経理職は、日々の記帳や決算業務を行うだけでなく、キャリアの選択肢を広げやすい職種でもあります。例えば、経理の専門性を高めてスペシャリストを目指す道や、管理職として組織運営に携わる道、さらにはCFOや経営企画、財務、コンサルタントなどへキャリアを発展させることも可能です。
一方で、近年はAIやDXの進展によって、単純作業を中心とした業務は自動化が進みつつあります。そのため、これからの経理には、数字を経営に活かす分析力や、システム活用力、課題解決力などがより求められるようになっています。本記事では、経理の代表的なキャリアプランを紹介するとともに、AI時代でも活躍し続けるために必要なスキルや、キャリア設計のポイントについて解説します。
目次
経理の代表的な10のキャリアプラン
経理の代表的な10のキャリアプランとして以下のような道があります。
- 経理主任やスペシャリストを目指す道
- 経理の管理職としてマネジメントを担う道
- 財務職へキャリアを広げる道
- CFO(最高財務責任者)を目指す道
- 経営企画職へキャリアを広げる道
- DX推進やAIを活用して業務改善を担う道
- 中小企業から大手企業へ転職する道
- 外資系企業へ転職する道
- 資格を取得し士業として独立開業する道
- 会計コンサルタントとして外部から支援する道
ここでは、それぞれのキャリアプランについて具体的に解説します。
経理主任やスペシャリストを目指す道
経理主任やスペシャリストを目指す道は、経理としての専門性を高めながらキャリアアップを図る方法です。日次業務や月次決算だけでなく、税務申告や連結決算、原価計算など高度な実務を担当できるようになることで、社内での信頼や評価も高まりやすくなります。
例えば、上場企業で開示資料の作成や監査法人対応を経験すると、専門知識を持つ人材として重宝されるケースがあります。また、特定分野に強みを持つことで転職市場でも評価されやすくなり、将来的な選択肢を広げやすくなる点も特徴です。AIによる自動化が進むなかでも、複雑な会計判断や制度改正への対応は人材の知識が必要になるため、専門性を磨くことは長期的なキャリア形成にもつながります。
なお、経理の仕事内容についてはこちらの記事も参考にしてください。

経理の管理職としてマネジメントを担う道
経理の管理職としてマネジメントを担う道は、組織運営や人材育成に関わりながら経理部門全体を支えるキャリアです。経理課長や部長になると、自身で仕訳や入力作業を行うだけではなく、部下の進捗管理や業務改善、他部署との調整なども重要な役割になります。
例えば、決算スケジュールの見直しを行い、業務負担を分散させることで残業削減につなげるケースもあります。また、経営陣へ財務状況を報告したり、内部統制の整備を進めたりする場面も増えるため、コミュニケーション能力や判断力も求められます。AIやシステムが普及しても、組織全体をまとめて業務を円滑に進める役割は残り続けるため、管理職経験は将来的な市場価値の向上にもつながります。
財務職へキャリアを広げる道
財務職へキャリアを広げる道は、会社のお金を管理しながら資金戦略に関わるキャリアです。経理が過去の取引を記録や管理をする役割を担うのに対し、財務は将来の資金計画や資金調達を担当する点に特徴があります。
例えば、銀行との融資交渉や資金繰り表の作成、投資計画の検討などを行うことで、経営に近い立場で業務へ関わる機会が増えます。また、企業によっては為替管理や投資運用などを担当するケースもあり、金融知識が求められる場面もあります。
経理経験があると財務数値への理解を活かしやすいため、比較的挑戦しやすいキャリアのひとつです。資金面から会社を支える役割はAIだけでは完結しにくく、今後も一定の需要が見込まれる分野といえます。
なお、財務についてはこちらの記事も参考にしてください。

CFO(最高財務責任者)を目指す道
CFO(最高財務責任者)を目指す道は、企業経営に深く関わりながら財務戦略を担うキャリアです。CFOは単なる経理責任者ではなく、資金調達や投資判断、経営戦略の立案など幅広い役割を担います。そのため、会計知識だけでなく、経営や金融に関する理解も必要になります。
例えば、金融機関との交渉を通じて資金繰りを改善したり、M&Aの検討を進めたりする場面では、数字をもとに経営判断を支える力が求められます。また、経営陣の一員として事業計画の策定にも関わるため、将来を見据えた視点も重要です。近年はスタートアップ企業でもCFO人材への需要が高まっており、経理経験を活かしながら経営側へキャリアを広げたい人にとっておすすめの選択肢になっています。
経営企画職へキャリアを広げる道
経営企画職へキャリアを広げる道は、会社全体の成長戦略や事業計画に関わるキャリアです。経理で培った数字への理解を活かしながら、売上計画や予算管理、新規事業の検討などを行う点が特徴です。
例えば、各部門の予算実績を分析し、利益改善につながる施策を提案することで、経営判断を支援する役割を担います。また、市場動向や競合分析を行いながら中長期的な戦略を立案する場面もあるため、会計知識に加えて情報収集力や分析力も必要になります。
