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経理マニュアルの作り方!作成時の注意点とマニュアル化の重要性を解説
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経理マニュアルの作り方!作成時の注意点とマニュアル化の重要性を解説

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企業の基盤を支える経理部門において、業務の効率化と品質の向上は緊急性の高い課題です。特に、属人化による引継ぎの不足や、業務フローの見える化の難しさは、企業の成長を阻害する要因となりかねません。

 

本記事では、経理業務の透明性を高め、部門全体のレベルアップを図るための「経理マニュアル」の作成について解説します。マニュアル化によって、経理業務の標準化や新人教育の効率化、業務改善の促進を図り、経営の安定化に貢献することが可能です。

 

経理部門が抱える課題

経理部門には主に以下のような課題があります。

  • ひとりで対応する仕事が多い
  • 業務がブラックボックス化されやすい
  • 新人の教育や引継ぎに時間がかかる

 

経理マニュアルを作成することでこれらの課題の解決につながるでしょう。

 

ひとりで対応する仕事が多い

 

経理部門では、担当者がひとりで複数の業務をこなすことが一般的です。これは特に中小企業や人員が限られた組織で顕著で、ひとりが売上や経費の管理、給与計算、請求書の発行など、広範なタスクを担うことが少なくありません。

 

そのため、担当者の負担が増大し、長時間の作業や精神的なプレッシャーが続くことも多くあります。さらに、経理の専門知識を持つ人材が不足している場合、他の従業員からの質問や相談も増え、業務に集中する時間が奪われがちです。

 

このような状況では、担当者が休暇を取ることも難しく、常に多忙で、仕事に追われている状態が続くことがあります。

 

なお、「一人経理」の課題については以下の記事でも触れています。

 

一人経理に潜むリスクとは?業務負担度チェックリストと解決策
一人経理に潜むリスクとは?業務負担度チェックリストと解決策

 

業務がブラックボックス化されやすい

 

経理業務は専門性が高く、一般の社員には難解な内容も多いため、内部でブラックボックス化されやすい傾向があります。経理部門が担当する書類作成や会計処理の詳細は他の部署から見えにくく、具体的な手順や処理内容が明確に理解されないことが一般的です。

 

たとえば、業務のブラックボックス化により、他部署からの問い合わせに即座に対応できなかったり、経理部門への過度な依存が生じたりする事態が発生します。

 

また、業務の進行状況が可視化されていないことで、管理者も適切なフォローができず、業務負担が個々の担当者に集中しやすくなります。

 

新人の教育や引継ぎに時間がかかる

 

経理業務では、新人の教育や引継ぎが非常に重要ですが、業務の専門性や複雑さから指導に多くの時間が割かれる傾向があります。経理の担当者は日々の業務に追われ、教育のための時間を捻出することが難しいため、教育が計画通り進まないケースも少なくありません。

 

また、経理の内容は専門的な知識と業務への正確な理解が求められるため、通常の業務をこなしながら、同時に新人を指導するのは負担が大きくなります。
加えて、引継ぎを円滑に行うためには、業務内容の整理やマニュアルの作成などの準備も欠かせず、そのための時間と労力が必要です。

経理業務をマニュアル化する重要性

経理業務をマニュアル化する重要性には、以下のような点があげられます。

 

  • 経理作業の効率化が進む
  • 仕事内容の見える化ができる
  • 教育や研修のコストを削減できる

 

ここではそれぞれの重要性について詳しく解説していきます。

 

経理作業の効率化が進む

 

経理業務をマニュアル化することで、作業効率が格段に向上します。マニュアルには業務フローや手順が体系的に記載されているため、担当者は一貫性を持って作業を進めやすくなります。

 

特に決算業務や請求処理など複雑な業務では、手順に沿って進めることでミスを防ぎやすく、作業時間の短縮も期待できます。また、業務内容の標準化が進むことで、ベテランの担当者に依存せず、他のメンバーもスムーズに作業を進めることが可能となります。

 

効率的な経理作業を実現するためには、業務プロセスを明確にし、マニュアルに落とし込むことが重要となります。

 

なお、経理業務の効率化については、以下の記事も参考にしてください。

 

【事例3選】経理業務を効率化する方法の完全ガイド!メリット・注意点も解説
【事例3選】経理業務を効率化する方法の完全ガイド!メリット・注意点も解説

 

仕事内容の見える化ができる

 

経理業務は複雑で専門性が高く、他部署からは見えづらいものです。マニュアルを作成することで、経理業務の内容や進行状況を他の社員が理解しやすくなり、業務の見える化が実現します。

 

これにより、経理部門だけでなく、他の部署も業務の流れや重要性を把握できるようになり、経理業務に対する理解や協力体制も深まるでしょう。また、見える化されることで業務の進捗管理がしやすくなり、問題が発生した場合も早期発見や早期解決が可能です。

