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起業したら必ず知るべき経理の基本!経理・会計業務の基礎知識を解説
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起業したら必ず知るべき経理の基本!経理・会計業務の基礎知識を解説

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起業してすぐにやらなければならないことのひとつに、経理や会計という業務があります。しかし、経理は難しそうであり、何をすればいいのかわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、スタートアップ企業の経理担当者や、起業家が知っておくべき経理の基礎知識をわかりやすく解説します。経営状況の把握から税務申告、資金繰りまで、経理がなぜ必要なのかを紹介します。また、日々の業務から年間の業務まで、具体的な内容を交えて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

なぜ起業したら経理や会計が必要なのか?

そもそも、なぜ起業したら経理や会計が必要なのでしょうか。スタートアップ企業にも経理や会計が必要な理由として、以下のような点があげられます。

 

  • 理由1:経営状況の把握
  • 理由2:税務の申告
  • 理由3:金融機関の融資
  • 理由4:株主への情報開示
  • 理由5:法律の遵守
  • 理由6:従業員への給与支払い

 

理由1:経営状況の把握

 

企業の経営における持続的な発展には、経営状況を正確に把握することが欠かせません。経理や会計を適切に行うことで、売上やコスト、利益などの基本的な数値を明確にし、どの部門が利益を生み出しているのか、どこに無駄があるのかを把握できます。

 

その結果、戦略的な意思決定が可能となり、事業の成長を促進します。さらに、財務データを基にした分析を通じて、資金繰りの問題を早期に発見し、改善策を講じることができます。

 

そのため、スタートアップ企業にとっても、経営者は日々の活動がどのように財務に影響を与えているのかを理解し、適切な判断を下すために、経理や会計は欠かせない業務です。

 

理由2:税務の申告

 

企業として税務申告を正確に行うことは、法的義務であるだけでなく、企業の信頼性を保つためにも重要です。経理や会計を通じて、事業年度の売上や費用、利益を正確に把握することができ、必要な税額を適切に算出することが可能となります。

 

一方で、誤った税務申告は罰則や追徴課税のリスクを引き起こすため、正確な会計処理が必要不可欠です。

 

また、税務の専門知識がない場合でも、会計データを適切に管理しておくことで、税理士や会計士と効率よくコミュニケーションを取り、適切なアドバイスを受けやすくなります。そのため、適切な税務申告は、企業の健全な運営を支える重要な要素といえるでしょう。

 

理由3:金融機関の融資

 

スタートアップ企業が、事業を拡大するためには、金融機関からの融資が必要となる場合も多くあるでしょう。融資を受ける際には、企業の財務状況を示す会計データが求められます。なぜなら、金融機関は、融資先の返済能力を評価するために、貸借対照表や損益計算書などの財務資料を詳しく確認するからです。

 

財務書類が整っていなければ、信用を得ることができず、融資の審査に通るのは難しくなります。そのため、経理や会計を適切に行い、安定した財務状況を示すことができれば、金融機関からの信頼を得やすくなり、必要な資金をスムーズに調達できる可能性が高まります。

 

理由4:株主への情報開示

 

スタートアップ企業や中小企業であっても、株式会社の場合は、株主は企業の所有者であり、事業の運営状況を知る権利があります。そのため、定期的に正確な会計報告を行い、事業の収益性や財務状況を開示することが求められます。

 

株主は企業の業績を把握することで、投資の継続や追加投資の判断を下す材料とします。もし情報開示が不十分であったり、不正確であれば、株主の信頼を失い、株主からの支持を得ることが難しくなります。

 

さらに、適切な情報開示を行うことは、企業の透明性を高め、市場での評価を向上させることにもつながります。

 

理由5:法律の遵守

 

企業は法律に基づいて運営されており、経理や会計も法律に準拠して行わなければなりません。例えば、会社法や税法、労働法などに基づいた財務報告や税務申告が求められます。

 

スタートアップ企業であっても、法令遵守が徹底されていない場合、罰則や制裁を受けるリスクが高まり、企業の信用が大きく損なわれる可能性があります。

 

さらに、会計に関連する法的要件を正確に把握し、適切に対応することで、企業運営のリスクを最小限に抑えることができます。そのため、法律を守ることは、企業の社会的信用を保つためにも非常に重要な要素です。

 

理由6:従業員への給与支払い

 

従業員は企業の成長に欠かせない存在であり、彼らに対する正確な給与の支払いは、企業の基本的な責任のひとつです。経理や会計を適切に行うことで、従業員の労働時間や税金、社会保険料などを正確に把握し、ミスなく給与を支払うことができます。

 

ただし、給与計算に誤りがあれば、従業員のモチベーションに悪影響を与え、場合によっては法的な問題に発展することもあります。また、給与に関連する税務申告も適切に行う必要があり、これを怠ると企業にとって大きなリスクとなります。

 

加えて、起業した初期の段階では、残業が多くなってしまうこともあるでしょう。しかし、スタートアップ企業だからといって、残業代の未払いをしてもよいというわけではありません。経理部門で残業時間を計算して、正確な金額を従業員に支払う必要があります。

そもそも経理とは?

