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一人経理に潜むリスクとは?業務負担度チェックリストと解決策
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一人経理に潜むリスクとは?業務負担度チェックリストと解決策

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中小企業を中心に、経理業務をたったひとりで行う「一人経理」は、コスト削減や柔軟な対応といったメリットがあります。しかし、一方で、業務負担の増大やモチベーションの低下など、様々なリスクが潜んでいます。

 

本記事では、一人経理が抱える具体的なリスクを解説し、業務負担度を客観的に評価するための項目をチェックリストにまとめました。

 

また、一人経理のメリットとデメリットや、リスクに対する解決策も紹介します。ぜひ、最後までご覧ください。

 

一人経理とは?

一人経理とは、企業の経理業務をたったひとりの担当者が全て引き受ける体制を指します。主に、中小企業に見られる体制であり、経理担当者が日常的な帳簿の記帳、請求書の発行と管理、給与計算、税務申告、財務報告など、幅広い業務を一手に担います。

 

一人経理では、幅広い業務範囲により、経理担当者には高い専門知識とスキルが求められます。また、企業の財務状況を正確に把握し、適切な意思決定を支援するための重要な役割を果たします。

 

一人経理の体制では、業務の一貫性が保たれ、情報の伝達ミスが減少するため、業務効率が向上します。また、スピーディな意思決定や柔軟な対応が可能となり、問題発生時の原因追求や対策も素早く行えるでしょう。

一人経理における「業務負担度チェックリスト」

一人経理では、本人が気づかないうちに業務量が負担になっていることもあります。経理担当者の負担が増えてしまうと、心身の疲労から病気を患ってしまったり、転職や退職を検討してしまうこともあります。

以下に、一人経理における「業務負担度チェックリスト」を作成しましたので、確認してみてください。

 

No. チェック項目 選択肢
1 他の人に業務を任せることができない はい / いいえ
2 有給休暇がとれずに貯まっている はい / いいえ
3 周りの人に比べて残業が多い はい / いいえ
4 業務の幅が広くて大変だ はい / いいえ
5 上司や同僚に業務の内容が伝わらない はい / いいえ
6 日々のルーティンワークが終わらない はい / いいえ
7 自分のミスに気づかない はい / いいえ
8 セミナーや勉強会に参加する時間がない はい / いいえ
9 会計ソフトをうまく使いこなせない はい / いいえ
10 転職や退職をしたいと思うことがある はい / いいえ

 

業務負担度チェックリストの結果

一人経理における「業務負担度チェックリスト」の結果はいかがでしたでしょうか。「はい」の数を数えてみてください。

 

点数(「はい」の数) 診断結果
0点 一人経理における不安や悩みはなさそうです
1~3点 具体的に大変な業務を洗い出してみましょう
4~6点 マニュアルを作成して効率化を図りましょう
7~9点 負担が深刻なため社内で相談しましょう
10点 経理担当者を採用するか経理代行を導入しましょう

 

一人経理のメリット

一人経理には、主に以下のようなメリットがあります。

 

  • 経営者の意図をくみ取りやすい
  • 経理業務のコスト削減になる
  • 事業に合わせて柔軟に対応できる
  • 仕事への裁量権が大きくなる

ここでは、それぞれのメリットや効果について詳しく解説します。

 

経営者の意図をくみ取りやすい

 

一人経理では、経営者との密なコミュニケーションがとれます。そのため、経営者の意図や方針を迅速に把握し、経理業務に反映させることが可能です。

 

また、意思決定のスピードが速くなり、経営戦略に対する柔軟な対応が期待できます。経営者と経理担当者の関係性は、経営者の意図を正確にくみ取り、経理の役割を効果的に果たす上で大きなメリットとなります。

 

経理業務のコスト削減になる

 

一人経理は、複数の経理担当者を雇用するよりも人件費を大幅に削減できるため、経理業務のコスト削減につながります。

 

