経理は企業の心臓部とも呼ばれる部門です。経営者の方やこれから経理に携わる方のなかには、経理が一体どのような役割を担っているかわからないという方も多いのではないでしょうか。経理の役割は、日々の売り上げや経費といったお金の流れを管理する役割だけでなく、経営判断の根拠となる情報を提供し、企業の健全な成長を支える役割も担っています。
本記事では、経理の具体的な役割や目的を、会計や財務との違いも交えながら詳しく解説していきます。また、会社規模によって経理の仕事内容がどのように変化するのかについても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
経理の役割と目的
経理の役割とは、企業のすべての取引を正確に記録し、日々の資金の流れを管理することにあります。これには、売上や支出の計上、請求書の処理、支払いや入金の管理が含まれます。
経理の目的とは、企業の経営状況を明確に把握するための基礎データを提供し、信頼性の高い財務報告を作成することです。これにより、経営者が迅速かつ正確な意思決定を行うための情報が得られ、資金繰りの計画やコスト削減の戦略にもつながります。
また、経理は法的なコンプライアンスを担保するための重要な役割も担っており、税務申告や監査対応などの業務を通じて、企業が法律や規制を守りながら活動していることを証明しています。経理は企業の健全な財務運営に貢献し、組織全体の持続可能な成長を支える基盤を築く役割を果たしているのです。
なお、経理については、以下の記事でも詳しく解説しています。
経理と会計の役割の違い
経理と会計は密接に関連していますが、役割には明確な違いがあります。
経理の主な役割は、日々の取引を記録し、帳簿を整理することに重点が置かれています。売上や経費の記録、振替伝票の処理、入出金管理などが含まれます。
一方、会計はこれらの経理データをもとに、企業の財務状況を分析し、財務諸表を作成することが主な役割です。具体的には、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などを作成し、企業の経営状況や財務の健全性を評価します。
つまり、経理は日々の取引記録を管理し、会計はそのデータをもとに経営の全体像を把握し、戦略的な意思決定をサポートするのです。このように、経理は企業の財務活動の基礎を築き、会計はその基礎に基づいて経営に貢献するという違いがあります。
なお、経理と会計の違いについては、以下の記事も参考にしてください。
経理と財務の役割の違い
経理と財務も似た部門ですが、実際には異なる役割があります。
経理の役割は、企業の日々の取引の記録と、正確な帳簿の管理に焦点を当てています。経理の仕事には、収支の計上や経費精算、税務対応などの実務が含まれます。
一方で、財務の役割は、企業の資金計画と資金調達、投資戦略の策定に重点が置かれています。財務部門は、資金の調達方法を検討し、必要に応じて銀行からの融資や社債の発行を行い、効率的な資金運用を目指します。また、財務は企業の資本構成やリスク管理にも関与し、長期的な成長戦略に沿った資金の最適化を図ります。
経理は企業の財務状況を的確に記録し報告するのに対し、財務はそのデータを基に将来の資金運用や投資計画を立案するという違いがあるといえるでしょう。このように、経理は日々の取引管理に重点を置き、財務は戦略的な資金管理に焦点を当てることで、企業の持続的成長を支援しているのです。
なお、経理と財務の違いについては、以下の記事も参考にしてください。
経理の主な業務内容
経理の主な業種内容としては、以下の3つに分類できます。
- 日次業務(毎日の仕事)
- 月次業務(毎月の仕事)
- 年次業務(毎年の仕事)
ここでは、それぞれの具体的な仕事内容と、担当者にとってのポイントを詳しく解説します。
日次業務(毎日の仕事)
経理の日次業務とは、企業の財務活動を日々正確に管理するために欠かせないものです。具体的には、現金や銀行口座の入出金の確認と記帳、取引先への請求書発行や受領した請求書の処理、売掛金や買掛金の管理などが含まれます。
また、経費精算の申請をチェックし、承認する業務も行われます。さらに、日次の売上データや支出の記録をリアルタイムで更新し、帳簿を正確に保つことが求められます。
経理における毎日の作業は、企業の資金繰りを安定させ、経営者が迅速に意思決定できるよう、日々の財務状況を明確に把握するための基盤を築くために重要な役割を果たしているのです。
月次業務(毎月の仕事)
経理の月次業務とは、経理が月末にまとめて行う重要な作業です。毎月、各部門から提出された経費報告の精査や、売掛金・買掛金の残高確認、帳簿の締め作業が含まれます。
さらに、月次決算のために、試算表の作成や収支報告書の作成を行い、月間の経営成績を経営者や関係者に報告します。
また、給与計算や社会保険料の支払いも月次業務のひとつです。企業の収益性や財務状況を定期的に把握し、問題点を早期に発見して対策を練るために活用されます。そのため、経理の月次業務は、経営判断に必要なデータを提供するため、企業の運営において欠かせない業務といえるでしょう。
年次業務(毎年の仕事)
