
経理の仕事は、毎月の締め処理やルーティン業務の繰り返し、他部署とのやりとりやプレッシャーの多い繁忙期など、日々の業務にストレスを感じやすい職種でもあります。また、努力が評価されにくかったり、昇給や昇進のペースが遅かったりと、将来に不安を感じることも少なくありません。
本記事では、経理を辞めたいと感じるよくある理由をまとめて解説します。また、経理を長く続けるための具体的な工夫や考え方も紹介します。ぜひ、経理のキャリアを前向きに考えるきっかけにしてください。
目次
経理の仕事内容とは?
経理の仕事内容は、企業の財務状況を正確に把握し、健全な経営判断を支えるための重要な業務です。具体的には、日々の取引を帳簿に記録する仕訳入力や伝票整理、請求書や領収書の管理、売上や支払いの確認、給与計算や社会保険の手続きなどが含まれます。
また、月次決算や年次決算に向けた帳簿の締め処理や、税務申告の準備といった業務も経理の役割です。例えば、月末には取引先への支払業務や売掛金の入金確認が重なるため、特に忙しくなります。
加えて、税理士や監査法人とのやりとり、社内の他部署との情報共有も必要になるため、単に数字を扱うだけでなく、正確さや期限厳守、コミュニケーション能力も求められます。近年では、クラウド会計ソフトや自動化ツールの導入も進み、経理の仕事はより効率的かつ幅広いものへと変化しています。
なお、経理の仕事内容については、こちらの記事も参考にしてください。

「経理を辞めたい」人のよくある理由
「経理を辞めたい」人のよくある理由として以下のような点があげられます。
- 毎日同じ仕事が続いてしまう
- 締め日や繁忙期が忙しい
- 会社から評価されづらい
- 他部署とのやりとりが面倒くさい
- 専門用語や覚える作業が多い
- 昇給や昇進が遅い
ここでは、それぞれの理由をまとめていますので、突然の退職を防ぐ参考にしてください。
毎日同じ仕事が続いてしまう
経理の仕事は、日々の業務がある程度決まっており、月ごとのサイクルで同じような作業が繰り返される傾向にあります。そのため、仕事に慣れてくると新鮮味が薄れ、やりがいや達成感を感じにくくなることがあります。例えば、毎日の仕訳入力や領収書の処理などは手順が決まっているため、創造性を発揮する場面が少なく、単調に感じやすいでしょう。
こうした繰り返しの作業にストレスを感じたり、「自分の成長につながっていないのでは?」と不安になる人もいます。特に、他部署のように目に見える成果が出にくい職種であるため、達成感を得にくい点も、辞めたいと感じる要因になりがちです。
締め日や繁忙期が忙しい
経理の仕事は、月末月初、四半期、年末といった「締め日」や「決算期」に大きな負荷がかかる傾向があります。通常業務に加えて、書類の整理、帳簿の最終確認、各種報告資料の作成など、正確さとスピードの両方が求められるため、精神的にも肉体的にもハードになりがちです。例えば、月末には取引先への支払い処理と売上確認が集中し、わずかなミスが後々の大きなトラブルにつながることもあるため、プレッシャーがかかります。
また、決算期には残業が多くなりやすい企業もあり、ワークライフバランスが崩れてしまうことも少なくありません。こうした繁忙期の過酷さにより、「この仕事を長く続けられる自信がない」と感じてしまうでしょう。
会社から評価されづらい
経理の仕事は、いかに正確に業務をこなしても「トラブルがないのが当たり前」と見なされやすいため、会社から評価されにくいという声が多くあります。例えば、請求書の金額に誤りがなく、支払いが滞りなく完了していても、それは「当然のこと」として扱われ、目立った成果として認識されないことがあります。
一方で、ひとつのミスが大きく目立ち、責任を問われるリスクは高いため、不公平感を抱きやすいのです。営業のように売上という具体的な数字で評価されるわけでもなく、クリエイティブ職のように個性をアピールする場面も少ない経理職では、「自分の頑張りは誰にも見てもらえない」と感じてしまうことがあります。結果として、モチベーションを保つのが難しくなり、辞職を考える要因になるのです。
他部署とのやりとりが面倒くさい
