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経理の採用が難しい6つの理由とは?生じる弊害と採用の見直しポイントを解説
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経理の採用が難しい6つの理由とは?生じる弊害と採用の見直しポイントを解説

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近年、経理担当者の採用が困難となるケースが増加しています。企業の成長には、正確かつスピーディな経理の処理が欠かせません。しかし、専門性が高く、幅広いスキルが求められる経理職は、採用市場において深刻な人材不足に直面しています。

 

本記事では、経理採用が困難となる要因を深掘りし、企業が抱える課題と、その解決策について解説します。また、経理担当者の不足は、企業の経営にどのような影響を与えるのかについても紹介します。ぜひ、経理の人材にお悩みの方は参考にしてください。

 

経理の採用市場における課題

そもそも経理の採用市場にはどのような課題があるのでしょうか。ここでは、経理の採用市場における以下のような課題について詳しく解説していきます。

 

  • 経理の求職者は売り手市場
  • 地方から都心への労働人口の集中
  • 即戦力が市場に出回らない

 

経理の求職者は売り手市場

 

経理職は、近年のビジネス環境の変化に伴い需要が増加しており、求職者にとって売り手市場となっています。企業の成長や事業拡大に伴い、財務状況の正確な把握と適切な管理が求められているため、経理の専門知識を持つ人材がますます重宝される傾向にあります。

 

また、コロナ禍以降のデジタル化の加速により、経理部門でもITスキルを持つ人材が求められていますが、こうしたスキルを兼ね備えた求職者が限られていることも売り手市場の要因です。

 

そのため、経験豊富な経理人材は高い給与や待遇を提示されやすく、企業側が採用活動に苦戦するケースが増えています。なお、経理のデジタル化やDX化についてはこちらの記事をご覧ください。

 

経理DXとは?始め方と導入するメリットや成功の秘訣を解説
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地方から都心への労働人口の集中

 

経理職に限らず、多くの業種において地方から都心部への労働人口の集中が進んでいます。これは、都市部に多くの企業が本社を構えていることや、高い給与水準とキャリアの成長機会が集中しているためです。

 

また、リモートワークの普及により地方在住者が都市部の企業で働くハードルが下がったとはいえ、依然として本社勤務を求める企業が多く、都心での勤務が求められるケースが少なくありません。

 

その結果、地方の優秀な人材が都市部に流出し、地方企業は経理人材の確保が一層困難になっています。さらに、地方では経理業務のデジタル化が遅れていることもあり、最新のスキルを持つ人材はより条件の良い都市部への転職を希望する傾向が強まっています。

 

即戦力が市場に出回らない

 

経理職において即戦力となる人材が市場に出回らないことは、企業にとって大きな課題です。特に、複雑化する税務処理や国際会計基準への対応が求められるなかで、高度なスキルを持つ人材が不足しているのが現状です。

 

一方で、新卒や未経験者の採用では時間をかけての育成が必要となり、すぐに実務を任せられるわけではないため、多くの企業が経験豊富な中途採用者を求めています。しかし、そのような即戦力人材は既に他の企業で活躍している場合が多く、新たな転職市場に現れることはなかなかありません。

 

さらに、リモートワークの普及により、既存の経理担当者が働きやすい環境を維持しているため、離職率が低下していることも人材流動性の低さに影響しています。

経理の採用が難しい6つの理由

経理の採用が難しい理由として、以下の6点があげられます。

 

  • 日本の生産年齢人口が減ってきている
  • ほかの事務職より覚えることが多い
  • ITやRPAに知見のある人材が少ない
  • 業界の特性を理解した経験者がいない
  • ミスへのプレッシャーに耐えられない
  • 知識以外にもコミュニケーション力が必要

 

日本の生産年齢人口が減ってきている

 

経理の採用が難しい理由のひとつに、日本の生産年齢人口の減少があります。少子高齢化の進展により、20代から50代の働き盛りの人口が年々減少しており、特に即戦力となる中堅層の不足が顕著です。

