会社設立は新たなスタートラインです。しかし、経理業務は多くの企業にとって頭を悩ませる問題のひとつです。「経理業務を効率化したい」、「専門知識がないので不安」といった悩みをお持ちの経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、会社設立後の経理業務をスムーズに進めるための方法をまとめて紹介します。経理業務のアウトソーシングや会計ソフトの活用など、様々な選択肢の中から、自社に最適な方法を選びましょう。
目次
そもそも経理とは?
経理とは、企業や団体においてお金の流れを管理や記録をし、経済活動の状況を正確に把握するための業務を指します。経理の役割は単なるお金の計算だけでなく、日々の取引の記録から、企業全体の財務状況の整理、さらには法的な財務報告書の作成まで幅広いものです。
例えば、売上や経費などの「仕訳」と呼ばれる処理を通して、帳簿に日々の取引が正確に記録され、月次や年次での損益や資産、負債の管理が行われます。
経理担当者は正確な数値管理を通じて、企業が適切な経営判断を下せるようサポートすることが重要な役割のひとつです。
また、税務申告や法令に基づいた報告義務のため、税理士や公認会計士と連携する場面も多くあります。そのため、経理が行う業務には多くの知識と専門性が求められ、ミスが許されないため慎重な対応が必須です。
なお、経理について詳しくはこちらの記事で解説しています。
会社設立後の経理業務で考えておきたいこと
会社設立後の経理業務で考えておきたいことは、主に以下の2点です。
- 誰が経理業務を行うのか?
- どのように経理を行うのか?
それぞれ、具体的にどのような手段があり、何を考えなければならないのか、確認していきましょう。
誰が経理業務を行うのか?
会社設立後の経理業務を行うには、以下2つのパターンが想定されます。
- 経営者が自ら経理業務を行う
- 経理の担当者が経理業務を行う
それぞれのパターンにおけるメリットやデメリットを紹介します。ぜひ、参考にしてください。
経営者が自ら経理業務を行う
経営者が自ら経理業務を行う場合、自社の財務状況を直接的に把握できるメリットがあります。特に創業間もない企業では、コストを抑えるために経営者が経理業務を兼務することも多いです。
経営者が自ら経理業務を行う場合は、キャッシュフローや収益状況をリアルタイムで管理でき、迅速な経営判断が可能です。しかし、経理は専門知識を要するため、適切な帳簿管理や法令対応を怠ると後に大きな問題を引き起こす可能性もあります。
そのため、経営に集中する時間が減少するリスクも考慮しつつ、効率的な時間配分が重要となります。
なお、起業したタイミングの経理については、以下の記事も参考にしてください。
経理の担当者が経理業務を行う
企業が経理業務を専門の担当者に任せることで、正確で効率的な財務管理が期待できます。経理担当者は会計知識や実務経験を有しており、適切な仕訳や帳簿の管理が可能です。これにより、経営者は本業に集中でき、企業の成長や戦略に時間を割くことができます。
さらに、税務申告や法的な書類作成もスムーズに行えるため、外部からの信頼性も高まります。ただし、社内に経理担当者を置くには人件費がかかるため、企業規模や経費とのバランスも考える必要があるでしょう。
なお、「一人経理」と呼ばれる、ひとりで全ての経理業務を行わなけれならない場合もあります。「一人経理」のリスクについては、以下の記事も参考にしてください。
どのように経理を行うのか?
具体的に経理業務はどのように行うのでしょうか。代表的な例として、以下の2つのパターンがあります。
- 会計ソフトを活用して経理を行う
- 経理代行を活用して経理を行う
ここでは、それぞれのパターンについて詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
会計ソフトを活用して経理を行う
会計ソフトを使用することで、経理業務が効率的に行えるようになります。特に、初心者でも操作しやすい設計が施されているため、日々の仕訳入力や帳簿管理が簡単になります。
また、自動で仕訳の提案を行ってくれる機能を持つソフトもあり、経理の知識が十分でない場合でもミスを減らし、正確な管理が可能です。さらに、クラウド型の会計ソフトならば、どこからでもアクセスできる利便性もあり、経理業務の負担軽減に大いに貢献できるでしょう。
なお、会計ソフトの選び方や乗り換えのタイミングについては、以下の記事も参考にしてください。
経理代行を活用して経理を行う
経理代行サービスを利用することで、経理業務の負担を大幅に軽減でき、経営者がコアとなる本業に専念できる環境が整います。専門のプロが担当するため、帳簿管理や税務処理においても安心感があり、法令対応も万全になるでしょう。
特に、経理代行はスポットでの利用も可能なため、決算期や繁忙期のみ依頼することもできます。ただし、外部に業務を任せることでコストが発生するため、依頼内容に応じた料金プランの選定が重要です。
なお、経理代行サービスについては、以下の記事も参考にしてください。
会社設立後に必要な経理業務
会社設立後に必要な経理業務としては、主に以下の3点があります。
