、請求書は支払いに直結する重要書類です。誤って二重に処理されたり、どちらが有効な書類か判断できなくなると、取引先に不要な手間をかけてしまう可能性があります。そのため、見た目や記載内容に工夫を加えることで、再発行されたものであることを明確に伝える配慮が必要です。
元の請求書と同じ日付で記載する
請求書を再発行する際、発行日をどうするかは迷いやすいポイントです。例えば、再発行だからといって当日の日付にしてしまうと、締日や支払期日に影響が出ることがあります。
その結果、取引先の経理処理がずれてしまい、不要な確認作業が発生する可能性もあります。こうしたトラブルを防ぐには、原則として元の請求書と同じ発行日を使用するのが適切です。取引の履歴としても一貫性があり、帳簿や会計処理上も整合性を保てます。再発行であっても、初回発行と同じ日付であることが、スムーズな取引の維持につながるでしょう。
元の請求書と枝番で記載する
再発行した請求書を正しく管理するためには、請求書番号に枝番を付ける方法が有効です。例えば、初回の請求書が「No.1234」であれば、再発行時は「No.1234-1」や「No.1234A」などと記載することで、どの書類が最新かを見分けやすくなります。
番号に工夫を加えることで、取引先が誤って古い請求書を処理するリスクを下げることができますし、自社内での管理や確認作業もスムーズになります。また、過去にどのような修正や再発行があったかの履歴も追いやすくなるため、事務処理の透明性を高めるうえでも有効な対応です。
請求書を再発行する手順
請求書を再発行する手順は、以下のような流れで進みます。
- step1:元の請求書の内容を確認する
- step2:必要に応じて請求先に謝罪をする
- step3:請求書を再発行する
- step4:請求先に請求書を送付する
ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説します。
step1:元の請求書の内容を確認する
請求書を再発行する際は、まず元の請求書の内容を正確に確認することが第一歩です。例えば、記載されている金額、請求日、請求先の情報、支払条件などに誤りがないかを丁寧に見直す必要があります。
誤った情報のまま再発行してしまうと、取引先に混乱を与えたり、二重請求と誤解されるリスクが高まるため、細かな部分にも目を向けることが重要です。特に過去の取引履歴と照らし合わせて整合性を保つことで、スムーズな処理が可能になります。正確な内容に基づいた再発行こそが、信頼関係を維持するための基本です。
step2:必要に応じて請求先に謝罪をする
請求書の再発行が必要になる背景には、自社の記載ミスや紛失など、請求先に迷惑をかけてしまう事情が含まれることもあります。例えば、請求金額に誤りがあり取引先の経理作業に影響が出た場合は、単に書類を再発行するだけでなく、相手に事情を説明し、必要に応じて謝罪の一言を添えることで円滑な対応につながります。
たとえ小さなミスであっても、真摯な姿勢を見せることで関係性の悪化を防ぐことができます。誠意あるコミュニケーションは、書面だけでは伝わりにくい信頼の土台を支える大切なステップです。
step3:請求書を再発行する
元の内容を確認し、必要に応じて謝罪も済ませたら、いよいよ請求書の再発行作業に進みます。例えば、内容を訂正する場合には、修正箇所を正しく反映させたうえで、タイトルや備考欄に「再発行分」である旨を記載すると、誤解や二重処理を防ぐことができます。
また、請求書番号には枝番をつけるなど、元の請求書と区別がつくように工夫すると、社内外での管理がしやすくなります。再発行はただ印刷し直すだけではなく、相手にとって分かりやすい形式を整えることが、スムーズな取引の継続に役立ちます。
step4:請求先に請求書を送付する
再発行した請求書が完成したら、最後に請求先に適切な方法で送付します。例えば、急ぎのケースではメールやオンラインツールを使ってPDFデータを送付する一方で、正式な原本が必要な場合は郵送やFAXで対応するなど、状況に応じた手段を選ぶことが重要です。
送付の際には、再発行である旨や修正内容を簡潔に伝えることで、相手がスムーズに処理できるようになります。また、送付後は到着確認や受領の連絡を入れておくと、ミスやトラブルの防止にもつながります。最後まで丁寧な対応を心がけることが、信頼維持のポイントです。
