
企業が取引先への請求後、入金までの資金繰りに悩む場面は少なくありません。そんなときに役立つのが「ファクタリング」です。ファクタリングとは、保有する売掛金を専門の業者に売却し、早期に現金化できる資金調達の方法です。銀行融資とは異なり、担保や保証人を必要とせず、審査も比較的スピーディに行われます。
本記事では、2者間・3者間ファクタリングの仕組みや違い、各サービスの種類、そしてメリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。さらに、利用時の流れや注意点についても詳しく紹介していきます。
目次
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、入金期日前に現金を得る資金調達の方法です。銀行融資のように借入金として扱われないため、財務状況への影響を抑えながら資金繰りを改善できる点が特徴です。
例えば、取引先からの支払サイトが60日後に予定されている場合でも、ファクタリングを利用すれば数日以内に現金を受け取ることができます。これにより、仕入れや人件費などの支払いを滞らせずに事業を継続できるのです。
また、売掛金の回収リスクを軽減できる場合もあり、キャッシュフローの安定を重視する企業にとっておすすめです。資金調達の多様化が進むなかで、ファクタリングは短期的な資金確保を目的とする企業にとって欠かせない手段のひとつとなっています。
【契約方式別】ファクタリングの種類
ファクタリングは契約方式別で2種類にわけられます。2者間ファクタリング(2社間ファクタリング)と3者間ファクタリング(3社間ファクタリング)です。ここでは、それぞれの特徴や仕組みについて具体的に解説します。
2者間ファクタリング(2社間ファクタリング)
2者間ファクタリングとは、売掛金の売却を行う企業とファクタリング会社の2者のみで契約を結ぶ方式です。取引先(売掛先)に通知せずに資金調達ができるため、関係性を保ちながらスピーディに現金化できるのが特徴です。
例えば、新しい取引先との関係を慎重に築いている段階で、資金繰りだけを早急に改善したい場合などに適しています。一方で、ファクタリング会社は売掛先への回収リスクを負うため、3者間方式に比べて手数料が高めに設定される傾向があります。秘密保持と即時性を重視する企業にとっては、柔軟な資金調達手段としておすすめです。
3者間ファクタリング(3社間ファクタリング)
3者間ファクタリングとは、売掛金を保有する企業・売掛先・ファクタリング会社の3者間で契約を交わす方式です。売掛先が債権譲渡を承諾したうえで、支払いを直接ファクタリング会社に行うため、取引の透明性が高い点が特徴です。
例えば、継続的な取引がある企業同士で信頼関係が築かれている場合には、スムーズに契約を進めることができます。また、2者間方式と比べてファクタリング会社のリスクが小さいため、手数料が抑えられる傾向があります。通知や承諾といった手続きは増えますが、コスト面や信頼性を重視する企業にとって適した方法といえます。
【サービス内容別】ファクタリングの種類
サービス内容別に分類すると、ファクタリングの種類は以下のようになります。
- 買取型ファクタリング
- 保証型ファクタリング
- 一括ファクタリング
- 国際ファクタリング
- 医療ファクタリング
- リバースファクタリング(支払企業主導型ファクタリング)
ここでは、それぞれの種類について具体的に解説します。
買取型ファクタリング
買取型ファクタリングとは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、現金を早期に受け取るもっとも一般的な方式です。売掛先からの入金を待たずに資金を得られるため、資金繰りの改善や急な支払いへの対応に役立ちます。
例えば、仕入れ代金や人件費などの支出が集中する時期に活用すれば、運転資金を安定的に確保することができます。売掛金の回収リスクはファクタリング会社が負担するため、企業側は債権回収の手間を軽減できます。一方で、手数料が発生する点は考慮が必要ですが、スピーディに資金化できる実用的な手段として、多くの業種で利用されています。
保証型ファクタリング
保証型ファクタリングとは、売掛先が倒産や経営不振によって支払い不能となった場合に、ファクタリング会社が代わりに支払う仕組みです。売掛金の売却ではなく「保証」を目的としており、取引リスクを軽減する保険的な役割を持ちます。
例えば、取引実績が少ない新規顧客や海外取引先との契約を行う際に、この保証型を利用しておけば、売掛金の回収不能リスクを防ぐことができます。売掛金の管理や回収は引き続き企業が行いますが、万が一の際の安全網として機能します。資金調達というよりも、リスクマネジメントを重視する企業に適した方式といえるでしょう。
一括ファクタリング
