企業の損益計算書を読み解くうえで、「営業外収益」は見落とされがちな項目のひとつです。本業による売上とは異なり、営業活動の過程で付随的に発生する収益が該当するため、性質や扱いを正しく理解していないと、業績の実態を誤って判断してしまうおそれがあります。
受取利息や為替差益、有価証券の運用による利益などは、利益を押し上げる要因となる一方で、継続性や再現性には注意が必要です。本記事では、営業外収益の基本的な考え方から、売上や特別利益との違い、具体的な勘定科目と仕訳例を整理します。また、営業外収益が大きい場合の注意点や実務上の対策について解説します。
目次
営業外収益とは?
営業外収益とは、本業の売上とは直接関係しないものの、企業活動を行う過程で継続的や反復的に発生する収益です。商品やサービスの提供によって得られる売上とは異なり、資金運用や取引条件の差異などから生じる点に特徴があります。
例えば、預金から生じる受取利息や、取引先との決済条件によって発生する仕入割引などは、営業外収益として処理されます。営業外収益は利益を構成する重要な要素である一方、企業の本来の稼ぐ力を示す指標ではありません。そのため、営業外収益の内容を正しく把握しておくことが損益分析では欠かせません。
営業外収益と売上の違い
営業外収益と売上の違いは、収益が生まれる活動の性質にあります。売上は企業の主たる事業活動によって得られる収益であり、事業の成長性や市場での競争力を直接的に表します。一方、営業外収益は本業以外の取引や付随的な要因から発生します。
例えば、製品販売を主業とする会社が保有資産から受け取る配当金は、利益には影響するものの売上には含まれません。営業外収益と売上の違いを理解せずに数値だけを見ると、実態以上に本業が好調であるように見えてしまうことがあります。
営業外収益と特別利益の違い
営業外収益と特別利益の違いは、収益の発生頻度と性質にあります。営業外収益は日常的な企業活動の中で繰り返し発生する可能性があるものです。対して、特別利益は臨時的かつ例外的な取引から生じるものです。
例えば、保有していた土地を売却して得た利益は、通常の経営活動とは切り離して考える必要があるため特別利益に区分されます。営業外収益と特別利益の違いを適切に処理することで、企業の経常的な収益と一時的な要因による利益とを分けて分析できるようになります。
営業外収益となる勘定科目と仕訳例
営業外収益となる勘定科目として、以下のような科目があります。
- 受取利息
- 受取配当金
- 有価証券利息
- 有価証券売却益
- 有価証券評価益
- 不動産賃貸料
- 仕入割引
- 為替差益
- 雑収入
ここでは、それぞれの勘定科目について具体的に解説します。
受取利息
受取利息は、企業が保有する預貯金や貸付金などから生じる利息収入を処理する勘定科目です。金融機関に資金を預けているだけでも発生するため、意識せずに計上されることもありますが、営業活動とは直接結びつかない点が特徴です。
例えば、普通預金に付いた利息が口座に入金された場合でも、売上ではなく営業外収益として整理します。源泉徴収税額が差し引かれるケースが多いため、実際の入金額と収益額が一致しない点にも注意が必要で、正確な仕訳処理が損益把握の前提となります。
受取利息の仕訳例
受取利息の仕訳例として、受取利息が1,000円のうち、税金152円が差し引かれて、残りが口座に振り込まれた場合には、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 848円 | 受取利息 | 1,000円 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 152円 |
受取配当金
受取配当金は、他社の株式や投資信託を保有することで得られる分配金収入を処理する勘定科目で営業外収益に分類されます。事業活動の成果ではなく、資産運用の結果として発生する点が売上との大きな違いです。
例えば、取引先企業の株式を保有しており、決算後に配当金が支払われた場合は、営業外収益として受取配当金に計上します。源泉徴収された税金は租税公課として処理する必要があり、税務上の取り扱いも含めて整理しておくことが重要です。
受取配当金の仕訳例
受取配当金の仕訳例として、30万円の受取配当金に対して20%にあたる6万円が源泉徴収されて、差額の24万円を受け取った場合は、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 240,000円 | 受取配当金 | 300,000円 |
| 租税公課 | 60,000円 |
有価証券利息
有価証券利息は、社債や国債などの債券を保有することで定期的に受け取る利息収入を処理する勘定科目です。株式の配当とは異なり、契約で利率や支払時期が定められている点が特徴です。有価証券利息も営業外収益に分類される勘定科目のひとつです。
例えば、社債を保有していて半年ごとに利息が支払われる場合、その入金は本業の成果ではないため営業外収益として計上します。利息部分と償還部分を区別し、収益として認識する範囲を正しく判断することが求められます。
有価証券利息の仕訳例
有価証券利息の仕訳例として、1,000円の有価証券利息を受け取ったうち、税金152円が差し引かれて、残りが口座に振り込まれた場合は、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 848円 | 有価証券利息 | 1,000円 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 152円 |