 

そのため、企業は新卒や若手人材を育成しようとする一方で、即戦力の中途採用者を求めても競争が激化し、思うように採用が進まない状況です。さらに、経理の分野では経験と専門知識が求められるため、若手の採用だけでは補えない面が多く、結果として人手不足が深刻化しています。

 

人口減少のトレンドは今後も続くと予測されており、企業は採用活動において新たな戦略を模索する必要があります。なお、経理の人手不足については、こちらの記事もご覧ください。

 

経理が人材不足と言われる理由とは?人手不足の課題と解決方法も紹介
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ほかの事務職より覚えることが多い

 

経理職は、ほかの事務職と比べても覚えることが多く、専門知識が求められるため採用が難しいとされています。帳簿の管理から税務申告、決算処理まで幅広い業務を担い、常に法改正や会計基準の変更に対応する必要があります。

 

これに加えて、企業ごとの会計システムや業務フローも習得しなければならず、新しく入社した人材が即戦力として活躍するまでに時間がかかります。そのため、採用側は未経験者の育成に対する負担を考慮し、経験者を求める傾向が強くなりますが、即戦力となる人材が少ないため、採用のハードルが高くなっているのです。

 

なお、経理が大変な理由についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

「経理はやめとけ」と言われる理由は?経理が大変な理由5選と解決策を紹介
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ITやRPAに知見のある人材が少ない

 

近年、経理業務の効率化を図るためにIT技術やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が進んでいます。しかし、これらの知見を持つ人材が不足していることが採用難の要因となっています。

 

従来の経理スキルだけでなく、システムの運用やデータ分析のスキルも求められるため、採用したい人材の募集要件が複雑化しています。

 

特に、中小企業ではIT人材の確保が難しく、既存の経理担当者に新たなスキル習得を求めるケースが多いため、負担が増大しています。また、ITやRPAに精通した人材は他業種でも引く手あまたであり、経理分野に特化した人材の採用競争が激化しているのです。

 

なお、経理のIT化については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

 

経理部門をIT化する方法!業務効率化のメリット・デメリットを解説
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業界の特性を理解した経験者がいない

 

経理の採用が難しい理由として、業界特有の知識や経験を持つ人材が不足している点が挙げられます。製造業、医療業界、IT業界など、それぞれの業界には独自の会計処理や税務ルールが存在するため、それらを理解した経理経験者が求められます。

 

しかし、業界特有の知識は簡単に身につくものではなく、経験を積んだ人材を確保するのは困難です。企業側は、業界の特性を理解している人材を採用することで即戦力を期待しますが、そのような人材が市場に少ないため、採用活動が難航しています。

 

その結果、異業種からの転職者に対しても、柔軟な研修制度を整えることが重要になっています。

 

ミスへのプレッシャーに耐えられない

 

経理業務はひとつのミスが企業の信用に関わるため、正確さが求められます。ミスが許されないというプレッシャーに耐えられないと感じる求職者も多く、結果として経理職を敬遠する傾向が見られます。

 

特に、決算期や税務申告の時期には業務量が急増し、限られた時間内で精度の高い業務をこなす必要があるため、精神的な負担が大きくなります。ストレス耐性が求められる一方で、長期的に働き続けるためには企業側も働きやすい環境の整備やサポート体制の強化が求められています。

 

几帳面な性格でありながら、社内外と円滑なコミュニケーションのとれる人材が求められるため、求職者の確保が難しくなっているのです。

 

知識以外にもコミュニケーション力が必要

 

経理職には専門知識に加え、コミュニケーション力が求められる点も採用が難しい理由のひとつです。経理担当者は社内外の関係者と連携し、時には数字の裏にあるビジネスの背景を説明することも求められます。

 

また、他部門との調整や取引先との交渉など、ただ数字を処理するだけではなく、人と関わる場面が多いため、円滑なコミュニケーションが欠かせません。そのため、単に経理の知識だけでなく、柔軟な対応力やロジカルな説明力が評価されるようになっています。