 

経理部門における見える化された業務環境は、部門間の連携を強化し、経理業務全体の信頼性向上にもつながります。

 

教育や研修のコストを削減できる

 

経理の業務をマニュアル化することにより、新人教育や研修の効率化が進み、結果としてコスト削減が可能です。マニュアルが整備されていれば、新しい担当者も自己学習がしやすくなり、先輩社員が直接指導に多くの時間を割く必要が減ります。

 

教育の時間が短縮されることで、業務全体の負担が軽減され、社員は本来の業務に集中できます。また、マニュアルを基にした教育プログラムがあれば、誰が指導を行っても一定の水準での教育が可能となり、教育内容にばらつきが生じにくくなります。こうした仕組みにより、経理業務の研修にかかる時間とコストを抑えることができます。

 

なお、経理部門のコスト削減については、以下の記事も参考にしてください。

 

やってはいけない7つの経費削減!効果的なアイデア12選も紹介!
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経理業務のマニュアルを作成するポイントと注意点

経理業務のマニュアルを作成するポイントと注意点としては、以下のような点があげられます。

 

  • フォーマットを揃える
  • 図や表を活用して見やすくする
  • 専門用語や難しい言葉を使わない

 

ここでは、それぞれのポイントや注意点について詳しく解説していきます。

 

フォーマットを揃える

 

経理業務のマニュアルを作成する際には、フォーマットを統一することが重要です。フォーマットが揃っていれば、読者はどの項目にどのような情報が記載されているかを予測しやすく、必要な情報をスムーズに見つけられます。

 

例えば、ページの構成や見出しの配置、フォントサイズ、段落のインデントなどの基本的なレイアウトを一貫させることで、視覚的にもわかりやすいマニュアルに仕上がります。

 

また、作業手順の番号付けや箇条書きなどを統一することで、異なる項目間でも視覚的に違和感なく読むことができ、内容の理解が深まります。フォーマットの統一は、後に内容を更新する際の手間も減らすため、長期的に見ても効率のよいマニュアル作成を実現します。

 

図や表を活用して見やすくする

 

経理業務の内容は複雑で詳細が多いため、テキストだけで説明すると理解しづらい場合があります。そのため、図や表を活用し、視覚的にわかりやすいマニュアルにすることが効果的です。

 

例えば、作業手順をフローチャートで示すと、処理の流れが一目で理解でき、作業全体のイメージをつかみやすくなります。また、データ入力のポイントや確認項目などを表にまとめると、重要な情報が埋もれずに視認性が高まります。

 

図や表は視覚的なガイドとしての役割を果たし、読む人の理解を助けると同時に、作業の正確性も向上させます。視覚要素を適切に取り入れることで、より直感的に使用できるマニュアルを目指しましょう。

 

専門用語や難しい言葉を使わない

 

経理業務のマニュアルは、初心者や他部門のスタッフも理解しやすいよう、専門用語や難しい言葉を避けることが大切です。専門用語が多いと、経理の知識が少ない人にとっては内容が難解で、理解が進まず業務のスムーズな引継ぎが難しくなります。

 

そのため、できるだけ難しい言葉は使わずに、日常的に使用する言葉で説明することを心がけます。また、どうしても専門用語が必要な場合は、注釈や用語解説を加えて、初めて読む人でも内容を理解できるよう工夫しましょう。

 

シンプルで明確な表現にすることで、誰もがすぐに活用できる実用性の高いマニュアルに仕上がります。

経理マニュアルの作り方と手順

経理マニュアルの作り方としては、以下の手順です。

 

  • step1:マニュアル化の目的を決める
  • step2:全体スケジュールを決める
  • step3:業務内容を洗い出す
  • step4:作業担当者を割り振る
  • step5:テンプレートを作成する
  • step6:作ったマニュアルを改善する

 

step1:マニュアル化の目的を決める

 

マニュアル作成の第一歩は、経理業務をマニュアル化する目的を明確にすることです。経理業務をマニュアル化する目的は、効率化やミスの減少、新人教育の迅速化など幅広いため、組織の状況や課題に応じて目的を絞り込むことで、実際の内容や構成を考える要点が明確になります。

 

また、目的を共有しておくことで、関係者全員が同じ方向を向いて作業を進めやすくなり、後の改善や更新の際にも軸がぶれることなく対応できます。目的が明確であればあるほど、作成するマニュアルの質が高まり、運用においても長期的に活用しやすいものになります。

 

step2:全体スケジュールを決める

 

マニュアル作成には時間がかかるため、あらかじめ全体スケジュールを設定することが重要です。作成の期限を設けると同時に、段階ごとに具体的な日程やマイルストーンを決めておくことで、進捗管理がしやすくなり、効率的に作業を進めることができます。

 