有価証券売却益
有価証券売却益も営業外収益に分類される勘定科目のひとつです。有価証券評価益は、期末に保有する有価証券を時価評価した結果、帳簿価額を上回った差額を計上する勘定科目です。実際に現金を受け取っていなくても、評価替えによって利益が認識される点が特徴です。
例えば、購入時より市場価格が上昇した売買目的有価証券については、決算時に評価益を計上します。あくまで評価上の利益であるため、翌期以降に価格が変動する可能性も踏まえて判断する必要があります。
有価証券売却益の仕訳例
有価証券利息の仕訳例として、帳簿価格で40万円の売買目的で所有していた有価証券を、45万円で売却した際は、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 450,000円 | 売買目的有価証券 | 400,000円 |
| 有価証券売却益 | 50,000円 |
有価証券評価益
有価証券評価益も営業外収益に分類される勘定科目のひとつです。有価証券評価益は、期末に保有する有価証券を時価評価した結果、帳簿価額を上回った差額を計上する勘定科目です。実際に現金を受け取っていなくても、評価替えによって利益が認識される点が特徴です。
例えば、購入時より市場価格が上昇した売買目的有価証券については、決算時に評価益を計上します。あくまで評価上の利益であるため、翌期以降に価格が変動する可能性も踏まえて判断する必要があります。
有価証券評価益の仕訳例
有価証券評価益の仕訳例として、売買目的で購入した有価証券が期末時の評価で、時価が購入時を2万円上回った場合は、以下のように記載します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 有価証券 | 20,000円 | 有価証券評価益 | 20,000円 |
不動産賃貸料
不動産賃貸料は、企業が保有する土地や建物などを第三者に貸し付け、その対価として受け取る賃料収入を処理する勘定科目です。不動産賃貸料も営業外収益に分類される勘定科目のひとつです。
本業が不動産賃貸でない場合は、売上ではなく営業外収益に分類されます。例えば、使っていない事務所の一部を貸し出して賃料を受け取った場合、その入金は不動産賃貸料として整理します。継続的な収入であっても、本業との関連性を基準に区分することが重要です。
不動産賃貸料の仕訳例
不動産賃貸料の仕訳例として、貸している店舗の家賃が20万円振り込まれた場合は、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 200,000円 | 不動産賃貸料 | 200,000円 |
なお、不動産業における経理については、こちらの記事もご覧ください。

仕入割引
仕入割引は、買掛金を支払期日前に決済したことによって受けた割引額を処理する勘定科目です。値引きのように見えますが、実務上は利息相当額として営業外収益に区分されます。
例えば、早期支払いにより支払総額が減少した場合、その差額を仕入割引として計上します。仕入原価を減額するのではなく、収益として処理する点を誤ると、損益構造を正しく把握できなくなります。また、処理を誤って仕入高から直接差し引いてしまうと、売上総利益の比較や分析に影響が出る点にも注意が必要です。仕入割引は支払条件によって左右される収益であるため、取引先との契約内容を確認したうえで、継続性の有無も含めて把握しておくことが重要になります。
仕入割引の仕訳例
仕入割引の仕訳例として、30万円の買掛金を期日前に支払うことで、300円の割引を受けた際には、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 300,000円 | 現金 | 299,700円 |
| 仕入割引 | 300円 |
為替差益
為替差益は、外貨建取引や外貨資産を保有する中で、為替レートの変動によって生じた利益を処理する勘定科目です。取引時点と決済時点で為替相場が異なる場合、その差額が損益として認識されます。
例えば、売上計上時より円安が進んだ状態で外貨が入金された場合、その増加分を為替差益として営業外収益に計上します。為替相場の影響を受けるため、安定的な収益とは分けて考える必要があります。為替差益は企業の努力によって生み出された利益とは言い切れないため、業績評価の際には切り分けて考える視点が欠かせません。
為替差益の仕訳例
為替差益の仕訳例として、10月31日時点で1ドル140円で売上100ドルを計上して、11月30日時点で1ドル150円として振り込まれた場合は、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 15,000円 | 売掛金 | 14,000円 |
| 為替差益 | 1,000円 |
雑収入
雑収入は、本業以外で発生した収益のうち、他の勘定科目に当てはまらないものを処理する勘定科目です。性質が多岐にわたるため、内容を把握せずに安易に使うと収益構造が見えにくくなります。
例えば、作業工程で発生した端材を売却した代金や、臨時的な補助金の受取などが該当します。継続性や金額の重要性を考慮し、必要に応じて他科目との使い分けを検討することが求められます。また、雑収入に該当する取引が頻繁に発生する場合には、本来使用すべき勘定科目が他にないかを見直すことも大切です。
