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ベンチャー企業の経理はどうすべき?創業初期に知っておきたい経理業務を解説
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ベンチャー企業の経理はどうすべき?創業初期に知っておきたい経理業務を解説

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ベンチャー企業において、経理業務は単なる数字処理にとどまりません。創業初期から適切な経理を行うことは、企業の健全な成長を支えることにつながります。

 

本記事では、ベンチャー企業が直面する特有の経理課題や、効率的な経理業務のためのポイントを紹介します。業務マニュアルの作成やフォーマット化、ITツールの導入などによる効率化の方法を具体的に解説します。また経理代行サービスを活用する方法についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

 

ベンチャー企業の経理業務

ベンチャー企業における経理業務には主に毎日行う仕事である「日次業務」、毎月行う仕事である「月次業務」、毎年行う仕事である「年次業務」があります。ここでは、それぞれの業務内容について詳しく解説していきます。

 

ベンチャー企業の経理における日次業務

 

ベンチャー企業の経理における日次業務は、企業の資金状況を正確に把握し、日々の取引の記録をスムーズに進めるための重要な作業です。具体的には、銀行口座の入出金の確認や記帳、売上や経費の伝票整理、請求書の発行や管理などが含まれます。

 

経理の日次業務は、現金の流れを適切に管理し、月次業務や年次業務につながる重要な役割を果たします。また、急速に変化するベンチャー企業の環境では、取引先への支払いや入金確認をスピーディに行い、柔軟な資金繰りをすることが求められます。効率化につながるツールやシステムを活用することで、日次業務を短時間で正確に処理し、経営層に必要なデータを提供できる体制を整えていきましょう。

 

ベンチャー企業の経理における月次業務

 

ベンチャー企業の経理における月次業務は、日次業務の積み重ねをもとに、1か月間の収支を総括し、財務状況を明確にする作業です。主要なタスクとして、仕訳帳や元帳の確認、月次決算書の作成、経費精算の締め処理があげられます。

 

月次業務は、経営者が迅速かつ正確に意思決定を行うための情報源となります。特にベンチャー企業では、キャッシュフローの管理が事業継続の肝になるため、損益計算書や資金繰り表の作成は欠かせません。

 

また、税務申告や金融機関向けの報告書作成が必要になる場合もあり、これらの対応が遅れると信頼性の低下や資金調達の遅延を招く可能性があります。そのため、効率的な業務の設計と正確なデータ管理が重要となります。

 

ベンチャー企業の経理における年次業務

 

ベンチャー企業の経理における年次業務は、年間の経営活動を総括し、外部機関や投資家に対して透明性を確保するための要となる作業です。具体的には、決算書類の作成、税務申告書の準備、監査対応などが挙げられます。

 

特に、株主や投資家からの期待が高いベンチャー企業では、財務諸表を通じて事業の成長性や健全性を明確に示すことが求められます。また、税制や会計基準の改定にも柔軟に対応し、適正な処理を行うことが重要です。

 

一方で、従業員に関わる年末調整や法定調書の提出といった業務も忘れてはなりません。これらのタスクを効率よく進めるためには、年度計画を事前に策定し、適切なタイムマネジメントを行うことが欠かせません。

ベンチャー企業が直面する経理の課題

ベンチャー企業が直面する経理の課題として主に以下のような点があげられます。

 

  • 経理の業務フローが整っていない
  • 専任の経理担当者がいない
  • 経営者からの要望への柔軟性が求められる
  • 手入力などの作業が多い
  • 社内に経理のノウハウがない

 

ここでは、それぞれの課題が及ぼすリスクについて詳しく解説していきます。

 

経理の業務フローが整っていない

 

ベンチャー企業では、急速な事業拡大や環境変化に対応するため、経理の業務フローが整っていないことが少なくありません。特に創業初期には、業務の優先順位が売上拡大や顧客対応に偏りがちで、経理作業が後回しになる傾向があります。

 

その結果、支払いや請求のスケジュールが曖昧になったり、必要な書類が適切に管理されていなかったりする問題が発生します。業務フローがあいまいな状況は、業務効率の低下を招くだけでなく、資金繰りの悪化や信用低下のリスクにもつながります。

 

そのため、ベンチャー企業では、適切な業務フローの整備が課題であり、業務内容の標準化や役割分担の明確化、そしてデジタルツールの導入が解決の糸口になるでしょう。

 

専任の経理担当者がいない

 

ベンチャー企業の経理業務において、専任の担当者がいないケースは非常に多く見られます。このような状況では、経理作業が他の部署や経営者自身の業務と兼務されることが一般的であり、結果として経理業務が後回しにされることも少なくありません。

 

さらに、経理業務のミスや抜け漏れが発生しやすくなるため、正確な財務状況の把握や迅速な意思決定が難しくなる可能性があります。特に、資金調達や外部報告が重要となる場面では、経理体制の不備が大きな課題として浮き彫りになります。

 

そのため、経理担当者の採用や経理代行会社への相談を行うことが、課題の解決につながるでしょう。

 

経営者からの要望への柔軟性が求められる

 

