
出張や営業などで高速道路を利用する際に欠かせないのがETCカードです。しかし、利用時に紙の領収書が発行されないため、「経費に計上しても大丈夫なのか?」と悩む方も少なくありません。実は、ETC料金は領収書がなくても、正しく証拠書類をそろえれば経費として処理できます。
本記事では、ETC料金を経費に計上する際の勘定科目や仕訳例をはじめ、利用明細の確認・発行方法、精算手順、注意点までを詳しく解説します。経理担当者はぜひ参考にしてください。
目次
ETC料金は経費に計上できる
ETCを利用して支払った高速道路料金は、業務上の移動にかかった費用として経費に計上できます。例えば、営業先への訪問や出張のために自家用車を使った場合、その走行に伴うETC料金は事業に必要な支出とみなされます。
ただし、私用と業務利用が混在している場合は、業務に関係する部分のみを按分して経費処理する必要があります。経費として計上する際は、利用明細やカードの利用記録などを残し、出張や訪問の目的と整合性が取れるようにしておくことが重要です。こうした根拠資料がそろっていれば、税務上も適正な経費として認められやすくなります。
ETC料金は領収書がなくても経費にできるのか?
ETC料金は、領収書がなくても適切な証拠書類を用意すれば経費として認められます。例えば、ETC利用照会サービスで取得した利用明細や、クレジットカードの請求書などがその代替資料になります。利用明細や請求書には利用日や区間、金額などが明記されているため、業務に関する支出であることを客観的に示せます。
ただし、記録の保存が不十分な場合は経費として否認される可能性もあるため、定期的に明細をダウンロードして保管しておくことが大切です。領収書がないからといって諦めるのではなく、証拠となるデータをしっかり管理することで、正しく経費処理を行うことができます。
なお、領収書などの書類を証憑(しょうひょう)と呼びます。証憑についてはこちらの記事も参考にしてください。

ETC料金の利用明細を確認や発行をする方法
ETC料金の利用明細を確認や発行をする方法として、以下のような方法があります。
- 方法1:オンライン上で利用照会サービスから閲覧する
- 方法2:高速道路でETC利用履歴発行プリンターを活用する
- 方法3:クレジットカードの利用明細で確認する
ここでは、それぞれの方法について具体的に解説します。
方法1:オンライン上で利用照会サービスから閲覧する
ETCの利用明細は、インターネット上の「ETC利用照会サービス」を使えば簡単に確認できます。例えば、ETCカードの発行会社や車載器情報を登録しておけば、過去の走行履歴や支払金額を一覧で確認でき、必要に応じて明細を印刷することも可能です。
利用日や料金区間などの詳細が記録されているため、経費精算の際に証拠資料として活用しやすい点が特徴です。また、オンラインでの確認は時間や場所を選ばないため、出張中や外出先でも即座に利用履歴を把握できます。領収書が手元にない場合でも、利用照会サービスを活用すれば、経費処理に必要な情報を確実にそろえることができます。
方法2:高速道路でETC利用履歴発行プリンターを活用する
ETC利用履歴発行プリンターを使えば、高速道路のサービスエリアや一部の料金所でETCカードの利用明細をその場で発行できます。例えば、出張先でインターネット環境が整っていない場合や、すぐに紙の証拠を提出したいときに便利です。プリンターにETCカードを挿入すると、直近の走行履歴や支払金額が印字され、経費申請書類に添付することができます。
オンライン登録の手間がなく、その日の利用内容をすぐ確認できる点もメリットです。ただし、発行できる履歴には上限があり、古いデータは取得できない場合もあるため、早めに印刷して保管しておくことが望ましいでしょう。
方法3:クレジットカードの利用明細で確認する
ETC料金の支払いをクレジットカード経由で行っている場合、利用明細でも内容を確認できます。例えば、ETCカードがクレジットカードと連動している場合、月ごとの請求明細に利用日や金額が記載されており、経費処理の証拠資料として活用可能です。
