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広告代理店業界における経理業務とは?課題と効率化のポイントを解説
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広告代理店業界における経理業務とは?課題と効率化のポイントを解説

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広告代理店業界の経理業務は、数多くのクライアントや関係会社に対応し、複雑な収益構造を把握しながら進める必要のある専門性の高い業務です。本記事では、広告代理店の経理業務の特徴や、日次・月次・年次の業務内容、広告代理店業界に特有の課題と効率化のポイントについて解説します。

 

広告代理店業界における、繁忙期と閑散期の業務量の変動や、クライアントごとに異なる支払い条件など、広告代理店経理ならではの課題を解決する際に役立つ情報もまとめています。経理担当者の方はもちろん、広告代理店を経営する方もぜひ参考にしてください。

 

広告代理店業界における経理業務とは?

広告代理店業界における経理業務は主に以下の3つにわけられます。

 

  • 日次業務(毎日の仕事)
  • 月次業務(毎月の仕事)
  • 年次業務(毎年の仕事)

 

ここでは、それぞれの仕事内容について具体的に解説していきます。

 

 

広告代理店の経理における日次業務

 

広告代理店の経理における日次業務は、日々発生する取引や業務を正確に記録し、スピーディに処理することが求められます。主な日次業務として、クライアントやパートナー企業との請求書の確認や発行、支払い処理、現金や預金の残高管理があります。

 

また、広告代理店特有の仕事として、GoogleやFacebookなど広告媒体の費用やホームページ制作や動画制作など、クリエイティブの制作費用などの広告費に関わる支出の確認や、計上漏れがないよう注意を払うことが必要です。

 

さらに、広告案件ごとに発生する取引内容が複雑になるため、専用のシステムを用いた管理やデータ入力もあります。日々の業務を正確かつ効率的に行うことで、経理部門全体のスムーズな運営が支えられ、他部署との連携も円滑になります。

 

広告代理店の経理における月次業務

 

広告代理店の経理における月次業務は、各月の経理状況を整理し、正確な数値を算出する重要な業務です。売上や費用の締め作業を行い、損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を作成することも求められます。

 

また、広告業界では媒体費用や制作費用なども大きな割合を占めるため、それらを正確に計上し、各案件ごとの収支を分析する作業も含まれます。

 

なお、未払金の確認、翌月のキャッシュフローを予測するための予算シミュレーションの作成も必要になる場合があります。経理は月次業務を通じて、経営陣が適切な経営判断を行えるようにして、企業全体の事業活動を支える役割を果たします。

 

広告代理店の経理における年次業務

 

広告代理店の経理における年次業務は、一年を通じた経理業務の総まとめであり、特に決算業務が中心的な役割を果たします。年度末には、すべての取引を精査し、帳簿を確定させることが求められます。具体的には、税務申告に向けた法人税や消費税の計算、外部監査への対応、株主や投資家に対して適切な財務報告を行うための決算書の作成が重要です。

 

さらに、広告代理店特有のポイントとして、年度ごとの案件収支や広告費用の分析を行い、翌年度の経営計画に活用できるデータを提供することも含まれます。年次業務を的確に実施することで、会社全体の財務体制を健全に保ち、将来の発展を支える役割を担います。

広告代理店業の経理業務の特徴

広告代理店業において経理業務には以下のような特徴があります。

 

  • さまざまな収益モデルへの対応
  • クライアントごとに分かれた支払い
  • 外部ベンダーとのやりとりが盛ん

 

ここでは、それぞれの経理の特徴を具体的に紹介します。

 

さまざまな収益モデルへの対応

 

広告代理店業務は、収益モデルが複雑であるため、経理業務にも柔軟性が求められます。広告代理店では、広告費をクライアントから直接受け取る場合や、広告主から提供された予算をメディアへ支払うかたちで調整する場合があります。

 

また、成功報酬型の契約や、固定料金での契約、時間単価での契約など、契約形態が異なることも多くあります。そのため、収益の計上方法やタイミングが企業ごとに変わり、その都度、正確に対応する必要があります。

 

経理担当者には複数の収益モデルを管理することが大きな課題となり、適切なシステムや手続きを整備して、正確な帳簿管理を行うことが大切です。

 

クライアントごとに分かれた支払い

 

広告代理店では、クライアントごとに異なる契約条件や支払いスケジュールが設定されるため、支払い管理が複雑になります。例えば、あるクライアントは月末に一括支払いを行い、別のクライアントは年間でまとめて支払う契約を結んでいることがあります。

 

また、支払い内容も広告媒体ごとに細かく区分されることも多く、支払いの明細書や請求書の管理が求められます。そのため、経理担当者はクライアントごとの契約内容を詳細に把握し、それに基づいた支払いの確認作業を行う必要があります。誤って支払い漏れや過剰支払いを防ぐためにも、精密なチェックと管理体制が欠かせません。

 

外部ベンダーとのやりとりが盛ん

 

