会計ソフトの導入は、事業の成長や変化に合わせて見直すことが重要です。しかし、「いつ乗り換えればいいのか」「どのような点に注意すべきか」など、会計ソフトを乗り換える際には、さまざまな疑問が生じます。
本記事では、会計ソフトの乗り換えを検討している方に向けて、乗り換えのベストなタイミングや注意点、具体的な手順について詳しく解説します。会計ソフトを乗り換える前に確認しておくこともについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
会計ソフトを乗り換えるタイミングはいつ?
会計ソフトを乗り換えるタイミングとして、主に以下のような時期がベストとされています。
- 年度末や四半期末の決算が終わったとき
- 今使っているソフトのサポートが終了したとき
- 個人事業主から法人化するとき
- 新しい会計基準や法規制へ対応が必要なとき
- 事業拡大で現在のソフトに限界を感じたとき
- 他のシステムやツールとの連携が必要なとき
- 今の会計ソフトが使いづらいと感じたとき
- 経理業務のコスト削減が効率化をしたいとき
年度末や四半期末の決算が終わったとき
会計ソフトを乗り換えるタイミングを考える際には、年度末や四半期末の決算が終わった時期が適しています。決算が終了すると、前年度や四半期の財務データが確定し、会計処理の整理も完了します。このタイミングで新しいソフトに移行することで、データ移行の際の混乱を最小限に抑え、スムーズなスタートを切ることができます。
また、決算期は財務状況を見直す良い機会でもあり、現在使用しているソフトのパフォーマンスや機能に不満があれば、次の年度に向けてより適したツールを導入する判断をしやすくなります。新しいソフトを導入することで、より効率的な会計処理や最新の技術を活用できる可能性も広がるため、このタイミングでの移行は事業の成長にもつながるでしょう。
なお、決算の時期については、以下の記事もご覧ください。
今使っているソフトのサポートが終了したとき
現在使用している会計ソフトのサポートが終了する場合も、乗り換えの決断を迫られる重要な時期です。サポートがなくなると、ソフトのアップデートやセキュリティ対策が提供されなくなり、システムが脆弱になるリスクが高まります。
さらに、税制や会計基準の変更に対応できなくなる可能性もあり、正確な会計処理が困難になる恐れがあります。そうした状況を避けるためには、サポート終了の通知を受けた時点で、早めに新しいソフトへの移行を検討するのが大切です。サポートがない状態で使い続けると、予期せぬトラブルが発生しやすく、業務に支障をきたすことが考えられます。
個人事業主から法人化するとき
個人事業主から法人化する際も、会計ソフトの見直しを行うには適したタイミングです。法人化によって必要な会計処理の内容が大きく変わり、法人向けの会計基準や税務対応が必要になります。
また、個人事業主向けの会計ソフトでは対応できない機能が出てくる可能性が高いため、法人化に伴い、より複雑な財務管理が可能な法人向けのソフトに移行することが望ましいです。乗り換えによって、法人化後の税務申告や財務報告を適切に行えるようになります。
新しい会計基準や法規制へ対応が必要なとき
新しい会計基準や法規制に対応するためには、会計ソフトの乗り換えが必要となる場合があります。例えば、税制改正や新たな法的義務が生じた際、現行の会計ソフトがこれに対応できないことがあります。
そうした状況では、規制に対応したソフトを早めに導入することで、法的リスクを回避し、正確な会計処理を維持することができます。加えて、最新の会計基準に対応しているソフトを使うことで、税務監査や法的監査にもスムーズに対応できるようになります。
事業拡大で現在のソフトに限界を感じたとき
事業が拡大し、現在使用している会計ソフトに限界を感じるようになったときも、乗り換えを検討すべきです。事業規模が大きくなると、取引件数の増加や複雑な財務管理が求められ、従来のソフトでは処理能力が追いつかなくなることがあります。
このような場合、より高機能でさまざまな機能をもったソフトに移行することで、事業の成長に対応した会計業務を実現できます。スムーズな業務運営を維持するためにも、柔軟性のあるソフトの導入が重要です。
なお、株式を上場するタイミングでも乗り換えを検討されることがあります。上場(IPO)準備企業の経理業務についてはこちらの記事でも紹介しています。
他のシステムやツールとの連携が必要なとき
他のシステムやツールとの連携が必要になった場合も、会計ソフトを乗り換えるべき時期です。例えば、在庫管理システムや給与計算ソフトなど、他の業務ツールとのシームレスな連携が求められる場面では、現在の会計ソフトが対応できないことも少なくありません。
統合されたシステムを導入することで、データの二重入力や手動での修正作業が不要となり、業務全体の効率が向上します。また、連携により、経理担当者の作業負担が減少し、人的ミスやエラーも大幅に削減されるため、結果的に企業全体の業務改善につながります。
今の会計ソフトが使いづらいと感じたとき
今使っている会計ソフトが使いづらいと感じるときも、乗り換えのタイミングです。会計ソフトは日々の経理業務を支える重要なツールであり、その操作性が業務効率に直接影響を与えます。