特に、ETC利用照会サービスに登録していない場合や、オンライン明細を印刷する手間を省きたいときに役立ちます。ただし、カード明細には走行区間などの詳細が記載されないことが多いため、必要に応じてETC利用履歴と併用するのがおすすめです。明細データを保存しておけば、領収書を紛失した際も経費計上の裏付けとして活かせます。
ETC料金の勘定科目と仕訳例
ETC料金の経費処理は、旅費交通費となるケースと車両費があります。ETC料金が出張や営業活動など、業務上の移動に伴って発生した場合は「旅費交通費」として処理します。一方で、ETC料金が会社所有の車両の維持や管理に関連して発生した場合は、「車両費」として処理します。ここでは、それぞれの勘定科目と仕訳例を紹介します。
ETC料金が旅費交通費となるケース
ETC料金が出張や営業活動など、業務上の移動に伴って発生した場合は「旅費交通費」として処理します。例えば、営業担当者が顧客訪問のために高速道路を利用した場合や、出張で社用車を使って移動した場合などが該当します。
「旅費交通費」の勘定科目を用いることで、交通にかかる費用として明確に区分でき、経費の内訳を整理しやすくなります。注意したいのは、私用目的が含まれている場合には、その分を除外して業務関連分のみを経費にする点です。
また、領収書がないときは、ETC利用明細やクレジットカードの明細を証拠資料として添付すれば問題ありません。交通費精算と同様に扱うことで、経理処理の整合性を保つことができます。
ETC料金を旅費交通費とした場合の仕訳例
ETC料金を旅費交通費とした場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
旅費交通費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
ETC料金が車両費となるケース
ETC料金が会社所有の車両の維持や管理に関連して発生した場合は、「車両費」として処理します。例えば、営業車や社用車を定期的に使用しており、その移動に伴う高速料金を支払ったケースです。
車両費として処理することで、燃料費や駐車場代など他の車両関連支出とまとめて管理でき、経費全体の把握がしやすくなります。業務専用の車で発生するETC料金であれば、すべてを車両費に含めて問題ありません。
一方、個人車を兼用している場合は、業務利用分のみを計上するように注意が必要です。車両管理簿や走行記録を残しておくことで、経理処理の裏付けとして信頼性が高まります。
ETC料金を車両費とした場合の仕訳例
ETC料金を車両費とした場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
車両費 | 2,500円 | 現金 | 2,500円 |
なお、経理でよく用いられる勘定科目については、こちらの記事もご覧ください。

ETC料金を経費精算する際の手順と流れ
ETC料金を経費精算する際の手順は以下の流れで進みます。
- step1:事前に出張申請を行う
- step2:ETC料金を立て替える
- step3:旅費精算書を作成する
- step4:上長の承認を得る
- step5:経理部門で内容を確認する
- step6:精算金を受け取る
ここでは、それぞれのステップについて具体的に紹介します。
step1:事前に出張申請を行う
経費精算の第一歩は、出張や業務移動の前に申請を行うことです。例えば、営業活動や出張などで高速道路を利用する予定がある場合、目的地や訪問先、期間、使用予定の交通手段などを明確にして申請します。事前に承認を得ておくことで、帰社後の経費精算がスムーズに進み、不要な確認作業を減らせます。
また、企業によっては出張の事前申請が承認されていないと経費として認められない場合もあるため、事前確認を省略しないことが重要です。明確な申請内容と上司の承認があれば、ETC料金を含む交通費の経費処理が後から確認しやすくなります。
step2:ETC料金を立て替える
出張や営業活動の際に発生したETC料金は、まず従業員が一時的に立て替えるケースが多くあります。例えば、社用車ではなく自家用車を使って高速道路を利用した場合、その料金は一時的に本人が支払うことになります。