 

しかし、このようなスキルを兼ね備えた人材は少なく、結果的に企業が求める理想の人材像が高まり、採用の難易度が増しているのです。

経理が採用できない際に生じる弊害

経理が採用できない際に生じる弊害として以下のような点があります。

 

  • 社員の負担が大きくなる
  • ミスや不正が増える
  • 事業の成長性で見えづらくなる

 

それぞれどのような理由で企業側のデメリットとなるのか詳しく解説していきます。

 

社員の負担が大きくなる

 

経理の人材が採用できない場合、既存の社員に大きな負担がかかります。特に、決算期や税務申告の時期には業務量が急増するため、少ない人員で処理しなければならず、残業が常態化しやすくなります。

 

過度な業務負担は社員のモチベーション低下やストレスの増加を招き、最悪の場合には離職につながるリスクも高まります。また、他の業務に専念する時間が削られるため、経理担当者だけでなく、他部門にも影響が及び、全社的な生産性の低下を引き起こす可能性があります。

 

結果として、経理業務に追われるあまり、本来の業務改善や戦略的な経営支援に時間を割くことが難しくなり、企業全体の成長にブレーキがかかることも考えられます。

 

なお、ひとりの社員に経理の責任が集中してしまう「一人経理」という状態もあります。「一人経理」のリスクについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

一人経理に潜むリスクとは?業務負担度チェックリストと解決策
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ミスや不正が増える

 

経理人材の不足は、業務の過重負担によりミスのリスクを増大させます。経理の仕事は正確さが求められるため、ミスが発生すると会社の信用問題に直結し、最悪の場合、法的な問題に発展することもあります。

 

さらに、人手不足の環境ではチェック体制が甘くなりがちであり、内部統制が脆弱になることで不正行為のリスクも高まります。こうしたミスや不正が頻発すると、経営陣が経理データの信頼性を疑い、経営判断が遅れることにもつながります。

 

特に、決算や監査の際にミスが発覚すると、修正対応に追われるため余計なコストが発生し、企業の財務状況にも悪影響を及ぼしかねません。結果として、経理の採用不足が企業全体のリスク管理能力の低下を招いてしまうのです。

 

なお、ミスや不正のプレッシャーが経理担当者の悩みになることも少なくありません。経理担当者の悩みについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

経理担当者のよくある12の悩み!具体的な解決策も解説
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事業の成長性で見えづらくなる

 

適切な経理人材がいないと、事業の成長性を正確に把握することが難しくなります。経理部門は、企業の財務状況を的確に把握し、経営戦略に資するデータを提供する役割を担っていますが、人材が不足していると分析に必要なデータ収集や処理が滞ります。

 

その結果、経営陣はリアルタイムな情報に基づいた意思決定ができず、ビジネスチャンスを逃す可能性が高まります。また、資金繰りやコスト管理の不備が原因で、無駄な支出が発生し、利益率の低下にもつながります。

 

経理の人員不足は単なる事務処理の遅れに留まらず、企業の成長戦略全体に影響を与えるため、早急な対策が必要です。そのため、経理の担当者が退職する前にしっかりと引き継ぎをしておくことも大切です。経理業務の引き継ぎについては、こちらの記事をご覧ください。

 

経理の引き継ぎはどう進める?マニュアル作成のポイントや注意点を解説
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経理の採用に苦戦する企業が見直すポイント

経理の採用に苦戦する企業は多くあります。企業側が経理の採用活動で見直すべきポイントは以下のとおりです。

 

  • 求人における募集要項を具体的にする
  • 未経験者を採用して教育する
  • 経理代行会社へ依頼してみる

 

ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。

 

 

求人における募集要項を具体的にする

 

経理の採用に苦戦している企業は、まず求人の募集要項をより具体的に見直すことが重要です。求職者に対して明確な業務内容や求められるスキルを提示することで、ミスマッチを防ぎ、応募者の質を高めることができます。

 