経営企画は経営陣との距離が近く、会社全体を俯瞰して考える力が求められる職種です。経理経験を土台にしながら、より経営に近い立場で働きたい人に適したキャリアプランといえます。
DX推進やAIを活用して業務改善を担う道
DX推進やAIを活用して業務改善を担う道は、経理業務の効率化や生産性向上を支援するキャリアです。近年は会計ソフトやRPA、AIなどの導入が進み、単純入力作業の自動化が加速しています。そのなかで、システム導入や運用改善を主導できる人材への需要が高まっています。
例えば、請求書処理をAIで自動化し、入力ミスや作業時間を削減することで、経理部門全体の負担軽減につなげるケースがあります。また、現場の課題を整理し、業務フローを改善する力も重要です。単にツールを使うだけではなく、経理実務を理解したうえで最適な仕組みを考えられる人材は、今後も企業内で重宝されやすくなります。AI時代の新たな経理キャリアとして注目されている分野です。
なお、経理のDX化についてはこちらの記事も参考にしてください。

中小企業から大手企業へ転職する道
中小企業から大手企業へ転職する道は、より大規模な経理業務や高度な会計実務に挑戦するキャリアです。中小企業では幅広い業務を担当することが多い一方で、大手企業では連結決算や開示業務、内部統制など専門性の高い業務に関われる機会があります。
例えば、上場企業へ転職することで、有価証券報告書の作成や監査法人対応など、これまで経験できなかった実務を担当するケースがあります。また、大手企業では研修制度や分業体制が整っている場合も多く、専門知識を深めやすい環境がある点も特徴です。一方で、業務範囲が限定される場合もあるため、自身がどのようなスキルを伸ばしたいかを考えながら転職先を選ぶことが重要になります。
なお、大手企業の経理業務についてはこちらの記事も参考にしてください。

外資系企業へ転職する道
外資系企業へ転職する道は、グローバルな環境で会計や財務の経験を活かすキャリアです。外資系企業では、英文メールや海外拠点とのやり取りが発生することも多く、英語力や国際会計基準への理解が求められる場面があります。
例えば、海外本社向けにレポートを作成したり、海外チームとオンライン会議を行ったりする業務を担当するケースがあります。また、成果主義の文化を採用している企業も多く、年齢より実力や成果を重視する傾向がある点も特徴です。そのため、専門知識や実務経験を活かしてキャリアアップを目指したい人に向いています。一方で、スピード感のある業務環境に対応する柔軟性も必要になるため、自身の働き方に合うかを確認することも大切です。
資格を取得し士業として独立開業する道
資格を取得し士業として独立開業する道は、経理経験を活かしながら専門家として活動するキャリアです。代表的なものとしては、公認会計士や税理士、社会保険労務士などがあり、資格取得後に独立して事務所を開業する人もいます。
例えば、税理士として中小企業の税務申告や経営相談を支援したり、会計面から事業運営をサポートしたりするケースがあります。また、独立後は働き方の自由度を高めやすい一方で、営業活動や顧客対応なども自ら行う必要があります。
そのため、専門知識だけではなく、コミュニケーション能力や信頼関係を築く力も重要になります。経理で培った実務経験は顧客対応にも活かしやすく、将来的に独立を視野に入れている人にとっておすすめの選択肢です。
会計コンサルタントとして外部から支援する道
会計コンサルタントとして外部から支援する道は、複数の企業に対して会計や経営面の課題解決を支援するキャリアです。企業ごとに抱える課題は異なるため、経理実務だけでなく分析力や提案力も求められます。
例えば、経理フローの見直しによって決算早期化を支援したり、会計システム導入のサポートを行ったりするケースがあります。また、クライアント企業の経営者と直接やり取りする場面も多く、数字をわかりやすく説明する力も重要です。
さまざまな業界や企業規模に関われるため、幅広い経験を積みやすい点も特徴といえます。経理経験を土台にしながら、より多角的な視点で企業支援に携わりたい人に適したキャリアプランです。
なお、会計や経理のコンサルタントについてはこちらの記事も参考にしてください。

AI時代に淘汰されない経理のスキル
AI時代に淘汰されない経理のスキルとして、以下のような能力が求められます。
- 自社の経営視点で数字を読み解く分析力
- 課題を見つけてAIに問いをかける能力
- 会計や税務の専門知識と制度改定への対応力
- システム導入などプロジェクトの推進力
- トラブルやイレギュラーへの対応の判断力
- 新たな時代でも学び続ける力
ここでは、それぞれの経理のスキルについて詳しく解説します。
自社の経営視点で数字を読み解く分析力