経理は社内のさまざまな部署と関わる必要があるため、調整業務や確認作業が発生しやすく、コミュニケーションの負担を感じる場面も多くなります。例えば、営業部に経費精算の確認を求めたり、総務部に支払い関連の書類を提出してもらうよう依頼したりと、他部署とのやりとりは避けて通れません。
しかし、相手の対応が遅かったり、必要な情報が不足していたりすると、業務がスムーズに進まず、ストレスの原因になります。また、経理の業務は期限が厳格であるため、相手がマイペースだった場合には自分の仕事に支障が出てしまいます。こうした人間関係や社内調整の煩雑さに疲れ、「もっと一人で完結する仕事がしたい」と感じて辞めたくなる人も少なくありません。
専門用語や覚える作業が多い
経理の業務には、簿記や税務に関する専門用語が頻繁に登場し、それらを正確に理解し使いこなすことが求められます。例えば、「前払費用」や「未払金」といった勘定科目の意味や使い分け、「減価償却」や「源泉徴収」といった仕組みなど、初めて経理に携わる人にとっては、馴染みのない概念を短期間で習得しなければならない場面が多くあります。
さらに、法改正や会計基準の変更があるたびに新しい知識を取り入れる必要があるため、学び続けなければ業務についていけなくなるというプレッシャーもあります。覚えるべき内容が膨大で、常にインプットを求められる環境に息苦しさを感じ、「自分には向いていないのではないか」と不安になることも、辞めたいと考える理由のひとつになります。
昇給や昇進が遅い
経理職は企業にとって不可欠な存在である一方で、評価や昇進のスピードは他職種に比べて遅いと感じる人も多いようです。特に成果が数字で見えにくく、定量的に評価されづらい経理では、いくら努力しても昇給や役職への昇格につながりにくいケースが少なくありません。例えば、数年間にわたり正確に業務をこなしていても、それが目立たなければ「問題がないだけ」として評価対象にならないこともあるのです。
さらに、組織によっては経理部のポジションが限られており、ポストが空かない限り昇進のチャンスが巡ってこないことも珍しくありません。このように、将来のキャリアパスが見えにくい状況に不満や不安を感じ、「このまま続けていても報われないのでは」と感じて辞めたいと考える人が出てきてしまうのです。
経理に向いていない人の特徴
経理に向いていない人の特徴として以下のような点があげられます。
- 細かい作業が苦手な人
- 締め切りにルーズな人
- 数字に弱い人
- 学習意欲のない人
- コミュニケーションが苦手な人
ただし、あくまでも一例のため、克服することで経理を長く続けることもできるでしょう。
細かい作業が苦手な人
経理の仕事は、日々の数字や書類と丁寧に向き合う必要があり、細かい作業の連続です。例えば、請求書の金額や日付、仕訳の勘定科目を一つひとつ確認しながら正確に入力する作業は、ほんのわずかなミスも許されません。こうした業務では、注意力や集中力を長時間維持する力が求められ、些細な確認漏れが後々大きなトラブルにつながることもあります。
細かいことに注意を払うのが苦手な人や、ざっくりとした性格の人にとっては、非常にストレスがたまりやすく、仕事自体に苦痛を感じる可能性があります。細かい作業が嫌いだと、経理の本質的な仕事と相性が合わず、ミスが増えたり、職場での信頼を失う原因にもなりかねません。そのため、几帳面さに自信がない人には経理は向いていない職種といえるでしょう。
締め切りにルーズな人
経理の仕事には、常に「締め切り」が存在し、それを守ることが最優先されます。例えば、月末の締め処理や年次決算、税務申告などは、法律や社内ルールで提出期限が厳密に定められており、遅れることが許されません。そのため、スケジュール管理能力が求められ、自分のペースで動きたいというタイプの人には厳しく感じる場面も多いでしょう。
締め切りに対してルーズな人は、業務が遅れれば社内外に大きな迷惑をかけることになり、信頼を失うリスクも高くなります。また、他部署との連携も多いため、自分一人の都合で動けないという点でも計画性が必要になります。期限を守る意識が低いと、プレッシャーだけが積み重なり、経理業務自体が大きな負担となってしまうのです。