一括ファクタリングとは、複数の売掛金をまとめてファクタリング会社に譲渡する方式です。個別の債権ごとに契約する手間がなく、まとめて現金化できるため、取引量の多い企業に適しています。
例えば、月に何10件もの取引先を抱える製造業や卸売業では、一括で資金化することで事務負担を軽減できるほか、資金繰りの見通しも立てやすくなります。売掛先の承諾が必要となるため手続きはやや複雑ですが、透明性と効率性を両立できるのが特徴です。安定的な資金調達を求める企業にとって、実務的に使いやすい仕組みといえます。
国際ファクタリング
国際ファクタリングとは、海外との輸出入取引における売掛金を対象とした仕組みです。通常は輸出企業・輸入企業・輸出国のファクタリング会社・輸入国のファクタリング会社の4者間で行われます。
例えば、海外の取引先に商品を輸出したものの、入金までに数か月を要する場合、この方式を利用すれば早期に資金化でき、かつ回収不能リスクを抑えることができます。通貨や法制度の違いによる不安を軽減しながら、安全に国際取引を進められる点がメリットです。グローバルなビジネス展開を行う企業にとって、国際ファクタリングは資金確保と信用補完を両立できる有効な手段です。
医療ファクタリング
医療ファクタリングとは、病院やクリニックなどの医療機関が保有する「診療報酬債権」をファクタリング会社に売却し、早期に資金を得る仕組みです。診療報酬は通常、審査機関を経て入金までに2か月ほどかかるため、その間の資金繰りを補う手段として利用されています。
例えば、新しい医療機器の導入や人件費の支払いなど、短期的に多額の支出が発生する際に、この仕組みを活用すれば資金の流れを安定させることができます。国や保険者への請求に基づく確実な債権を扱うため、ファクタリング会社にとってもリスクが低く、医療業界特有のニーズに適した制度といえます。
リバースファクタリング(支払企業主導型ファクタリング)
リバースファクタリングとは、買掛金を支払う側の企業(発注企業)が主導して、取引先への早期支払いを実現する仕組みです。つまり、買掛金を有する受注企業が資金を早めに受け取れるよう、ファクタリング会社に支払処理を委託する形になります。
例えば、大手企業が下請け企業の資金繰りを支援するために導入すれば、取引先の経営安定にもつながります。通常のファクタリングとは逆の流れである点が特徴で、発注側・受注側の双方にメリットがあります。支払サイトの長期化を防ぎ、取引全体の健全性を保つ仕組みとして、近年注目を集めている方式です。
ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットとして、以下のような点があげられます。
- 売掛金を現金化できる
- 信用情報が不安でも資金調達できる
- 売掛金の未回収リスクを軽減できる
ここでは、それぞれのメリットについて具体的に解説します。
売掛金を現金化できる
ファクタリングの最大のメリットは、売掛金を早期に現金化できる点にあります。通常、取引先からの入金は請求後1〜2か月先になることが多く、その間の資金繰りに悩む企業も少なくありません。
例えば、月末に仕入れや人件費などの支払いが集中する場合でも、ファクタリングを利用すれば、売掛金をすぐに現金化して支払いに充てることができます。銀行融資のように担保や保証人を必要としないため、手続きも比較的スムーズです。入金を待つことなく運転資金を確保できることで、資金繰りの改善や新規取引への対応など、事業活動を安定して進めることが可能になります。
なお、売掛金についてはこちらの記事を参考にしてください。

信用情報が不安でも資金調達できる
ファクタリングは、銀行融資とは異なり「企業の信用力」ではなく「売掛先の信用力」を基準に審査される仕組みです。そのため、過去の業績や借入履歴に不安がある企業でも利用できる可能性があります。
例えば、創業間もない企業や一時的に赤字を計上している企業であっても、売掛先が安定した取引先であれば審査を通過できるケースがあります。こうした特徴から、従来の融資審査に通りにくい中小企業や個人事業主にとっても有効な資金調達手段といえます。信用情報に左右されずに必要な資金を確保できるため、事業の継続や拡大に柔軟に対応できる点が魅力です。
売掛金の未回収リスクを軽減できる
ファクタリングを利用すると、売掛金の回収リスクをファクタリング会社に移転できるため、取引先の倒産や支払い遅延による損失を防ぐことができます。例えば、長年取引してきた企業でも、経営状況が急に悪化して入金が滞るケースは珍しくありません。こうした場合でも、ファクタリング契約時に売掛金を譲渡していれば、企業側はすでに現金を受け取っているため影響を受けにくくなります。
特に、取引先の信用調査が難しい中小企業にとっては、リスク管理の手段としても効果的です。売掛金を単なる資金源ではなく、リスク分散の手段として活用できる点が、ファクタリングの大きな強みといえるでしょう。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのデメリットとして、以下のような点があげられます。
