
企業の経理業務を効率化する方法として、「記帳代行」と「経理の丸投げ」があります。どちらも外部に業務を委託する手段ですが、業務範囲や責任の所在には大きな違いがあります。
本記事では、記帳代行と丸投げの違いを詳しく解説し、それぞれのメリット・デメリットを比較して紹介します。さらに、コストや情報管理、社内リソースの観点からも記帳代行と丸投げの場合を比較しているので、自社にとってどちらがマッチしているか検討する際の参考にしてください。
目次
記帳代行と丸投げの違い
記帳代行と経理を丸投げする際の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 記帳代行 | 丸投げ |
---|---|---|
業務範囲 | 仕訳や帳簿作成が中心 | 記帳以外にも幅広い業務を委託可能 |
社内リソース | 社内での対応が必要 | ほとんどの業務を外部委託できる |
責任の所在 | 自社の責任が大きい | 経理代行会社側の責任が大きい |
コスト | 比較的安い | 比較的高い |
情報管理 | 自社の負担が大きい | 負担は少ないが情報漏洩リスクに注意 |
ここでは、それぞれの項目について詳しく解説していきます。
業務範囲の違い
記帳代行と経理の丸投げでは、対応できる業務範囲に大きな違いがあります。記帳代行は、主に日々の仕訳や帳簿の作成といった基本的な経理業務に限定されています。例えば、請求書の発行や給与計算、資金繰り管理などの業務には対応しない場合が一般的です。
一方、経理の丸投げでは、記帳だけでなく、請求書の作成や振込業務、決算など、より幅広い業務を依頼できます。そのため、自社でどこまで経理業務を管理したいかによって、どちらがよいかは異なります。例えば、社内に一定の経理担当者がいる場合は記帳代行でも十分ですが、経理業務全般を手放して本業に集中したい企業には丸投げの方が適しているでしょう。
社内リソースの違い
記帳代行を利用する場合、自社内での業務負担は完全になくなるわけではありません。例えば、領収書や請求書の整理、取引の内容を正確に伝える作業、仕訳の最終確認などは、社内で対応する必要があります。そのため、経理担当者がゼロでも運用できるわけではなく、ある程度のリソースを割くことになります。
一方、経理の丸投げでは、経理業務のほとんどを外部に任せることが可能であり、社内の業務負担を大幅に削減できます。ただし、完全にノータッチにするのは難しく、最終的な確認作業や経理代行会社とのやり取りは必要になります。そのため、経理業務にどれだけの社内リソースを割けるかによって、どちらを選ぶべきかが変わってきます。
責任の違い
記帳代行と経理の丸投げでは、業務を外部に委託する範囲が異なるため、責任の所在にも違いがあります。記帳代行の場合、帳簿の作成や仕訳は依頼できますが、その内容が正確であるかどうかの最終的な責任は自社にあります。例えば、誤った情報を提供した場合、そのまま帳簿に反映されてしまい、後で修正が必要になることもあります。
一方、経理の丸投げでは、経理代行会社がより幅広い業務を担うため、記帳ミスや請求書の誤送信といったトラブルの責任も基本的には代行会社にあります。しかし、最終的な責任はどちらのケースでも自社にあるため、委託する業務の範囲にかかわらず、適切な管理体制を整えることが重要です。
コストの違い
コスト面においても、記帳代行と経理の丸投げでは大きな違いがあります。記帳代行は、基本的な帳簿作成や仕訳処理のみを依頼するため、比較的安価にサービスを利用できます。例えば、毎月の取引件数が少なければ、数万円程度で依頼できるケースもあります。
一方、経理の丸投げでは、記帳だけでなく請求書の発行や振込作業など、より広範囲の業務を依頼するため、その分コストも高くなります。例えば、企業の規模や依頼する業務内容によっては、数十万円の費用がかかることもあります。そのため、自社の予算や経理業務の重要度を考慮しながら、最適なサービスを選ぶことが求められます。
情報管理の違い
丸記帳代行と経理の丸投げでは、情報管理にかかる負担に違いがあります。記帳代行の場合、領収書や請求書の整理、データ管理などを自社で行い、必要な情報を正確にまとめて提供する責任があります。そのため、管理の手間がかかり、情報が適切に整理されていないと記帳ミスにつながる可能性があります。
一方、経理の丸投げでは、情報の管理を経理代行会社に任せることができるため、自社の負担は軽減されます。ただし、どちらのケースでも情報漏洩のリスクはゼロではなく、不適切な管理による機密情報の流出の可能性もあるため、慎重な業者選定とセキュリティ対策が重要です。