請求書を再発行する際のリスクと注意点
請求書を再発行する際のリスクと注意点として、以下のような点があげられます。
- 二重請求と誤認されるリスク
- 請求内容の不一致による信用低下リスク
- 経理処理の混乱によりミスの増加リスク
ここでは、それぞれのリスクや注意点を具体的に紹介していきます。
二重請求と誤認されるリスク
請求書を再発行する際には、受け取る側が「すでに受け取った請求書とは別のものではないか」と誤解してしまう可能性があります。例えば、同じ金額や同じ日付の請求書が2通届いた場合、二重請求かどうかの確認が必要になり、相手の手間を増やしてしまうこともあるでしょう。
こうした誤認を避けるためには、再発行であることを明記し、番号や備考欄で区別がつくよう工夫する必要があります。ちょっとした配慮が、無用な誤解や不信感を防ぐことにつながります。
請求内容の不一致による信用低下リスク
再発行された請求書の内容が、元の請求書や口頭でのやりとりと食い違っていると、取引先に不信感を与えてしまう恐れがあります。例えば、金額や明細に違いがあった場合、どちらが正しいのかを確認する必要が生じ、結果として信用を損ねてしまうこともあります。
そのため、再発行時には「内容に間違いはないか」「過去のやりとりと整合性が取れているか」を丁寧に見直すことが大切です。相手の立場に立って、分かりやすく、確実な情報を提供することが信頼関係の維持には欠かせません。
経理処理の混乱によりミスの増加リスク
請求書の再発行が必要になる場面では、取引先の経理担当者が混乱する可能性も考慮する必要があります。例えば、請求書が複数届いたことによって、どれが正規のものか判断がつかず、処理の手が止まってしまったり、誤って二重計上してしまうといった事態も起こり得ます。
こうした混乱を防ぐには、再発行時に分かりやすい区別をつけたり、送付時にひと言説明を添えるなど、相手の作業を想定した対応が求められます。細かな工夫が、ミスの発生を未然に防ぐポイントとなります。
なお、ミスを減らすために経理代行会社に相談することもおすすめです。経理代行についてはこちらの記事も参考にしてください。

まとめ
請求書の再発行は基本的に問題ありません。請求書の再発行が求められるケースとして、請求書を紛失してしまった場合や、記載内容に誤りがあった場合のほか、支払方法を変更したい場合などがあげられます。
請求書を再発行する際には、再発行された請求書とわかるように記載して、元の請求書と同じ日付で、枝番で記載することが一般的です。なお、請求書の再発行の手間を削減するためには、経理代行会社の活用を検討することもひとつの手です。
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請求書の再発行に関するよくあるご質問
請求書の再発行についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、請求書の再発行に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
請求書は再発行ができますか?
請求書は基本的に再発行が可能です。ただし、単にコピーして再送するのではなく、再発行であることを明記し、必要に応じて請求書番号に枝番(例:No.123-1)を付けるなどの工夫が必要です。相手先が過去の請求書と区別できないと、二重計上も発生する懸念があるため、一目で分かるように配慮することが大切です。
請求書を無くしたらどうしたらいいですか?
請求書を紛失してしまった場合は、速やかに請求元に再発行を依頼しましょう。その際、請求書の発行日や金額、請求内容など、わかる範囲の情報を伝えるとスムーズに対応してもらえます。再発行された請求書には、「再発行」と明記してもらうことで、社内の経理処理でも混乱が起きにくくなります。
請求書の再発行を依頼する理由は何ですか?
請求書の再発行が必要になる理由はいくつかあります。取引先が請求書を紛失してしまったケースや、請求書に金額や日付、取引内容などの誤りが見つかったケース、振込口座の変更などで支払方法が変更されたケースなどです。再発行を依頼する際は、どのような理由で再発行が必要なのかを伝えることが大切です。