- 会社設立後の経理の日次業務
- 会社設立後の経理の月次業務
- 会社設立後の経理の年次業務
ここでは、それぞれの具体的な業務内容について紹介します。ぜひ、参考にしてください。
会社設立後の経理の日次業務
会社設立後、経理の日次業務として、まず重要なのは日々の取引の記録です。日次業務では現金や預金の出入り、取引先との入金や支払いの確認などを行い、日ごとのキャッシュフローを把握します。
この記録は、会計ソフトやエクセルを使って正確に仕訳処理されることが求められ、誤りがあれば後の月次や年次業務にも影響が生じます。また、領収書や請求書の整理も日々行うことで、取引証拠の保管が確実に行われ、記録漏れや帳簿と実際の資金に差異が生じるリスクを軽減できます。
こうした日次業務は会社の財務状況をリアルタイムで把握するために欠かせないものであり、日々の適切な経理管理が、健全な経営の基礎となります。
会社設立後の経理の月次業務
月次業務では、その月に発生した取引の収集と確認を行い、月ごとの損益や資金の流れを明確にします。まず、売上や経費、各種支出をまとめ、帳簿の内容と実際の取引が一致しているかを確認します。
また、残高の照合も月次で行われ、預金口座や現金の残高が帳簿と一致するように調整します。月次決算とも言われるこの作業は、月ごとの財務状況を可視化し、収支や経営の状況をタイムリーに把握するために欠かせません。
さらに、月次での確認は税務上の申告書作成や年次決算に向けた準備としても役立ち、決算期に多大な負担がかからないよう効率的な業務進行を可能にします。
会社設立後の経理の年次業務
年次業務では、その年の財務状況を総括するため、1年間の取引を集計し決算書を作成します。年次決算では、貸借対照表や損益計算書など、企業の経営状態や財務状況を示す重要な書類をまとめ、税務申告に向けた最終的な帳簿整理を行います。
この過程で各科目の金額が適切に処理され、法人税や消費税の申告書作成も進められます。また、年次業務は税務調査の際にも基礎となるため、ミスや不備がないように細心の注意が求められます。年次決算を通じて経営成績が明確になるため、来年度の予算計画や経営方針の見直しにも役立ちます。
正確な年次業務は、会社の信頼性を高めるだけでなく、長期的な成長を支えるための基盤を築きます。
なお、決算書の作成方法については、以下の記事も参考にしてください。
会社設立後に必要な経理の知識
会社設立後に必要な経理の知識としては、主に以下のような知識やノウハウがあげられます。
- 簿記や会計の基礎知識
- 税金に関する基礎知識
- 会計ソフトの選び方や活用ノウハウ
ここでは、それぞれの知識やノウハウについて詳しく解説していきます。
簿記や会計の基礎知識
会社設立後の経理を正確に行うためには、簿記や会計の基礎知識が必要です。簿記は企業のお金の流れを整理するための基本的な技術で、具体的には「仕訳」と呼ばれる取引の記録方法が中心となります。
仕訳を通じて、売上や経費、資産や負債がどのように動いているかを帳簿に記載し、財務状況を把握できるようにします。会計の知識も重要で、これにより企業の経営成績や財務状況を明確に表す決算書や損益計算書などの作成が可能になります。
これらの基礎を学ぶことで、会社の財務状況を理解し、適切な経営判断を下すための重要な土台を築けます。
なお、会計については、以下の記事も参考にしてください。
税金に関する基礎知識
会社設立後には税務に関する知識も欠かせません。法人が納める主な税金には法人税や消費税、住民税などがあり、各税の適切な申告や納税が義務づけられています。
法人税は会社の利益に課される税金であり、消費税は売上にかかる税金ですが、取引先や消費者から預かる形で支払いが発生します。これらの税金は納付期限や計算方法が異なるため、基本的な知識がないと税務上のトラブルや余計なペナルティが発生するリスクが高まります。
税務知識を正しく理解し、計画的に処理を行うことで、会社の経済的安定を保つことが可能です。
会計ソフトの選び方や活用ノウハウ
会計ソフトは経理業務を効率化するための重要なツールで、会社設立後の経理担当者にとっては欠かせない存在です。会計ソフトには機能の異なる種類があり、例えば中小企業向けに使いやすさを重視したものや、大規模企業向けに細かな管理ができるものがあります。
選定にあたっては、自社の規模や業務内容に適したものを選ぶことがポイントです。また、クラウド型ソフトを選べば、インターネット環境さえあればどこからでもアクセスでき、リアルタイムで経理データの確認が可能です。
適切なソフトを活用することで、日々の経理業務がスムーズに進み、経営判断にも役立ちます。なお、会計ソフトの選び方については、経理代行会社やコンサルティング会社に相談することもおすすめです。経理代行会社については、以下の記事も参考にしてください。
会社設立時に経理代行を選ぶ際のポイント
会社設立時の経理業務は経理代行会社に依頼することがおすすめです。経理代行会社を選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
- 契約期間や解約方法が明確なサービスを選ぶ