記帳代行を依頼するメリット
記帳代行を依頼するメリットとして、以下のような点があげられます。
- 記帳や仕訳にかかる作業負担を軽減できる
- 正社員を雇うよりもコストが安い
- ミスや不正を防ぐことができる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
記帳や仕訳にかかる作業負担を軽減できる
経理業務のなかでも、記帳や仕訳は日々発生する業務であり、正確性が求められるため、時間と手間がかかります。例えば、取引のたびに領収書や請求書を整理し、正しく仕訳する作業は、少しのミスが後の決算処理に影響を及ぼすため慎重に行う必要があります。特に、経理の専門知識がない場合、仕訳のルールを理解するだけでも大きな負担となるでしょう。
記帳代行を依頼することで、こうした日々の業務を外部に任せることができ、自社の負担を大幅に軽減できます。例えば、経理担当者が他の業務と兼務している場合、記帳業務に追われて本来注力すべき業務に時間を割けないことがありますが、記帳代行を活用すればその負担を削減し、業務効率を向上させることが可能です。
正社員を雇うよりもコストが安い
経理業務を社内で行う場合、正社員を雇用することが一般的ですが、人件費や福利厚生費などのコストがかかります。例えば、経理担当者を1人採用する場合、給与のほかに社会保険料やボーナス、研修費なども発生し、年間のコスト負担は大きくなります。
一方で、記帳代行を利用すれば、必要な業務のみに対して費用を支払う形になるため、正社員を雇うよりもコストを抑えることが可能です。例えば、取引件数が少ない小規模な企業であれば、毎月数万円程度のコストで経理業務を外部に任せることができ、人件費と比較して大幅なコスト削減につながります。また、業務量に応じて依頼範囲を調整できるため、経理業務の負担が増減しても柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
ミスや不正を防ぐことができる
経理業務では、正確な記帳が求められ、ミスが発生すると税務処理や資金管理に影響を及ぼします。例えば、仕訳ミスによって経費の計上を誤った場合、税務調査で指摘されるリスクが高まります。また、社内で経理業務を行うと、特定の担当者に業務が集中し、不正のリスクが発生する可能性もあります。
例えば、経費精算の処理を一人の担当者が行っている場合、不正な経費計上が発生しても発覚しにくいケースがあります。記帳代行を依頼することで、専門家が客観的に業務を行うため、仕訳の正確性が向上し、ミスを防ぐことができます。また、外部の第三者が経理をチェックする体制を整えることで、不正防止の抑止力となり、経理業務の透明性が向上する点も大きなメリットです。
記帳代行を依頼するデメリット
記帳代行を依頼する際には以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
- リアルタイムでの対応が難しい
- 情報漏洩のリスクがある
- 業務範囲が限定的になる
ここでは、それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
リアルタイムでの対応が難しい
記帳代行を利用する場合、社内で経理業務を行うのとは異なり、リアルタイムでの対応が難しくなることがあります。例えば、急ぎで最新の財務状況を確認したい場合、社内で処理していればすぐにデータを取得できますが、記帳代行会社に依頼していると、データの更新が遅れることがあります。
特に、記帳代行会社とのやり取りが月単位や週単位で行われる場合、日々の取引状況をすぐに把握するのが難しくなる可能性があります。例えば、資金繰りの状況を確認したいときに、最新の仕訳が反映されていないと正確な判断ができず、経営の意思決定に影響を与えることもあります。そのため、リアルタイムでのデータ確認が必要な場合は、記帳代行のスケジュールやデータ更新頻度を事前に確認し、適切な対応策を練っていくことが重要です。
情報漏洩のリスクがある
記帳代行を依頼する際には、企業の財務データや取引情報を外部に提供するため、情報漏洩のリスクが発生します。例えば、代行会社が適切なセキュリティ対策を行っていない場合、外部からの不正アクセスや内部の不正行為によって、機密情報が漏洩する可能性があります。
また、クラウド会計ソフトを利用してデータのやり取りを行う場合、適切なアクセス管理がされていなければ、第三者による不正利用のリスクも高まります。例えば、社内での管理体制が不十分で、誰がどのデータにアクセスできるのか明確になっていない場合、予期しない情報流出が起こる可能性もあります。そのため、記帳代行を依頼する際には、信頼できる業者を選び、契約時に機密保持契約(NDA)を締結するなど、情報管理の対策を徹底することが重要です。