後日、利用明細や領収書代わりのデータをもとに経費精算を行えば、会社から立て替え分が返金されます。このとき、私的利用と業務利用が混ざらないように注意し、業務に関係する区間だけを申請することが大切です。正確な金額と利用区間を記録しておけば、後の精算処理や経理確認もスムーズに進みます。
step3:旅費精算書を作成する
ETC料金を経費として申請する際は、旅費精算書の作成が必要です。例えば、出張日程や訪問先、移動区間、ETCの利用金額などを明記し、利用明細やクレジットカードの請求書などの証拠資料を添付します。これにより、経理担当者が支出の正当性を判断しやすくなります。
旅費精算書は会社によって書式が異なりますが、内容が具体的であるほど確認作業がスムーズになります。入力ミスや日付の誤りがあると差し戻しの原因になるため、記載内容をしっかり確認することが大切です。正確な書類を整えることで、経費承認までの流れを円滑に進められます。
step4:上長の承認を得る
作成した旅費精算書は、上長の承認を得ることで正式な経費申請となります。例えば、営業部門であれば部門長や課長など、経費の妥当性を判断できる立場の人が確認します。
上長は、出張の目的や内容、経費の金額が業務に必要な範囲であるかをチェックし、不備がなければ承認します。承認の手続きによって、社内の経費使用ルールが守られ、不正やミスの防止にもつながります。ただし、承認が遅れると精算の支払い時期が後ろ倒しになることもあるため、申請者は早めに提出し、上長も確認を迅速に行うことが望まれます。
step5:経理部門で内容を確認する
上長の承認を得た後は、経理部門で精算内容の確認が行われます。例えば、ETC料金の金額や日付、走行区間が申請内容と一致しているか、証拠書類が適切に添付されているかをチェックします。
経理担当者は、会社の経費規定や税法上の要件に基づいて妥当性を判断し、問題がなければ支払い処理を進めます。確認工程は、社内の経費処理を正確に保つための重要なステップです。もし明細の不足や金額の不一致が見つかった場合は、申請者に修正を依頼し、整合性が取れるよう調整します。
step6:精算金を受け取る
経理部門の確認が完了すると、最終的に申請者へ精算金が支払われます。例えば、給与口座への振込や現金での支払いなど、会社ごとのルールに従って立て替え分が清算されます。申請の手続きを正確に行っていれば、ETC料金も問題なく経費として処理されます。
精算後は、支払い内容と申請書の金額が一致しているかを確認し、必要に応じて控えを保管しておくと安心です。また、今後の経費精算をスムーズに進めるためにも、利用明細や申請データは定期的に整理しておくとよいでしょう。
ECT料金を経費精算する際の注意点
ECT料金を経費精算する際の注意点として、以下のような点を意識しましょう。
- 利用明細と請求金額に誤差が生じる場合がある
- 従業員の立て替えにおけるルールを定める
- 煩雑なら法人のETCカード導入も検討する
- 上長の承認を得た経費か確認する
- 毎月の締め日を決めておく
ここでは、それぞれの注意点について具体的に解説します。
利用明細と請求金額に誤差が生じる場合がある
ETC料金の経費精算を行う際には、利用明細とクレジットカードの請求金額が一致しないケースがあります。例えば、通行料金の割引が後から適用されたり、複数の走行分がまとめて請求されたりする場合です。このようなズレがあると、経費申請時に金額の整合性を取るのが難しくなります。
そのため、明細の内容をよく確認し、請求書や利用履歴と照らし合わせておくことが大切です。また、差額の原因が判明しないまま申請すると、経理部門から差し戻しを受ける可能性もあります。経費処理をスムーズに進めるためには、明細と請求データの確認を欠かさず行う習慣をつけておくと安心です。
従業員の立て替えにおけるルールを定める
ETC料金を従業員が一時的に立て替える場合、会社として明確なルールを設けておくことが重要です。例えば、どの範囲まで立て替えを認めるのか、申請期限をいつまでとするのかといった点を決めておくと、申請内容のばらつきを防げます。
ルールがあいまいなままだと、精算金額の不一致や申請漏れが起こる原因になります。また、立て替えに関するガイドラインを文書化して共有しておけば、従業員も迷わず正しい手順で経費処理を行えます。会社と従業員の双方が納得できるルールを整えることで、経費精算の透明性と正確性を保つことができます。