もし、現在のソフトが複雑すぎたり、ユーザーインターフェースが直感的でなかったりする場合、作業に時間がかかり、結果として経理業務の生産性が低下する恐れがあります。より使いやすく、操作性の優れたソフトに切り替えることで、業務のスピードアップやミスの減少が期待でき、経理担当者のストレスも軽減されます。
経理業務のコスト削減が効率化をしたいとき
経理業務のコスト削減や効率化を図りたいときも、会計ソフトを乗り換える機会です。クラウド型の会計ソフトや自動化機能を備えた新しいソフトに移行することで、ライセンス費用やITシステムの管理コストを削減しつつ、業務プロセスを効率化できます。
例えば、自動仕訳やAIを活用したデータ入力支援機能により、経理作業を迅速かつ正確に進めることができ、作業時間の短縮が図れます。これにより、経費の削減だけでなく、経理部門全体の生産性向上も実現し、会社全体の経営効率を高めることが期待できます。
なお、経理業務とAIの活用については以下の記事も参考にしてください。
会計ソフトを乗り換える前に確認すべきこと
会計ソフトを乗り換える前には、以下のような点を確認しておきましょう。
- 従来のソフトからデータ移行ができるか
- 新しいソフトに公式のサポートがあるか
- 乗り換えによって自社にメリットがあるか
ここでは、それぞれの事前確認事項をまとめて紹介します。
従来のソフトからデータ移行ができるか
会計ソフトを乗り換える際、確認すべき重要なポイントは、従来のソフトからのデータ移行がスムーズに行えるかどうかです。会計データは企業の財務状況を正確に反映する非常に重要な情報であり、移行に問題があると、過去のデータの一貫性が崩れ、経理業務に大きな支障をきたす恐れがあります。
特に、財務報告や税務申告などのプロセスにおいては、過去データの正確性は重要です。また、取引履歴や顧客情報などの細かいデータが正確に移行できないと、再入力や修正作業に時間とコストを要することになります。
新しいソフトに公式のサポートがあるか
新しい会計ソフトに公式のサポートがあるかどうかも、乗り換え前に確認すべき重要な点です。サポート体制がしっかりしているソフトを選ぶことで、システムのトラブルや不具合が発生した際にも迅速に対応してもらえるため、業務の停滞を防ぐことができます。
また、公式サポートが提供するアップデートや新機能の追加により、ソフトの機能を最大限に活用できることも大きなメリットです。特に、税制や会計基準が頻繁に変更される環境では、最新の法規制に対応したアップデートをすばやく活用できる公式サポートは必要不可欠です。
乗り換えによって自社にメリットがあるか
会計ソフトの乗り換えが自社にどのようなメリットをもたらすかを慎重に検討することも大切です。「最新のAIシステムを使いたい」と流されるのではなく、新しいソフトが自社の業務にどの程度フィットするか、導入によってどのような効率化やコスト削減が期待できるかを評価することが、乗り換えの成功につながります。
例えば、より直感的な操作が可能なソフトや、自動化機能が充実しているものを導入することで、経理業務のスピードアップやミスの減少が期待できるでしょう。
会計ソフトを乗り換える際の手順
会計ソフトを乗り換える際には、以下の手順で進めます。
- step1:新しい会計ソフトを契約する
- step2:新旧ソフトの平行運用をする
- step3:旧ソフトからデータを出力する
- step4:新システムにデータを入力する
- step5:移行したデータや設定を確認する
step1:新しい会計ソフトを契約する
会計ソフトを乗り換える際、まず新しい会計ソフトを契約しましょう。新しいソフトの選定にあたっては、自社の業務ニーズや規模に合ったソフトを選ぶことが重要です。
特に、自動化機能や操作性、サポート体制などを事前に確認し、将来的な成長や法改正に対応できるかどうかも評価すべきです。
また、ソフトによっては無料トライアルやデモ版が提供されていることがあるため、実際に使用してみて、操作性や機能が自社に合っているかを確認することも大切です。契約後は、ソフトの導入に必要な準備を整え、サポートチームと連携しながらスムーズな導入を進めるように計画を立てましょう。
step2:新旧ソフトの平行運用をする
次に、新旧ソフトの平行運用を行います。新しいソフトに完全に移行する前に、旧ソフトと並行して運用する期間を設けることで、業務が中断するリスクを回避し、徐々に新しいシステムに慣れていくことができます。
平行運用の期間中は、旧ソフトでの業務を継続しつつ、新しいソフトにデータを移行し、機能や操作性を確認することが重要です。また、この段階で経理スタッフに対して新システムのトレーニングや研修を行うことで、操作ミスを防ぎ、業務への移行をスムーズに進めることが可能になります。
step3:旧ソフトからデータを出力する
続いて、旧ソフトからデータを出力します。旧ソフトに蓄積されている取引データや顧客情報、会計記録を適切な形式で出力していきます。
特に、データが膨大な場合や形式が異なる場合、専門的な知識やツールが必要になることもあります。そのため、出力する際はデータの整合性を保つために慎重な確認が求められます。
また、過去数年間のデータや重要な取引履歴については、バックアップを取りましょう。万が一、データが欠落したり誤って消去されたりしても、バックアップがあれば、後からの修正ができます。
step4:新システムにデータを入力する