広告代理店では、外部ベンダーとの取引が頻繁に発生します。WEB制作会社やメディア、マーケティング担当者、デジタルツールの提供会社など、さまざまな外部業者が含まれます。

 

経理部門はこれらのベンダーとの契約内容や支払い条件を正確に把握し、支払い管理を行う必要があります。特に、プロジェクト単位で進行することが多いため、途中で費用の追加や変更が発生することがあり、これに迅速に対応できる体制が求められます。

 

さらに、複数の外部ベンダーとの調整や請求書の処理が必要となり、その都度、確認作業を丁寧に行うことが広告代理店経理業務の特徴となります。

広告代理店の経理における課題

広告代理店業界の経理には、以下のような特有の課題が発生します。

 

  • 繁忙期と閑散期の差が激しい
  • 関係会社ごとにフォーマットが異なる
  • スピーディな対応が求められる

 

ここでは、それぞれの課題を詳しく解説していきます。

 

繁忙期と閑散期の差が激しい

 

広告代理店業務では、繁忙期と閑散期の業務量に大きな差が生じるため、経理担当者はその時期ごとの対応を適切に調整する必要があります。特に、年末年始やキャンペーンの実施時期など、特定の期間に大量の取引が集中することが多く、請求書処理や支払い対応が急増します。

 

一方で、閑散期には業務量が減少するものの、繁忙期に比べて予算やリソースが限られることが多く、効率的に業務を進めることが求められます。経理部門は、繁忙期の対応準備を事前に行うとともに、閑散期には効率化を図るための業務改善を常に意識して取り組むことが重要です。

 

関係会社ごとにフォーマットが異なる

 

広告代理店が取引先の関係会社とやり取りをする際、各社で異なる管理のフォーマットや請求書の形式が用いられていることが多く、経理業務の複雑さを増す要因となります。例えば、取引先ごとに求められる請求内容や請求書の項目が異なり、経理部門はその都度、各社のルールに従って処理を行わなければなりません。

 

フォーマットの違いは、処理の手間を増やし、ミスや漏れの原因となる可能性もあります。したがって、関係会社とのスムーズな取引を維持するためには、共通のフォーマットやマニュアルの整備が求められ、経理部門もその都度対応する柔軟さを持つことが重要です。

 

スピーディな対応が求められる

 

広告代理店の経理業務では、スピーディな対応が重要です。広告業界は、常に急速に変化しており、特にキャンペーンやプロジェクトの進行が予想以上に早く進んだり、急な変更が加わることがあります。

 

そのため、経理部門は、案件に関連する支払い、請求書処理、取引先との調整を迅速に行う必要があります。特に、クライアントからの要求や外部ベンダーからの請求が頻繁に発生するため、遅れが生じれば業務に支障をきたす可能性があります。

 

スピーディな対応を確実にするためには、日々の業務フローを効率化し、必要な情報を即座に把握できる体制を整えておくことが求められます。

広告代理店の経理を効率化する方法

経理代理店業界の経理を効率化する方法として以下のような点があります。

 

  • フォーマットを統一化する
  • クラウド会計ソフトを導入する
  • ペーパーレス化を進める
  • 支払いの時期をまとめてもらう
  • 作業のマニュアル化をしていく
  • 経理代行会社へ依頼する

 

ここでは、それぞれの効率化のポイントを詳しく解説していきます。

 

フォーマットを統一化する

 

広告代理店の経理業務を効率化するためには、取引先や関係会社との間で使用するフォーマットを統一化することがおすすめです。異なるフォーマットを使用していると、データの集約や処理が煩雑になり、ミスが発生しやすくなります。

 

請求書や支払明細書、報告書など、基本的な書類のフォーマットを一貫させることで、情報の確認や整理がしやすくなり、作業時間の短縮が可能となります。さらに、社員や関係者が同じフォーマットを使うことで、コミュニケーションの誤解や手間も減り、効率的な業務運営が実現します。

 

また、データの一貫性が保たれ、情報の管理がスムーズになるため、事業全体の効率化にもつながるでしょう。

 

クラウド会計ソフトを導入する

 

クラウド会計ソフトを導入することは、広告代理店の経理業務の効率化につながります。従来の帳簿管理や請求書発行、経費精算などの作業を一元化できます。リアルタイムでデータを更新や共有ができるため、どこからでもアクセスできることで利便性が向上するでしょう。

 

また、クラウドベースであれば、支店や支社など複数の拠点間でデータを同期できるため、リモートワークや出張中でも業務をスムーズに進めることが可能です。

 

さらに、会計ソフトに搭載された自動化機能を活用すれば、手入力の手間を減らし、ミスを防ぎながら効率よく経理作業を行えます。これにより、業務の負担が軽減され、経理担当者はより戦略的なコア業務に集中できるようになります。なお、クラウド会計ソフトについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