ベンチャー企業では、経営者からの要望が頻繁に変わることが、経理部門にとって大きな課題となります。新規事業や戦略の変更に伴い、経理業務の優先順位や内容がたびたび変化するため、業務が混乱しやすくなります。

 

例えば、急なレポート作成や特定の取引データの抽出依頼が増えると、日常業務に支障をきたし、締め切りが遅れることも考えられます。また、頻繁な要望変更は、経理担当者にストレスを与えるだけでなく、作業の正確性を低下させるリスクも高めます。

 

経営者の要望がコロコロ変わる状況では、経営者との綿密なコミュニケーションと、要望を効率的に処理するための柔軟な業務設計が求められます。

 

手入力などの作業が多い

 

手入力などのアナログな作業が多いことも、ベンチャー企業の経理業務における典型的な課題です。これには、請求書の記録や経費の仕訳処理、銀行明細の転記作業などが含まれ、膨大な時間と労力がかかります。

 

さらに、手作業は人的ミスが発生しやすく、データの正確性や一貫性を欠く可能性があります。これにより、後の財務分析や税務申告にも悪影響を及ぼしかねません。

 

また、ベンチャー企業では事業のスピードが求められるため、非効率な作業が足かせになることが多いです。クラウド会計ソフトや自動化ツールを導入することで、手入力の作業を削減し、業務全体の効率を向上させることが重要です。

 

社内に経理のノウハウがない

 

社内に経理のノウハウが不足していることも、ベンチャー企業が直面する大きな課題です。特に創業間もない企業では、経理に関する知識や経験が豊富な人材を確保する余裕がなく、業務が属人的かつ非効率に進められることが一般的です。

 

その結果、税務対応や決算作業など、専門知識を要する業務でミスや遅延が発生しやすくなります。また、法規制の変更に適切に対応できないリスクも伴います。

 

ノウハウ不足の課題を克服するには、経理代行会社や経理コンサルティング会社に相談をしたり、オンライン研修やセミナーを受講したりしてみて、社内にノウハウを蓄積していきましょう。

ベンチャー企業の経理における注意点

ベンチャー企業の経理において以下のような点にも注意が必要です。

 

  • 現金の管理を記録しておく
  • 記帳や仕訳はこまめに行う

 

ここでは、それぞれの注意点について具体的に解説していきます。ぜひ、ベンチャー企業の経理を担当されている方は参考にしてみてください。

 

現金の管理を記録しておく

 

ベンチャー企業において、現金の管理を正確に記録することは、健全な経営を維持するための重要な注意点です。特に創業間もない時期には、現金の流れがシンプルである反面、日々の取引を記録する習慣が欠けている場合が多く見られます。その結果、小額の支払いが累積し、後から経理処理を行う際に混乱を招くことがあります。

 

現金の流れを管理するためには、入出金が発生するたびに記録を行い、レシートや領収書を適切に保管することが大切です。また、現金出納帳を定期的に更新し、銀行口座の残高とも照合することで、不正や記録漏れを防ぐことができます。

 

さらに、現金管理における透明性を確保するために、少額の支出でも記録を徹底し、必要に応じて経理ソフトの導入を検討することもおすすめです。

 

記帳や仕訳はこまめに行う

 

記帳や仕訳をこまめに行うことは、ベンチャー企業の経理において見落とされがちながら重要な注意点です。多忙な日々の中で記帳作業を後回しにすると、取引内容が不明確になり、後から正確な記録を再現することが困難になる場合があります。そのため、日々発生する取引について、その都度記録を行う習慣をつけることが大切です。

 

また、こまめな記帳は、月次決算や税務申告の準備をスムーズに進めるだけでなく、経営者がスピーディに意思決定を行うために大切なデータとしても活用されます。

 

特に、仕訳作業においては、勘定科目を適切に選び、法的要件に準拠した記録を心がける必要があります。効率的な作業のためには、クラウド型の会計ソフトや自動仕訳機能を活用することで、手間を削減しつつ正確性を確保することがおすすめです。

ベンチャー企業の経理を効率化するポイント

ベンチャー企業の経理を効率化するためには、以下のようなポイントを意識しましょう。

 

  • 業務マニュアルを作成する
  • 申請書類をフォーマット化する
  • 経理の担当者を採用する
  • ITツールを導入する
  • 経理代行サービスを活用する

 

ここでは、それぞれの効率化ポイントについて詳しく解説していきます。

 

業務マニュアルを作成する

 

ベンチャー企業の経理業務を効率化するためには、業務マニュアルの作成が欠かせません。業務が属人的になりがちなベンチャー企業では、担当者の交代や増員が発生すると、業務の引き継ぎに手間取る場合があります。これを防ぐためには、日次、月次、年次ごとの具体的な手順を文書化し、誰が担当しても同じ基準で作業が進む体制を整えることが重要です。

 

また、マニュアルを作成する過程で業務の無駄や改善点が見つかることもあり、結果的に業務全体の効率向上にもつながります。さらに、マニュアルは経理業務の一貫性を保ち、ミスを防ぐための重要なツールとして機能します。加えて、定期的に内容を見直し、業務の変化や法改正に対応させることで、実用性を維持することも必要です。

