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会計監査とは?種類・実施時期・流れ・スムーズに進めるポイントを解説
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会計監査とは?種類・実施時期・流れ・スムーズに進めるポイントを解説

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「会計監査」という言葉は耳にしたことがある方も多いでしょう。しかし、具体的にどのようなものであり、「なぜ会計監査が必要なのか?」、「いつ会計監査は行われるのか?」、「誰が会計監査を実施するのか?」など疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

 

この記事では、会計監査とは何かを分かりやすく解説します。種類や実施時期、スムーズに進めるためのポイントまで、幅広く紹介します。会計監査について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

会計監査とは?

会計監査とは、企業や団体の財務諸表が正確であり、適切に作成されているかを第三者が検証する業務を指します。主に法令や基準に従い、公正な評価を提供することで、投資家や金融機関などのテークホルダーが企業の情報を利用できるようにします。

 

そのため、会計監査の仕組みは、企業の信頼性を高め、経済の健全な発展を支える重要な役割を果たしています。

 

なぜ会計監査が必要なのか?

 

会計監査が必要とされる理由は、財務情報の正確性や透明性を担保するためです。企業が発表する財務諸表は、株主や投資家、金融機関など、さまざまなステークホルダーが意思決定を行う上での基盤となります。

 

しかし、企業自身が情報を管理するだけでは、その情報が誤解を招いたり、意図的に操作される可能性があります。そのため、第三者の専門家が客観的に評価することで、不正やミスを防ぎ、信頼性を保証する必要があります。

 

また、会計監査は法律や規制に基づいて義務付けられる場合もあり、社会全体の安定を図る役割を果たします。こうした流れにより、社会は安心して企業の財務情報を活用できるのです。

 

なお、財務諸表についてはこちらの記事も参考にしてください。

 

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いつ会計監査は行われるのか?

 

会計監査は、通常、年度末や四半期の決算が締められた後に実施されます。これにより、その期間における財務状況や経営成績が正しく報告されているかが確認されます。

 

また、一年を通じて行われる場合もあり、これを「継続監査」と呼びます。加えて、企業の規模や業種によっては特定のイベントに応じて行われることもあります。例えば、企業が上場を目指す場合や、新たな融資を申請する際には、監査の結果が重要な判断材料となります。

 

さらに、不正の疑いがある場合や、規制当局から求められた場合にも実施されることがあります。このように、会計監査のタイミングは状況に応じて柔軟に決定されますが、その目的はいずれも財務情報の正確性と透明性を保つことにあります。

 

なお、決算の時期については、こちらの記事をご覧ください。

 

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誰が会計監査を実施するのか?

 

会計監査を実施するのは、通常、公認会計士や監査法人などの専門資格を持つ独立した第三者です。彼らは高度な専門知識と倫理規定に基づき、企業から独立した立場で監査を行います。

 

会計監査における独立性は、監査結果の公正さを確保するために非常に重要です。また、大企業の場合は複数の監査人がチームを組んで作業を進めることが一般的です。

 

一方、中小企業では、個人の公認会計士が監査を行う場合もあります。さらに、監査人は業務を遂行するにあたり、国際的な監査基準や法規制に準拠しなければなりません。

 

監査を行う際には、企業の財務情報だけでなく、内部統制やリスク管理の仕組みも詳しく調査し、その結果を報告書として提出します。

 

なお、中小企業の経理については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

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会社法における会計監査が必要な企業

会社法では、一定の条件を満たす企業に対して会計監査が義務付けられています。この条件は、主に企業の規模や形態によって異なります。たとえば、大規模な株式会社である「大会社」は、資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の場合に該当し、財務の透明性を確保するために監査役または監査委員会による監査が必要です。

 

また、「公開会社」、つまり株式を広く一般に公開している会社も、会計監査の対象となります。これは、投資家や株主に正確で信頼できる財務情報を提供するためです。

 

さらに、会社法における「特例有限会社」などの特定の法人形態や規模を持つ企業についても監査が求められる場合があります。

 