- 手数料がかかってしまう
- 債権譲渡登記が必要になる場合がある
- 資金調達は売掛金の金額の範囲内に限る
ここでは、それぞれのデメリットについて具体的に解説します。
手数料がかかってしまう
ファクタリングを利用する際には、資金を早期に得られる代わりに手数料が発生します。この手数料は、ファクタリング会社が負担する回収リスクや審査コストなどを反映したものです。
例えば、取引先の信用力が低い場合や2者間ファクタリングを選択した場合には、リスクが高いため手数料も上がる傾向があります。銀行融資に比べてコストは高くなるものの、スピーディーに現金を確保できる点を考慮すれば、緊急時や一時的な資金不足の解消には有効です。利用する際は、資金調達のスピードとコストのバランスを見極めることが重要となります。
債権譲渡登記が必要になる場合がある
ファクタリングの契約形態によっては、債権譲渡登記を行う必要が生じる場合があります。これは、売掛金の所有権を正式にファクタリング会社へ移転したことを第三者に証明するための手続きです。
例えば、複数の債権者が存在する状況や、2者間ファクタリングのように売掛先に通知しない契約では、譲渡の優先順位を明確にする目的で登記が求められることがあります。登記手続きには時間や費用がかかるほか、登記情報が公に閲覧可能となるため、取引先に資金繰りの状況を知られるリスクもあります。そのため、契約内容を十分に理解し、登記の必要性や影響を事前に確認しておくことが大切です。
資金調達は売掛金の金額の範囲内に限る
ファクタリングによる資金調達は、あくまで売掛金を早期に現金化する仕組みであるため、調達できる金額は売掛金の範囲内に限定されます。そのため、急激な設備投資や大規模な資金需要には対応しづらい点が課題です。
銀行融資のように将来の売上を見越した借入ができないため、短期的な運転資金や一時的なキャッシュフロー改善を目的とした活用が中心となります。売掛金の範囲を超えた資金調達を希望する場合は、他の手段と併用することが現実的な選択肢となるでしょう。
ファクタリングを利用する流れと必要書類
ファクタリングを利用する流れは以下のような手順で進みます。
- step1:申し込み
- step2:審査・契約
- step3:入金
ここでは、それぞれの流れと必要書類について具体的に解説します。ぜひ、ファクタリングの検討をする際の参考にしてください。
step1:申し込み
ファクタリングを利用する最初のステップは、ファクタリング会社への申し込みです。申し込み時には、企業情報や売掛先の取引内容、売掛金の金額などを提出し、サービス利用の可否を判断してもらいます。
例えば、オンライン完結型のファクタリングでは、必要書類をウェブ上でアップロードするだけで申し込みが完了するケースもあります。一般的に提出が求められるのは、請求書・通帳のコピー・決算書などの基本資料です。申し込み段階で情報を正確に提示しておくことで、その後の審査や契約をスムーズに進められます。資金調達を急ぐ場合でも、申し込み内容の整備が迅速な審査結果につながる重要なポイントとなります。
step2:審査・契約
申し込み後は、ファクタリング会社による審査が行われ、問題がなければ契約手続きに進みます。審査では、利用企業の財務状況よりも売掛先の信用力が重視されるのが特徴です。
例えば、売掛先が上場企業や官公庁のように支払い能力の高い相手であれば、比較的短期間で審査が通るケースが多く見られます。審査が完了すると、ファクタリング会社から提示された契約条件や手数料率を確認し、双方が合意すれば契約成立となります。
この段階で債権譲渡の通知や登記が必要になる場合もあり、契約内容を十分に理解しておくことが重要です。審査や契約の過程を丁寧に進めることで、トラブルを防ぎ、安心して資金化に進めます。
step3:入金
契約が締結されると、ファクタリング会社から売掛金に基づく資金が入金されます。入金スピードは契約形態や会社によって異なります。
例えば、必要書類がすべて揃っており、売掛先の信用力が高い場合には、審査から入金まで数時間から数日で完了することもあります。入金金額は売掛金の総額から手数料を差し引いた金額で、残りの売掛金は売掛先から支払いがあった際にファクタリング会社へ渡る仕組みです。
資金が入金された後は、取引先への通知や会計処理を正確に行うことが求められます。こうして、申し込みから入金までの流れを理解しておくことで、資金調達の計画を立てやすくなります。
ファクタリングを利用する際の注意点とポイント
ファクタリングを利用する際の注意点とポイントとして、以下のような点があげられます。
- 2者間ファクタリングでは一括で送金する必要がある
- 3者間ファクタリングでは売掛先の承諾が必要になる
- 悪徳なファクタリング会社が存在する
