取締役会とは、会社経営において重要な意思決定を担う機関のひとつです。名前は知っていても、株主総会との違いや、具体的に何を決め、どのような役割を果たしているのかまで正確に理解している方は多くありません。特に、会社設立後に取締役会を設置すべきか悩んでいる場合や、ガバナンス体制の見直しを検討している場合には、制度の全体像を把握しておくことが欠かせません。
取締役会では経営方針や重要な業務執行の決定だけでなく、取締役の職務を監督する役割も担います。本記事では、取締役会の基本的な仕組みから、株主総会との違い、主な決議事項や役割、開催までの流れ、設置するメリット・デメリットまでをまとめて解説します。
目次
取締役会とは?
取締役会とは、会社の経営に関する重要な方針や意思決定を行い、取締役の職務執行を監督するための機関です。日々の業務を個々の取締役に任せきりにするのではなく、合議制によって経営判断の妥当性を確認する役割を担います。
例えば、新規事業への参入や多額の投資を行う場面では、取締役会で議論を重ねることで、特定の人物の判断に偏らない意思決定が可能になります。また、代表取締役の選定や解職といった重要事項も取締役会の権限に含まれており、経営の健全性を保つうえで欠かせない存在といえます。会社規模の拡大や組織の複雑化に伴い、取締役会の果たす役割はより重みを増していきます。
取締役会の設置義務がある会社
取締役会の設置義務がある会社は、公開会社・監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社です。会社法によって定められており、とくに株式市場での上場企業は公開会社に含まれるため、必ず取締役会を設置しなければなりません。
なお、すべての株式会社に設置が求められるわけではなく、会社の性質や統治体制によって判断される点が特徴です。例えば、株式を自由に譲渡できる公開会社や、監査役会を設置している会社では、経営の透明性や監督機能を確保するために取締役会の設置が前提とされています。
また、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、取締役会がガバナンスの中核を担う構造となっており、制度上も不可欠な機関です。自社がどの区分に該当するのかを理解することは、適切な機関設計を行ううえで重要なポイントになります。
取締役会と株主総会の違い
取締役会と株主総会の違いは、意思決定を行う主体と役割の範囲にあります。どちらも会社の重要事項を扱う機関ですが、担っている機能は明確にわかれています。例えば取締役会は、選任された取締役によって構成され、経営方針や重要な業務執行について具体的な判断を行います。
一方で、株主総会は会社の所有者である株主が集まり、役員の選任や定款変更など、会社の根幹に関わる事項を決定します。このように、取締役会が実務に近い経営判断を担い、株主総会が大枠の方向性を示す関係にある点を理解しておくことで、会社運営における意思決定の流れが整理しやすくなります。
取締役会の主な役割
取締役会には、主に以下のような役割があります。
- 経営方針や重要戦略の決定
- 重要な業務執行の意思決定
- 取締役の職務執行の監督
- 代表取締役の選定・解職
- 経営陣の評価・報酬方針への関与
ここでは、それぞれの役割について詳しく解説します。
経営方針や重要戦略の決定
経営方針や重要戦略の決定は、取締役会が担う中心的な役割です。会社の進む方向性を明確にし、中長期的な視点で経営判断を行うことで、組織全体の行動指針が整えられます。
例えば、新規市場への参入や既存事業の見直しを検討する際、短期的な収益だけでなく、事業リスクや将来性を踏まえた議論が取締役会で行われます。この過程を経ることで、経営判断が個人の経験や勘に依存しにくくなり、意思決定の根拠が明確になります。また、取締役会で決定された方針は、経営陣や現場へと共有され、日々の業務に反映されていきます。こうした流れを通じて、会社全体の戦略と実務の整合性が保たれます。
重要な業務執行の意思決定
重要な業務執行の意思決定は、取締役会が経営の要所で関与する役割です。日常的な業務は担当取締役や現場に委ねられます。一方で、会社に大きな影響を与える判断については、取締役会で慎重に検討されます。
例えば、多額の設備投資や重要な取引先との契約締結といった場面では、事業上のメリットだけでなく、財務や法務の観点も含めた総合的な判断が求められます。取締役会で意思決定を行うことで、判断過程が記録として残り、後から検証できる点も特徴です。こうした仕組みは、経営の透明性を確保しつつ、リスクを抑えた業務執行につながります。