煩雑なら法人のETCカード導入も検討する
個人のETCカードを使って立て替え精算を行うと、利用記録の管理や申請手続きが煩雑になりがちです。例えば、複数の従業員が営業で高速道路を利用する場合、それぞれの明細を個別に確認や精算をする手間が発生します。こうした手続きを簡略化するには、法人名義のETCカードを導入する方法があります。
法人カードであれば、利用履歴を一括で管理でき、経理部門が直接明細を確認できるため、申請漏れや不正利用の防止にもつながります。導入コストはかかりますが、長期的には事務負担を減らし、経費処理を効率化する効果が期待できます。
上長の承認を得た経費か確認する
ETC料金を経費として精算する際は、必ず上長の承認を得た経費であることを確認する必要があります。例えば、業務外の移動や私用のドライブにかかった料金を誤って申請してしまうと、経費として認められないだけでなく、信頼を損ねるおそれもあります。
上長の承認を経ていれば、業務上の必要経費として社内での根拠が明確になります。特に複数人での出張や共有車両の利用時には、誰の業務に関わる支出かを明確にしておくことが大切です。経費処理を正しく行うためには、承認フローを遵守し、透明性のある管理を徹底することが欠かせません。
毎月の締め日を決めておく
経費精算をスムーズに行うためには、ETC料金の申請締め日を明確に定めておくことが重要です。例えば、月末締め・翌月払いなどのルールを設定しておくと、申請漏れや処理の遅延を防げます。締め日があいまいだと、いつの分をどの月に計上すべきかが不明確になり、経理処理のミスにつながりやすくなります。
また、申請者にとってもスケジュールが明確になるため、精算の計画を立てやすくなります。社内全体で締め日を共有し、定期的に見直しを行うことで、ETC料金の経費処理を効率的かつ正確に進められます。
まとめ
ETC料金は、領収書がなくても利用明細やクレジットカードの請求書などを揃えれば、正しく経費として計上できます。勘定科目は利用目的によって「旅費交通費」や「車両費」を使い分けることが重要です。また、業務利用と私用利用が混在する場合は、業務分のみを処理する必要があります。
ETC料金の経費精算では明細の保管・承認フロー・締め日の管理など社内ルールを明確にしておくと、ミスやトラブルを防止できます。適切な証拠管理と運用体制を整えることで、ETC料金も安心して経費処理が可能になります。
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ETC料金の経費処理に関するよくあるご質問
ETC料金の経費処理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、ETC料金の経費処理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
ETC料金は経費になりますか?
ETC料金は、業務上の移動に伴って発生したものであれば経費として認められます。営業活動や出張で高速道路を利用した場合、ETC料金は事業に必要な支出として処理できます。ただし、私用と業務利用が混在している場合は、業務に関係する区間のみを経費計上する必要があるため注意しましょう。
ETCの費用の勘定科目は何ですか?
ETC料金の勘定科目は、利用目的によって異なります。営業先への訪問や出張など、業務上の移動にかかる費用であれば「旅費交通費」として処理します。一方、会社の社用車や営業車など、車両の維持・運行に関係する支出の場合は「車両費」に分類されます。移動のための費用なのか車両維持の一部なのかで判断しましょう。
ETCの領収書をもらい忘れたらどうすればいいですか?
ETC利用時に紙の領収書をもらい忘れても、利用明細やクレジットカードの請求書で経費計上が可能です。「ETC利用照会サービス」に登録すれば、過去の利用履歴をオンラインで確認でき、領収書の代わりとして提出できます。また、サービスエリアなどに設置されているETC利用履歴発行プリンターでも印字が可能です。