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大手企業の経理とは?中小企業やスタートアップ企業との違いや効率化のポイントを解説
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大手企業の経理とは?中小企業やスタートアップ企業との違いや効率化のポイントを解説

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大手企業の経理は、中小企業やスタートアップ企業の経理と比べて、業務の範囲や求められる知識のレベルが高い点が特徴です。日々の仕訳入力や支払処理といった基本業務に加えて、月次・四半期・年次決算や監査対応、さらにはグループ会社を含む連結決算まで担うこともあります。

 

また、株主や金融機関への説明責任、IR情報の発信など、社外への信頼性確保も欠かせません。そのため経理担当者には、会計基準や税務の知識だけでなく、AIやDXの活用スキル、コミュニケーション力も求められます。本記事では、大手企業の経理の実態や中小企業との違い、効率化のポイントについて解説します。

 

大手企業の経理とは?

大手企業の経理とは、日々の仕訳入力や請求処理といった基本業務に加え、決算や監査対応、株主や金融機関に向けた財務情報の提供など、社内外を意識した幅広い役割を担う部門です。例えば、中小企業では経理担当者が数名で業務を回すこともありますが、大手企業では専門分野ごとに担当が分かれ、複数のチームが連携して膨大な取引を処理していきます。

 

また、連結決算や国際会計基準への対応といった高度な知識が必要となる場面も多く、個々の担当者には正確さとスピードの両立が求められます。こうした特徴は企業規模の大きさに起因しており、経理が果たすべき役割も組織の成長とともに拡大していくのです。

大手企業における経理の業務内容

大手企業の経理の業務内容は、「日次業務(毎日の仕事)」「月次業務(毎月の仕事)」「年次業務(毎年の仕事)」にわけられます。また、規模によっては四半期や半期ごとに決算業務も発生するため、一年を通して責任のある業務が多い点が特徴です。

 

大手企業における経理の日次業務(毎日の仕事)

 

大手企業における経理の日次業務は、日々発生する取引を正確に記録し、資金の動きを管理することから始まります。例えば、仕訳入力や入出金の確認、経費精算の処理などは欠かせない業務です。

 

日次業務は一見単純に見えますが、取引件数が膨大になる大手企業では小さなミスが全体の数字に大きく影響する可能性があるため、正確さとスピードの両立が強く求められます。また、関係部門や外部とのやり取りも多く発生するため、社内連携を意識しながら日常的に業務を遂行していく必要があります。

 

大手企業における経理の月次業務(毎月の仕事)

 

大手企業における経理の月次業務は、一定期間の取引をまとめて整理し、経営に必要な数値を報告することが中心となります。例えば、売上や費用を集計して損益計算を行い、月次決算資料を作成することは重要な業務のひとつです。

 

月次業務は経営層の意思決定に直結するため、単なる数字の集計ではなく、正確性やタイミングが重視されます。また、予算と実績の差異を分析して改善点を洗い出すなど、経営に役立つ情報を提供する役割も担います。加えて、大手企業では事業部やグループ会社の数が多いため、各部門からの情報を整理し、効率よくまとめるスキルが必要とされます。

 

大手企業における経理の年次業務(毎年の仕事)

 

大手企業における経理の年次業務は、年間の取引を総括して財務諸表を作成し、法定開示や監査対応を行う重要なプロセスです。例えば、連結決算や税務申告などは年次業務の大きな柱であり、膨大なデータを扱いながら正確な処理を進める必要があります。

 

加えて、株主や金融機関への報告資料を作成することも多く、社外に対して信頼性の高い情報を提供する役割が求められます。年次業務は通常の業務に比べて負担が大きく、準備期間や関係部署との調整も欠かせません。加えて、大手企業では国際会計基準に基づく対応が求められることもあり、専門性の高い知識と計画的な進行管理が欠かせない業務といえます。

大手企業の経理の特徴

大手企業の経理の特徴として、以下のような点があげられます。

 

  • 株主や金融機関との信頼のために経理が義務になる
  • グループ会社間での連結決算が発生する場合がある
  • IR情報が採用活動やブランディングにも影響する

 

ここでは、それぞれの経理における特徴を具体的に解説します。

 

株主や金融機関との信頼のために経理が義務になる

 

株主や金融機関との信頼を維持するために、大手企業にとって経理は欠かせない義務となります。例えば、投資家に対して正確な財務諸表を開示することで、資金調達や株価の安定につながりますし、銀行などの金融機関へ適切な情報を提示することで融資条件の改善も期待できます。