そして、新しいシステムにデータを入力します。旧ソフトから出力したデータを、新しい会計ソフトに入力し、データが正確に移行されているか確認する作業です。多くの会計ソフトはデータインポート機能を備えていますが、形式や構造の違いによってデータが正しく反映されないこともあるため、特に注意が必要です。
必要に応じてデータを修正して、整合性を確保した上で、新しいシステムに入力することがよいでしょう。この段階でデータ移行が完了すれば、新しいソフトでの会計処理が本格的にスタートできますが、入力時のミスは後々の業務に影響を与えるため、慎重に進めることが大切です。
step5:移行したデータや設定を確認する
最後に、移行したデータや設定が正しく反映されているか確認します。入力されたデータの整合性に不備がないかをチェックし、取引履歴が正確に移行されていることを確認することが重要です。
また、会計ソフトに設定された項目や、取引先情報などの各種設定が正しく反映されているかも確認します。設定に不備があると、後々の業務に支障をきたす可能性があるため、この段階でのチェックは非常に重要です。問題がなければ、旧ソフトを完全に停止し、新しいソフトでの運用を本格的に開始します。
会計ソフトを乗り換える際の注意点
会計ソフトを乗り換える際には以下の点に注意しましょう。
- 導入やカスタマイズに費用がかかる
- 解決したい経理上の課題を洗い出す
- 経理人材の教育に時間とコストがかかる
ここでは、それぞれの注意点について詳しく解説していきます。
導入やカスタマイズに費用がかかる
会計ソフトを乗り換える際、導入やカスタマイズにかかる費用に注意しましょう。新しいソフトの導入は、単にソフトを購入するだけではなく、自社の業務に適応させるための初期設定やカスタマイズが必要になることが多く、これに伴うコストが予想以上にかかる場合があります。
特に、企業の規模が大きく、業務フローが複雑な場合は、その分ソフトの設定にも時間と費用がかかります。また、カスタマイズを外部に依頼する場合、外部の専門家やコンサルタントの協力が必要となり、その報酬や作業費用が加算されることもあります。
解決したい経理上の課題を洗い出す
新しい会計ソフトを導入するにあたり、解決したい経理上の課題を事前に明確にしておくことにも注意しましょう。多くの企業では、現行の会計ソフトに対する不満や、業務上の課題が明確でないまま、単に「最新のソフトだから」といった理由で乗り換えを進めることがあります。
しかし、経理の業務フローや実際の課題がはっきりしていないと、新しいソフトに乗り換えても、根本的な問題が解決されず、余計な手間やコストがかかる可能性があります。
例えば、処理速度の遅さや操作性の悪さ、データの一元管理の難しさなど、現行システムで具体的にどの部分が問題となっているのかを洗い出し、その解決策として新しいソフトがどのような機能を提供できるかを検討することが必要です。
経理人材の教育に時間とコストがかかる
会計ソフトの乗り換えにおいては、経理人材の教育にも時間とコストがかかる点に注意が必要です。新しいソフトを導入すると、操作方法や機能に関する研修やトレーニングが必要不可欠であり、経理担当者がこれまで慣れ親しんだ操作から新しい環境に適応するためには、ある程度の学習時間が必要です。
また、教育にかかる時間は、通常の業務が停滞する原因にもなるため、その期間中は業務の効率が低下するリスクもあります。加えて、外部の研修サービスやコンサルタントを利用する場合、追加のコストが発生することも考慮しなければなりません。
まとめ
会計ソフトの乗り換えにベストなタイミングには、決算が終了したタイミングや事業拡大のタイミングなどさまざまです。そのため、会計ソフトを乗り換える前に、自社の課題を洗い出して、乗り換えによる自社のメリットを理解しておく必要があるでしょう。
会計ソフトの乗り換えにおける課題は、経理代行会社に相談することで解決することもあります。
弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。
会計ソフトの乗り換えに関するよくあるご質問
会計ソフトの乗り換えについてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、会計ソフトの乗り換えに関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
会計ソフトはいつから使うべきですか?
会計ソフトは、事業を開始した直後から使用するのが望ましいです。初期の段階から正確な財務管理を行うことで、取引や経費の記録が整理され、将来的な税務申告や資金計画がスムーズになります。特に、事業が成長して取引量が増えるにつれ、手動では追いつかなくなるため、早期の導入が経営の安定化につながります。
会計ソフトを使う理由は何ですか?
会計ソフトを使う理由は、経理業務の効率化と正確性の向上を図るためです。手作業によるミスが減り、経費や売上の管理が自動化され、企業の財務状況を常に把握できます。また、税務処理や決算業務も迅速に行えるため、時間の節約と同時に業務の透明性も向上するため、中小企業から大企業まで幅広く利用されています。
会計ソフトでできないことは何ですか?
会計ソフトでは、税務戦略の立案や複雑な法的助言はできません。さらに、経営判断に必要な詳細な財務分析や、企業独自の複雑な取引処理もソフト単体では対応できない場合があります。こうした専門的な分野には、経理代行や経理コンサルティングなどの専門家の助言が必要不可欠です。