企業は必要最小限の人員で効率的に経理業務を運営できるため、全体の経費を抑えつつ、資金を事業投資などに回すことが可能です。一人経理のおかげで、企業全体の財務状況が安定して、事業成長が見込めるでしょう。

 

事業に合わせて柔軟に対応できる

 

一人経理の体制は、事業の状況やニーズに合わせて柔軟に対応できる点がメリットです。経理担当者が全ての業務を一手に引き受けるため、事業の変動や急な要求にも迅速に対応できる柔軟性があります。

 

特に、中小企業やベンチャー企業では、一人経理の適応力のおかげで、企業は市場の変化に即座に対応し、競争力を維持することができるといえるでしょう。

 

仕事への裁量権が大きくなる

 

一人経理では、業務全般をたったひとりで担当するため、仕事への裁量権が大きくなります。自身の判断で業務を進めることができるため、業務効率や品質の向上を図りやすくなるでしょう。

 

また、自分のペースで仕事を進められるため、責任感や達成感も増します。その結果、モチベーションの向上につながるため、企業の経営状況を「自分ごと化」できます。

一人経理のデメリット

一人経理には多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。

 

  • 業務量が多く負担になる
  • 休暇が取りづらい
  • 勉強会やセミナーに参加しづらい
  • モチベーションが低下しやすい

ここでは、それぞれのデメリットを詳しく解説します。

 

業務量が多く負担になる

 

一人経理は、企業の経理業務全般をたったひとりで担うため、業務量が非常に多くなります。そのため、日常業務に追われ、長時間労働や過労のリスクが高まります。

 

また、多くの業務を並行してこなす必要があるため、細かなミスやエラーが発生しやすくなり、業務負担がさらに増大します。結果として、ストレスや疲労が蓄積しやすくなるのが現実です。

 

休暇が取りづらい

 

一人経理の場合、全ての経理業務を担当するため、休暇を取ることが難しくなります。経理担当者が不在になると、業務が滞るリスクが高まるでしょう。

 

特に、月末や決算期などの繁忙期には、休暇取得がほぼ不可能になることもあります。その結果、プライベートな時間の確保が難しくなり、心身のリフレッシュが困難になるため、長期的には健康やモチベーションに悪影響を及ぼします。

 

勉強会やセミナーに参加しづらい

 

一人経理では、業務に追われる日々が続くため、自己啓発のための勉強会やセミナーに参加する時間を確保することが難しくなります。新しい知識やスキルの習得が遅れることで、最新の経理手法や法改正に対応できず、業務の質が低下するリスクがあります。

 

また、外部の専門家や同業者との交流の機会も減少し、孤独や孤立感を感じやすくなることもデメリットです。

 

モチベーションが低下しやすい

 

一人経理は、全ての業務をたったひとりでこなす孤独な仕事であり、同僚とのコミュニケーションや協力が少ないため、モチベーションが低下しやすいです。

 

加えて、過重な業務負担とプレッシャーにより、達成感を感じにくくなることもモチベーションの低下につながります。また、休暇が取りづらく、自己啓発の機会も限られるため、長期間にわたり同じ業務を続けることに対するマンネリ化も避けられません。

一人経理の思わぬリスクと課題

一人経理をもつ企業が陥りがちな思わぬリスクと課題には以下のようなものがあります。

 

  • 業務が属人化される
  • ミスや不正が発生しやすい
  • 退職時の引継ぎができない
  • 新しいシステムを導入しづらい
  • 事業の拡大に対応できない
  • 新しい知識や経験を得づらい
  • コア業務に集中できない

 

ここでは、それぞれのリスクと課題について詳しく解説します。

 

業務が属人化される

 

一人経理の体制では、すべての経理業務がたったひとりの担当者に依存するため、業務が属人化されてしまうリスクが高まります。

 

属人化により、担当者がいないと業務が停滞し、他の社員が対応できない状況が発生します。その結果、担当者の体調不良や急な退職など、予期せぬ事態に対応が困難となり、企業全体の業務運営に大きな影響を与える可能性があります。

 