このような法的要件は、企業が公正な会計実務を実践し、社会的信頼を維持することを目的として定められています。適切な会計監査を受けることは、企業の経営基盤を強化するだけでなく、ステークホルダーとの信頼関係を築くための重要な要素となっています。

 

なお、上場企業や上場準備企業の経理については、こちらの記事も参考にしてください。

 

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会計監査の種類

会計監査にはさまざまな種類があり、それぞれ目的や実施主体が異なります。主に企業内部で行われる「内部監査」、独立した第三者による「外部監査」、そして会社法で定められた「監査役監査」が挙げられます。それぞれの監査は異なる視点から財務や業務の適正性を検証し、企業活動の信頼性を高める役割を担っています。

 

内部監査

 

内部監査は、企業自身が内部の監査部門や担当者を通じて行う監査です。主に経営陣の指示のもと、業務の効率化やリスク管理、コンプライアンス遵守の状況を評価することを目的としています。財務データの正確性や、内部統制が適切に機能しているかを確認するだけでなく、業務プロセスの改善提案を行う点が特徴です。

 

内部監査は、外部監査や監査役監査に比べて、より詳細で柔軟な調査が可能であり、企業内部の問題を早期に発見し、解決に導く重要な役割を果たします。また、内部監査の結果は経営陣に直接報告されるため、迅速な意思決定にもつながります。このように、内部監査は組織の内部から改善を図り、持続的な成長を支える基盤となっています。

 

外部監査

 

外部監査は、企業の財務情報が正確かつ公正であることを第三者の視点から確認するために行われます。主に公認会計士や監査法人といった独立した専門機関が実施します。

 

監査の目的は、株主や投資家、取引先など、外部のステークホルダーに信頼できる情報を提供することです。外部監査では、企業の財務諸表が会計基準に準拠して作成されているか、不正や誤りがないかを詳細に検証します。

 

外部監査は、企業の透明性を担保し、社会的な信頼を築くために欠かせません。また、外部監査は法律や規制によって義務付けられる場合が多く、その実施結果は監査報告書として公表されます。独立性と専門性に基づく外部監査は、企業の信頼性を高め、経済活動の円滑な運営に関わる重要な役割を果たしているといえるでしょう。

 

監査役監査

 

監査役監査は、会社法で定められた監査役が実施する監査を指します。監査役は、企業の取締役や経営陣の業務執行が法令に違反していないか、また企業の利益を損なう行為がないかを監視する役割を担います。

 

監査役監査は、財務面だけでなく業務全般に関する監視を行う点が特徴です。具体的には、取締役会や経営会議に出席し、そこでの議論や意思決定が適切に行われているかを確認します。

 

また、監査役は独立した立場を保持し、必要に応じて外部の専門家の意見を取り入れながら監査を行います。監査役監査は、経営の健全性を確保し、株主やステークホルダーの利益を守るための重要な仕組みとして機能しています。そのため、監査役監査は企業の内部ガバナンスを支える柱といえるでしょう。

会計監査の実施時期と流れ

会計監査は通常、年度末の決算後に実施されますが、事前の準備や継続的なプロセスも含めると、年間を通じた活動となります。

 

会計監査の流れは大きく予備監査、監査計画、監査実施、監査報告の4つの段階に分かれています。それぞれの段階が連携して進行し、企業の財務情報の正確性や透明性を担保する仕組みを形成しています。

 

step1:予備監査

 

予備監査とは、監査の初期段階として、監査人が企業の状況や財務リスクを把握するために実施されます。予備監査の段階では、企業の業務プロセスや内部統制の仕組みについての基本情報が収集され、過去の監査結果や業界の状況も考慮に入れられます。

 

さらに、重大なリスクが存在する可能性のある分野や、特に注意が必要な取引についての初期的な評価が行われます。企業は予備監査の結果を基に、監査の焦点を絞り込むことができ、以降のプロセスが効率的に進められるようになります。そのため予備監査は、監査の全体的な基盤を築く重要な役割を果たします。