業務範囲が限定的になる
記帳代行は、あくまで帳簿作成や仕訳処理を専門とするサービスであるため、業務範囲が限定的になります。例えば、請求書の発行や振込業務、資金繰りの管理など、経理業務全般をサポートしてもらいたい場合、記帳代行では対応できないことが多いです。
そのため、単に記帳作業を外注するだけでなく、より広範囲の経理業務を依頼したい場合は、経理の丸投げサービスなどを検討する必要もあるでしょう。例えば、月次や年次の決算業務におけるサポートを依頼したい場合は、記帳代行だけでは対応できないため_経理代行会社や税理士、会計士と契約する必要が生じることがあります。そのため、自社が求める業務範囲を明確にし、記帳代行が適しているかどうかを事前に確認することが重要です。
なお、記帳代行の業務範囲などについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

経理を丸投げするメリット
経理を丸投げするメリットとして以下のような点があげられます。
- 幅広い経理業務を委託できる
- コア業務に集中できる
- 専門家の知見を活用できる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
幅広い経理業務を委託できる
経理の丸投げを利用するメリットとして、単なる記帳や仕訳だけでなく、請求書の発行や振込業務、決算対応まで幅広い経理業務を委託できる点があげられます。例えば、社内に経理担当者がいない場合、取引の記帳だけでなく、請求書の作成や取引先への支払い業務まで対応が必要になりますが、丸投げならすべて一括で任せることができます。
また、給与計算や年末調整など、専門的な知識が求められる業務も依頼できるため、社内で経理の専門知識を持った人材がいなくても問題なく運営できます。例えば、急な税制改正があった場合でも、経理代行会社が最新のルールに基づいて業務を処理してくれるため、自社で複雑な法律を理解する手間を省くことができます。こうした幅広い業務を依頼できる点は、経理を丸投げするメリットのひとつといえるでしょう。
コア業務に集中できる
経理業務は企業にとって欠かせない業務ですが、直接売上につながる業務ではなく、事業の成長において優先度が低くなることもあります。例えば、スタートアップや中小企業では、限られたリソースを営業活動や商品開発に注ぎたいと考えることが多いですが、経理業務が煩雑で時間を取られてしまうと、コア業務に集中できません。
経理の丸投げを利用すれば、日々の帳簿作成や請求処理、税務対応などの業務をすべて外部に任せることができるため、経営者や従業員が本来の業務に専念しやすくなります。例えば、新規事業の立ち上げに集中したい場合でも、経理の負担を気にすることなく、戦略策定やマーケティングにリソースを割くことが可能になります。その結果、事業の成長スピードを加速させることができる点は、経理を丸投げする大きな魅力のひとつといえるでしょう。
専門家の知見を活用できる
経理業務には専門的な知識が求められ、税制改正や会計基準の変更などに対応する必要があります。例えば、自社で経理担当者を置いている場合、新しい税制に対応するために追加の研修を受けたり、専門家に相談したりする必要があり、時間やコストがかかります。
しかし、経理の丸投げを利用すれば、最新の会計基準や税制改正に精通した専門家が業務を担当するため、常に適切な処理が行われます。例えば、節税対策や経費精算の最適化など、自社だけでは気づきにくいポイントも、専門家のアドバイスによって効果的に対応できるようになります。
また、資金繰りの管理や財務分析のサポートも受けられるため、経営判断の精度を高めることにもつながります。こうした専門的な知見を活用できる点は、経理を丸投げする大きなメリットのひとつといえるでしょう。
なお、経理の丸投げにかかる費用については、こちらの記事でも解説しています。

経理を丸投げするデメリット
経理を丸投げする際には、以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
- 業者への依存度が大きくなる
- 社内に経理の知識やノウハウが蓄積されづらい
- 記帳代行よりコストが高くなる
ここでは、それぞれのデメリットについて具体的に解説していきます。
業者への依存度が大きくなる
