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試算表とは?作り方・種類・見方・メリットを解説
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試算表とは?作り方・種類・見方・メリットを解説

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ビジネスシーンにおいて、業績の数字は経営状況を判断し、戦略を策定する上で欠かせない存在です。しかし、膨大な数字を単に並べただけでは、数字の推移の要因などを読み解くことは難しいでしょう。そこで役立つのが試算表です。

 

試算表とは、すべての取引を勘定科目ごとで一覧表にしたものです。

 

この記事では、試算表とは何かについて詳しく解説します。また、作り方や種類、見方、メリットについても紹介しますので、ぜひ経理を担当される方は参考にしてください。

 

試算表とは?

試算表とは、会計期間におけるすべての取引を勘定科目ごとに集計し、借方と貸方の残高を一覧表にしたものです。いわば、会社の財政状態を映し出す鏡であり、経営状況を判断するための羅針盤と言えるでしょう。

 

具体的には、総勘定元帳に記載された各勘定科目の残高を転記し、借方と貸方の合計が一致しているかどうかを確認します。もし一致しない場合は、仕訳や転記ミスなどの不備があると判断できます。

 

試算表は、経営状況の把握や金融機関からの融資を受ける際にも必要です。そのため、経営にとってなくてはならない存在と言えるでしょう。

試算表を作る目的

試算表は経理や会計業務で作らなければならない書類のひとつです。試算表を作る目的には、主に以下の3点があげられます。

 

  • 決算書を作成する資料になる
  • 経営状況の把握ができる
  • 経理上のミスを発見できる

 

決算書を作成する資料になる

試算表は決算書作成の過程において、会計帳簿の正確性を検証する役割も担っており、決算書の信頼性を高めるために重要な役割を果たします。

 

試算表は、会社の会計期間におけるすべての取引データをまとめたものであり、決算書作成において不可欠な資料となります。具体的には、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの作成に用いられ、会社の財務状況や業績を正確に把握することができます。

 

経営状況の把握ができる

 

試算表は、会社の経営状況を総合的に把握するためのツールとしても活用できます。試算表から、会社の資産、負債、純資産、売上高、経費、利益などの財務情報を素早く簡単に読み取ることができます。

 

また、経営者は、試算表を分析することで、会社の財務健全性、収益性、効率性などを評価することができます。過去の試算表と比較することで、業績の推移を分析し、経営戦略の策定や改善に役立てることもできます。

 

経理上のミスを発見できる

 

試算表は、経理処理における誤りや漏れを発見するためのツールとしても有効です。試算表を作成することで、仕訳伝票の二重計上や未計上、勘定科目の誤分類、計算ミスなどを防ぐことができます。

 

これらの経理ミスは、会社の財務諸表の正確性を損なうだけでなく、税務上の問題を引き起こす可能性もあります。試算表を定期的に作成し、分析することで、経理処理におけるミスを早期に発見し、修正することができます。

試算表を作成する時期

試算表を作成する時期やタイミングは企業によって異なりますが、一般的には、決算期や月末が多いです。また、任意のタイミングで実施する企業もあります。短いスパンで試算表を作成することで、ミスの早期発見にもつながります。

 

決算期

 

最も一般的な試算表作成時期は、決算期です。決算期における試算表は、貸借対照表や損益計算書などの決算書作成に不可欠な資料となります。具体的には、以下の目的で活用されます。

 

  • 会計帳簿の記帳漏れや誤りをチェックする
  • 貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成する
  • 会社の財務状況や業績を把握する

 

決算期における試算表作成は、決算書の正確性と信頼性を担保するために必須であり、すべての企業で必ず行われます。

 

なお、決算期に忙しい業務を代行するサービスを決算代行と呼びます。決算代行については、以下の記事を参考にしてください。

 

決算代行の選び方とは?メリット・デメリット・費用相場を解説
決算代行の選び方とは?メリット・デメリット・費用相場を解説

 

月末

 

多くの企業では、月末にも試算表を作成します。月末試算表は、以下のメリットがあります。

 

  • 毎月の損益状況を把握して経営分析に役立てる
  • 経理処理に問題があれば早期に対処できる
  • 翌月の予算編成に調整を加えられる

 

とくに、売上高や経費などの計上漏れや誤りが発生しやすい月末においては、試算表を作成することで、迅速に状況を把握し、必要な対応を取ることができます。

 

任意のタイミング

 

決算期や月末以外にも、経営状況の把握や経理処理の確認など、必要に応じて任意のタイミングで試算表を作成することもあります。例えば、以下のようなタイミングが考えられます。

 

  • 事業計画を策定するタイミング
  • 資金調達のタイミング
  • 合併・買収のタイミング
  • 経営状況が悪化したタイミング

 

このような状況においては、試算表を作成することで、会社の財務状況を正確に把握し、適切な判断を下すことができます。

 

なお、忙しい時期には、経理代行サービスを検討することもよいでしょう。

 

経理代行会社に外注するのであれば、ビズネコがおすすめです。記帳代行から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

試算表の種類

試算表には、主に以下の3種類があります。

 