取締役の職務執行の監督
取締役の職務執行の監督は、取締役会に求められる重要な機能のひとつです。業務を執行する取締役が適切に権限を行使しているかを確認し、必要に応じて是正を促す役割を担います。
例えば、業績報告や進捗状況の説明を通じて、計画と実績の差異が生じていないかを確認し、問題点があれば議論を行います。職務執行の監督機能が働くことで、独断的な経営や不透明な意思決定を防ぎやすくなります。また、複数の取締役によるチェックが入ることで、会社全体としてのガバナンス体制が整い、経営の健全性を維持しやすくなります。
代表取締役の選定・解職
代表取締役の選定・解職は、取締役会の権限の中でも影響の大きい役割です。代表取締役は会社を対外的に代表し、業務執行の中心となる存在であるため、人選は経営に直結します。
例えば、事業環境の変化に対応するために経営体制を見直す場合、取締役会で候補者の実績や適性を検討し、適切な判断が行われます。また、職務遂行に問題がある場合には、解職を含めた対応を取締役会で決定します。取締役会の仕組みによって、代表取締役の権限が過度に集中することを防ぎ、組織としての統制を保つことが可能になります。
経営陣の評価・報酬方針への関与
経営陣の評価・報酬方針への関与は、取締役会がガバナンスを機能させるうえで欠かせない役割です。経営陣の成果を適切に評価し、その結果を報酬に反映させることで、経営目標と個人の行動を結びつけます。
例えば、業績指標や中長期的な成長への貢献度を踏まえて評価を行うことで、短期的な数字だけに偏らない判断が可能になります。取締役会が関与することで、報酬決定の過程が透明になり、社内外からの納得感も高まりやすくなります。こうした仕組みは、健全な経営体制の維持につながります。
取締役会を設置するメリット
取締役会を設置するメリットとして、以下のような点があげられます。
- 意思決定の透明性と客観性が高まる
- 不正や独断的な経営を防ぎやすくなる
- 社内ルールやガバナンス体制を明確にできる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
意思決定の透明性と客観性が高まる
意思決定の透明性と客観性が高まる点は、取締役会を設置する大きなメリットです。経営判断を複数の取締役による合議で行うことで、判断の背景や根拠が整理され、特定の個人の考えに偏りにくくなります。
例えば、新たな投資計画を検討する場面では、財務状況や事業リスク、将来の成長性などを多角的に確認したうえで議論が進められます。議論の過程が議事録として残ることで、後から意思決定の経緯を確認できる点も特徴です。結果として、社内外に対して説明しやすい経営が可能となり、組織全体で判断基準を共有しやすくなります。
不正や独断的な経営を防ぎやすくなる
不正や独断的な経営を防ぎやすくなる点も、取締役会を設置するメリットのひとつです。重要な経営判断を一人の裁量に委ねるのではなく、複数の取締役が内容を確認する仕組みがあることで、リスクの早期発見につながります。
例えば、特定の取引先との継続的な取引条件が適切かどうかについても、取締役会で検討することで問題点に気づきやすくなります。また、業務執行の状況が定期的に報告されるため、経営の透明性が保たれます。取締役会でのチェック機能が働くことで、不正行為や判断ミスを未然に防ぎやすい体制を構築できます。
社内ルールやガバナンス体制を明確にできる
社内ルールやガバナンス体制を明確にできる点は、取締役会を設置する意義のひとつです。取締役会を中心に意思決定の範囲や手続きが整理されることで、誰がどこまで判断できるのかが明確になります。例えば、一定金額以上の支出や重要契約については取締役会決議が必要といったルールを定めることで、業務の進め方に一貫性が生まれます。
また、取締役会の仕組みは、会社規模が拡大した場合でも統制を保ちやすくします。対外的にも経営管理体制が整っていることを示しやすくなり、取引先や金融機関からの信頼確保にもつながります。
取締役会を設置するデメリット
取締役会を設置するデメリットとして、以下のような点にも注意しましょう。
- 資料作成など事務的な負担が増える
- 議事録作成など法令対応の手間が発生する
- 意思決定に必要な判断に時間がかかる場合がある
ここでは、それぞれのデメリットについて具体的に解説します。
資料作成など事務的な負担が増える