- 事業内容への理解のある企業を選ぶ
- 円滑なコミュニケーションのとれる担当を選ぶ
- 予算内で提案してくれる企業を選ぶ
- スピード感をもって取り組める企業を選ぶ
契約期間や解約方法が明確なサービスを選ぶ
経理代行を選ぶ際には、契約期間や解約方法が明確であることがポイントです。企業状況や経営戦略の変化に応じて契約の見直しや解約が必要になる場合もあるため、柔軟な契約体制は非常に重要となるでしょう。
解約条件が曖昧であれば、後にトラブルが生じる可能性もあり、無駄なコストが発生する場合もあります。一方で、追加費用や解約手続きの具体的な内容が契約時に明示されていれば、不測の事態にも冷静に対応できます。
このように柔軟で明確な契約内容は、長期的な信頼関係の構築にも役立ちます。
事業内容への理解のある企業を選ぶ
経理代行を依頼する際は、自社の事業内容に深く理解のある代行企業を選ぶことが大切です。業界ごとに経理や税務のニーズは異なり、例えばIT業界や医療業界では特有の経理処理が求められる場合があります。業界知識が豊富な代行企業であれば、迅速かつ正確な対応が期待でき、経理作業の精度も上がります。
さらに、企業の経理状況に即したアドバイスも受けやすく、業務の効率化や無駄の削減につながります。事業に理解のあるパートナーの存在は、安心して経理業務を任せるための大きな要素といえるでしょう。
円滑なコミュニケーションのとれる担当を選ぶ
経理代行を依頼する際には、担当者とのスムーズなコミュニケーションが業務を依頼するポイントです。経理は専門性が高く、日常的な進捗確認や質問に対する迅速な回答が必要不可欠です。
特に、経理業務では誤解や認識のズレがミスにつながりやすいため、担当者との良好な関係は正確な経理業務に大きく影響を与えます。また、頻繁にやり取りできる環境が整えば、確認や変更対応もスムーズに行え、経理業務の負担も軽減されます。適切なサポート体制があると信頼も高まり、安心して業務を任せられるでしょう。
予算内で提案してくれる企業を選ぶ
経理代行を選ぶ際は、自社の予算内で柔軟に対応してくれる企業を選ぶことが、経費の適切な管理につながります。企業の成長段階や資金状況に応じて必要な経理サポートの範囲は変わるため、無駄のないサービス提供が求められるでしょう。
例えば、基本プランのほかに追加オプションをつけてくれる企業であれば、必要な機能に合わせた最適な選択が可能となります。自社の資金繰りを考慮した提案を受けられることで、経理業務の負担軽減とコスト削減が両立でき、経営全体の安定につながります。
スピード感をもって取り組める企業を選ぶ
経理代行業者を選定する際には、迅速な対応と正確さを両立できるスピード感のある企業であることが重要です。経理業務は日々の進捗管理や月次の帳簿締め、年次の税務申告など、期限を守らなければならない業務が数多くあります。
そのため、期限が遅れると税務処理に悪影響を及ぼし、場合によっては罰則が科せられることもあるため、スピード感と信頼性が必要です。即時対応できる企業をパートナーに選ぶことで、業務が効率化されるだけでなく、スムーズな経営運営が可能となります。業務の進行が滞らず、緊急対応も含めて柔軟に動ける企業がおすすめです。
まとめ
会社設立後の経理は、経営者が行う場合と、経理の担当者を配置する場合があります。また、自社で会計ソフトを活用して経理業務を行う企業もあれば、経理代行会社へ依頼する企業もあります。
そのため、会社設立後の経理をどうすべきかは、事業の今後の方向性や、予算感に合わせて検討することがおすすめです。
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会社設立後の経理に関するよくあるご質問
会社設立後の経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、会社設立後の経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
会社の経理の仕事は何ですか?
会社の経理の仕事は、日々の取引を正確に帳簿に記録し、収支管理や予算の把握を行うことです。月次や年次決算で経営状況を明確に示す財務諸表を作成し、税務申告も行います。経営者が適切な判断を下すためのデータを提供し、資金繰りの計画やコスト管理の調整を通じて企業経営の基盤を支える重要な役割を担っています。
経理のつらいことは何ですか?
経理のつらい点は、正確さが強く求められる点で、少しのミスも大きな影響を及ぼす可能性があるため、常に高い集中力が必要です。さらに、月末や年末の決算時期には業務量が増え、締切が厳しいため残業が多くなることもあります。加えて、法律の知識も求められるため、日々の勉強が欠かせないのも負担です。
経理は毎日何をしていますか?
経理は日々、現金や預金の出入確認、取引の記帳、請求書や領収書の整理、資金繰りの管理を行っています。こうした日次業務を通じて帳簿の整合性を保ち、資金の状況を常に把握することが目的です。加えて、定期的な取引先との入金確認や支払処理などもあり、ミスなく処理するために細心の注意を払っています。