 

会計情報や財務情報の透明性の確保は、単に法令遵守という意味だけでなく、長期的な信頼関係を築く基盤となります。そのため、大手企業の経理部門は数字をまとめるだけでなく、外部に信頼性のある情報を発信する役割も果たしているのです。

 

グループ会社間での連結決算が発生する場合がある

 

大手企業では、グループ会社を複数抱えるケースが多く、連結決算が重要な業務として発生します。例えば、国内外に子会社や関連会社を持つ場合、それぞれの財務データを集約し、全体としてひとつの企業体の業績を示す必要があります。

 

連結決算では、各社の会計処理方法や基準の違いを調整する手間があり、単独決算よりもはるかに複雑です。また、連結決算は投資家や金融機関に企業全体の健全性を示す資料となるため、正確性と統一性が求められます。結果として、経理部門はグループ全体を把握し調整する能力を備えることが不可欠となります。

 

なお、連結決算についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

連結決算とは?対象となる企業や業務の流れとメリット・デメリットを解説
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IR情報が採用活動やブランディングにも影響する

 

IR情報は投資家だけでなく、採用活動や企業のブランディングにも影響を及ぼします。例えば、業績や財務状況を正しく開示している企業は社会的信用が高まり、学生や求職者にとって魅力的に映ります。

 

また、透明性のある情報発信は取引先や顧客に安心感を与え、ブランド価値の向上にも直結します。そのため、大手企業の経理部門は数字を管理するだけでなく、IR担当部門と連携し、外部に向けた情報の質を高める役割も果たします。信頼できる情報公開は、資金調達や事業拡大にとどまらず、優秀な人材の獲得や企業の持続的成長にもつながるでしょう。

企業規模における経理の違い

企業規模によって経理は異なっていきます。大手企業・中小企業・ベンチャー企業の経理の違いを以下の表にまとめました。

 

企業規模 経理業務の特徴
大手企業 業務が細分化されて決算や監査対応など専門性が高い
中小企業 少人数で幅広い業務を担当して柔軟な対応が求められる
ベンチャー企業 体制が未整備な場合が多くスピード重視で資金管理を行う

 

ここでは、それぞれの違いをまとめて解説します。

 

大手企業と中小企業での経理の違い

 

大手企業と中小企業の経理の違いは、業務の分担と求められる専門性の高さにあらわれます。例えば、大手企業では日次や月次、年次といった業務ごとに担当が細かく分かれ、会計基準や税務への対応も高度で専門知識が求められます。

 

一方、中小企業では担当者が少人数で幅広い業務を担い、請求や支払から決算まで一貫して処理することも珍しくありません。そのため中小企業では柔軟性や幅広い知識が重視されるのに対し、大手企業では正確性や分業体制を前提とした調整力が重要になります。こうした違いは規模に応じた経理体制のあり方を示しているといえるでしょう。

 

なお、中小企業の経理についてはこちらの記事を参考にしてください。

 

中小企業の経理とは?やり方・業務内容・大企業の経理との違いを解説!
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大手企業とベンチャー企業での経理の違い

 

大手企業とベンチャー企業の経理の違いは、求められるスピード感と制度の整い方にあります。例えば、大手企業では既存の会計システムや内部統制が整っており、決算や監査への対応を中心に安定的な運営が重視されます。

 

一方、ベンチャー企業では経理体制がまだ十分に整っていない場合が多く、担当者が総務や人事を兼任しながら資金繰りや支払管理を進めることもあります。そのため、短期間で経営状況を把握し、投資家や金融機関に説明できる資料をスピーディに整える必要があります。つまり、ベンチャー企業では、大手企業に比べて仕組みよりも実務の即応力が重視される点が特徴といえるでしょう。

 

なお、ベンチャー企業の経理についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

ベンチャー企業の経理はどうすべき?創業初期に知っておきたい経理業務を解説
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大手企業の経理が「きつい」と言われる理由

大手企業の経理が「きつい」と言われる理由として、以下のような点があげられます。

 

  • 求められる知識のレベルが高いから
  • 月次決算・四半期決算・年次決算など業務が多いから
  • 監査対応や準備が大変だから

 

ここでは、それぞれの理由について具体的に解説します。

 

求められる知識のレベルが高いから

 