経理の年次業務は、企業の財務状況を包括的に評価するための大規模な作業です。これには、年次決算を行い、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を作成することが含まれます。
さらに、法人税や消費税の確定申告に向けた税務処理や、税務署への各種申告書類の提出も年次業務です。また、監査対応として、外部監査人によるチェックを受け、法令遵守の確認を行います。
これらの年次業務を通じて、企業の年間の財務状況を総括し、翌年の経営計画や戦略に反映させるためのデータを作成します。そのため、経理の年次業務は、企業の信頼性を高め、持続的な成長を支えるための重要な役割を担っています。
なお年次業務のおける決算については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
経理業務の役割における分類
経理業務は主に以下のような役割に分類できます。
- 過去の取引を見える化する役割
- お金の流れを管理する役割
- 経営者の判断を補助する役割
- 法令遵守する役割
- 社員が安心して働けるようにする役割
- コンプライアンスを強化する役割
過去の取引を見える化する役割
経理業務の重要な役割のひとつは、過去の取引を正確に見える化することです。見える化の役割には、日々の取引を帳簿に記録し、売上や経費の動きを詳細に把握する作業が含まれます。経理が過去の取引を明確にすることで、企業の財務状況を把握し、業績を客観的に評価することができます。特に、月次や年次の決算報告においては、正確なデータが求められるため、取引の記録が経営分析の基盤となるでしょう。
また、経理が過去の取引データを整理し、財務諸表としてまとめることで、企業の健全な運営が支えられ、透明性のある経営が実現されます。その結果、取引先や投資家からの信頼を得ることにもつながります。
お金の流れを管理する役割
経理の重要な役割として、企業のお金の流れを管理することがあげられます。収入と支出のバランスを取りながら、資金繰りを円滑にするための業務です。
具体的には、売掛金や買掛金の管理、各種支払の期日管理、資金の出入りをタイムリーにチェックし、企業が必要なときに必要な資金を確保できるよう調整します。
経理が資金管理を行うことは、企業の信用を守るためにも欠かせません。なぜなら、資金が不足すれば、取引先への支払遅延が発生し、信用を損ねる可能性があるからです。そのため、経理はお金の流れを常に監視し、適切な資金管理を行うことで、企業の安定した運営を支えています。その結果、企業全体の健全な財務体制を維持することができます。
経営者の判断を補助する役割
経理業務は、経営者が迅速かつ正確に判断を下すためのデータを提供する役割も担っています。経理が作成する月次決算や年次決算のデータは、経営戦略を策定する上での重要な情報源です。
例えば、売上の推移やコストの変動を分析することで、無駄な支出を削減し、利益を最大化するための施策が立てられます。また、経理の提供するキャッシュフローの情報は、新たな投資や事業拡大の判断材料としても利用されます。
このように、経理は経営者の意思決定を裏付けるデータを整備し、企業の持続的な成長に貢献しています。さらに、リスク管理の一環として、経営の安定性を高めるための財務戦略の構築もサポートするという役割もあるでしょう。
法令遵守する役割
企業が法令を遵守するために、経理業務は重要な役割を果たしています。税務申告や社会保険料の納付など、法的な手続きが正確に行われるように管理するのが経理の役目です。
例えば、法人税や消費税の申告を期限内に行い、正確に納付することで、税務リスクを回避します。また、各種法定調書の作成や提出を適切に行うことで、コンプライアンスの強化にもつながります。
経理が行う法令遵守の活動は、企業が罰則を受けるリスクを防ぎ、社会的信用を守るための基盤となっています。さらに、最新の法改正に対応するための情報収集も欠かせない役割があります。
社員が安心して働けるようにする役割
経理は、社員が安心して働ける職場環境を整えるためにも重要な役割を担っています。具体的には、給与計算を正確に行い、給与が遅れることなく支払われるように管理することが求められます。
また、社会保険や年末調整などの手続きも経理の業務に含まれ、社員の税務面での負担を軽減するサポートを行います。これにより、社員が自分の業務に集中できる環境が整い、企業全体の生産性向上にもつながります。
経理がしっかりとサポートすることで、社員は安心して仕事に取り組むことができるのです。加えて、福利厚生に関する手続きも迅速に行い、働きやすい環境作りを支援する役割も担っています。
コンプライアンスを強化する役割
経理は、企業のコンプライアンス体制を強化する役割を果たしています。これには、内部統制の一環としての財務管理や、不正防止のためのチェック体制の構築が含まれます。
経理が正確な帳簿管理を行い、透明性のある財務報告を実施することで、外部の監査や規制当局からの信頼を得ることができます。
また、経理部門が定期的に内部監査を行い、経営全体のリスクを低減させることも重要です。このように、経理は企業の信頼性を高めるための重要な役割を担い、持続可能な経営を支える基盤を提供します。さらに、法令改正に迅速に対応し、リスク管理を徹底することも求められます。