資料作成など事務的な負担が増える点は、取締役会を設置するデメリットのひとつです。取締役会では、限られた時間の中で適切な議論を行うために、事前に十分な資料を準備する必要があります。
例えば、業績報告や投資案件の説明資料を作成する場合、数値の根拠や前提条件まで整理しなければなりません_作成作業は主に経営企画や管理部門が担うことが多く、通常業務に加えて対応する負担が生じます。また、取締役からの質問や追加資料の要望に応じる必要もあり、準備にかかる時間や工数が増えやすくなります。その結果、組織体制によっては事務作業の負担感が課題となる場合があります。
議事録作成など法令対応の手間が発生する
議事録作成など法令対応の手間が発生する点も、取締役会を設置する際に考慮すべき点です。取締役会の議事録は会社法に基づいて作成し、一定期間保管することが求められています。
例えば、決議内容だけでなく、出席者や議論の概要を正確に記録する必要があり、形式や記載内容にも注意が必要です。作成後には、取締役や監査役の署名や記名押印を求められるケースもあります。こうした法令対応は、手続きを誤るとリスクにつながるため、慎重な対応が欠かせません。結果として、専門知識を持つ担当者や外部専門家の関与が必要になる場合もあります。
意思決定に必要な判断に時間がかかる場合がある
意思決定に必要な判断に時間がかかる場合がある点は、取締役会を設置することで生じやすいデメリットです。重要な事項については複数の取締役の意見を踏まえて判断するため、迅速さよりも慎重さが重視される傾向があります。
例えば、事業環境の変化に即応したい場面でも、取締役会の開催日程を調整し、資料を整えたうえで議論を行う必要があります。その過程で意思決定までに一定の時間を要することがあります。一方で、このプロセスは拙速な判断を防ぐ役割も果たしますが、スピードを重視する経営とのバランスをどう取るかが課題となる場合があります。
取締役会を開催する流れと手順
取締役会を開催する流れは、以下の手順で進みます。
- step1:報告事項や決議事項を準備する
- step2:1週間前までに招集通知を出す
- step3:取締役会を開催する
- step4:議事録を作成して10年間保管する
ここでは、それぞれの手順について、ステップごとに紹介します。
step1:報告事項や決議事項を準備する
報告事項や決議事項を準備することは、取締役会を円滑に進めるための出発点です。取締役会では限られた時間の中で重要な判断を行うため、事前に議題を整理しておくことが欠かせません。
例えば、業績報告や進行中のプロジェクトの状況説明は報告事項としてまとめ、設備投資や役員人事のように判断が必要な内容は決議事項として区別します。事前の整理が不十分だと、会議中に論点が散漫になり、十分な議論ができない可能性があります。また、議題ごとに必要な資料や背景情報を整えておくことで、取締役が事前に内容を把握しやすくなり、建設的な意見交換につながります。
step2:1週間前までに招集通知を出す
会社法では、原則として開催日の1週間前までに招集通知を発することが義務付けられています。また、取締役が十分な準備を行えるよう、開催日時や場所、議題を事前に伝える役割を果たします。
例えば、重要な決議事項が含まれる場合には、概要や関連資料をあわせて共有することで、当日の議論が深まりやすくなります。招集通知を期限内に行うことで、手続き面の不備を防ぎ、取締役会の有効性を確保できます。また、オンライン開催や書面決議を行う場合でも、事前の通知内容を明確にしておくことで、混乱を避けやすくなります。
step3:取締役会を開催する
取締役会を開催することは、準備した議題について実際に議論と意思決定を行う場面です。事前に共有された資料を前提に、報告事項の確認や決議事項の審議が進められます。例えば、業績報告に対して取締役から質問が出た場合には、その場で補足説明を行い、必要に応じて意見交換を行います。
この過程を通じて、判断の妥当性やリスクを多角的に検討できます。議長の進行によって議論の順序や時間配分が調整されるため、会議全体の流れを意識した運営が求められます。
step4:議事録を作成して10年間保管する
議事録を作成して10年間保管することは、取締役会開催後に必ず行うべき重要な対応です。議事録は、取締役会でどのような議論と決定が行われたのかを記録する公式な書類となります。
例えば、決議内容だけでなく、出席者や議事の経過を正確に残すことで、後日の確認や説明に役立ちます。会社法では、取締役会の議事録は開催日から10年間保管することが義務付けられており、形式や記載内容にも注意が必要です。議事録の対応を適切に行うことで、法令遵守だけでなく、会社のガバナンス体制を支える基盤として機能します。