経理とは、企業や組織の財務に関する情報を適切に管理し、記録する活動を指します。具体的には、売上や経費、利益などの取引記録を行い、そのデータを基に損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を作成します。

 

経理を適切に行うことで、企業の経営者や株主、投資家は、事業の財務状況を把握し、適切な経営判断を行うことが可能となります。そのため、経理は単に帳簿を付ける作業にとどまらず、会社の財務を健全に保ち、効率的な資金運用をサポートする重要な役割を果たしているといえるでしょう。

 

また、経理の仕事は法的な側面も強く、税務申告や年次決算、監査対応などを通じて、法律に基づく正確な財務報告を行う責務があります。不正や誤りがあれば、会社の信頼が損なわれ、場合によっては罰則を受けることもあるため、経理の業務には高い正確性が求められます。

 

なお、経理については以下の記事でも詳しく触れています。

 

経理とは?業務内容や会計と財務の違いを詳しく解説
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経理・会計業務の基礎知識

経理・会計業務は、「毎日の仕事(日次業務)」と「毎月の仕事(月次業務)」、「毎年の仕事(年次業務)」の3つに分けられます。ここでは、それぞれの時期における経理や会計の業務における基礎知識をまとめて紹介します。

 

毎日の仕事(日次業務)の基礎知識

 

経理の日次業務は、企業の財務状況を正確に管理するために毎日行う重要な作業です。主な業務内容として、売上や支出に関する取引の記録、現金や銀行口座の残高確認、領収書や請求書の整理が挙げられます。

 

日々の取引を適切に記録することで、企業の財務データが正確に維持され、後の月次・年次業務にもスムーズに対応できる基盤が整います。また、現金や銀行の残高を日々確認することで、資金繰りの状況をリアルタイムで把握し、問題が発生する前に対応することが可能になります。

 

特に、従業員や取引先への支払いに関わる業務は、遅延が発生しないよう、細心の注意が必要です。なお、こうした日次業務は一見地味に感じるかもしれませんが、経営の安定に直結する重要な役割を果たしており、正確さと迅速さが求められる大切な仕事です。

 

毎月の仕事(月次業務)の基礎知識

 

経理の月次業務は、企業の財務状況を月単位で集計し、経営者や部門の責任者が適切な意思決定を行うための基本的なデータを提供する役割を果たします。主な業務には、月次決算書の作成や、取引先への請求書発行、支払先への入金確認、給与計算などが含まれます。

 

 

月次決算では、売上や経費の集計を行い、損益計算書を作成して当月の経営成績を把握します。これにより、収益性やコスト管理の状況を分析し、必要に応じた改善策を立てることができます。

 

また、給与計算に関しては、従業員の勤怠データや社会保険料の計算を正確に行う必要があります。そして、月末には、翌月の資金繰りを見越して資金の確保や調整を行うことも大切です。そのため、月次業務は企業の短期的な経営判断を支える重要なデータを提供し、適切な資金管理を行うための重要な仕事といえるでしょう。

 

毎年の仕事(年次業務)の基礎知識

 

経理の年次業務は、企業の年間の財務状況を総括し、外部や内部に報告するために行われる重要なプロセスです。年次決算書の作成が主な業務であり、損益計算書や貸借対照表をまとめ、企業の年間の経営成果や財政状態を明確にします。

 

年次決算で作成される財務諸表は株主や金融機関、税務当局に提出され、企業の信頼性や税務上の正確性を保証する役割を果たします。また、年末調整や法人税の申告も年次業務の一環であり、税務に関連する様々な手続きが集中する時期です。

 

年次業務を効率的かつ正確に行うためには、日次業務や月次業務の段階で適切なデータ管理が行われていることが前提となります。そのため、年次業務は、企業の健全な経営を維持するための重要な役割を担っているといえるでしょう。

 

なお、経理や会計のやり方については、以下の記事も参考にしてください。

 

 

会計処理のやり方は?経理処理や財務処理との違いや業務の流れを解説!
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起業した際に生じる経理・会計の勘違い

起業のタイミングで生じてしまう経理や会計への勘違いとして、主に以下のような点があります。

 

  • 売上と利益はイコールではない
  • 経費はなんでも自由に使えるわけではない
  • 手書きの帳簿は管理しやすいわけではない
  • 税金対策は後回しにしてよいわけではない
  • 資金繰りは軽視してはいけない

 

売上と利益はイコールではない

 

起業した直後に多くの人が勘違いしやすい点が、売上と利益を同一視することです。売上は、商品やサービスの提供によって得られた総収入を指しますが、売上がそのまま企業の利益になるわけではありません。

 

実際には、売上から原材料費や人件費、光熱費などの経費を差し引いた残りが利益となります。そのため、売上が大きくても、経費がかさんでいれば利益はほとんど残らず、赤字になる可能性もあります。