また、スケジュールの設定により、関係者に対しても計画的に協力を依頼しやすくなり、作業の遅れを防止する効果も期待できます。スケジュールを具体化することで、作成作業を順調に進められる体制を整え、円滑なマニュアル化を実現しましょう。

 

加えて、複数の担当者でマニュアルを作成する場合は、全体のスケジュールは各担当者ごとのタスクとして落とし込んでおきましょう。

 

step3:業務内容を洗い出す

 

経理業務の全体像を把握するために、業務内容を一つひとつ洗い出すことが必要です。このプロセスで業務の詳細や手順を確認することで、マニュアルの作成に必要な情報が揃い、内容が網羅的なものとなります。

 

また、洗い出しの過程で業務の重複や無駄が発見されることもあり、業務の効率化にも役立つでしょう。担当者へのヒアリングや実際の業務観察を通じて、正確な業務内容を整理することで、普段意識していなかった業務に目を向ける機会にもなります。その結果、実用的かつ的確なマニュアルを作成するための基礎が整うため、重要なステップです。

 

step4:作業担当者を割り振る

 

マニュアル作成においては、経理業務に精通した担当者を適切に配置し、専門的な知識が必要な各作業を効率よく分担することが重要です。各担当者がそれぞれの業務に応じたマニュアル部分を執筆することで、内容の正確性と質の向上が図れます。

 

さらに、各担当の責任を明確にすることで、進捗確認や調整がスムーズに行えるようになります。担当者が自分の得意分野でマニュアル作成を行うことで、知識の共有が促進され、チーム内で情報格差が生まれにくくなります。マニュアル作成時の分担体制は、全体の効率を高め、結果として信頼性の高いマニュアルが完成することにつながります。

 

step5:テンプレートを作成する

 

効率的で統一感のあるマニュアルを作成するために、テンプレートを用意します。テンプレートがあることで、各担当者がどのような形式や構成で情報を記載すべきかが明確になり、マニュアル全体の一貫性が保たれます。

 

例えば、フォーマットの統一により、項目の配置や書式が整然となるため、情報がスムーズに伝わります。また、具体的な項目や手順を盛り込んだテンプレートを用意することで、特定の業務につながる記述がしやすくなり、後の修正や内容更新も簡単です。これにより、マニュアルが継続的に利用され、更新が必要な際もスムーズに行えるというメリットが得られます。

 

step6:作ったマニュアルを改善する

 

作成したマニュアルは実際に使用してみると、内容の改善が必要な箇所が出てくるため、現場からのフィードバックを取り入れて改善することが大切です。
特に、業務手順の中で具体的にどう進めたらよいか不明瞭な箇所や、手順の効率化が図れる部分など、現場からの意見を反映することで、さらに実用性の高いマニュアルへと改良できます。

 

また、経理業務は法令改正や社内ルールの変更に影響されやすいため、定期的な振り返りの機会や更新作業を行い、最新の情報へと反映させる必要があります。このように、実務との擦り合わせを行いながらマニュアルを改善し続けることで、業務に役立つ信頼性の高い資料として活用し続けることが可能です。

まとめ

経理マニュアルの作成は、経理業務のブラックボックス化や、新人教育への負担を軽減させるために重要です。また、業務が特定の担当者に集中してしまうことも防げるため、退職のリスク防止にもつながるでしょう。

 

経理マニュアルの作成では、マニュアル化の目的を定めて、現場の担当者が行っている業務を洗い出し、難しい言葉を使わずに作成することがおすすめです。

 

なお、経理のマニュアル化には、経理代行サービスを活用するという手もあります。

 

弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

経理マニュアルの作成に関するよくあるご質問

経理マニュアルの作成についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、経理マニュアルの作成に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

マニュアル化とは何ですか?

マニュアル化とは、業務の手順や知識を文書としてまとめ、誰でも同じ方法で作業ができるよう標準化することです。これにより、特定の人に依存せず業務の一貫性を保て、新人教育や引き継ぎも効率化されます。また、業務の効率向上やミスの削減にも貢献します。業務が見える化されて、新たな課題の発見にもつながります。

マニュアル化すべき業務は何ですか?

マニュアル化すべき業務は、日常的で標準化された作業や、特定の順序に従うべき手順が決まっている業務です。例えば、経理処理、データ入力、顧客対応の手順などが該当し、再現性の高い業務に適しています。また、マニュアル化を最初からあきらめるのではなく、一度作ってみてから改善することがおすすめです。

マニュアル化できない業務は何ですか?

マニュアル化できない業務は、個別の判断が必要な作業や、柔軟な対応が求められる業務です。例えば、創造性が求められる企画立案や、突発的なトラブル対応など、状況に応じた判断や適応が必要な業務ではマニュアル化が難しいとされます。また、経営判断などリーダーとなる方の業務もマニュアル化しづらいです。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。