企業の経理業務では、さまざまな作業が発生します。なかでも、振込作業は煩雑で、ミスが発生しやすい作業のひとつです。そのため、振込作業の効率化や人的ミスの削減につながる「振込代行サービス」が注目を集めています。
本記事では、振込代行サービスとは何かについて、支払代行サービスや決済代行サービスとの違いを交えながら紹介します。また、活用するメリット・デメリットや、振込代行サービスを選ぶ際のポイントについても詳しく解説します。経理業務を圧迫している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
振込代行サービスとは?
振込代行サービスとは、企業や個人が行う振込業務を外部の専門業者に委託し、代行してもらうサービスです。給与の支払いや取引先への支払いなど、さまざまな振込作業が発生する企業にとって、効率的な業務処理が求められます。なかでも、振込業務は煩雑で時間がかかるため、振込代行サービスを利用することで、ミスの防止や人件費の削減、業務の効率化が図れます。
特に、給与や経費の振込は、毎月一定の日時に多くの金額がまとめて発生するため、自社で手動で行う場合、作業負荷が大きくなります。そのため、振込代行サービスを利用することで、振込作業を専門の業者に任せ、事務処理の負担を軽減できます。
さらに、振込業者は複数の銀行口座への振込を一括で管理するため、銀行ごとに振り込む手間を削減して、振込手続きの自動化も実現します。その結果、企業は本業に専念しつつ、支払い業務の効率化と精度向上を期待できます。
振込代行サービスと支払代行サービスの違い
振込代行サービスと支払代行サービスは、どちらも金銭のやり取りを外部業者に委託するという点で、ほとんど同じ意味を持っています。どちらのサービスも、企業や個人が煩雑な振込作業や支払業務を効率化するために利用されるものです。
振込代行サービスは、給与や経費などのお金を銀行や金融機関へ振り込む作業を代行するサービスを指します。一方で、支払代行サービスは、取引先から発行された請求書の支払いを代行するサービスです。
基本的には、支払代行サービスで行われる作業も、金融機関への振込みを通して行われるため、同じサービスという認識で問題ありません。
振込代行サービスと決済代行サービスの違い
振込代行サービスと決済代行サービスは、どちらも金銭のやり取りに関連していますが、取り扱う決済方法に違いがあります。
振込代行サービスは、主に企業が他の企業や従業員への振込を代行してもらうもので、支払う金額や振込先を企業があらかじめ決定します。振込代行を委託された業者は、銀行などの金融機関に指定された金額を振り込みます。
一方、決済代行サービスは、消費者と事業者間の取引で利用されるサービスです。主に、ECサイトや店舗のクレジットカード決済、QRコード決済、電子マネー決済をサポートするものです。決済代行業者は、消費者が支払った代金を一時的に管理し、一定期間後に事業者に送金する役割を果たします。
そのため、振込代行サービスは経理業務の効率化が役割であり、決済代行サービスは、クレジットカードなどの決済システムのインフラ整備といった役割があるといえるでしょう。
振込代行サービスが選ばれる理由と背景
振込代行サービスが多くの企業に選ばれる理由として、業務の効率化が挙げられます。企業における人材不足という背景は、経理の部門にも当てはまります。手間と時間がかかる作業を代行することで、企業の担当者は本業となるコア業務に集中できるようになります。特に、ベンチャー企業や中小企業では、人材やリソースが限られているため、振込作業のアウトソーシングは非常に魅力的です。
また、企業は給与支払いや取引先への振込みなど、定期的に大量の振込作業を行う必要があり、そのたびに手作業で処理すると人的ミスのリスクが高まります。セキュリティ面でも安心して利用できる振込代行サービスを導入することで、企業の機密情報や従業員の個人情報を安全に管理できます。効率化や信頼性の向上という背景から、多くの企業が振込代行サービスを導入し、コスト削減と業務改善を実現しています。
なお、経理代行サービスとして、振込代行を依頼することもできます。経理代行については以下の記事も参考にしてください。