クラウド会計のメリットデメリットは?従来の会計ソフトとの違いを解説
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ペーパーレス化を進める

 

ペーパーレス化を進めることは、広告代理店の経理業務を効率化するために非常に効果的です。紙の書類を管理する手間や保管スペースを削減できるだけでなく、デジタルデータとして保存することで、必要な情報を迅速に検索できるようになります。

 

請求書や契約書などをスキャンして電子データとして保存すれば、印刷や郵送の手間もなくなり、業務がスピーディに進行します。また、ペーパーレス化を進めることで、紙の管理にかかるコストも削減でき、全社的な業務のコスト削減にも効果的です。さらに、環境にも配慮できるため、持続可能な企業としてのアピールにもつながるでしょう。

 

ペーパーレス化についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

経理業務をペーパーレス化する5つのメリット!デメリットや注意点も解説
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支払いの時期をまとめてもらう

 

支払いの時期をまとめてもらうことは、広告代理店の経理業務を効率化するうえでおすすめです。クライアントや外部ベンダーとの支払いがバラバラに行われると、毎月の支払い管理が煩雑になり、資金繰りにも影響を与える可能性があります。

 

支払い時期をできるだけまとめて設定してもらうことで、支払い業務の集中管理が可能となり、月末や四半期末の繁忙期にも対応しやすくなります。

 

これにより、経理部門は予算管理やキャッシュフローの把握をより正確に行い、無駄な支払いの遅延や過剰支払いを防ぐことができます。結果として、資金繰りの計画が立てやすくなり、経営の安定性にもつながるでしょう。

 

作業のマニュアル化をしていく

 

経理業務を効率化するためには、作業のマニュアル化を進めることもポイントです。日常的な作業や手順についてマニュアルを作成しておくことで、業務の一貫性が保たれ、社員が業務に慣れるまでの時間を短縮できます。

 

また、急な人員変更や繁忙期においても、マニュアルをもとにスムーズに業務を引き継ぐことができるため、業務の中断を防ぎ、効率的に業務を回すことが可能になります。さらに、マニュアル化された作業は、外部のスタッフや経理代行会社に引き継ぐ際にも役立ちます。手順を守ることで、トラブルの発生を未然に防ぐことにもつながるでしょう。

 

なお、マニュアル化の方法についてはこちらの記事で具体的に解説しています。

 

経理マニュアルの作り方!作成時の注意点とマニュアル化の重要性を解説
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経理代行会社へ依頼する

 

経理業務を外部の経理代行会社に依頼することも、広告代理店にとって効率化の手段となります。経理代行会社は専門的な知識と経験を持っているため、業務の迅速かつ正確な処理を期待でき、内部リソースを他の重要なコア業務にあてることができます。

 

また、外部の専門家に依頼することで、最新の法規制や会計基準に基づいた対応が可能となり、法的リスクを減らすことができます。

 

さらに、経理代行を利用することで、人件費を抑えることができ、コスト面でのメリットもあります。その結果、経理部門にかかる人件費を他のツールの導入などにまわすことができ、全社的な業務効率の向上にもつながるでしょう。

 

なお、経理代行サービスについてはこちらの記事もご覧ください。

 

経理代行とは?サービス内容・メリット・選び方を詳しく解説
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まとめ

広告代理店業界における経理は、さまざまなクライアントや外部ベンダーとのやりとりがあり、複雑になってしまうことが課題です。また、関係会社ごとに支払いサイクルが異なり、スピーディな対応が求められます。

 

広告代理店での経理業務の効率化には、フォーマットを統一したマニュアル化やペーパーレス化がおすすめです。また、経理代行会社に外注を検討することもひとつの手です。

 

弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

広告代理店の経理に関するよくあるご質問

広告代理店の経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、広告代理店の経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

広告代理店業界の経理で大変なことは何ですか?

広告代理店業界の経理で大変なことは、複数のクライアントや外部ベンダーとの取引の管理が大変であることです。収益の計上方法や支払いスケジュールが各社で異なり、これを正確に管理することは手間がかかり、ミスが生じるリスクも高いです。また、繁忙期と閑散期の差が激しく、業務負担の波を調整することも課題です。

経理の人材不足を解決する方法はありますか?

経理の人材不足を解決する方法として、業務のアウトソーシングがおすすめです。外部の経理代行会社を利用することで、専門的な知識を持つスタッフを確保でき、内部リソースを他の業務に集中させることができます。また、経理業務の自動化やクラウド会計ソフトを導入することで、作業の効率化を図るのもよいでしょう。

広告代理店で経理職の採用が難しい理由は何ですか?

広告代理店で経理職の採用が難しい理由は、求められるスキルの幅が広いためです。広告代理店では、複雑な収益モデルや支払い管理への対応が求められ、従来の経理経験だけでは対応しきれないことがあります。また、業界特有のスピード感や変動する業務量に適応できる柔軟性が求められ、人材の確保が難しくなっています。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。