数字に弱い人
業務は、数字を正確に扱うことが日常の中心になります。例えば、取引の金額を仕訳に落とし込む際には、税率の計算や端数の処理、支払期日の把握など、数値的な処理能力が欠かせません。もちろん、高度な数学の知識が求められるわけではありませんが、日々の業務の中で数字の意味を正しく理解し、違和感を察知できるセンスは非常に重要です。
数字に苦手意識がある人は、業務を進めるのに時間がかかったり、誤りに気づかずに処理してしまうリスクも高まります。結果として、自信を失ったり、職場での評価が下がる可能性もあるでしょう。数字に対して感覚的な理解が難しいと、経理の正確性とスピードの両立が困難になるため、数字への苦手意識が強い人には向かない仕事といえます。
学習意欲のない人
経理の分野は、常に新しい知識が求められる仕事です。例えば、税制改正が行われればその内容を理解して実務に反映させる必要がありますし、新しい会計基準や電子帳簿保存法などの制度変更にも対応していかなければなりません。こうした変化に柔軟に対応するためには、日々の業務の中でも勉強を続ける姿勢が欠かせません。
しかし、学ぶことが面倒だと感じたり、現状の知識だけで乗り切ろうとする人にとっては、変化についていけず、次第に業務の質が低下してしまう恐れがあります。学習意欲がないと、自分の成長も停滞し、結果として周囲との差が広がってしまうのです。経理は一度覚えたら終わりという仕事ではないため、常に知識をアップデートし続ける意欲がない人には向いていない職種といえるでしょう。
コミュニケーションが苦手な人
経理の仕事は、一見、経理はパソコンに向かって黙々と作業をするイメージがあるかもしれませんが、実際には他部署とのやりとりや取引先との対応など、人と接する場面も非常に多い仕事です。例えば、営業部から届いた経費申請に不明点があれば確認が必要ですし、支払い条件の変更をめぐって仕入先とやり取りをすることもあります。
こうした場面では、相手に対してわかりやすく、かつ丁寧に説明を行う力が求められます。コミュニケーションに苦手意識がある人や、人とのやりとりにストレスを感じやすい人は、他部署との対応に負担を感じやすく、業務そのものが苦痛になることもあります。また、経理はミスの防止や確認作業においても周囲との連携が欠かせないため、人との関係構築が苦手だと業務に支障をきたす恐れがあります。
経理の仕事を長く続けるためのコツ
経理の仕事を長く続けるためのコツとして以下のような点があげられます。
- 業務フローを見直して仕事を分担する
- AIや新しい知識を学んでみる
- 上司や同僚には早めに相談する
- 経理代行会社を活用してみる
ここでは、それぞれのコツやポイントを詳しく解説します。
業務フローを見直して仕事を分担する
経理の仕事を長く続けるためには、業務フローの見直しと適切な仕事の分担が重要です。例えば、経費精算や請求書処理といったルーティン業務を一人で抱え込んでいると、些細なトラブルでも業務全体が停滞し、精神的な負担が増してしまいます。
そこで、業務内容を整理し、属人化している作業をチーム内で共有できる仕組みをつくることで、作業の偏りを防ぎ、余裕を持って仕事に取り組める環境が整います。また、業務の流れを定期的に振り返ることで、無駄な工程や重複した作業が見つかることもあります。改善点が見つかれば、効率化を図ることで日々の業務がスムーズになり、ストレスの軽減にもつながります。
なお、経理の業務フローについては、こちらの記事でもまとめています。

AIや新しい知識を学んでみる
経理業務は変化の少ない仕事と思われがちですが、実際にはIT技術や法改正によって進化を続けている分野です。例えば、AIを活用した自動仕訳ツールや、クラウド会計ソフトなどは、これまで手作業で行っていた業務を大幅に効率化する手段として注目されています。こうした新しい技術やツールを積極的に取り入れることで、作業時間が短縮されるだけでなく、ミスの防止やデータ管理の精度向上にもつながります。