 

step2:監査計画

 

監査計画とは、予備監査の結果を基に具体的な監査の方針や手法を決定する段階です。監査計画には、監査の範囲や対象、スケジュール、必要なリソースなどが詳細に記載されます。

 

また、会計監査において、どの分野に重点を置くか、どのような手続きを行うかが明確に定められる段階でもあります。監査計画の段階では、監査チーム内で役割分担が行われるほか、企業側とのコミュニケーションも重要となります。

 

そのため、監査計画がしっかりと構築されることで、監査作業の精度が向上し、効率的な監査を実現する基盤が整えられる重要なステップであるといえるでしょう。

 

step3:監査実施

 

監査実施とは、計画に基づき実際の監査作業を行う段階です。監査の実施というステップでは、企業の財務諸表や帳簿、関連する書類を詳細に確認し、不正やミスがないかを検証します。

 

また、現場の視察や社員へのインタビューを通じて、内部統制の実効性についても評価が行われます。監査人は、収集した証拠を基に財務情報が会計基準に従っているかを判断し、不備があれば企業に修正を提案します。

 

監査実施の段階は、商品や原料の個数を数える「棚卸」も含まれるため、最も時間と労力を要しますが、監査の核心部分であり、正確で公正な結果を得るための重要なプロセスといえるでしょう。

 

step4:監査報告

 

監査報告とは、監査実施の結果を基に作成される最終的な文書で、ステークホルダーに向けて監査の結論を示すものです。報告書には、財務諸表が適切に作成されているか、不正や重大なミスがないか、そして会計基準に準拠しているかが明記されます。

 

また、必要に応じて内部統制の改善点やリスクについての提案も含まれる場合があります。監査報告書は、経営陣だけでなく、株主や投資家など外部のステークホルダーにも公開されるため、企業の信頼性や透明性を向上させる役割を果たします。そのため、監査報告は、会計監査の総仕上げとして非常に重要な位置づけとなっています。

会計監査に必要な書類一覧

会計監査をスムーズに進めるためには、監査人が必要とする書類を準備しておくことが必要不可欠です。会計監査に必要な書類は、企業の財務状況や業務運営の正確性を確認するための基礎資料としても活用されます。

 

会社法における監査に必要な書類は以下の4点です。

 

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算表
  • 個別注記表

 

なお、上記以外にも一般的に求められる主要な書類として以下のようなものがあります。

 

  • 総勘定元帳
  • 固定資産台帳
  • 棚卸表
  • 伝票
  • 証憑(請求書や領収書など)
  • 金融機関の銀行の取引明細書

 

また、会計監査は書類を提出して終わりというものではありません。提出した書類や帳簿に記載された内容について、不透明なお金の流れがないか質問されることがあります。

 

そのため、書類の内容についてはしっかりと理解を深めておき、問題なく回答ができるようにしておきましょう。なお、証憑について詳しくはこちらの記事でも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

 

証憑とは?証憑書類の種類・読み方・保存期間・帳票との違いを解説
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会計監査をスムーズに進めるポイント

会計監査を円滑に進めるためには、以下のようなポイントを意識しましょう。

 

  • 事前に記帳を済ませておく
  • 帳簿の内容を把握しておく
  • 棚卸での確認事項をマニュアル化する

 

ここでは、それぞれの項目について具体的な取り組みを紹介します。

 

 

事前に記帳を済ませておく

 

会計監査をスムーズに進めるための基本は、正確でスピーディな記帳作業を日頃から行うことです。取引が発生した際にタイムリーに記録しておくことで、後からまとめて記帳する手間や記憶の曖昧さによるミスを防ぐことができます。

 

また、記帳が正確であれば、監査人から求められる資料もスムーズに提出でき、余計な手戻りを減らせます。

 

さらに、記帳作業を行う際には、領収書や請求書、契約書などの証拠となる書類をしっかりと保管し、それぞれの取引がどのように帳簿に反映されているかを明確にしておくことが重要です。

 