 

なお、経理のマニュアル化についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理マニュアルの作り方!作成時の注意点とマニュアル化の重要性を解説
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申請書類をフォーマット化する

 

経理業務を効率化するうえで、申請書類をフォーマット化することは効果的な取り組みといえるでしょう。経費精算や請求書、領収書などの書類が統一されていないと、確認作業に余計な時間がかかり、ミスが発生しやすくなります。

 

一方で、フォーマットを標準化することで、記入漏れや不備を防ぐことができ、経理担当者の作業負担を軽減できます。また、フォーマットには必要な情報項目をあらかじめ設定し、申請者がスムーズに記入できる仕組みを整えることで、処理スピードが大幅に向上します。

 

さらに、デジタル化されたフォーマットを利用すれば、データの集計や分析も効率的に行えるため、企業全体の生産性向上にもつながります。

 

経理の担当者を採用する

 

ベンチャー企業の成長に伴い、経理業務の負担が増大することは避けられません。そのため、専門知識を持つ経理の担当者を採用することは、業務効率化の重要なポイントとなります。経理のプロがいれば、財務諸表の作成や税務対応がスムーズに進み、経営者が安心して事業の拡大に専念できる環境が整います。

 

また、経理担当者の存在は、業務の正確性を向上させるだけでなく、資金繰りやコスト管理に関する的確なアドバイスもできるため、経営戦略の質を高める役割も果たします。採用後は、業務内容や優先順位を明確にし、担当者が最大限の能力を発揮できる体制を築くことが重要です。

 

ただし、経理の採用は難しいともされています。詳細はこちらの記事でも触れていますので、参考にしてください。

 

経理の採用が難しい6つの理由とは?生じる弊害と採用の見直しポイントを解説
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ITツールを導入する

 

経理業務を効率化する上で、ITツールの導入は効果的な手段です。特に、クラウド型会計ソフトや経費精算システムを活用することで、手作業によるミスを削減し、作業時間を大幅に短縮することができます。

 

また、リアルタイムでデータを共有できる機能を持つツールは、経営陣がスピーディに財務状況を把握するのに役立ちます。さらに、AI技術を活用したツールでは、自動仕訳や予測分析など、従来は手間がかかっていた作業を簡略化できるため、より高度な経理業務が実現します。

 

ITツールの導入にあたっては、自社の業務フローに合ったツールを選定し、社員への研修を行うことで、効果的に活用することが可能になります。なお、経理のIT化についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理部門をIT化する方法!業務効率化のメリット・デメリットを解説
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経理代行サービスを活用する

 

経理業務を効率化するために、経理代行サービスを活用することは、特にリソースの限られたベンチャー企業にとっておすすめです。専門業者に業務を委託することで、経理担当者を置くことなく、正確で迅速な業務処理が可能になります。

 

また、税務や決算などの専門知識が必要なタスクも安心して任せることができるため、内部リソースを本業に集中させることができます。

 

さらに、外部の経理専門家によるサポートは、最新の会計基準や税制変更に対応する上でも非常に効果的です。ただし、経理代行を活用する際は、信頼できる業者を選び、自社の規模にあった契約内容を設定することが、長期的な効率化と信頼関係の構築につながります。

 

経理代行サービスについてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理代行とは?サービス内容・メリット・選び方を詳しく解説
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まとめ

ベンチャー企業の経理では、専任担当者がおらず、業務フローが整っていないなどの課題があります。そのため、経理担当者には、手作業による入力や、複数の業務を兼任しながら進めていく必要があります。

 

慌ただしいベンチャー企業の経理業務は、マニュアル化やフォーマット化によって効率化が可能です。また、経理の担当者を採用しづらい場合は、経理代行会社に依頼することもひとつの手です。

 

弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

ベンチャー企業の経理に関するよくあるご質問

ベンチャー企業の経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、ベンチャー企業の経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

経理部門の立ち上げに必要なことは何ですか?

経理部門の立ち上げには、業務フローの設計、専任スタッフの配置、適切な会計ソフトの導入、業務マニュアルの整備が必要です。また、法令遵守の意識と外部専門家のサポート体制も重要です。さらに、経営者や他部門との連携を強化し、効率的で透明性のある業務環境を構築することも欠かせません。

ベンチャー企業で経理が大変な理由は何ですか?

ベンチャー企業では、経理担当者が不在または兼務が多く、業務量が幅広いため、効率化が進んでいないことが課題です。また、急速な事業展開に伴う資金繰りや報告体制の整備も負担となります。加えて、法改正や税務対応に追いつくための知識不足も、課題をさらに複雑化させる要因となっています。

ベンチャー企業の経理で経理で大切なことは何ですか?

ベンチャー企業の経理で大切なのは、正確な記帳や資金繰り管理、法令遵守、業務の効率化、そして経営者に迅速な財務情報を提供する体制を整えることです。また、クラウドツールの活用や経理代行会社との連携を図り、ミスや負担を減らしながら成長に対応する柔軟性を持つことも重要です。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。