大手企業の経理がきついと言われる理由のひとつは、求められる知識のレベルが高いからです。例えば、国内の会計基準や税法だけでなく、国際会計基準(IFRS)や移転価格税制など海外取引に関連する知識も必要になることがあります。

 

さらに、AIやDXの導入によりシステムを活用した業務改善が進むなかでは、経理担当者にも新しい技術を理解し適切に使いこなす力が求められます。こうした知識の習得は短期間で身につくものではなく、継続的な学習が欠かせません。そのため、日常業務と並行してスキルアップを続ける必要があり、負担感を抱きやすい環境となっているのです。

 

月次決算・四半期決算・半期決算など業務が多いから

 

大手企業の経理がきついとされる背景には、月次決算・四半期決算・半期決算といった多くの決算業務があることがあげられます。例えば、中小企業では年次決算を中心に作業を行うケースが多いですが、大手企業では短いサイクルで精度の高い数値をまとめる必要があります。

 

そのため、通常の支払処理や伝票管理に加えて、月次や四半期ごとに資料を作成し、経営層や株主に報告する体制を整えなければなりません。決算のたびに大量のデータを集約して確認する必要があるため、繁忙期には残業や休日対応が増えることもあるでしょう。業務の頻度と量が負担につながる点が大手経理の特徴といえるでしょう。

 

監査対応や準備が大変だから

 

監査対応やその準備の大変さも、大手企業の経理がきついとされる大きな要因です。例えば、上場企業では外部監査法人による監査を受ける必要があり、取引記録や証憑の提示、内部統制の運用状況を細かく確認されます。

 

そのため、経理担当者は日常業務をこなしながら、監査に備えて資料を整理したり、指摘事項への対応を進めたりする必要があります。さらに、監査法人とのやり取りだけでなく、社内の複数部署と連携して情報を取りまとめる負担も大きくなります。監査は企業の信頼性を高めるためには欠かせませんが、実務を担う経理担当者にとっては大きな負担となるのです。

大手企業の経理に求められるスキル・知識

大手企業の経理に求められるスキル・知識として、以下のような点があげられます。

 

  • 国際会計基準や税務申告に関する知識
  • AI・IT・DXなど新しい技術への活用スキル
  • 社内外との円滑なコミュニケーション能力

 

ここでは、それぞれのスキルや知識について具体的に解説します。

 

国際会計基準や税務申告に関する知識

 

大手企業の経理には、国際会計基準や税務申告に関する幅広い知識が求められます。例えば、海外に子会社を持つ企業では国際会計基準(IFRS)への対応が必要になり、国ごとに異なる会計基準や税制を理解する必要があります。

 

また、法人税や消費税、移転価格税制など複雑な税務申告を正確に行うためには、高度な専門知識と最新の法改正への対応力が欠かせません。こうした知識は単なる理論だけではなく、実務に沿って正しく運用できる力が重要です。大手企業の経理担当者は、経営判断や外部への信頼性確保に直結する数字を扱うため、常に知識を更新しながら業務に取り組む必要があります。

 

AI・IT・DXなど新しい技術への活用スキル

 

大手企業の経理には、AI・IT・DXといった新しい技術を業務に活用するスキルも欠かせません。例えば、仕訳処理や請求書管理をAIで自動化することで、正確性を高めつつ業務効率を改善できます。また、クラウド会計ソフトやRPAを導入することで、従来時間がかかっていた繰り返し作業を削減し、分析や戦略立案に時間を振り分けられるようになります。

 

こうした変化の中では、単にシステムを利用するだけでなく、現場に合った運用方法を考え、業務フローを最適化できる力が求められます。経理担当者は従来の知識に加えて、新技術を学び取り入れる柔軟さが重要になるのです。

 

社内外との円滑なコミュニケーション能力

 

大手企業の経理では、社内外との円滑なコミュニケーション能力も大切なスキルとされています。例えば、決算資料をまとめる際には営業や人事など複数の部署から正確な情報を収集しなければなりません。また、監査法人や金融機関とのやり取りにおいても、数字の裏付けをわかりやすく説明する力が必要です。

 

経理業務は一人で完結することが少なく、多様な関係者との連携を通じて正確な成果物を仕上げる場面が多いため、信頼関係を築きながら調整を行う姿勢が求められます。数字の正確さに加え、相手の立場を理解して伝える力が、大手企業の経理担当者にとって欠かせない資質といえるでしょう。

大手企業の経理を効率化するポイント

大手企業の経理を効率化するポイントとして、以下のような点があげられます。

 