振込代行サービスのメリット
企業が振込代行サービスを導入することで、以下のようなメリットがあります。
- 経理業務における作業を効率化できる
- 人件費などのコスト削減につながる
- 入金状況の見える化ができる
- 誤振込などの人的ミスを減らせる
- スピーディな入金で顧客満足度が向上できる
経理業務における作業を効率化できる
振込代行サービスを利用することで、経理業務の作業効率が大幅に向上します。従来の振込作業は、手動での入力や確認が多く、ミスが発生しやすいだけでなく、多くの時間と労力を要します。
しかし、振込代行サービスを導入すれば、企業は一度のデータ入力で複数の振込を自動的に処理できるため、手間が大幅に削減されます。また、複数の銀行口座への振込や一括処理が可能なため、作業時間の短縮も実現します。その結果、経理担当者は他の重要な業務に集中でき、業務全体の効率化が図れます。
人件費などのコスト削減につながる
振込代行サービスを導入することで、人件費をはじめとしたコスト削減効果が期待できます。振込業務は手作業で行うと時間がかかり、経理担当者の人手を要としますが、振込代行サービスを活用することで、その負担を軽減することができます。
その結果、振込作業に費やしていた労力を他の業務に振り向けることができ、効率的に人材を配置することができます。さらに、手数料が銀行ごとに異なる場合は、振込先を一元管理することで、振込コストの削減にもつながり、総合的な経費の見直しができる点も大きなメリットです。
なお、経理業務のコスト削減については、以下の記事も参考にしてください。
入金状況の見える化ができる
振込代行サービスを利用することで、入金状況の見える化が可能になります。これにより、振込が完了したかどうか、どの取引先への支払いが済んでいるかをリアルタイムで確認できるようになります。
特に、数多くの振込を行う企業にとっては、入金確認の煩雑さが軽減され、管理が格段にスムーズになります。振込業務の見える化によって、振込状況を一元的に把握できるため、経理担当者が後から個別に確認する手間が省け、業務の透明性も向上します。その結果、財務管理の精度が高まり、効率的な経営判断にもつながるでしょう。
誤振込などの人的ミスを減らせる
振込代行サービスを利用することで、誤振込などの人的ミスを大幅に減らすことができます。従来の手動による振込処理は、特に金額や振込先の口座番号の入力ミスが起こりやすく、これが後々のトラブルや修正作業につながることがあります。
しかし、振込代行業者に委託することで、システム化された正確な処理が可能となり、ミスの発生率が低下します。また、ミスが起こった際の修正対応も迅速であるため、経理業務の負担が軽減されます。結果として、信頼性の高い支払い業務が実現できるといえるでしょう。
スピーディな入金で顧客満足度が向上できる
振込代行サービスを利用すると、支払いの処理が迅速に行われるため、取引先や顧客への支払いが確実に遅れなく行われます。これにより、取引先からの信頼が高まり、取引先や顧客との良好な関係を維持することができます。
また、迅速な支払いは、従業員のモチベーションを高める効果もあり、企業全体の業務効率向上につながります。特に、グループ会社や関連会社など、多くの従業員を抱える企業にとって、スピーディな入金処理は、従業員からの信頼を高め、働くことへの満足度の向上にもつながるでしょう。
振込代行サービスのデメリット
振込代行サービスを利用する際には、以下のようなデメリットにも注意しましょう。
- サービスの利用料金がかかる
- 情報漏洩のリスクがある
- 事前に資金を準備する必要がある
- 外部の委託先に依存してしまう
- 社内にノウハウが蓄積されない
サービスの利用料金がかかる
振込代行サービスを利用する際、当然ながら利用料金が発生します。これは、振込業務を外部に委託するためのコストであり、一般的には取引件数や振込先の数によって料金が変動します。
特に、中小企業やコスト削減を重視する企業にとって、こうした追加コストは負担になる場合があります。また、自社での振込手続きにかかる銀行手数料と比較して、振込代行業者に支払う料金が割高になることもあるため、コストパフォーマンスを考慮した上で導入の可否を慎重に検討する必要があります。そのため、コスト以上のメリットが得られるかどうか、事前に十分検討しておきましょう。