 

特に、事業拡大を目指して多額の投資を行った際には、売上が伸びても利益が追いつかないことがあります。健全な経営を維持するためには、売上だけでなく、利益を正確に把握し、適切なコスト管理を行うことが重要です。

 

経費はなんでも自由に使えるわけではない

 

経費は企業活動に必要な支出であるため、事業に関連するものであればすべて経費として認められると思われがちですが、実際には制約があります。税務上、経費として認められるためには、その支出が事業のために使われたことを証明できる必要があります。

 

例えば、交際費や交通費、通信費などは経費として計上できますが、個人的な出費やプライベートな旅行費用などは経費にはなりません。経費の適正な管理ができていないと、税務調査で指摘を受け、場合によっては罰金や追徴課税を課されるリスクがあります。

 

そのため、経費の管理には慎重さが求められ、何が経費として認められるかを理解した上で、正確に処理することが大切です。

 

手書きの帳簿は管理しやすいわけではない

 

起業したばかりの小規模な事業では、手書きで帳簿をつける方が簡単で管理しやすいと感じるかもしれませんが、大きな誤解です。手書きの帳簿は、初期の段階では一見シンプルに思えるものの、事業が成長し取引が増えるにつれて管理が煩雑になります。

 

また、手書きでは計算ミスや記入漏れが発生しやすく、修正が困難な場合もあります。さらに、法定の帳簿書類としての要件を満たさないこともあるため、後々の税務申告や決算作業で問題が生じるリスクが高まります。

 

現在では、会計ソフトやクラウドサービスを活用することで、効率的かつ正確に帳簿を管理でき、データの集計や分析も自動化できるため、手書きにこだわらずデジタルツールの導入を検討するほうがよいでしょう。

 

なお、会計ソフトの選び方については、以下の記事も参考にしてください。

 

会計ソフトを乗り換えるタイミングはいつがベスト?注意点や手順を解説!
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税金対策は後回しにしてよいわけではない

 

税金対策は決算期が近づいてから考えれば良いと誤解されがちですが、それでは効果的な対策が取れないことが多いです。税務上の控除や優遇措置を最大限に活用するためには、日常的に税金を意識した経営が必要です。

 

例えば、設備投資のタイミングや経費のかさむ事業をスタートする場合などで、計画的に税金対策を行うことで、負担を軽減することができます。一方で、年度末に慌てて対応しようとしても、すでに手遅れなケースが多く、かえって余分な税金を支払うことになりかねません。

 

経理代行会社や、経理コンサルタント、税理士、会計士などと連携し、早めに対策を練ることで、効率的な資金運用が可能となり、企業の健全な経営を支えることができます。

 

資金繰りは軽視してはいけない

 

資金繰りを軽視することは、企業の成長を妨げる大きな要因となり得ます。売上が順調でも、手元に十分な現金がなければ、日々の支払いや予期しない支出に対応できず、最悪の場合、倒産の危機に陥ることもあります。

 

特に、起業した初期の段階では、売掛金の回収が遅れたり、支払いが集中することで資金ショートが起こりやすいです。そのため、資金繰りを安定させるには、キャッシュフローの予測や支払いと入金のタイミングを計画的に管理することが重要です。

 

また、金融機関との関係を築き、必要に応じて資金調達の準備をしておくことも大切です。資金繰りは企業の生命線であり、常に意識して管理することで、健全な事業運営が可能になるでしょう。

まとめ

起業した初期のタイミングから、経理や会計は必要になります。経営状況の把握だけではなく、株主や金融機関への信頼の証としても、重要な業務です。しかし、スタートアップ企業にとって、経理の人材を確保することは難しいかもしれません。

 

そのため、経理代行会社にアウトソーシングを依頼することもおすすめです。

 

弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

起業の際の経理に関するよくあるご質問

起業の際の経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、起業の際の経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

起業するのに簿記は必要ですか?

起業するのに簿記は必須ではありません。しかし、起業後の財務管理に非常に役立つスキルです。簿記の知識があれば、売上や経費の管理、収支の分析、資金繰りの把握がしやすくなり、経営判断の精度が向上します。また、財務に関する法的手続きにもスムーズに対応できるため、結果的に事業運営が効率化するでしょう。

経営者が行う経理の役割は何ですか?

経営者が行う経理の役割は、財務状況を把握し、日々の売上や経費を適切に管理することです。その結果、企業の収益性や健全性を維持しながら、資金繰りの改善やコスト削減へとつなげることができます。また、税務申告や決算対応などの法的義務を果たし、将来的な経営戦略への判断材料としての役割も果たします。

経理と経営管理の違いは何ですか?

経理と経営管理は同じ意味の言葉です。元は「経理管理」と呼ばれていた言葉を略して「経理」と呼ぶようになりました。「経理」というとお金の計算というイメージが強く、「経営管理」というと企業全体の大きな流れをイメージしますが、「経理」の担当者としても広い視点でものごとを考える必要があるでしょう。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。