  • 合計試算表
  • 残高試算表
  • 合計残高試算表

 

試算表は、会計帳簿の記帳漏れや誤りがないかどうかをチェックし、決算書を作成するための大切な資料です。それぞれの種類について詳しく紹介しますので、参考にしてください。

 

合計試算表

 

合計試算表は、総勘定元帳をもとに、勘定科目ごとの借方・貸方の合計金額を集計してまとめたものです。勘定科目ごとに借方の合計値、貸方の合計値を計算し、合計試算表に記載することで作成します。

 

合計試算表を見れば、会社が一定期間に取引した合計金額がわかります。また、借方と貸方の合計値が一致しているかどうかを確認することで、会計帳簿に誤りがないかどうかをチェックすることができます。

 

残高試算表

 

残高試算表は、各勘定科目における借方と貸方の残高の差額を計算し、残高を求めて一覧表にまとめたものです。合計試算表上の各勘定科目について、借方・貸方のうち大きい金額から小さい金額を引いて残高を計算し、残高試算表に転記することで作成します。

 

残高試算表を見れば、各勘定科目の期末残高がわかります。期首残高と期末残高を比較することで、勘定科目の増減を分析することができます。

 

合計残高試算表

 

合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を組み合わせたものです。会社全体の財務状況を把握することができ、決算書作成に役立ちます。

 

合計残高試算表には、勘定科目ごとの借方・貸方の合計金額と期末残高が記載されています。また、借方と貸方の合計値が一致しているかどうかを確認することで、会計帳簿に誤りがないかどうかをチェックすることができます。

試算表・貸借対照表・損益計算書の違い

試算表、貸借対照表、損益計算書は、いずれも会社の財務状況を把握するために使用される重要な財務諸表ですが、それぞれ異なる役割と特徴を持っています。

 

試算表は、貸借対照表と損益計算書の作成のための基礎資料となります。具体的には、試算表に記載されている勘定科目ごとの借方・貸方の合計金額や期末残高を、貸借対照表や損益計算書に転記することで作成されます。

 

一方で、貸借対照表と損益計算書は、会社の財務状況を異なる視点から示したものです。

 

貸借対照表は、決算期などのある時点での会社の資産、負債、純資産の状況を示したものです。貸借対照表は、会社の財務的な安定性や健全性を判断するために利用されます。

 

損益計算書は、1年間などの一定期間における、会社の収益と費用の状況を示したものです。売上高、売上原価、営業費用、経常利益、税金、純利益などが記載されています。損益計算書は、会社の収益性や効率性を判断するために利用されます。

 

貸借対照表は、ある時点での会社の財務的な立ち位置を示すものであり、損益計算書は、一定期間における会社の経営成果を示すものです。

 

これらの財務諸表を組み合わせることで、会社の財務状況をより詳細に分析することができます。

試算表を作成するメリット

試算表を作成するメリットには主に以下のような点があげられます。

 

  • 将来のキャッシュフローを予測できる
  • 金融機関からの信用を高める
  • 帳簿の記帳ミスを早期発見できる

 

ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

 

将来のキャッシュフローを予測できる

 

試算表には、会社の資産、負債、純資産、売上高、経費、利益などの財務情報が記載されています。これらの情報を分析することで、将来のキャッシュフローを予測することができます。

 

キャッシュフローとは、会社に入ってくるお金と出ていくお金の流れを表すものです。将来のキャッシュフローを予測することで、資金不足のリスクを回避したり、投資の機会を検討したりすることができます。

 

金融機関からの信用を高める

 

試算表は、金融機関に融資を申し込む際に提出する重要な資料です。試算表に記載されている財務情報に基づいて、金融機関は会社の財務状況や経営状況を判断します。

 

正確で信頼性の高い試算表を作成することで、金融機関からの信用を高め、融資を受けやすくなります。また、定期的に試算表を提出することで、金融機関は会社の財務状況の変化を把握することができます。

 

帳簿の記帳ミスを早期発見できる

 

試算表を作成することで、帳簿の記帳ミスを早期に発見することができます。

 

試算表において、借方と貸方の合計額が一致していない場合、帳簿に誤りがある可能性が高いです。このような誤りを早期に発見することで、修正することができます。

 

なお、経理代行会社を通じて、記帳代行や経理アウトソーシングのサービスを利用することもおすすめです。プロの専門家に任せることで、記帳のミスを減らすことにつながります。

試算表の見方におけるポイント

作成した試算表を有効活用するためには、正しい見方が重要です。ここでは、試算表を的確に読み解くために、以下のポイントについて紹介します。

 

  • 仕訳や転記の間違いがないか
  • 借貸の合計金額が一致するか
  • 過去の試算表と比較して問題ないか
  • 不適切な費用がないか
  • 赤字になっていないか

 

仕訳や転記の間違いがないか

 

試算表は、仕訳や転記に基づいて作成されます。もし、仕訳や転記に誤りがあれば、試算表の内容も誤ってしまいます。

 

そのため、まず最初に試算表を確認する際には、仕訳や転記に間違いがないかどうかを確認することが大切です。具体的には、以下の点に注意しましょう。

 