経理の丸投げを利用すると、業務の大部分を外部の業者に委託するため、業者への依存度が高くなります。例えば、経理代行会社が何らかの事情でサービスを停止したり、契約を終了せざるを得なくなった場合、社内に経理を担当できる人材がいなければ業務が滞る可能性があります。
また、業者ごとに経理処理の方法やシステムが異なるため、別の業者に切り替える際に手間やコストがかかることもあります。例えば、特定のクラウド会計ソフトを利用している業者に業務を任せていた場合、別の業者に変更する際に新しいシステムへ移行する必要があり、データの移行作業や操作の習得に時間を取られることがあります。こうした依存度の高さは、経理を丸投げする際に考慮すべき重要なポイントです。
社内に経理の知識やノウハウが蓄積されづらい
経理の丸投げを利用すると、日々の経理業務をすべて外部に任せることになるため、社内に経理の知識やノウハウが蓄積されづらくなります。例えば、請求書の発行や仕訳のルール、税務申告に関する知識など、本来社内で学ぶべき情報が外部に委託されることで、従業員が経理業務の流れを把握できなくなる可能性があります。
また、長年経理を外注していると、社内で経理を担当できる人材が育たず、万が一、外部業者との契約が終了した際に対応できる人がいないという問題が発生することもあります。例えば、新規事業を立ち上げる際に、どのような経理処理が必要なのか判断できないと、スムーズな業務運営が難しくなることも考えられます。そのため、丸投げを活用する場合でも、最低限の経理知識を社内で維持する工夫が求められます。
記帳代行よりコストが高くなる
経理の丸投げは、記帳代行よりも業務範囲が広いため、必然的にコストが高くなります。例えば、記帳代行では仕訳や帳簿作成などの基本的な業務のみを依頼するため、月数万円程度の費用で利用できる場合が多いですが、経理の丸投げでは請求書の発行や振込業務、給与計算なども含まれるため、それに応じて費用が増加します。
例えば、企業の規模や業務量によっては、毎月数十万円のコストがかかるケースもあり、特に小規模企業やスタートアップにとっては大きな負担となる可能性があります。また、業務のカスタマイズや追加の対応を依頼する場合、オプション料金が発生することもあり、結果的に想定以上のコストがかかることもあります。そのため、コストと業務範囲のバランスを見極め、自社のニーズに合ったサービスを選ぶことが重要です。
なお、自社に合った経理代行の選び方についてはこちらの記事も参考にしてください。

まとめ
記帳代行と経理の丸投げには、業務範囲や社内リソースの有無、責任の大きさ、コスト、情報管理の負担などさまざまな違いがあります。記帳代行サービスを利用する際には、記帳や仕訳の社内負担を減らすことができる点がメリットですが、業務範囲が限定的である点がデメリットになります。
一方で、経理を丸投げすることで幅広い業務を委託でき、専門家の知見を活用できる点がメリットですが、記帳代行よりもコストが高くなってしまう点がデメリットです。そのため、自社の課題を洗い出して、必要に応じて記帳代行サービスと経理の丸投げサービスのどちらが適しているか検討することが大切です。
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記帳代行と丸投げに関するよくあるご質問
記帳代行と経理の丸投げについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、記帳代行と経理の丸投げに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
記帳代行のメリットは何ですか?
記帳代行を利用するメリットは、経理業務の負担を軽減し、正確な帳簿管理ができる点です。例えば、仕訳や帳簿作成を専門の業者に任せることで、経理担当者の作業時間を削減し、他の業務に集中できます。また正社員を雇うよりもコストを抑えられるため、特に小規模企業にとっては経済的なメリットも大きいです。
記帳代行と丸投げの違いは何ですか?
記帳代行と経理の丸投げの違いは、業務範囲の広さです。例えば、記帳代行は仕訳や帳簿作成が中心で、請求書発行や振込業務には対応しません。一方、経理の丸投げでは、記帳だけでなく、請求書発行や振込、給与計算など幅広い経理業務を任せることができます。そのため、丸投げではほとんどの経理業務を委託できます。
経理を丸投げするとはどういうことですか?
経理を丸投げするとは、企業の経理業務をほぼすべて外部の専門業者に委託することを指します。例えば、記帳代行に加えて、請求書発行や振込業務、給与計算、税務処理などの業務もまとめて依頼できます。その結果、社内で経理担当者を雇う必要がなくなり、経営者や社員が本業に集中しやすくなります。