取締役会を効果的に実施するポイント
取締役会を効果的に実施するポイントとして、以下のような点を確認しましょう。
- 「報告事項」と「決議事項」を分けておく
- 事前に資料を共有して論点に集中させる
- 社外取締役や第三者的視点を取り入れてみる
ここでは、それぞれのポイントについて具体的に解説します。
「報告事項」と「決議事項」を分けておく
「報告事項」と「決議事項」を分けておくことは、取締役会を効果的に運営するための基本です。議題の性質を整理せずに会議を進めると、確認で足りる内容と判断が必要な内容が混在し、議論の優先順位が曖昧になりがちです。
例えば、月次の業績報告は報告事項として簡潔に共有し、設備投資や組織変更のように結論を出す必要がある内容は決議事項として時間を確保します。区別を事前に明確にしておくことで、取締役は会議前から論点を把握しやすくなります。結果として、取締役会全体の進行が整理され、限られた時間を有効に使った議論につながります。
事前に資料を共有して論点に集中させる
事前に資料を共有して論点に集中させることは、取締役会の質を高める重要な工夫です。当日に初めて資料を確認する形式では、内容の理解に時間が取られ、議論が表面的になりやすくなります。
例えば、決議事項に関する背景や数値資料をあらかじめ共有しておくことで、取締役は自分なりの視点や疑問点を整理したうえで会議に臨めます。準備があることで、会議中は説明よりも意見交換や判断に時間を割くことができます。また、事前共有は会議時間の短縮にもつながり、取締役会を継続的に運営するうえでの負担軽減にも役立ちます。
社外取締役や第三者的視点を取り入れてみる
社外取締役や第三者的視点を取り入れてみることは、取締役会の実効性を高める方法のひとつです。社内だけで構成された取締役会では、過去の慣習や内部事情に引きずられた判断になりやすい側面があります。
例えば、外部の経験を持つ社外取締役が参加することで、業界動向や他社事例を踏まえた意見が出され、議論の幅が広がります。このような視点は、リスクの見落としや判断の偏りを防ぐ効果も期待できます。結果として、取締役会の議論がより客観的になり、経営判断の質を高めることにつながります。
まとめ
取締役会は、会社の経営判断と監督機能を支える重要な機関であり、その役割や運営方法を正しく理解することが健全な会社運営につながります。設置義務の有無や株主総会との違いを把握したうえで、取締役会が担う決議事項や監督機能、設置によるメリットとデメリットを整理することで、自社に適したガバナンス体制を検討しやすくなります。
また、開催手順や実務上のポイントを押さえておくことで、形式的な会議にとどまらず、実効性のある意思決定の場として機能させることが可能になります。取締役会をどのように位置づけ、活用していくかを改めて見直すことが、将来を見据えた経営基盤の整備につながります。取締役会に必要な資料の準備には、経理代行会社の活用もおすすめです。
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取締役会に関するよくあるご質問
取締役会についてのお問い合わせを多くいただきます。ここでは、取締役会に関するよくあるご質問についてまとめて紹介します。
取締役会の最低人数は何人ですか?
取締役会の最低人数は、会社法で取締役は最低3名以上必要と定められています。1人や2人では取締役会を構成することはできません。複数人による合議制を前提とし、経営判断の客観性や相互監督を確保するためです。なお、監査役や会計参与は人数要件に含まれないため、取締役そのものが3名以上いる点に注意が必要です。
取締役会は何をする会ですか?
取締役会は、会社の業務執行に関する重要事項を決定し、取締役の職務執行を監督するための機関です。具体的には、事業計画の承認や重要な契約の締結、代表取締役の選定・解職などが主な役割に含まれます。日常業務の細かな判断ではなく、経営に大きな影響を与えるテーマを扱う点が特徴です。
取締役会の構成メンバーは誰ですか?
取締役会の構成メンバーは、原則として会社の取締役全員です。代表取締役であっても、他の取締役と同様に一構成員として参加し、議決権を持ちます。監査役が取締役会に出席し、意見を述べることが認められていますが、議決権はありません。社外取締役を選任している場合は、社内事情に偏らない視点から議論に参加します。