  • 経理DXを進める
  • 現場業務でAIを活用する
  • 経理代行に依頼する

 

ここでは、それぞれの効率化のポイントを具体的に解説します。ぜひ、経理担当者の負担削減につなげてください。

 

経理DXを進める

 

経理DXを進めることは、大手企業の業務効率化に直結します。例えば、クラウド会計システムやワークフロー管理ツールを導入することで、従来紙やExcelで処理していた経費精算や伝票承認をオンライン上で一元化できます。

 

DX化により、承認プロセスのスピードが上がり、ヒューマンエラーの防止にもつながります。また、データを蓄積しやすくなるため、経営分析や予測にも活用できる点がメリットです。単なるシステム化にとどまらず、業務全体を見直しながら効率的な体制を構築することが求められます。そのため、DXの推進は、経理を単なる管理部門から戦略的な役割へと変化させるきっかけにもなるのです。

 

なお、経理のDX化についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理DXとは?始め方と導入するメリットや成功の秘訣を解説
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現場業務でAIを活用する

 

現場業務にAIを活用することは、日常的な経理作業を効率化するおすすめの手段です。例えば、AIを用いた自動仕訳や請求書データの読み取りは、人の手で行う作業に比べて処理スピードが速く、ミスの削減にもつながります。さらに、大量のデータをAIに分析させることで、不正や異常値の早期発見にも役立ちます。

 

その結果、担当者は定型業務から解放され、経営分析や改善提案など付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。つまり、AIの活用は、業務の質と効率を両立させるための実践的な方法であり、経理部門全体の働き方を大きく変える可能性を持っているといえるでしょう。

 

経理代行に依頼する

 

経理代行に依頼することは、大手企業における効率化としておすすめです。例えば、日常的な仕訳や給与計算など定型的な業務を外部に委託することで、社内の経理担当者は決算対応や経営分析といったコア業務に集中できます。

 

また、専門知識を持つ外部スタッフに任せることで、法改正や会計基準の変更に迅速に対応できる点もメリットです。さらに、繁忙期の一時的な人手不足を補う柔軟な体制を整えられるため、業務負担のバラつきを防ぐことにもつながるでしょう。外部委託はコストがかかる面もありますが、効率性や正確性を高めたい場合には有効な手段として検討の価値があります。

 

なお、経理代行についてはこちらの記事でも紹介しています。

 

経理代行とは?サービス内容・メリット・選び方を詳しく解説
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まとめ

大手企業の経理は中小企業やベンチャー企業と比べて業務範囲が広く、求められる専門性や責任の重さが大きいことが特徴です。例えば、日次処理や決算業務に加えて監査やIR対応まで担うため、正確性とスピードの両立が常に求められます。

 

その一方で、DXやAIの活用、経理代行の導入といった工夫によって業務を効率化し、負担を軽減することも可能です。今後は経理を単なる管理業務にとどめず、経営を支える戦略的な部門へと進化させる取り組みが、企業の成長において重要なポイントとなるでしょう。

 

弊社では、経理代行と記帳代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な記帳業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

大手企業の経理に関するよくあるご質問

大手企業の経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、大手企業の経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

大手企業の経理が「きつい」と言われる理由は何ですか?

大手企業の経理がきついと言われるのは、求められる知識のレベルが高く、業務量も多いためです。例えば、月次・四半期・年次決算を正確かつ迅速に処理する必要があり、そのうえ監査対応やグループ会社との連結決算なども発生します。加えて、金融機関や株主に対する情報提供も欠かせず、責任感と緊張感があります。

大手企業の経理が「つまらない」と言われる理由は何ですか?

大手企業の経理がつまらないと言われるのは、業務が細分化されやすいためです。経費精算や請求書処理などを担当すると、決められた手続きを繰り返す作業が中心になり、自分の仕事の成果が企業全体にどのように貢献しているか実感しにくい場面もあります。経理DXやAI活用を進めてルーティンを減らすことがおすすめです。

大手企業と中小企業の経理の違いは何ですか?

大手企業と中小企業の経理の違いは、業務範囲や役割の分担にあります。大手企業では部門ごとに担当業務が分かれ、連結決算やIR情報の開示など専門的な対応が求められます。一方、中小企業では一人の担当者が日次処理から決算業務まで幅広く担います。全体像を把握できる反面、リソース不足や効率の悪さを抱えやすいです。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。