ミスや不正が発生しやすい

 

一人経理では、チェック機能が働きにくいため、ミスや不正が発生しやすくなります。また、複数人での相互チェックが行われないため、経理データの入力ミスや不正行為が見逃されるリスクも高まるでしょう。

 

さらに、業務量の多さによる過労やストレスが、注意力の低下を招き、ミスの頻発や不正の温床となる可能性も否めません。

 

退職時の引継ぎができない

 

一人経理における担当者が退職する際には、業務の引継ぎがスムーズに行われないことが大きな課題となります。業務の属人化により、他の社員が担当者の業務内容や手順を十分に理解していない場合も、引継ぎが困難となるでしょう。

 

退職前に引継ぎができたとしても、引継ぎ期間が長引くことで、業務の停滞や混乱が生じます。その結果、企業の経理業務が一時的に麻痺するリスクがあります。

 

新しいシステムを導入しづらい

 

一人経理の環境では、新しい経費精算システムや会計ソフトの導入が難しい場合があります。業務の多忙さから、新システムの学習や導入準備に時間を割くことが難しく、現状のシステムに依存しがちです。

 

その結果、最新技術を取り入れた効率化が進まず、非効率な状況が続くことになります。また、新システム導入に対する抵抗感も、導入の障壁となることが少なくありません。

 

事業の拡大に対応できない

 

一人経理では、事業の拡大に伴う業務量の増加に対応することが難しくなります。ベンチャー企業やスタートアップ企業では、ひとりで経理を担当しても問題がなかったかもしれません。

 

しかし、企業が成長し、取引件数や業務量が増加すると、ひとりで全てを管理することが物理的に不可能となり、業務が滞るリスクが高まります。その結果、適切な財務管理が行えず、企業の成長を阻害する要因となる可能性があります。

 

新しい知識や経験を得づらい

 

一人経理の担当者は、日々の業務に追われるため、新しい知識や経験を積む機会が限られます。例えば、外部の勉強会やセミナーへの参加が難しくなり、最新の経理手法や法改正に対応するための情報収集が遅れがちになることもリスクです。

 

その結果、業務の質が低下し、企業全体の競争力にも影響を及ぼすことがあります。また、新しい情報に触れられないことがモチベーションの低下につながり、退職や転職の検討につながってしまうことも多くあります。

 

コア業務に集中できない

 

一人経理では、幅広い経理業務を一手に引き受けるため、コア業務に集中できない状況が発生しがちです。日常的な雑務や突発的な対応に追われ、本来注力すべき戦略的な財務管理や経営分析に時間を割くことが難しくなります。

 

一人経理は経営層と直接コミュニケーションを取ることも多く、裁量権も大きいため、経営判断の中核を担うこともあるでしょう。コア業務に集中できないことで、企業の財務戦略が十分に機能できず、経営判断にも悪影響を与える可能性があります。

一人経理のリスクへの解決策

一人経理におけるリスク対策として、以下のようなポイントがあげられます。

 

  • 業務マニュアルを作成して標準化する
  • ダブルチェック体制を取り入れる
  • 自己啓発や勉強会への参加を促す
  • 定期的なフィードバックを受ける
  • 経理代行やアウトソーシングを利用する

 

ここでは、それぞれの解決策におけるコツやポイントを紹介します。

 

業務マニュアルを作成して標準化する

 

一人経理のリスクを軽減するためには、業務マニュアルの作成が効果的です。具体的な手順やルールを明確にして、業務の標準化を図ることで、誰でも同じように作業を進められるようになります。

 

その結果、担当者が不在の場合でも、他の社員が業務を引き継ぐことができ、業務の停滞を防ぐことができます。さらに、マニュアルに従うことで、ミスの減少や効率化が期待でき、全体の業務品質が向上します。

 

ダブルチェック体制を取り入れる

 

一人経理の環境でミスや不正を防止するためには、ダブルチェック体制の導入もおすすめです。経理担当者が作成した資料やデータを、別の社員が確認するプロセスを組み込むことで、二重のチェックが働き、ミスや不正行為の発見が可能になります。