自社の経営視点で数字を読み解く分析力は、AI時代でも求められ続ける経理スキルです。単に売上や利益を集計するだけではなく、その数字が経営へどのような影響を与えているかを理解し、課題や改善点を見つける力が重要になります。
例えば、売上が伸びていても利益率が低下している場合、原価や販管費の増加原因を分析し、経営陣へ改善案を提案することが求められます。また、数字の変化を読み取りながら将来のリスクを予測する役割もあります。
AIはデータ集計や分析補助を行えますが、最終的に経営判断へ結びつけるには、事業内容や現場状況を理解した人材の視点が必要です。そのため、経営と数字を結びつけて考える力は、今後も経理人材の価値を支える重要なスキルになります。
課題を見つけてAIに問いをかける能力
課題を見つけてAIに問いをかける能力は、これからの経理に求められる重要なスキルです。AIは大量のデータ処理や文章作成を支援できますが、何を分析し、どのような結果を得たいのかを指示するのは人の役割になります。そのため、現場の課題を把握し、適切な指示を出せる人材ほどAIを効果的に活用しやすくなります。
例えば、経費精算業務の負担が大きい場合に、どの工程で時間がかかっているのかを整理し、AIへ改善案を求めることで効率化につながるケースがあります。また、AIが出した回答をそのまま採用するのではなく、内容の妥当性を確認する視点も必要です。AIを単なる便利なツールとして使うだけでなく、課題解決へ活かす思考力を持つことが、今後の経理キャリアでは重要になります。
会計や税務の専門知識と制度改定への対応力
会計や税務の専門知識と制度改定への対応力は、AI時代でも経理に欠かせないスキルです。会計基準や税制は定期的に改正されるため、単純な入力業務だけではなく、制度の内容を理解して適切に処理できる人材が求められます。例えば、電子帳簿保存法やインボイス制度の導入時には、経理フローや保存方法を見直す必要があり、多くの企業で対応が求められました。
また、税務処理は企業ごとの状況によって判断が異なる場合もあるため、単純な自動化だけでは対応しきれないケースもあります。AIは情報収集や確認作業を支援できますが、最終的な判断には専門知識と実務経験が必要です。そのため、法改正へ継続的に対応しながら知識を更新できる人材は、今後も企業内で重要な役割を担いやすくなります。
システム導入などプロジェクトの推進力
システム導入などプロジェクトの推進力は、経理の業務改善を進めるうえで重要なスキルです。近年はクラウド会計ソフトや経費精算システムなどの導入が進んでおり、経理担当者が中心となってプロジェクトを進める場面も増えています。
例えば、新しい会計システムを導入する際には、現場の課題を整理したうえで要件をまとめ、ベンダーとの調整や社内説明を行う必要があります。また、導入後の運用ルール整備や社員教育まで関わるケースも少なくありません。
単にシステム知識を持つだけではなく、関係部署と連携しながら計画的に進行管理を行う力が求められます。AIやDXが進展する時代では、業務を理解したうえで改善を主導できる経理人材の需要が高まりやすくなると考えられます。
トラブルやイレギュラーへの対応の判断力
トラブルやイレギュラーへの対応の判断力は、AIでは代替しにくい経理スキルのひとつです。経理業務では、通常処理だけでは対応できない問題が発生することもあり、その場の状況に応じた判断が求められます。
例えば、請求内容に誤りが見つかった場合や、急な制度改定によって処理方法を変更しなければならない場合には、関係部署と連携しながら適切な対応を進める必要があります。また、システム障害や入力ミスなどが発生した際には、影響範囲を確認しながら迅速に修正対応を行う力も重要です。
AIは定型業務の効率化には役立ちますが、想定外の状況に対して柔軟に判断することは得意ではありません。そのため、実務経験を通じて判断力を磨くことは、今後の経理キャリアでも大切になります。
新たな時代でも学び続ける力
新たな時代でも学び続ける力は、経理として長く活躍するために欠かせないスキルです。会計制度や税制だけでなく、AIやDX関連の技術も変化が続いているため、過去の知識だけで業務を続けることは難しくなっています。
例えば、新しい会計システムが導入された際に、自ら操作方法や運用ルールを学び、業務へ取り入れられる人材は組織内でも重宝されやすくなります。また、制度改正や業務改善の情報を継続的に収集することで、変化への対応力も高まります。
学び続ける姿勢は資格取得だけに限らず、実務経験を通じて知識を更新し続けることも含まれます。AI時代では環境変化のスピードが速くなるからこそ、自ら知識を吸収し続ける力が経理人材の価値を支える重要な要素になります。
なお、経理とAIの将来性についてはこちらの記事も参考にしてください。

経理としてキャリアプランを立てるときのポイント
経理としてキャリアプランを立てるときのポイントとして、以下のような点を意識してみましょう。
- 5年後や10年後の理想像をイメージする
- 自分の強みと弱みを棚卸しする
- 資格取得を目的とせずに実務経験を磨く