また、AIに限らず、税制や会計基準の改正、ITリテラシーなど、日々学ぶべき知識は少なくありません。学習意欲を持ち、変化に対応できるようにすることで、仕事に対するモチベーションも高まり、マンネリ化を防ぐことができます。
なお、経理とAIについては、こちらの記事も参考にしてください。

上司や同僚には早めに相談する
経理業務においては、正確さと納期が強く求められるため、一人で抱え込みすぎるとプレッシャーやストレスが蓄積しやすくなります。例えば、月末の締め処理でミスが続いたり、わからない仕訳に悩み続けているうちに時間が過ぎ、さらに焦りが増すという悪循環に陥ることもあるでしょう。そうしたときに、上司や同僚に早めに相談する習慣を持つことが大切です。
たとえ初歩的な内容であっても、早い段階で確認をとることでミスを未然に防ぎ、自分の成長にもつながります。また、相談を通じて周囲との信頼関係が築かれることで、職場の雰囲気も良くなり、孤立感を感じずに働けるようになるでしょう。
経理代行会社を活用してみる
経理業務の負担を減らす手段のひとつとして、経理代行会社の活用があります。例えば、請求書の発行や仕訳入力、給与計算といったルーティン業務を外部に委託することで、自社の経理担当者が本来注力すべき財務分析や業務改善に時間を使えるようになります。これにより、日々の作業に追われて疲弊する状況を避け、より戦略的でやりがいのある仕事に取り組めるようになるのです。
また、専門知識を持つ外部のプロが関与することで、業務の正確性や効率も高まり、自信を持って経理業務に臨むことができます。特に人手不足や業務の属人化が課題となっている現場では、こうした外部リソースの導入が長期的な働きやすさにつながる可能性があります。
なお、経理代行会社については、こちらの記事も参考にしてください。

まとめ
「経理を辞めたい」と考える人の理由として、毎日同じ仕事が続いてしまう点や締め日や繁忙期が忙しい点、会社から評価されづらい点などがあげられます。また、他部署とのやりとりが面倒くさい点や専門用語や覚える作業が多い点、昇給や昇進が遅い点もあります。
経理の仕事を長く続けていくためには、業務フローの見直しを行って担当者の負担を減らし、AIやクラウド会計ソフトなどの新しい知識に目を向けてマンネリ化を解消することがコツです。また、大変な状況になる前に上司や同僚に早めに相談しておくこともよいでしょう。なお、経理代行会社を活用して負担を軽減することもひとつの手です。
弊社では、経理代行と記帳代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な記帳業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。
「経理を辞めたい人」に関するよくあるご質問
「経理を辞めたい人」についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、「経理を辞めたい人」に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
経理職の退職理由は何ですか?
経理職の退職理由としては、業務内容が単調で達成感を得にくいことや、忙しい割に社内での評価が上がりにくいと感じることが多く挙げられます。また、経理は間接部門に分類されるため、売上や成果が数字として見えにくく、自分の仕事がどれほど評価されているのかわかりづらいと感じてしまう人もいます。
経理のつらいことは何ですか?
経理の仕事でつらいと感じやすいのは、締め切りに追われるプレッシャーや、ミスが許されない緊張感が常にあることです。また、税務や会計ルールの改正など、学習を続けなければ業務についていけないという不安を抱える人もいます。地道で責任の重い仕事だからこそ、やりがいを見出すのが難しいのです。
経理は何年で慣れますか?
経理職が業務に慣れるには、一般的に2〜3年が目安とされています。最初の1年で基礎的な業務を習得し、2年目からは決算や税務対応といった応用業務に取り組むことで、徐々にスキルが定着していきます。複数の決算期を経験することで、実務経験が安定してくるため、複数人で業務を進めていくことがおすすめです。