ここでは、それぞれの注意点やポイントについて具体的に解説します。
2者間ファクタリングでは一括で送金する必要がある
2者間ファクタリングでは、売掛先に通知を行わない代わりに、取引企業が売掛金の入金を受け取った後、ファクタリング会社へ一括で送金する義務があります。この仕組みにより、売掛先との関係性を維持できる一方で、送金の遅れや未払いが発生するとトラブルにつながるリスクもあります。
例えば、売掛先からの入金時期が予想より遅れた場合、ファクタリング会社への送金が滞り、追加の手数料や信用低下を招くおそれがあります。そのため、資金の流れを正確に把握し、送金スケジュールを厳守することが求められます。利便性が高い方式だからこそ、契約上の義務をしっかり理解し、誠実な対応を心がけることが大切です。
3者間ファクタリングでは売掛先の承諾が必要になる
3者間ファクタリングは、売掛先にも取引の存在を通知し、承諾を得たうえで契約が成立する方式です。このため、取引の透明性が高く、債権の二重譲渡などのリスクを防ぐことができます。
例えば、売掛先が大手企業や自治体の場合、承諾を得ることでファクタリング会社の信頼性も確保され、より低い手数料で契約できるケースがあります。ただし、売掛先によっては「ファクタリング=経営難」という誤解を持たれる可能性もあるため、事前に丁寧な説明を行うことが大切です。手続きの手間は増えますが、信頼性を重視する企業にとっては、安全性の高い選択肢といえるでしょう。
悪徳なファクタリング会社が存在する
ファクタリング市場の拡大に伴い、違法な高金利を課したり、実態は貸金業であるにもかかわらずファクタリングを装う悪徳業者も存在します。こうした業者を利用すると、資金調達どころか経営悪化を招くおそれもあるため注意が必要です。
信頼できる業者を見分けるには、契約内容の明確さや実績、登記の有無などをしっかり確認することが重要です。安心して取引を進めるためには、複数社の見積もりを比較し、法令を遵守した適正なサービスを選ぶ姿勢が欠かせません。
まとめ
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる有効な資金調達手段として、多くの企業で活用が進んでいます。銀行融資と異なり、担保や保証人を必要としない柔軟さが魅力ですが、契約方式やサービス内容によって仕組みや手数料が異なる点には注意が必要です。
例えば、スピードを重視するなら2者間方式、コストを抑えたいなら3者間方式といったように、自社の資金繰り状況に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。また、信頼できるファクタリング会社を見極めることも、安全に活用するうえで欠かせません。目的やリスクを正しく理解し、計画的に活用することで、ファクタリングは事業の安定と成長を支える強力な資金戦略となるでしょう。
弊社では、ファクタリングサービスだけではなく、経理代行と記帳代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な記帳業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。
ファクタリングに関するよくあるご質問
ファクタリングについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、ファクタリングに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
ファクタリングとはどういう意味ですか?
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金を専門の業者に売却し、早期に現金化する取引を指します。例えば、入金まで1か月かかる売掛金をすぐに資金化できるため、運転資金の確保やキャッシュフローの安定に役立ちます。借入ではなく売却の形を取るため、財務上の負担を増やさずに資金繰りを改善できる点が特徴です。
ファクタリングは違法ですか?
ファクタリングは違法ではありません。売掛債権を売却する取引であり、貸金業法の「融資」には当たりません。ただし、実態が貸付に近い形で高額な手数料を要求したり、強引な回収を行ったりする悪質業者も存在します。契約内容や手数料率、入金スピード、債権譲渡の手続きを確認し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
ファクタリングは何のために利用しますか?
ファクタリングは、主に入金までのタイムラグを解消し、資金繰りをスムーズにするために利用されます売掛金の入金前に仕入代金や人件費などの支払いが発生する場合、早期資金化によって支払い遅延を防ぐことができます。また、銀行融資とは異なり、審査が比較的早く、借入金として負債計上されない点もメリットです。