なお、中小企業の経理については、以下の記事も参考にしてください。
情報漏洩のリスクがある
振込代行サービスの利用に伴うリスクとして、情報漏洩の懸念が挙げられます。振込に関するデータには、企業の機密情報や取引先の金融情報、さらには従業員の個人情報が含まれるため、それらが外部に流出することは深刻な問題となります。
代行業者がセキュリティ対策を万全にしている場合でも、完全にリスクをゼロにすることは難しく、特に外部のサーバーやシステムが攻撃を受けた場合、漏洩の危険性が高まります。そのため、代行業者の信頼性やセキュリティの強固さを事前に確認し、万一のリスクに備える必要があります。
事前に資金を準備する必要がある
振込代行サービスを利用する際、支払いに必要な資金を事前に準備しておく必要があります。これは、振込代行業者が企業に代わって振込を行うために、あらかじめ指定された金額を預け入れる必要があるためです。
特に、キャッシュフローが圧迫されている企業にとっては、振込費用の事前準備が資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。また、支払日までに資金が不足している場合、サービスの利用ができなくなるリスクも考えられます。そのため、計画的な資金管理が求められ、企業の財務状況に応じた柔軟な対応が必要です。
外部の委託先に依存してしまう
振込代行サービスを導入することで、企業は外部の委託先に依存する状態に陥る可能性があります。特に、代行業者が何らかのトラブルに見舞われた場合、振込業務全体が滞り、企業の取引や従業員への支払いに遅れが生じるリスクがあります。
また、万が一サービスの提供が停止した場合、振込を再び社内で処理しなければならず、その準備が整っていないと、業務に大きな影響を与えることもあります。代行業者への過度な依存を避けるためにも、代替手段や緊急時の対応策を事前に整備しておくことが重要です。
社内にノウハウが蓄積されない
振込代行サービスを長期的に利用していると、社内に振込業務に関するノウハウが蓄積されにくくなるデメリットがあります。外部に業務を任せていることで、従業員が振込の詳細な手順やトラブル対応のスキルを習得する機会が減少します。
その結果、万が一代行業者が使えなくなったり、急な対応が必要になった場合に、社内で十分に対応できなくなるリスクが高まります。さらに、業務の内製化が難しくなると、今後の業務改善やコスト削減の機会も失われる可能性があるため、一定のノウハウは社内で維持する必要もあるでしょう。
振込代行サービスの選び方のポイント
信頼のおける振込代行サービスを選ぶためには、以下のようなポイントを意識しましょう。
- セキュリティ対策が万全な企業を選ぶ
- 自社の予算に見合った料金体系のサービスを選ぶ
- コミュニケーションのとれる担当者を選ぶ
- 事業成長にあったサービスを選ぶ
セキュリティ対策が万全な企業を選ぶ
振込代行サービスを選ぶ際には、セキュリティ対策が万全な企業を選ぶことが重要です。振込業務には、企業の財務情報や従業員の個人情報、取引先の口座情報など、非常に機密性の高いデータが含まれています。
万が一、個人情報が漏洩すれば、企業の信頼を失うだけでなく、法的なトラブルにも発展しかねません。そのため、振込代行サービスを選定する際には、委託先の業者がどのようなセキュリティ体制を敷いているのか確認しておきましょう。
例えば、暗号化技術の導入や個人情報保護法の遵守、データ管理の厳重さなどをチェックすることがおすすめです。セキュリティ対策に力を入れている企業であれば、安心して業務を委託でき、長期的に信頼関係を築くことができるでしょう。
自社の予算に見合った料金体系のサービスを選ぶ
振込代行サービスを導入する際には、まず自社の予算に見合った料金体系のサービスを選ぶことが大切です。料金は、振込件数や振込先の数、またサービスの種類によって異なります。