大企業と中小企業の経理の役割の違い
大企業と中小企業では経理の役割が異なります。具体的には以下のような点で違いがあるでしょう。
- 対応する業務の専門性が異なる
- 経営への関与が異なる
- 入力作業や処理の方法が異なる
ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
対応する業務の専門性が異なる
大企業と中小企業の経理では、対応する業務の専門性に大きな違いがあります。
大企業では業務が細分化されており、経理部門内でも各担当者が特定の分野に特化した専門性を持っています。例えば、売掛金管理、税務申告、予算管理など、業務が細かく分かれているため、各分野での深い知識やスキルが求められます。
一方、中小企業では、経理担当者が幅広い業務を一手に引き受けることが多く、日次の取引記録から決算業務、税務対応までさまざまな仕事をこなす必要があります。そのため、中小企業の経理担当者には、広範な知識と柔軟な対応力が必要です。この違いは、企業規模に応じたリソースの差や業務量によって生じており、それぞれの経理部門の役割や求められるスキルに影響を与えています。
経営への関与が異なる
大企業と中小企業では、経理部門が経営に関与する度合いも異なります。
企業では、経理部門が経営企画や戦略立案の一環として、財務分析やコスト管理を担当し、経営者に対する助言を行うことが一般的です。これにより、経営者は正確なデータに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。
一方で、中小企業では経理担当者が直接経営者と密接に関わることが多く、経理データの提供だけでなく、経営方針の策定においても積極的な役割を果たします。中小企業では、経理が経営者の補佐として、資金繰りの調整やコスト削減策の提案を行うケースが多く、経営判断に直接的に影響を与えることが多いのです。このように、企業規模に応じて経理の経営への関与度が異なるため、その責任範囲も異なってきます。
入力作業や処理の方法が異なる
経理業務における入力作業や処理の方法は、大企業と中小企業で大きく異なります。
大企業では、高度な会計システムやERP(統合基幹業務システム)を導入していることが多く、データの入力や処理は自動化されています。これにより、業務の効率化やミスの削減が図られ、経理担当者はより分析や戦略的業務に集中することが可能です。
一方、中小企業では、専用の会計ソフトを使いながらも、手作業による入力や処理が多く残ることが一般的です。特に、小規模な企業では紙ベースの記帳や手動でのデータ入力が行われることもあり、作業効率の面で課題を抱えがちです。このように、ITインフラの整備状況やリソースの違いによって、経理業務の流れが大きく異なる点が特徴的です。
なお、大企業や上場準備企業の経理については、以下の記事で触れています。
また、中小企業の経理については、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ
経理にはお金を管理して、過去の取引の流れを見える化するという役割があります。その結果、経営判断の補助や、法令遵守につながり、社員の方が安心して働ける環境づくりに貢献しています。
また、経理の役割は大企業と中小企業でも大きく異なり、対応する業務の専門性や、経営への関与の仕方が変わってくるでしょう。
なお、大企業と中小企業のどちらでも、経理部門の負担は課題となっています。そのため、経理代行会社に依頼することもひとつの手です。
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経理の役割に関するのよくあるご質問
経理の役割についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、経理の役割に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
経理に求められる役割は何ですか?
経理に求められる役割は、企業の取引を正確に記録し、財務状況を見える化することです。これにより、経営者が適切な判断を下すための信頼性のあるデータを提供します。また、税務申告や法令遵守を通じて、企業の法的リスクを回避し、健全な経営を支えることも重要です。
経理として一番大事なことは何ですか?
経理として一番大事なことは、正確さと信頼性です。特に、取引の記録や帳簿の管理においてミスがないことが求められます。これにより、企業の財務状況を適切に把握し、経営の意思決定を支援します。また、期限内の処理と法令遵守も重要で、これが企業の信用を守る基盤となります。
経理はどんな人に向いていますか?
経理は、数字に強く、細部に注意を払うことが得意な人に向いています。特に、正確さや几帳面さが求められるため、責任感があり、コツコツとした作業を苦にしない人に適しています。また、法規制に敏感で、倫理観を持って仕事を進められる人にも向いています。一方で、社内外との円滑なコミュニケーションも求められます。