 

特に、重要な決算や支払いに関する業務では、このダブルチェック体制が有効に機能し、企業の信頼性を高めることにつながります。

 

自己啓発や勉強会への参加を促す

 

一人経理の担当者が最新の知識やスキルを維持するためには、自己啓発や勉強会への参加が欠かせません。

 

企業は、経理担当者が外部のセミナーや研修に参加できるようサポートし、新しい情報や技術を学ぶ機会を提供することが重要です。

 

また、資格の受験料や書籍の購入費用を福利厚生として、企業が負担することもおすすめです。その結果、担当者のスキルアップが図られ、業務の質が向上し、企業全体の競争力も強化されます。

 

定期的なフィードバックを受ける

 

一人経理の担当者は自己評価だけでなく、外部からの視点を取り入れることも重要です。定期的なフィードバックを受けることで、自分の業務の改善点や強化すべきポイントが明確になり、業務の質が向上します。

 

また、上司や同僚以外にも、経理代行会社や税理士事務所など、外部の専門家からのアドバイスを受けることで、新たな視点や知見が得られ、自己成長につながります。

 

経理代行やアウトソーシングを利用する

 

一人経理の負担を軽減するためには、経理代行やアウトソーシングの活用が効果的です。特に、繁忙期や専門知識が求められる業務に対しては、外部の専門家に委託することで、業務の効率化が図れます。

 

加えて、アウトソーシングにより、経理担当者はコア業務に集中できるようになり、全体の業務効率と質が向上します。また、外部の専門家の知識や経験を活用することで、企業の経理体制が強化され、リスクが軽減されるでしょう。

 

まとめ

中小企業やベンチャー企業における「一人経理」は、コストの削減につながります。また、経営者との密なコミュニケーションが取れるため、スピーディかつ柔軟な対応が可能になります。

 

しかし、一方で、経理担当者の負担が増加することで、モチベーションの低下や、ストレスの増加による退職などのデメリットがあります。その結果、経理業務がストップしてしまい、企業の成長に悪い影響を及ぼすことがリスクになります。

 

一人経理における業務負担を減らすためには、経理代行やアウトソーシングを利用することもひとつの手です。

 

なお、弊社では、経理代行サービスのビズネコを提供しています。記帳代行から財務のコンサルティングまで幅広く対応が可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

 

一人経理のよくあるご質問

一人経理についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、一人経理に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。

経理は何人必要ですか?

経理に必要な人数は、一般的に従業員数が30人以下の企業では1人が多いです。ただし、会社の規模や業務内容によって大きく異なります。そのため、30人以上なら2人が最適というわけではありません。また、月末や決算期などの繁忙期のみ忙しいのであれば、経理代行への依頼や派遣社員を雇うことも検討しましょう。

経理が大変な時期はいつですか?

経理が大変な時期は、主に月末や決算期です。さまざまな書類を整理して報告書の作成や申請をしなければならないからです。また、監査への対応なども経理に大きな業務負担になります。加えて、従業員への給与支払いもあるため、給料日の直前などは毎月大変です。

経理はなぜ忙しいのですか?

経理は、日々の伝票処理や入出金管理だけでなく、月次や年次決算、税務申告、給与計算など、幅広い業務を抱えています。経理の業務は、締め切りが厳しく、専門的な知識も必要です。また、法改正や会計基準の変更など、常に変化に対応する必要があるため、経理担当者は一年を通して忙しく働いているのです。

この記事の監修者

菊池 星

菊池 星

東北大学卒業後に野村證券株式会社入社。資産運用における法人営業成績では同世代で全国1位を獲得し、その後中小企業向けの財務コンサルタントに選抜される。2021年からは、金融・ITコンサルタントとして企業向けに活動を始め、2022年6月から株式会社 full houseをスタートさせる。コンサルティングの経験から、代表取締役として、経理代行・アウトソーシングの「ビズネコ」を事業展開している。