雑収入の仕訳例
雑収入の仕訳例として、製品加工時に出た作業くずを売却して3万円を受け取った際には、以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 30,000円 | 雑収入 | 30,000円 |
営業外収益が大きい場合の注意点と対策
営業外収益が大きい場合の注意点と対策として、以下のような点を意識しましょう。
- 売上高にできる営業外収益を見直す
- 販売管理費と営業外収益を相殺する
- 一時的な収益かどうかを切り分けて考える
- 営業外収益の継続性やリスクを評価する
ここでは、それぞれの注意点と対策について具体的に解説します。
売上高にできる営業外収益を見直す
売上高に占める営業外収益を見直すことは、企業の本来の事業規模や成長性を正しく把握するために欠かせない視点です。営業外収益として処理されている取引の中には、実態としては商品やサービスの提供と強く結びついているものが含まれている場合があります。
例えば、付随的な役務提供の対価や継続的に発生する利用料などは、内容次第では売上として整理した方が、事業の実態をより正確に示せることもあります。勘定科目の区分を見直すことで、売上高や営業利益の数値が持つ意味合いが明確になり、対外的な説明や内部管理にも活用しやすくなります。
販売管理費と営業外収益を相殺する
販売管理費と営業外収益を相殺して考えることは、日常的な経営活動における収支のバランスを把握するうえで重要です。営業外収益だけを見ると利益が出ているように見えても、その裏で同程度の費用が発生しているケースも少なくありません。
例えば、金融機関からの借入に伴う利息収入がある一方で、関連する手数料や管理コストが販売管理費として計上されている場合、実質的な利益は限定的となります。収益と費用を対応させて確認することで、数字の見かけに左右されない判断が可能になります。
一時的な収益かどうかを切り分けて考える
一時的な収益かどうかを切り分けて考えることは、営業外収益が大きい場合ほど慎重に行うべきポイントです。単発で発生した収益が含まれていると、当期の利益水準が実態以上に高く見えることがあります。
例えば、有価証券の売却益や為替差益などは、特定のタイミングや市場環境によって生じるもので、毎期同様に発生するとは限りません。こうした収益を恒常的なものと区別して整理することで、将来の収益見通しや経営判断の精度を高めることにつながります。
営業外収益の継続性やリスクを評価する
営業外収益の継続性やリスクを評価することは、安定した経営を行ううえで欠かせない視点です。営業外収益には、定期的に発生するものと外部環境に左右されやすいものが混在しています。
例えば、受取利息や賃貸料のように比較的安定して見える収益であっても、金利動向や契約条件の変更によって減少する可能性があります。収益の発生要因や変動リスクを把握したうえで分析することで、過度な期待を避け、実態に即した経営判断が可能になります。
なお、営業利益と営業外利益を確認するには、財務三表を見てみましょう。財務三表の見方については、こちらの記事も参考にしてください。

まとめ
営業外収益は、損益計算書の中では売上ほど注目されにくいものの、利益の増減に少なからず影響を与える項目です。受取利息や為替差益、有価証券に関する収益などは、いずれも本業とは異なる要因で発生するため、内容を整理せずに合算してしまうと、企業の実力を正しく判断しにくくなります。
営業外収益が多い場合には、売上として整理できるものがないかを確認し、関連する費用との対応関係や一時的な要因かどうかを見極めることが重要です。こうした視点を持って営業外収益を確認することで、数字の背景にある経営状況をより具体的に把握できるようになります。
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営業外収益に関するよくあるご質問
営業外収益についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、営業外収益に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
営業外収益とは具体的に何ですか?
営業外収益とは、企業の本業による売上以外から生じる収益のうち、日常的または反復的に発生するものを指します。商品やサービスの提供によって得られる売上とは異なり、資金の運用や取引条件、保有資産などに付随して発生する点が特徴です。受取利息や受取配当金、仕入割引などが代表例です。
為替差益は営業外収益ですか?
為替差益は、一般的に営業外収益として処理されます。外貨建の取引や資産を保有している場合、取引時と決済時の為替レートの違いによって円換算額に差が生じ、差額が利益として認識されます。為替差益は為替相場の変動によるもので、商品販売やサービス提供の成果ではありません。安定的な収益とは切り分けて考えましょう。
営業外損益とは何ですか?
営業外損益とは、営業外収益と営業外費用を合算した概念で、本業以外の取引から生じる利益や損失をまとめたものです。受取利息や為替差益などの営業外収益がある一方で、支払利息や為替差損といった営業外費用も存在します。これらを差し引いた結果が営業外損益となり、営業利益に加減されて経常利益が算出されます。