その結果、監査人が不明点を質問する機会が減り、監査のスピードアップが期待できます。なお、効率的に記帳を済ませておくためには、記帳代行サービスを活用することもおすすめです。記帳代行サービスについては、こちらの記事も参考にしてください。

 

記帳代行とは?経理代行との違いやメリット・デメリットを解説
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帳簿の内容を把握しておく

 

帳簿の内容を正確に理解しておくことも、監査をスムーズに進めるためには欠かせません。特に、取引が複雑な場合や経理処理が分散している場合、担当者が帳簿の詳細を把握していないと、監査人からの質問に即座に回答できないことがあります。
経理担当者が帳簿の内容を把握できていない状況を防ぐためには、帳簿の各項目がどのように計上され、どのような根拠に基づいているのかを日頃から確認しておくことが必要です。

 

さらに、異常な値や不一致がないかを事前にチェックし、問題があれば監査前に修正しておくことで、監査中に指摘されるリスクを減らすことができます。

 

なお、会計監査をスムーズに行うには、経理コンサルタントと二人三脚で進めることもおすすめです。経理コンサルタントについてはこちらの記事を参考にしてください。

 

経理コンサルタントとは?業務内容・依頼先・必要なスキルを解説
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棚卸での確認事項をマニュアル化する

 

棚卸作業を正確かつ効率的に進めるためには、確認事項を明確にし、それをマニュアル化しておくことが重要です。棚卸は単に在庫を数えるだけではなく、数量の正確性や品質、不良品の扱いなど多くの要素をチェックする必要があります。

 

棚卸での手順を事前にマニュアルとしてまとめ、関係者全員が内容を共有しておくことで、作業のばらつきを防ぎ、監査時に求められるデータをスピーディに提供できます。また、過去の棚卸結果や指摘事項を反映させてマニュアルを更新することで、精度と信頼性が向上します。

 

さらに、実地棚卸と帳簿棚卸の連携を強化し、結果に一貫性があるかを検証する流れを組み込むと、監査の準備が万全になります。棚卸への入念な準備は、監査人との信頼関係の構築にもつながります。

 

なお、経理のマニュアル化についてはこちらの記事も参考にしてください

 

経理マニュアルの作り方!作成時の注意点とマニュアル化の重要性を解説
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まとめ

会計監査とは、企業や団体の財務諸表が正確であり、適切に作成されているかを第三者が検証する業務を指します。主に法令や基準に従い、公正な評価を提供することで、投資家や金融機関などのステークホルダーが企業の情報を利用できるようにします。

 

会計監査をスムーズに行うためには、事前に記帳を済ませて、監査計画を立てることが大切です。しかし、健全な会計監査には、日々の帳簿を正確に記載して、帳簿の内容を理解しなければならず、多くの時間とリソースが必要になります。そのため、記帳代行や経理代行会社へ依頼することもひとつの手です。

 

弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。日常的な経理業務だけではなく、会計ソフトの導入支援から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

会計監査に関するのよくあるご質問

会計監査についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、会計監査に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

会計監査の対象となるのはどんな法人ですか?

会計監査の対象となる法人は、会社法やその他の法律で義務付けられている企業や団体です。具体的には、大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)、公開会社、または特定の公益法人などが該当します。さらに、金融商品取引法に基づき上場企業も監査を受ける必要があります。

会計監査人を設置しないのは違反ですか?

会計監査人の設置が法律で義務付けられている企業が設置しない場合、会社法違反となります。大会社や公開会社では、会計監査人を選任し、適正な監査を受けることが求められます。一方で、設置義務がない中小企業や非公開会社については、会計監査人を任意で設けるかどうかは経営判断に委ねられています。

会計監査で調査する具体的な内容には何がありますか?

会計監査では、主に財務諸表が正確で公正に作成されているかを確認します。具体的には、売上や経費、資産や負債の記録が会計基準に従って適切に計上されているかを調査します。また、帳簿と実際の取引や棚卸資産の状況を突き合わせ、内部統制の仕組みが有効に機能しているかも評価されます。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。