例えば、使用する会計ソフトの種類や担当する業務範囲、求める経験年数を明示することで、適した人材が応募しやすくなります。また、給与や福利厚生、リモートワークの可否などの条件も具体的に記載することで、他社との差別化を図ることができます。

 

その結果、求職者の応募意欲を高め、採用の効率化につながるでしょう。企業は自社の強みを打ち出し、求職者に魅力的な職場環境であることをアピールすることが重要です。

 

なお、経理の目的や役割を企業側が理解しておくことも大切です。経理の目的や役割についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理の役割と目的とは?会計・財務との違いや会社規模による役割の違い
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未経験者を採用して教育する

 

即戦力となる経験者の採用が難しい場合、未経験者を採用して自社で育成するという選択肢も有効です。未経験者であれば採用のハードルが下がり、広い層から人材を確保できる可能性が高まります。

 

また、研修制度を整え、社内での育成プランを充実させることで、長期的に優秀な経理人材を育てることができます。特に、若手の求職者に対しては、キャリアパスの明確化やスキルアップの機会を提供することで、定着率を向上させる効果も期待できます。

 

企業側にとっては、育成には時間とコストがかかるものの、自社に合った人材をじっくり育てることで、将来的には大きな戦力となるでしょう。なお、経理に必要なスキルについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

経理の将来性がないのは本当?理由となくなる業務や活躍できるスキルを解説
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経理代行会社へ依頼してみる

 

経理の採用が難航する場合、経理代行会社を利用するという手段もあります。専門のアウトソーシング業者に依頼することで、経理業務の一部または全部を外部に任せ、社内のリソースを効率的に活用することが可能です。

 

これにより、経理担当者の負担を軽減し、本来の業務に集中できる環境を整えることができます。また、経理代行会社は最新の会計基準や税法に精通しているため、質の高い業務が期待できるうえ、コスト削減にもつながります。

 

特に、中小企業やベンチャー企業にとっては、経理人材の採用リスクを回避し、迅速に経理機能を整備するための有効な選択肢となるでしょう。

 

なお、経理代行サービスについては、こちらの記事をご覧ください。

 

経理代行とは?サービス内容・メリット・選び方を詳しく解説
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まとめ

不足する経理の人材に対して、採用市場も激化しています。経理の採用が難しい理由として、日本の人口減少だけではなく、都心部への人口集中や、経理のキャリアを備えた人材が市場に出回りづらいという点があります。

 

また、経理担当者には、業務の知識だけではなく、業界理解やコミュニケーション能力など幅広いスキルが求められます点も、経理の採用の難しさにつながります。経理の採用に苦戦する企業が見直すべきポイントとして、募集要項の見直しや、未経験者の育成もありますが、経理代行会社へ相談することもひとつの手です。

 

弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

経理採用の難しさに関するのよくあるご質問

経理採用の難しさについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、経理採用の難しさに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

経理の採用は難しいですか?

経理の採用は難しいです。特に、経験豊富な即戦力を求める企業が多く、競争が激化しています。また、ITの知識が求められることが増え、従来の経理スキルだけでは不足とされるケースが多く、適切な人材を確保するのが困難になっています。さらに、経理の専門知識に加え、最新の法令に精通した人材も求められます。

経理はどういう人に向いていますか?

経理は細かい作業が得意で、正確さや注意力に自信のある人に向いています。また、数字に強く、責任感があり、時間管理ができる人が重宝されます。さらに、部門や取引先との調整も多いため、コミュニケーション力が高い人にも適しています。特に、継続的に学ぶ姿勢があり、変化に柔軟な人が長く活躍できる職種です。

経理のつらいことは何ですか?

経理の仕事でつらいのは、常に正確さを求められるプレッシャーです。ひとつのミスが会社全体の信用に影響を与えるため、時期によっては残業が増え、負担が大きくなります。また、法改正や業務の変化に対応するため、継続的な学習が求められます。さらに、突発的なトラブルへの対応もあり、問題解決能力が必要です。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。