  • 各勘定科目の借方・貸方の金額に誤りがないか
  • 複式簿記の原則が正しく守られているか
  • 伝票と帳簿の内容が一致しているか

 

なお、仕訳について詳しくは以下の記事も参考にしてください。

 

記帳とは?する意味・やり方・仕訳のルール・会計における注意点
記帳とは?する意味・やり方・仕訳のルール・会計における注意点

 

借貸の合計金額が一致するか

 

複式簿記では、借方と貸方の合計金額が常に一致する必要があります。試算表でもこの原則が守られているかどうかを確認しましょう。借方合計と貸方合計が一致していない場合は、仕訳や転記に誤りがある可能性があります。

 

過去の試算表と比較して問題ないか

 

過去の試算表と比較することで、会社の財政状況の変化を把握することができます。

 

例えば、売上や利益が前年と比べてどのように推移しているのか、資産や負債の構成がどのように変化しているのかなどを確認しましょう。もし、過去の試算表と比較して著しい変化が見られる場合は、その原因を分析する必要があります。

 

不適切な費用がないか

 

試算表には、会社のすべての費用が記載されています。そのなかには、不適切な費用が含まれている場合もあります。例えば、私的な交際費や接待費など、業務に必要のない費用が含まれていないかどうかを確認しましょう。

 

赤字になっていないか

 

試算表の最終行には、会社の損益が記載されています。もし、赤字になっている場合は、その原因を分析する必要があります。具体的には、売上や費用が計画通りに達成できていないのか、資産運用がうまくいっていないのかなどを確認しましょう。

試算表の作り方

試算表は、会社の財政状況を把握するための重要なツールです。ここでは、以下の3種類の試算表について、それぞれの作り方を解説します。

 

  • 合計試算表
  • 残高試算表
  • 合計残高試算表

 

なお、会計ソフトを使用して作成することもできますが、ここでは手動で作成する方法を説明します。

 

合計試算表の作り方

 

合計試算表は、総勘定元帳の借方・貸方の合計金額を勘定科目ごとにまとめたものです。作成方法は以下の通りです。

 

  • step1:総勘定元帳を用意する
  • step2:各勘定科目の借方・貸方の合計金額を計算する
  • step3:合計試算表に転記する

 

合計試算表を作成する際には、以下の点に注意しましょう。

 

  • 勘定科目は番号順に記載する
  • 金額は円単位で記載する
  • 借方と貸方の合計金額は必ず一致させる

 

残高試算表の作り方

 

残高試算表は、各勘定科目の残高をまとめたものです。作成方法は以下の通りです。

 

  • step1:合計試算表を作成する
  • step2:各勘定科目の借方・貸方の合計金額を差し引いて残高を計算する
  • step3:残高試算表に転記する

 

残高試算表を作成する際には、以下の点に注意しましょう。

 

  • 勘定科目は番号順に記載する
  • 金額は円単位で記載する
  • 借方残高と貸方残高の合計金額は必ず一致させる

 

合計残高試算表の作り方

 

合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を組み合わせたものです。作成方法は以下の通りです。

 

  • step1:合計試算表と残高試算表を作成する
  • step2:合計試算表と残高試算表を並べる
  • step3:各勘定科目の情報を一致させる

 

合計残高試算表を作成する際には、以下の点に注意しましょう。

 

  • 勘定科目は番号順に記載する
  • 金額は円単位で記載する
  • 借方と貸方の合計金額は必ず一致させる
  • 借方残高と貸方残高の合計金額は必ず一致させる

まとめ

試算表とは、会計期間におけるすべての取引を勘定科目ごとに集計し、借方と貸方の残高を一覧表にしたものです。いわば、会社の財政状態を映し出す鏡であり、経営状況を判断するための羅針盤と言えるでしょう。

 

試算表は主に、決算期や月末に作成されますが、資金調達の時期など任意のタイミングで作成されることもあります。

 

なお、試算表の作成や記帳業務は、経理代行会社や記帳代行会社に依頼することも可能です。

 

経理代行会社に外注するのであれば、ビズネコがおすすめです。記帳代行から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

試算表に関するよくあるご質問

試算表についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、試算表に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

決算表と試算表の違いは何ですか?

決算書と試算表は、どちらも会社の財政状況を把握するための書類ですが、作成目的に違いがあります。決算書は、法令に基づいて作成される、確定した会社の財務状況を外部に報告するための書類です。一方で、試算表は決算書を作成するための過程で作成される、会社の財政状況を暫定的に把握するための書類です。

試算表は何のために必要ですか?

試算表が必要な理由には「仕訳や転記の間違いをチェックする」「会社の財政状況を把握する」「会社や事業の経営分析を行う」「融資や資金繰りの計画を立てる」などがあげられます。

試算表の作成は義務ですか?

試算表の作成は、法令で義務付けられているわけではありません。一方で、決算書は法人であれば、毎年必ず作成する必要があります。しかし、決算書を作成するためには、試算表は必ず必要となります。また、会社の財政状況を暫定的に把握するためにも作成しておくことをおすすめします。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。