ここでは、それぞれのポイントについて具体的に解説します。
5年後や10年後の理想像をイメージする
5年後や10年後の理想像をイメージすることは、経理としてキャリアプランを考えるうえで重要なポイントです。将来的にどのような立場で働きたいのかを明確にすることで、今後身につけるべき知識や経験も見えやすくなります。
例えば、管理職を目指すのであればマネジメント経験や部門間調整のスキルが必要になり、CFOを目指すのであれば財務や経営戦略への理解も求められます。また、理想像を持たずに日々の業務だけを続けていると、将来的にキャリアの方向性に迷いやすくなる場合があります。
将来像は一度決めたら変えてはいけないものではなく、経験を積みながら見直していくことも大切です。中長期的な視点を持ちながら行動することで、自分に合ったキャリア形成につなげやすくなります。
自分の強みと弱みを棚卸しする
自分の強みと弱みを棚卸しすることは、経理として適切なキャリアプランを考えるために必要な作業です。現在のスキルや経験を整理することで、自分がどの分野に向いているのか、今後どの能力を補うべきかを把握しやすくなります。
例えば、決算業務や税務対応が得意な人は専門職としての道を伸ばしやすく、一方でコミュニケーション力や調整力に強みがある人は管理職や経営企画などにも適性がある場合があります。また、自分の弱みを把握しておくことで、必要な学習や経験を計画的に積みやすくなる点も重要です。客観的に自身を振り返ることで、将来の方向性が明確になり、転職や異動などの判断もしやすくなります。定期的にスキルや経験を見直すことは、長期的なキャリア形成にも役立ちます。
資格取得を目的とせずに実務経験を磨く
資格取得を目的とせずに実務経験を磨くことは、経理として市場価値を高めるうえで重要です。資格は知識を証明する手段として役立ちますが、実際の現場では業務を遂行する経験や対応力も重視されます。
例えば、簿記資格を持っていても、決算業務や税務対応、システム導入などの経験がなければ、実務面で評価につながりにくい場合があります。一方で、日々の業務を通じて幅広い経験を積むことで、イレギュラー対応や業務改善などにも柔軟に対応しやすくなります。また、資格取得をゴールにしてしまうと、学んだ知識を実務へ活かせないケースもあります。資格と実務経験をバランスよく積み重ねながら、自身の強みを増やしていくことが、将来的なキャリアの幅を広げることにつながります。
まとめ
経理のキャリアプランは、専門性を高める道だけではなく、管理職や財務、経営企画、DX推進、独立開業など幅広い選択肢があります。近年はAIやシステムの進化によって定型業務の自動化が進んでいますが、一方で、経営視点で数字を分析する力や、課題解決へ向けて業務改善を進める力の重要性は高まっています。
そのため、単に会計知識を身につけるだけではなく、実務経験を通じて判断力や対応力を磨き続けることが大切です。また、自身の強みや将来像を整理しながらキャリアを考えることで、目指す方向性も明確になりやすくなります。変化の多い時代だからこそ、学び続けながら柔軟にスキルを伸ばしていく姿勢が、長期的なキャリア形成につながるでしょう。なお、経理業務の負担や課題には、経理代行会社の活用もおすすめです。
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経理職のキャリアプランに関するよくあるご質問
経理職のキャリアプランについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、経理職のキャリアプランに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
経理の仕事のキャリアプランは何ですか?
経理の仕事のキャリアプランには、専門性を高める道と、経営に近い立場を目指す道があります。決算や税務、連結会計などの知識を深めて経理スペシャリストになる人もいれば、課長や部長として管理職を目指す人もいます。また、財務や経営企画、CFO、会計コンサルタントなどへキャリアを広げるケースもあります。
10年後を見据えた経理キャリアプランは何ですか?
10年後を見据えた経理キャリアプランでは、AI時代でも必要とされるスキルを意識することが重要です。単純な入力作業は自動化が進む一方で、経営視点で数字を分析する力や、業務改善を推進する力は今後も求められると考えられます。中長期的な目標を持ちながら、実務経験を積み重ねていくことが重要です。
なぜ経理の人材が不足しているのでしょうか?
経理の人材が不足している理由は、専門知識が必要である一方、業務範囲が年々広がっているためです。近年は会計や税務だけではなく、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応、DX推進なども求められるようになりました。そのため、実務経験を持ちながら新しい制度やシステムへ対応できる人材の需要が高まっています。