安価なサービスを選ぶことは短期的にはコスト削減につながるかもしれませんが、長期的には品質やサポート体制に問題が生じる可能性もあるため、価格だけで判断するのは危険です。料金が適正であるかどうかを見極めるには、サービス内容やオプション、さらに必要に応じて発生する追加費用も含めて検討することが必要です。自社の業務量に応じた最適なプランを選ぶことで、コストパフォーマンスを最大化できます。
なお、経理代行全般の費用相場については、以下の記事を参考にしてください。
円滑なコミュニケーションのとれる担当者を選ぶ
振込代行サービスを選定する際、信頼できるコミュニケーションが取れる担当者の存在は非常に重要です。振込みに関する業務は、時には緊急の対応が求められることがあり、ミスやトラブルが発生した場合、迅速かつ的確なサポートが求められます。
担当者が適切なコミュニケーション能力を持ち、スムーズにやり取りができることは、サービスの満足度を大きく左右します。特に、振込先の変更や追加、支払いスケジュールの調整など、細やかな対応が必要な場面では、担当者の柔軟性や問題解決能力が重要です。信頼できるパートナーとして、担当者のレスポンスの速さやサポートの質にも注目して選ぶべきです。
事業成長にあったサービスを選ぶ
振込代行サービスを選ぶ際には、現在のニーズだけでなく、将来的な事業成長を見据えたサービスを選ぶことが重要です。企業が成長するにつれて、振込の件数や取引先の数も増加し、それに伴い求められるサービスの内容や規模も変わってきます。
導入当初は小規模なプランで十分でも、将来的に柔軟に対応できるサービスを選んでおくことで、事業の拡大に応じたスムーズな対応が可能になります。例えば、振込先の追加や新しい支払い手段への対応が必要になることも考えられるため、サービスの拡張性やサポート体制が充実している業者を選ぶことが望ましいです。その結果、長期的に安定した業務運営を続けることができ、事業の発展に貢献するサービスとして活用できるでしょう。
なお、上場(IPO)準備企業の経理については、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
振込代行サービスとは、企業の経理業務における面倒な振込作業を外部の事業者にアウトソーシングするサービスのことです。経理の人材不足という課題を解決して、振込業務の効率化やコスト削減につながります。
ただし、振込代行サービスには、外部の委託先に依存してしまい、社内に経理業務のノウハウが蓄積されないというデメリットもあります。そのため、企業の成長と伴走できる信頼のおける経理代行会社に依頼することがおすすめです。
ビズネコでは、経理代行・アウトソーシングサービスを提供しています。振込代行サービスだけではなく、経費削減のアドバイスや、財務のコンサルティング、経費精算ツールの選定まで幅広く対応が可能なため、ぜひお気軽にお問い合わせください。
振込代行サービスのよくあるご質問
振込代行サービスに関するお問い合わせを多数いただきます。ここでは、振込代行サービスに対するよくあるご質問について回答をまとめて紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
振込代行サービスは違法ですか?
振込代行サービスは違法ではありません。ただし、報酬と引き換えに、第三者へ振込みを指示する行為などは違法です。また、給与の振込代行サービスも違法ではありません。労働基準法第24条に記載の、①通貨払い、②直接払い、③全額払い、④毎月1回以上、⑤一定期日、という5原則を満たしていれば問題ありません。
振込代行はどのような仕組みですか?
振込代行は、企業や個人が支払うべき金額や振込先情報を業者に提供し、業者が代わりに振込を行う仕組みです。サービスの利用社は代行業者にあらかじめ資金を預け、業者が一括して支払い処理を行います。振込代行の仕組みにより、振込の手間やミスを減らし、効率的に複数の支払いが可能となります。
振込代行業者とは何ですか?
振込代行業者とは、企業や個人の代わりに支払い業務を行う専門の業者です。主に給与や取引先への支払いを代行し、手続きの簡略化や業務効率化を図るサービスを提供します。振込代行業者は、正確な振込処理やセキュリティ対策を整えることで、振込みにおける人的ミスや手続きの煩雑さを軽減できます。